家では普通に話せるのに、学校では声が出ない。名前を呼ばれても返事ができず、「無視している」と受け取られてしまう。場面緘黙(ばめんかんもく。DSM-5-TR日本語版〈2023年〉での診断名です。以前は選択性緘黙と訳され、文部科学省の通知では今も「選択性かん黙」と書かれています)のあるお子さんと、その保護者の方が、進路を考えるときにいちばん気になるのは「高校はどうするのか」だと思います。
先に結論を書きます。話す場面が少ない進路として通信制高校は現実的な選択肢になります。ただし、通信制高校でもスクーリング(面接指導)と試験があり、入学者選抜では9割の学校が面接を行っています(文部科学省の実態調査で確認しました)。だから「通信制なら誰とも話さずに卒業できる」とは書けません。大事なのは、話す場面をゼロにすることではなく、配慮をあらかじめ相談しておける学校を選ぶことです。配慮を求めることは、法律で裏づけられた権利です。
この記事は、国立精神・神経医療研究センターのこころの情報サイト、日本不安症学会と日本場面緘黙研究会の学術論文、文部科学省の通知と実態調査、e-Govの法令原文、東京都教育委員会と千葉県教育委員会の入試要項を、実際に開いて確認して書いています。確認できなかったことは、確認できなかったと書いています。診断や治療の判断はこの記事では扱いません。気になる症状は、主治医・かかりつけ医や専門の相談機関にご相談ください。
今の学校に通い続けるのが難しい場合や、もっと自分らしい高校生活を探している場合は、オンラインという選択肢もあります。NIJIN高等学院(ニジ高)は「オンラインで最高の青春を」を掲げる通信制高校サポート校で、全国の仲間とオンラインでつながり、企業や地域と関わるプロジェクトや、生徒が自分たちで企画する行事に挑戦できます。カメラやマイクをオフにしてチャットだけで参加するところから始められ、全国にNIJINアカデミー(ニジ高はその高等部)のリアルの教室があり、リアルでの通学もご検討いただけます。ニジ高は高校ではないため、卒業資格は提携する通信制高校で取り、その高校のスクーリングには参加が必要です。どんな学校なのかは、校長・星野達郎のYouTubeでも見られます。
結論:場面緘黙のある高校生の進路の早見
- 場面緘黙は、不安症のグループに位置づけられている状態です。国立精神・神経医療研究センターのこころの情報サイトでは、不安症の種類の1つとして選択性緘黙が挙げられ、特定の人の前では話せるのに、他の人々の前ではまったく話せなくなることが特徴だと説明されています。性格やしつけの問題として書かれてはいません。
- 国の制度の中に、場面緘黙は名前入りで書かれています。文部科学省の通知では、通級による指導の対象となる「情緒障害者」を、主として心理的な要因による選択性かん黙等があるもの、と定義しています。制度から外れた特殊な状態ではありません。
- 配慮を求めることは権利です。障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律により、公立学校は以前から、私立学校を含む事業者も2024年4月1日から、負担が重すぎない範囲で合理的配慮を行うことが法律上の義務になりました。
- 高校入試では、別室受検や面接での筆談などの配慮を申請できます。東京都では在籍中学校を通じて志願先の都立高校へ事前に申請し、都のページには申請時期は例年12月中旬頃とあります。願書より前に動く必要があります。
- 通信制高校でも、話す場面はゼロになりません。単位はレポート・スクーリング(面接指導)・試験で取ります。文部科学省の実態調査では、入学者選抜で面接を行う学校が323校中296校(91.6%)で、学力検査の91校より多いという結果でした。
- それでも通信制が現実的なのは、話す量を自分で調整できるからです。同じ調査で、2025年3月31日時点の在籍生徒306,711人のうち、スクーリングに1日も来ていない生徒が8,097人(2.6%)おり、その理由として最も多く挙げられたのは「心身に関すること」でした。事情のある生徒がいることを、学校側も前提にしています。
- 一人で学び続けるのが不安なときは、オンライン中心のサポート校を併用する方法もあります。ニジ高はカメラ・マイクをオフにしてチャットだけで参加するところから始められます。ただしニジ高は高校ではなく、卒業資格は提携する通信制高校で取ります。
話せないのは、本人の努力不足でも性格でもありません。不安症のグループに入る状態です
まず、いちばん誤解されている点をはっきりさせます。場面緘黙は「話したくない」「わざと黙っている」状態ではありません。
国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所が作るこころの情報サイト「不安症」では、不安症の種類として分離不安・選択性緘黙・限局性恐怖症・社交不安症・パニック症・広場恐怖症・全般性不安が並べて説明されています。このうち選択性緘黙については、特定の人の前では話ができるのに、他の人々の前で話すことが必要になってもまったく話せなくなることが特徴で、そのために学業や仕事に支障が生じることが少なくない、と書かれています。
つまり公的な情報サイトの整理では、場面緘黙は不安の強さによって起こる状態として扱われています。「慣れれば治る人見知り」でも「反抗」でもありません。ここを家族と学校が共有できているかどうかで、その後の対応がまったく変わります。
日本での出現率は、調査によって大きく違います。日本不安症学会の学術誌に掲載された久田信行ほか「場面緘黙(選択性緘黙)の多様性—その臨床と教育—」(不安症研究 8巻1号、2016年)は、2015年に神戸市の公立小学校の児童77,038名を対象に行われた調査で、小学校段階の出現率が男児0.11%、女児0.20%、全体で0.15%だったと紹介しています。単純に計算すると、1学年に600人いる学校で1人前後という規模です。ただし同じ論文は、日本には出現率について一般化できるデータは得られていない、とも書いています。数字の幅は大きく、確定した値ではありません。クラスに何人もいる状態ではないからこそ、学校の側にも経験が蓄積されにくく、対応が学校任せになりやすいという事情があります。
なお、高校生年代に限った国内の出現率は、公的な資料では確認できませんでした。
誤解されやすいのは「無視している」「反抗的」。実際は、話したいのに声が出ていません
ここは高校選びの土台になるので、具体的に整理します。周囲の受け取り方と、本人の中で起きていることは、次のようにずれます。
| 周囲からの見え方 | 本人の中で起きていること | 学校で起きやすい結果 |
|---|---|---|
| 無視している・返事をしない | 声を出そうとしているが、のどや体がこわばって出てこない | 生活態度の評価が下がる |
| 反抗的・やる気がない | 指示は理解していて、やりたい気持ちがある | 指導の対象として扱われる |
| 勉強ができない | 授業内容は分かっていることが多い | 音読・発表・口頭試問で点が取れず、評定が実力より低く出る |
| 友達がいらないタイプ | 話しかけてほしい気持ちがあることも多い | 孤立し、登校そのものがつらくなる |
※表は、下に挙げた公的資料・学術論文の記述と、学校で実際に評価の対象になる場面を照らし合わせて整理したものです。個人差があります。
この「話せない」が学校生活全体に広がっていくことを示す調査があります。日本場面緘黙研究会の学術誌に載った高木潤野ほか「場面緘黙児が示す緘黙症状以外の行動の困難」(場面緘黙研究 1巻1号、2023年)は、インターネットで募集した幼児から中学生210名を対象に調べ、現在不登校(不登園)になっている割合が、幼児51名中4.1%、小学生120名中14.2%、中学生は39名中11名(28.2%)だったと報告しています。さらに、不安が高い群の中学生21名では11名(52.4%)でした。保護者の申し出による調査なので、場面緘黙のある子ども全体の割合ではありません。
学年が上がるほど割合が高くなっている点が目を引きます。ただしこの調査は同じ子どもを追いかけたものではなく、論文自身も不登校になる要因は明らかになっていないと書いています。因果までは分かりませんが、中学生で割合が高いことは確かです。中学生のお子さんが今つらそうなら、それは甘えでも段階が戻ったわけでもなく、同じ状況のお子さんが少なくないということです。
もう1つ、青年期以降の状況を調べた田中佑里恵「青年・成人の場面緘黙当事者・経験者における症状・治療・職業等の状況」(場面緘黙研究 3巻1号、2025年)では、13〜55歳の271名のうち診断・治療を受けた人は約2割と少なく、自分の状態に気づいたきっかけはインターネットで見たことが約6割だったと報告されています。約3〜4割に精神疾患の併存があり、その中では社交不安症・気分障害・自閉スペクトラム症が多かったとされています。相談につながらないまま大人になる人が多いことが、この数字から読み取れます。今その入り口に立っていること自体が、すでに1つの前進です。

制度の中に、場面緘黙は「選択性かん黙」という名前で書かれています
「うちの子は診断がついていないから、学校に配慮をお願いできないのでは」と考える方が多いのですが、制度の書かれ方を見ると、そうではありません。
文部科学省の通知「障害のある児童生徒等に対する早期からの一貫した支援について」(25文科初第756号・平成25年10月4日)は、特別支援学級と通級による指導の対象を、障害の種類ごとに定義しています。場面緘黙が関係するのは「情緒障害者」です。
| 制度 | 通知に書かれている定義 |
|---|---|
| 通級による指導(情緒障害者) | 主として心理的な要因による選択性かん黙等があるもので、通常の学級での学習におおむね参加でき、一部特別な指導を必要とする程度のもの |
| 特別支援学級(自閉症・情緒障害者のうち情緒障害) | 主として心理的な要因による選択性かん黙等があるもので、社会生活への適応が困難である程度のもの |
この通知は、対象かどうかの判断について、医学的な診断の有無のみにとらわれることのないようにし、教育学・医学・心理学などの観点から総合的に判断することを求めています。診断書がないと何も始まらない、という制度設計にはなっていません。
そして通級による指導は、いまは高校でも受けられます。学校教育法施行規則第140条は、小学校・中学校・義務教育学校・高等学校・中等教育学校において、言語障害者、自閉症者、情緒障害者、弱視者、難聴者、学習障害者、注意欠陥多動性障害者などのうち特別の指導が必要な生徒を教育する場合に、特別の教育課程によることができると定めています。高等学校がこの条文に入ったのは、平成28年12月9日公布の省令(平成28年文部科学省令第34号)と告示(平成28年文部科学省告示第176号)によるもので、施行は平成30年(2018年)4月1日です(文部科学省 学校教育法施行規則の一部を改正する省令等の公布について(通知))。
この通知には、高校の通級で修得した単位を年間7単位を超えない範囲で、卒業に必要な単位数に加えることができるという規定も書かれています。つまり高校の通級は、授業を削って受けるおまけではなく、卒業単位として数えられる指導です。
ただし、通級を実際に置いているかどうかは学校ごとに違います。志望校に高校の通級があるかどうかは、都道府県教育委員会か学校に直接確かめる必要があります。全国の高校で情緒障害を理由に通級を受けている生徒が何人いるかは、文部科学省の令和5年度通級による指導実施状況調査(令和7年7月15日公表)の公開資料からは数字を読み取れなかったため、この記事には書きません。
配慮をお願いするのは、わがままではありません。2024年4月から私立学校にも法律上の義務があります
「先生にお願いしていいものか分からない」という保護者の方に、いちばん伝えたい制度がこれです。
障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号)は、第7条第2項で行政機関等について、第8条第2項で事業者について、ほぼ同じ文章でこう定めています。障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をしなければならない、と。
この「事業者」の側が、以前は努力義務でした。改正法の施行により、2024年(令和6年)4月1日から、事業者にも合理的配慮の提供が法律上の義務になりました(内閣府 リーフレット「令和6年4月1日から合理的配慮の提供が義務化されました」)。私立高校・私立の通信制高校は、この事業者にあたります。公立でも私立でも、お願いすること自体は制度の想定内になったということです。
内閣府は、配慮の内容を一方的に要求するのではなく、本人・家族と学校が話し合って一緒に解決策を探ることを建設的対話と呼び(内閣府 リーフレット(PDF))、この進め方を勧めています。場面緘黙の場合は、この対話そのものが負担になりやすいので、次のように準備しておくと進めやすくなります。
- 口で伝えなくてよい形にする。お願いしたいことを紙やメールにまとめて、先に渡す。本人が書いた文章があると、教員に伝わりやすくなります。
- 「できないこと」ではなく「代わりにできる形」を書く。例:音読の代わりに録音した音声を提出する、発表の代わりに書いたものを提出する、出欠の返事は挙手やうなずきで行う、グループ活動は筆談やチャットで参加する。
- 評価への影響を確認する。その代替の方法で、成績や単位の認定がどう扱われるかを、その場で聞いておきます。ここを確かめないまま学年が進むと、評定だけが低く残ります。
- 相談した日と内容を残す。担任が替わったときに、一から説明し直さずに済みます。
学校が配慮を断る場合もあります。法律が求めているのは「負担が過重でない範囲」だからです。その場合でも、なぜ難しいのかを説明してもらい、別の形を一緒に探すところまでが建設的対話です。

高校入試では別室受検などを申請できます。動くのは願書より前です
ここは時期を外すと取り返しがつかないので、先に日程の話をします。
東京都教育委員会の「障害のある受検者に対する配慮」のページ(2025年10月2日更新)には、受けられる配慮の例が、障害等の内容ごとの表で挙げられています。場面緘黙という区分はありませんが、発達障害の欄に別室受検・検査時間の延長・問題用紙・解答用紙へのルビ振り・ICT機器の使用・記号選択式での受検が、聴覚関係の欄に面接等における筆談(メモ、ホワイトボードの使用など)が並んでいます。都のページは、実際の配慮は受検者の状況に応じて個別に決定するとしています。申請は所定の申請書で、在籍する中学校を通して志願先の都立高校へ事前に行うこととされ、都のページには申請時期は例年12月中旬頃と書かれています(直近の令和8年度入学者選抜は令和7年12月19日までの提出でした)。令和9年度(2027年春)入学者選抜の期日は、2026年9月時点ではまだ公表されていません。秋になったら都のページを確認してください。
千葉県教育委員会の特別配慮の申請のページ(令和9年度入学者選抜・令和8年9月18日更新)では、まず在籍する中学校等を通じて出願を検討している高等学校長に相談(事前相談)し、そのうえで志願者本人が所定の申請書で申請すること、申請は入学願書等の受付開始日の1週間前までとされています。
| 手順 | やること | 時期の目安 |
|---|---|---|
| 1. 学校に相談 | 在籍中学校の担任・進路担当に、配慮を申請したい旨を伝える | 中3の夏から秋 |
| 2. 事前相談 | 中学校を通じて、志望先の高校へ相談する | 秋(願書配布より前) |
| 3. 申請書の提出 | 所定の様式に、必要な配慮と理由を書いて提出する | 東京都は例年12月中旬頃/千葉県は願書受付開始日の1週間前まで |
| 4. 結果の連絡 | 認められた配慮の内容が伝えられる | 出願前後 |
都道府県によって様式も期日も違います。文部科学省も「高等学校入学者選抜における受検上の配慮に関する参考資料」(令和4年12月)を出して、本人・保護者の希望や障害の状態を踏まえた配慮を求めています。この資料には、選択性かん黙のある生徒に対して実際に行われた面接の配慮の例も載っています。面接の順番を1番目にする、普段使っているホワイトボードとマーカーでの書字による回答を認める、回答までの待ち時間を5分とする、「中学校時代に頑張ったこと」は質問しない、といった内容です。お住まいの都道府県の実施要項を、中学校の先生と一緒に開いて確かめてください。
面接のある高校を受ける場合、筆談での受け答えが認められるかどうかは、この事前相談で聞くべきことの筆頭です。通信制高校の出願でも、配慮の相談を受け付けている学校があります。作文と面接の準備の仕方は通信制高校 作文 面接の記事にまとめています。
※2026年9月時点の情報です。最新は公式でご確認ください。
通信制高校は「話す場面が少ない」進路ですが、ゼロにはなりません
ここが、この記事でいちばん正直に書きたいところです。
通信制高校の単位は、添削指導(レポート)・面接指導(スクーリング)・試験の3つで取ります。卒業の条件は、3年以上の在籍・74単位以上の修得・特別活動30単位時間以上です。このうちスクーリングは、学校へ行って先生から直接指導を受ける時間で、通信制であっても省くことはできません。「通信制=家から一歩も出ない」ではないということです。
ただし、スクーリングの中身は「全員の前で発表する」ばかりではありません。授業を聞く、実技を見る、レポートの分からないところを個別に質問する、といった形が中心です。話す量は、全日制の1日よりはるかに少なくなります。
文部科学省の「令和7年度 通信制高等学校実態調査」(2026年8月31日公表、2025年5月1日時点。通信制課程を置く高校323校が対象)には、この記事の読者に関係の深い数字が2つあります。
- 添削課題は出しているが、スクーリングに1日も来ていない生徒が8,097人(2.6%)。その理由として最も多く挙げられたのは「心身に関すること」(161校が回答)でした。
- 2025年度の入学者77,998人のうち、中学3年生のときに不登校だった生徒は44,461人(57.0%)。通信制高校に入る人の半分以上が、学校に行けなかった経験を持っています。
1つ目の数字は、裏を返すと「スクーリングに出られない生徒がいること」を学校も把握しているということです。相談できる余地があります。2つ目の数字は、教室に入れなかった経験が珍しくない場所だということです。全日制で感じていた「自分だけが違う」という感覚は、通信制ではかなり薄くなります。
スクーリングの回数や形は学校ごとに大きく違います。減らし方や相談の仕方は通信制高校 スクーリング 行きたくないの記事に詳しく書いています。不登校の状態から通信制で卒業できるのかについては通信制高校 不登校の記事をご覧ください。

通信制の入学者選抜は、9割の学校が面接。学力検査より面接のほうが多いのが実情です
場面緘黙のある受験生にとって、いちばんの山は学力検査ではなく面接です。そして通信制高校は、全日制より面接の比重が高い課程です。
同じ文部科学省の実態調査で、入学者選抜の方法(複数回答・323校中)は次のとおりでした。
| 選抜の方法 | 実施している学校数 | 323校に占める割合 |
|---|---|---|
| 面接 | 296校 | 91.6% |
| 調査書などの書類 | 230校 | 71.2% |
| 作文・小論文 | 154校 | 47.7% |
| 学力検査 | 91校 | 28.2% |
出典:文部科学省「令和7年度 通信制高等学校実態調査」(2026年8月31日公表・2025年5月1日時点。複数回答のため合計は100を超えます)
この数字を見て落ち込む必要はありません。面接の位置づけは学校ごとに違い、全体の傾向を示す公的な調査は確認できませんでした。だからこそ、その学校がどう扱うかを出願の前に聞いておく意味があります。出願前の相談会や個別相談で、次のことを聞いてみてください。
- 面接で声が出ないことがあると伝えたら、どう扱われますか。
- 筆談・メモ・保護者の同席は認められますか。
- 質問を先に紙で見せてもらうことはできますか。
- 本人が答えられないとき、不合格の理由になりますか。
この4つを聞いたときの返事の丁寧さが、そのまま入学後の対応の目安になります。答えをはぐらかす学校より、「こういう形なら対応できます」と具体的に返してくれる学校のほうが、入学後も相談しやすくなります。
課程ごとに「話さないといけない場面」の量を並べると、選びやすくなります
どの課程が向いているかは、通学日数ではなく話す場面の量で見ると判断しやすくなります。制度と実態調査の内容から整理しました。
| 課程・通い方 | 話す場面の多さ | 向きやすい状況 |
|---|---|---|
| 全日制 | 多い(毎日の授業・発表・班活動・出欠確認) | 特定の場では話せて、学校全体には慣れが出てきている |
| 定時制 | 中くらい(少人数だが毎日の対面がある) | 少人数なら声が出ることがある |
| 通信制(週1〜2日・集中型) | 少ない(スクーリングと試験のみ) | 登校の回数そのものを減らしたい |
| 通信制+オンラインのサポート校 | 少ない(日々はチャットなどで参加できる) | 一人で続ける自信がなく、人とのつながりは欲しい |
※表は制度と文部科学省の実態調査から見た一般的な傾向です。同じ通信制でも学校差があります。
ここで補っておきたいのは、話す場面を減らすことが目的化しないほうがよいということです。先ほどの青年・成人の調査では、無職の人が約1割と高い割合だったと報告されています。人と関わらないで済む環境をつくることだけを考えると、その先で選べる幅が狭くなることがあります。話さなくても参加できる形で、人とつながる経験を少しずつ積める場所を探すのが、遠回りに見えて近道です。
通信制高校とサポート校の役割の違いは通信制サポート校とはの記事で整理しています。

よくある誤解と落とし穴:「通信制なら誰とも話さずに卒業できる」ではありません
進路を急いで決めたあとに「思っていたのと違った」となりやすい点を、先に挙げておきます。
- 誤解1:通信制なら人と話さなくていい。スクーリングと試験があります。宿泊を伴う集中スクーリングを行う学校もあります。回数・日数・会場は学校ごとに違うので、出願前に確かめてください。
- 誤解2:入試は書類だけ。上の表のとおり、9割の学校が面接を行っています。学力検査より多いのが通信制です。
- 誤解3:診断書がないと配慮を頼めない。合理的配慮は、障害者差別解消法で「意思の表明があった場合」に求められるもので、診断書の提出は条件になっていません。文部科学省の通知も、通級による指導の対象かどうかの判断について、医学的な診断の有無のみにとらわれないよう求めています。文部科学省の受検上の配慮の参考資料には、情緒障害の診断を受けていない生徒に別室受検を認めた例も載っています。ただし、学校によって求める資料が違うので、何が必要かは相談時に聞いてください。
- 誤解4:入学してから相談すればいい。入試の配慮は申請の期日があり、過ぎると使えません。入学後の配慮も、学期が始まってからでは評価に間に合わないことがあります。
- 誤解5:話せるようになってから進路を考える。先ほどの調査では、学年が上がるほど不登校の割合が高くなっていました。状態が整うのを待つより、今の状態のままで通える形を探すほうが、結果的に本人の負担が軽くなります。
- 誤解6:オンラインなら全部解決する。画面越しでも、声を求められる場面があると緊張します。カメラ・マイクをオフのまま参加できるか、チャットでの参加が認められるかを、体験のときに確かめてください。
感覚の過敏さや対人の緊張が重なっている場合は、HSP 高校生の記事や、ADHD ASD 中学生 高校選びの記事のチェック項目も、学校見学のときに役立ちます。
学校見学で確かめる質問を、先に決めておきます
見学や説明会で「特に質問はありません」となってしまうと、あとから学校差が分からなくなります。場面緘黙のある生徒にとって差が出やすい項目を、質問の形にしました。紙に印刷して持っていき、保護者の方が読み上げる形でも構いません。
| 確かめること | 質問の形 | 回答で見るところ |
|---|---|---|
| 出欠の取り方 | 返事は声以外でもよいですか | うなずき・挙手・カードなど代替があるか |
| 発表・音読 | 音読や発表の代わりになる課題はありますか | 録音・提出物などの代替があり、評価に反映されるか |
| グループ活動 | 筆談やチャットでの参加は認められますか | 前例があるか、教員間で共有されるか |
| スクーリング | 体調や不安で出られない日の振り替えはありますか | 別日程・別会場・オンラインの扱い |
| 試験 | 別室での受験はできますか | 申請の方法と期限 |
| 相談の窓口 | 担任のほかに相談できる人はいますか | スクールカウンセラーの配置日、保護者からの相談の受け方 |
| 引き継ぎ | 配慮の内容は学年が変わっても引き継がれますか | 記録として残る仕組みがあるか |
この7つに具体的に答えられる学校は、場面緘黙に限らず、困りごとを抱えた生徒への対応が整っています。答えを比べるために、見学は2校以上行くことをお勧めします。
相談先は学校の中と外の両方にあります。医療の判断は主治医へ
家庭だけで抱えないための窓口を並べます。どれも無料か、公的な費用の範囲で使えるものです。
| 相談先 | どんなときに | つながり方 |
|---|---|---|
| 担任・特別支援教育コーディネーター | 授業や評価の配慮を相談したいとき | 在籍校に申し出る。学校ごとにコーディネーターが指名されています |
| スクールカウンセラー | 本人・保護者が気持ちの整理をしたいとき | 学校を通して予約する。配置の曜日は学校ごとに違います |
| 教育支援センター(適応指導教室) | 学校に行きづらい状態が続くとき | 市区町村の教育委員会が窓口 |
| 24時間子供SOSダイヤル(文部科学省) | 夜間や休日に、今つらいとき | 0120-0-78310(通話料無料・24時間) |
出典:文部科学省「24時間子供SOSダイヤル」周知のためのポスターについて(2026年9月確認)
あわせて、診断・治療・服薬の判断は、この記事では扱えません。場面緘黙は不安症のグループに位置づけられる状態で、医療機関では認知行動療法や薬物療法が行われることがあると、こころの情報サイトには書かれています。どの方法が本人に合うかは一人ひとり違います。気になることは、主治医・かかりつけ医や、児童精神科・心療内科・地域の精神保健福祉センターなど専門の相談機関にご相談ください。治るか治らないかを断定する書き方は、この記事ではしません。
なお、小学生・中学生のお子さんで、いま学校に行きづらい状態が続いている場合は、小中学生向けのオルタナティブスクールという選択肢もあります。NIJINアカデミーは、その1つです。文部科学省の令和6年度の調査では、小・中学校の不登校児童生徒数は約35万4千人、高等学校は約6万8千人と公表されています(文部科学省 令和6年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査・令和7年10月29日公表)。
選択肢の1つとしてのニジ高(正直な注意点)
ここで当校のことも書きます。合う・合わないがはっきり分かれるので、良いところと注意点の両方を並べます。
NIJIN高等学院(ニジ高)は、株式会社NIJINが運営するオンライン中心の通信制高校サポート校です。校長は星野達郎。場面緘黙のある生徒にとって関係が深いのは、次の点です。
- カメラ・マイクをオフにして、チャットだけで参加するところから始められます。心理的安全性を優先しているためです。
- 1クラス8人の少人数で、担任制です。顔と名前を覚えてもらうまでの時間が短く、同じ人に慣れていく形を取りやすくなります。
- メタバースの校舎で、担任や他の生徒と集まるクラス会議があります。教室に集まるのとは違う形なので、対面より緊張が下がることがあります。
- 授業はアーカイブで見られます。生活リズムに波があっても、あとから追いつけます。中学内容の学び直しにも対応しています。
- 発達特性や障害については、本人を変えるのではなく、学びの構造や環境を変えることで支援するという新しいアプローチを取っています。ただし、診断や服薬など医療の判断は主治医・専門機関にご相談ください。
- 途中入学(転入・編入)ができ、出願に費用はかかりません。生徒会・サークル・学園祭・企業とのコラボもあり、行事を企画する側にまわることもできます。
正直な注意点も書きます。
- ニジ高は高校ではありません。卒業資格は提携する通信制高校で取ります。
- 提携する通信制高校のスクーリングには、参加が必要です。ニジ高の中でのスクーリングはありません。スクーリングの形や日程は、個別相談会で詳しくご案内しています。
- 提携する通信制高校の宿泊を伴うスクーリングに、ニジ高のスタッフは付き添いません。ニジ高が行うのは、日程の調整と準備の支援です。不安が強いお子さんの場合、ここは入学前に家族で話しておいたほうがよい点です。
- 費用は、提携する通信制高校の分とニジ高の分の両方がかかります。そしてニジ高の分に就学支援金は使えません(就学支援金の対象は高校の授業料です)。金額は学費のご案内のページをご覧ください。
- 全国にNIJINアカデミー(ニジ高はその高等部)のリアルの教室があり、相談のうえで通うこともできますが、通学が前提の学校ではありません。
合わないと思われた場合は、他の通信制高校やサポート校を見ていただいて構いません。この記事の目的は、当校を選んでもらうことではなく、話せないまま進路を選べると知ってもらうことです。
迷ったときの進め方(3ステップ)
やることが多く見えますが、順番は3つだけです。
ステップ1:今の状態を、紙に書き出す(今週)。誰となら話せるか、どの場面で声が出なくなるか、家ではどうか。本人が書ける場合は本人が、難しければ保護者の方が代わりに書きます。これが、学校に配慮をお願いするときの材料になります。診断名は無くて構いません。
ステップ2:学校の中の相談先に、1人つくる(今月)。担任でも、特別支援教育コーディネーターでも、スクールカウンセラーでもかまいません。口で説明するのが負担なら、ステップ1で書いた紙を渡すだけでも始まります。中3であれば、ここで入試の配慮の申請についても聞いておきます。
ステップ3:学校を2校以上見に行く(2〜3か月のうちに)。上の質問表を持って、通信制高校とサポート校を比べます。本人が行けない場合は、保護者の方だけで参加できる学校がほとんどです。本人が同席できなくても、話は進められます。
この3つを、決めた順に進める必要はありません。できるところからで大丈夫です。期日があるのは入試の配慮の申請だけなので、そこだけカレンダーに書いておいてください。


声が出なくても大丈夫です。話さないまま進路を相談できます
ニジ高はオンライン中心の通信制高校サポート校です。カメラ・マイクをオフにして、チャットだけで参加するところから始められます。体験説明会・個別相談はオンラインで、保護者の方だけのご参加も大丈夫です。ただし学院は高校ではなく、卒業資格は提携する通信制高校で取り、その高校のスクーリングには参加が必要です。
よくある質問
Q. 診断名がついていなくても、学校に配慮をお願いできますか。
A. お願いすること自体はできます。文部科学省の通知(25文科初第756号)は、通級による指導の対象かどうかの判断について、医学的な診断の有無のみにとらわれることのないようにし、総合的に判断することを求めています。ただし、学校や都道府県によって求められる資料が違うことがあります。何を用意すればよいかを、相談の最初に聞いておくと進めやすくなります。
Q. 通信制高校なら、面接を受けずに入れますか。
A. 面接を行っていない学校もありますが、多数派ではありません。文部科学省の令和7年度通信制高等学校実態調査では、入学者選抜で面接を行う学校が323校中296校(91.6%)でした。面接がある場合でも、筆談や保護者の同席などの配慮を相談できる学校があります。出願の前に、その学校に直接確かめてください。
Q. スクーリングにどうしても行けなかったら、卒業できませんか。
A. 面接指導と試験は単位の修得に必要なので、まったく受けないまま卒業することはできません。ただし、同じ調査では、添削課題は出しているがスクーリングに1日も来ていない生徒が8,097人(2.6%)おり、理由として最も多く挙げられたのは「心身に関すること」でした。別日程・別会場・回数の調整など、学校ごとに用意している方法があります。入学前の相談で、その学校でできる調整の範囲を聞いておくことをお勧めします。
Q. 話せないまま高校に入って、大学や就職はどうなりますか。
A. 通信制高校を卒業すれば、最終学歴は全日制と同じ高等学校卒業です。大学・短大・専門学校の受験もできます。一方で、青年・成人271名を対象にした2025年の調査では、無職の人が約1割と高い割合だったとも報告されています。高校の3年間で、話さなくても参加できる形の経験を少しずつ積めるかどうかが、その先に効いてきます。学校を選ぶときは、卒業しやすさだけでなく、人と関わる機会の作り方も見てみてください。
Q. 本人が学校見学に行けません。保護者だけで相談してもよいですか。
A. 構いません。通信制高校やサポート校の相談会は、保護者の方だけの参加を受け付けているところがほとんどです。ニジ高の体験説明会・個別相談もオンラインで、保護者の方だけでご参加いただけます。本人が同席できるようになってから、もう一度参加していただいても大丈夫です。
声が出ない日があっても、あなたの進路は続いています
学校で話せないことを、何年も「自分のせいだ」と思ってきたかもしれません。けれど、国の制度の中にはその名前が書かれていて、配慮を求めることは法律で裏づけられた権利になっています。話せないことは、あなたの努力不足ではありません。
通信制高校は、話す場面をゼロにしてくれる場所ではありません。それでも、話す量を自分で調整できて、同じような経験をしてきた同級生が半分以上いる場所です。その中で、書くことで伝わる、チャットなら参加できる、慣れた人となら声が出る――そういう小さな形が積み上がっていくことがあります。
今日できることは、紙に1行書くことだけで十分です。急いで決めなくて大丈夫です。進路は、声が出るようになってから始まるものではありません。今のままのあなたで、もう始められます。
声が出なくても大丈夫です。書いて伝える形で相談できます
全国どこからでもカメラ・マイクはオフでOK転入・編入は随時受付
通信制高校サポート校 NIJIN高等学院(ニジ高)/出願費用は無料です。無理に勧めることはありません。

