お子さんが学校に通えなくなり、中学3年生を迎えたとき、保護者の方が最も強く感じるのは、「高校に進学できるのだろうか」という不安ではないでしょうか。内申点や出席日数、受験への影響など、考えるほど心配が膨らみ、夜も眠れないという声も少なくありません。
この記事では、不登校の子どもの高校進学について、保護者の方が考えておきたいことを整理します。進学先の種類、選ぶときの視点、時期ごとの動き方、よくある勘違い、親自身の心の持ち方まで、公的な情報をもとにお伝えします。
結論:不登校の子どもの高校進学の早見
- 不登校でも高校進学は可能で、全日制・定時制・通信制など複数の道があります。
- 最初にやることは、本人の気持ちを聴き、「どんな環境なら通えそうか」を言葉にすることです。
- 学校ごとに選考方法が異なるため、欠席の扱いは個別に確認が必要です。
- 説明会や個別相談で、雰囲気とサポート体制を確かめると、入学後のギャップが減ります。
- 親が一人で抱え込まず、相談先を複数持つことが、本人の安心にもつながります。
なぜ「親が考えておきたいこと」が大切なのか
高校選びは、本来、本人が主役です。しかし不登校の状態にあるお子さんは、気力やエネルギーが落ちていて、自分から情報を集めたり、将来を考えたりすることが難しい時期があります。その間、保護者の方が情報を集め、選択肢を整理して、本人が「選べる状態」をつくることが大切になります。
ここで注意したいのは、親が「正解」を決めて、先回りしすぎないことです。親が選んだ学校に本人が納得していないと、入学後に「自分で選んでいない」という気持ちが残り、通い続けにくくなる可能性があります。情報を整えるのは親、決めるのは本人。この役割分担を意識すると、親子の関係も保ちやすくなります。
不登校の児童生徒は
過去最多の水準が続いています
出典:文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」
不登校の子どもが進学しやすい、高校の主な種類
不登校を経験した子どもが進学する高校には、いくつかの種類があります。それぞれ特徴が異なるため、本人の状態や希望に合わせて検討してください。
高校の種類ごとの
特徴と確認したい点
| 種類 | 特徴 | 確認したい点 |
|---|---|---|
| 全日制 | 毎日通学。大学進学の道筋が明確 | 出席・内申の扱い、入学後の支援 |
| 定時制 | 夜間・昼間など。少人数が多い | 通学時間帯と卒業までの年数 |
| 通信制 | 自分のペースで学ぶ。登校頻度は学校次第 | 自己管理とサポート体制 |
| サポート校併用 | 通信制の学習・生活面を民間が補う | 費用と提供される支援の範囲 |
※学校ごとに内容は異なります。必ず募集要項と説明会で確認してください。
全日制高校:条件が整えば、選択肢になる
不登校だったとしても、全日制を目指す人は多くいます。ただし、公立の一般入試では内申点や出席状況が選考に影響する場合があるため、志望校の選考方法を早めに確認する必要があります。入学後、再び通えなくなるリスクを考え、学校の支援体制(別室登校、相談室など)も併せて見ておくと安心です。
定時制高校:少人数でゆっくり学べる
定時制は、夜間や昼間など、柔軟な時間帯で学べる高校です。クラスの人数が少なく、先生との距離が近い傾向があります。卒業までの年数は3年または4年が一般的で、学校ごとに異なります。
通信制高校:自分のペースで学べる選択肢
通信制高校は、レポートの提出、スクーリング、単位認定試験を通じて単位を修得します。登校の頻度や形態(通学・オンライン)は学校によって大きく異なり、毎日通う必要はありません。卒業には、一般に3年以上の在籍、74単位以上の修得、特別活動への参加が求められます。不登校を経験した生徒が多く学んでおり、サポート体制を整えている学校も増えています。
進学先を選ぶときの5つの視点
不登校の子どもの高校選びでは、偏差値や知名度より、「入学後に安心して通い続けられるか」が最も大切になります。次の5つの視点で、候補の学校を見てみてください。
視点1:通う負担が、本人にとって無理のない範囲か
通学時間、登校日数、朝の始業時間、教室の人数。こうした条件は、本人の負担に直結します。毎日通うことが負担なら、登校日数を調整できる通信制や、オンライン中心の学校が候補になります。反対に、規則正しい生活で気持ちが安定する子もいるため、本人の特性を丁寧に見極めましょう。
視点2:つまずいたときに、支えてくれる人がいるか
入学後、再び調子を崩すことは珍しくありません。そのとき、担任やスクールカウンセラー、相談役の先生が気づいて声をかけてくれるか、別室や個別対応の仕組みがあるかを確認しましょう。「困ったら相談してください」だけでなく、先に声をかけてくれる体制があるかが目安です。
視点3:同じような経験をした仲間がいるか
不登校を経験した生徒が多く在籍している学校では、気持ちを分かり合える仲間に出会いやすい傾向があります。ただし、一人で落ち着いて過ごしたい子もいるため、関わりの距離感を選べるかどうかも確認してください。
視点4:学び直しや進路の支援があるか
学習の遅れが気になる場合は、基礎から学び直せる仕組みがあるかが大切です。また、大学進学や就職を視野に入れる場合は、進路相談や受験対策の体制を確認しましょう。
視点5:費用が、家計に無理のない範囲か
学校の種類やコースによって、費用は大きく異なります。高等学校等就学支援金は、世帯の状況などの条件により受けられることがあり、私立通信制では令和8年度から支給上限額が月額28,100円(年額337,200円)とされています。自治体の上乗せ制度もあるため、実際の負担額は各校と自治体の窓口で確認してください。
時期ごとの動き方の目安
中学生のうちから進める
高校選びの流れ
※入試日程は学校により異なります。必ず最新の募集要項をご確認ください。
不登校の状態にある場合、本人の気持ちに余裕がないことも多いため、無理にスケジュールどおりに進める必要はありません。通信制高校などは、年間を通じて入学や転入を受け付けている学校もあります。「今年の春に間に合わなかった」と焦る必要はなく、本人の状態が整ったタイミングで動いても、選択肢はあります。
よくある勘違い:不登校と高校進学について
勘違い①「不登校だと、高校には行けない」
不登校の経験があっても、高校に進学している人は数多くいます。全日制・定時制・通信制など複数の道があり、本人に合う環境を選ぶことは十分可能です。
勘違い②「内申点が低いと、もう選べない」
公立の一般入試では内申点が影響する場合がありますが、面接や作文、学力検査で評価する学校や、通信制のように出席状況を問わない学校もあります。選考方法は学校ごとに異なるため、一律に判断しないことが大切です。
勘違い③「親がしっかり決めてあげないといけない」
親が決めきるより、本人が「ここなら」と思える学校を選ぶほうが、入学後の継続につながりやすいと考えられます。親は、情報を整え、選択肢を広げ、本人の気持ちを聴く役割を意識してみてください。
学校との関わり:中学校の先生に伝えておきたいこと
高校進学に向けて、中学校の担任や進路担当の先生との連携は欠かせません。不登校の状態でも、進路について相談できる窓口は用意されています。先生に伝えておきたいのは、本人の現在の状態(登校できる日数、通える場所、体調の波など)、本人や家庭の希望、不安に思っている点の3つです。
先生によって、不登校の子どもの進路についての知識や経験は異なります。もし相談してもあまり情報が得られないと感じたら、学年主任や進路指導の先生、スクールカウンセラー、自治体の教育相談窓口など、他の窓口にも相談してみてください。調査書(内申書)の扱いや、出席として認められる学習の形(別室登校、フリースクール、オンライン学習など)についても、早めに確認しておくと安心です。
フリースクールやオンライン学習の出席扱い
学校外の施設やオンライン学習を利用している場合、一定の条件のもとで、学校の出席として扱われることがあります。扱いは学校長の判断によるため、利用している場合は、中学校に相談して確認しましょう。出席として認められると、調査書の記載にも影響する場合があります。
入学後の生活をイメージするために
学校を選ぶとき、入学後の1日や1週間の過ごし方を具体的にイメージしておくと、安心につながります。説明会や個別相談では、次のような質問をしてみてください。
- 1日のスケジュールは、どのようになっていますか。
- 調子が悪い日は、どのように過ごすことができますか。
- 困ったことがあったとき、誰にどのように相談できますか。
- 不登校を経験した生徒は、どのくらい在籍していますか。
- 卒業後の進路には、どのようなものがありますか。
答えを聞くときは、お子さん本人の反応も見ておきましょう。説明を聞いて表情が和らいだか、質問が出たか、「ここなら行けそう」と感じたか。数字や資料にはない、本人の感覚は、学校選びの重要な手がかりになります。
進学に向けて、家庭でできる関わり方
高校進学を考える時期は、本人にとっても不安が大きく、将来の話題に触れること自体が負担になる場合があります。保護者の方が関わるときは、次のような姿勢を意識してみてください。
「進路の話」を、日常の中に少しずつ混ぜる
「どうするの?」と正面から聞くと、プレッシャーになってしまうことがあります。食事の時間や散歩の途中など、リラックスしているときに、「こんな学校もあるらしいよ」と、情報として軽く伝える程度にとどめると、本人も受け取りやすくなります。反応が薄くても、気にしすぎないでください。聞いていないようで、ちゃんと聞いていることも多いものです。
本人の「やってみたいこと」を拾う
大きな夢や目標でなくて構いません。「ゲームが好き」「絵を描くのが好き」「動物が好き」など、日常の小さな関心が、学びや進路のヒントになります。好きなことを否定せず、「面白そうだね」と関心を示すことで、本人は自分の気持ちを話しやすくなります。
見学や説明会は、「本人が行ける形」で
学校見学や説明会は、本人の負担にならない形を選びましょう。まず保護者の方だけで参加し、雰囲気を確かめてから本人に伝える方法もあります。オンライン説明会や個別相談を実施している学校も多く、自宅から気軽に参加できます。本人の「行ってみてもいいかも」という気持ちが出てきたら、一緒に参加してみましょう。
高校卒業後を見据えて:進路の選択肢は広がっている
不登校を経験した場合、「その後の進路はどうなるのか」という不安も大きいでしょう。高校を卒業すれば、大学・短大・専門学校への進学、就職、起業など、さまざまな進路を選べます。通信制高校の卒業生が進学や就職を実現している例は数多くあり、環境を変えて自分のペースで学んだ経験が、その後の力になるケースも少なくありません。
大学入試では、一般選抜は学力試験の得点が中心になる大学が多く、総合型選抜や学校推薦型選抜では、活動実績や志望理由、評定などが評価されます。不登校の期間に何を考え、どう立ち直ったかを自分の言葉で語れる人を評価する大学もあります。令和7年度の通信制の現役大学進学率は約22%と報告されており、全日制・定時制と差はありますが、進学を前提としない生徒も含まれる数字であることに注意が必要です。
就職の場面でも、無理に過去を隠さず、そこから何を学んだかを誠実に伝えることで、評価される場合があります。大切なのは、高校の3年間を、本人が自分らしく過ごし、次の一歩につなげられる環境で過ごすことです。
学び直しの機会は、後からもある
高校段階で十分に学べなかったとしても、学び直しの機会はあとからいくつも用意されています。通信制高校での単位修得、高等学校卒業程度認定試験、大学の編入、専門学校での資格取得、オンライン学習など、道は一つではありません。今の状態が将来のすべてを決めるわけではない、という事実を、ぜひ知っておいてください。
よくある質問への考え方:迷ったときの判断軸
高校選びで迷ったときは、次の3つの問いに立ち返ってみてください。1つ目は「本人が安心できるか」。どれほど条件が良くても、本人が不安を強く感じる環境では、通い続けるのが難しくなります。2つ目は「無理なく続けられるか」。通学時間や授業の形式、費用など、現実的な条件で無理がないかを確かめます。3つ目は「その先につながるか」。卒業後の進学や就職、学び直しの機会につながる環境かどうかを見ます。
この3つがおおむね満たされていれば、完璧でなくても、十分に良い選択だと考えられます。迷ったときは、複数の相談先に話してみて、冷静に整理してみてください。
進路は、一度決めたら変えられないものではありません。合わなければ見直す選択肢があるという前提で、まずは一歩を踏み出してみることも、大切な判断です。
兄弟姉妹や祖父母との関わり方
家族の中に不登校のお子さんがいると、きょうだいや祖父母にも影響が及びます。きょうだいが「自分は我慢しなければ」と感じてしまうことがあるため、それぞれの気持ちを聴く時間を意識的に持ちましょう。祖父母や親戚には、状況と家族の方針を簡潔に伝え、「そっと見守ってほしい」とお願いしておくと、本人への余計なプレッシャーを減らせます。家族全体が同じ方向を向けるよう、共有の場を設けることも大切です。
進路の話し合いは、家族みんなで結論を押し付けるのではなく、本人の気持ちを中心に進めてください。
最後に、「休む」ことの意味についても触れておきます。高校進学を意識する時期は、頑張らなければという気持ちが強くなりがちですが、心身のエネルギーが戻っていない状態で無理に進めると、入学後に反動が出ることもあります。進学の準備と並行して、本人が好きなことに取り組む時間、何もせずゆっくり過ごす時間を、意識して確保してあげてください。
また、受験や手続きの期限に追われて保護者の方が焦ると、その緊張は本人にも伝わります。期限があるものは早めに確認しつつ、本人の状態を最優先にする、というバランスを心がけましょう。必要に応じて、学校や相談機関の力を借りながら、一つずつ進めていけば大丈夫です。
保護者の方へ:親自身の気持ちを大切に
お子さんが不登校になると、保護者の方は「自分の育て方が悪かったのでは」「周りの子と比べて遅れているのでは」と、自分を責めてしまいがちです。しかし、不登校は特定の誰かのせいで起こるものではなく、さまざまな要因が重なって起こるとされています。まず、保護者の方自身が、自分を責めすぎないことが大切です。
親が疲れ切ってしまうと、お子さんにもその空気が伝わります。話を聞いてくれる家族や友人、学校のスクールカウンセラー、自治体の教育相談窓口、親の会など、保護者の方自身が頼れる場所を持つことも、お子さんを支えるうえで重要です。
気持ちが追い詰められていると感じたときは、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)や、24時間子供SOSダイヤル(0120-0-78310)などの相談窓口も利用できます。
NIJIN高等学院でも、不登校を経験したお子さんと保護者の方向けに、オンラインでの学校説明会・個別相談を随時行っています。「まだ決めていない」という段階でも、保護者の方だけでも参加できますので、お気軽にご相談ください。
高校進学後の「見通し」を持っておく
進学先が決まったあとも、環境の変化によって、再び疲れが出ることがあります。入学直後は特に、緊張や慣れない環境で、エネルギーを消耗しやすい時期です。最初から完璧を求めず、「まずは1週間通えたら十分」くらいの気持ちで、小さな目標から始めてみてください。
また、入学前に、学校の先生に本人の状況や配慮してほしい点を伝えておくと、入学後の対応がスムーズになります。無理をしすぎて再び通えなくなる前に、休む選択や、通信制への転入などの選択肢があることも、頭の片隅に置いておくと、気持ちに余裕が生まれます。
よくある質問
進学できます。全日制・定時制・通信制など複数の進路があり、学校ごとに入学の選考方法は異なります。中学時代の欠席状況は、学校によって扱いが違うため、募集要項や説明会で確認してください。
公立高校の一般入試では内申点や出席の扱いが影響する場合があります。一方、通信制や私立の一部では、面接や作文を重視し、欠席を考慮して選考する学校もあります。学校ごとの確認が大切です。
本人の気持ちを聴き、「どんな環境なら通えそうか」を言葉にすることです。そのうえで、全日制・定時制・通信制などの特徴を整理し、説明会や相談会で確かめてください。
焦りは自然な気持ちです。一人で抱え込まず、学校のスクールカウンセラー、自治体の相談窓口、学校の個別相談などを活用し、気持ちを整理する時間を持ってください。
休学、転学、通信制への転入などの選択肢があります。学校の規定により扱いが異なるため、早めに学校へ確認し、本人に合う形を一緒に検討してください。
世帯の状況などの条件により、高等学校等就学支援金が受けられる場合があります。私立通信制では、令和8年度から支給上限額が月額28,100円(年額337,200円)とされています。
まとめ
- 不登校でも高校進学は可能で、全日制・定時制・通信制など複数の道があります。
- 最初に大切なのは、本人の気持ちを聴き、「通えそうな環境」を一緒に言葉にすることです。
- 親が焦りを一人で抱え込まず、相談先と情報を集めながら、本人のペースで決めましょう。
高校選びは、将来を決める一度きりの勝負ではありません。本人が安心して一歩を踏み出せる環境を、一緒に探していきましょう。
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執筆者:ニジ高編集部 2026年10月8日更新
参考文献
- 文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」
- 文部科学省「学校基本調査」(令和7年度)
- 文部科学省「高等学校等就学支援金制度」
- 文部科学省「高等学校通信教育について」



