「発達障害と言われるほどではないけれど、なんだかずっと生きづらい」「診断はついていないのに、学校生活がとにかくしんどい」。そんな思いを抱えている高校生と、そばで見ているご家族は少なくありません。
先に結論を書きます。「発達障害グレーゾーン」は医学的な診断名ではなく、発達障害の特性があって困りごとも出ているのに、診断基準には当てはまらない(またはまだ受診していない)状態を指す通称です。高校生では、忘れ物や提出物の遅れ、人間関係のずれ、特定の科目だけ極端にできないといった形で表に出やすく、本人は「努力が足りない」と自分を責めがちです。そして、診断がなくても、学校に配慮を相談することはできます。
この記事は、文部科学省の「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査」(令和4年)と「通級による指導実施状況調査」(令和5年度)、発達障害者支援法・障害者差別解消法(e-Gov)、文部科学省の対応指針、国立障害者リハビリテーションセンターと国立精神・神経医療研究センターの解説を実際に開いて確認した内容で書いています。医療的な判断はできないため、特徴は「当てはまったら発達障害」というチェックリストではなく、困りごとを言葉にするための手がかりとして読んでください。
結論:発達障害グレーゾーンの高校生の特徴と支え方の早見
- 「グレーゾーン」は診断名ではありません。ASD(自閉スペクトラム症)・ADHD(注意欠如・多動症)・LD(学習障害)の特性がありながら、診断には至っていない状態を広く指す言葉です。
- 高校生の特徴は、対人関係(空気・暗黙のルール)、注意と段取り(忘れ物・提出物・遅刻)、読み書き計算(特定の科目だけ極端に苦手)の3つの領域に出やすく、いくつかが重なることもあります。
- 文部科学省の調査では、公立高校の通常の学級で、担任などから「学習面又は行動面で著しい困難を示す」とされた生徒は推定2.2%。さらに国は、基準の手前にも支援が必要な生徒がいると書いています。
- 困難があるとされた高校生のうち、校内委員会で支援が必要と判断されていたのは推定20.3%。気づかれにくいことが、グレーゾーンのいちばんのつらさです。
- 合理的配慮は、障害者手帳を持っている人に限られません。公立高校も私立高校も(私立は2024年4月から)法律上の義務があり、本人が伝えにくいときは家族が補佐して伝えることもできます。
- 今の学校の環境が合わないときは、通信制高校への転入も選択肢です。通信制高校の2025年度入学者の57.0%は、中学3年のときに不登校でした。
- 家から少しずつ学びたい場合は、オンライン中心の通信制高校サポート校(NIJIN高等学院など)を使う方法もあります。
「グレーゾーン」は診断名ではなく、「診断がつくほどではない困りごと」を指す通称です
「グレーゾーン」という言葉は、病院の診断書に書かれる名前ではありません。一般に、発達障害の特性がいくつか見られ、そのせいで生活や学校で困りごとが出ているけれど、医師の診断基準をすべては満たさない状態、あるいはまだ受診していない状態を指して使われています。
そもそも発達障害は、発達障害者支援法第2条で「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるもの」と定義されています。同じ条文は、発達障害のある人のうち「発達障害及び社会的障壁により日常生活又は社会生活に制限を受けるもの」を「発達障害者」と呼んでいます。困りごとは、本人の特性だけでなく、周りの環境との組み合わせで生まれるという考え方です。
国立障害者リハビリテーションセンターの発達障害情報・支援センターも、障害ごとの特徴は「少しずつ重なり合っている場合も多い」ため種類を明確に分けて診断するのは難しいこと、年齢や環境で目立つ症状が変わるため、診断された時期によって診断名が異なることもあることを説明しています。白か黒かで分けにくいからこそ、「グレー」という言葉が生まれたと考えると分かりやすいと思います。
出典:発達障害者支援法 第2条(e-Gov)/発達障害情報・支援センター「発達障害とは」(2026年9月確認)
「グレーゾーン」と呼ばれる状態には、実際にはいくつかの違う状況が混ざっています。自分がどれに近いかで、次にできることが変わります。
| 今の状況 | よくある言われ方 | 次にできること |
|---|---|---|
| まだ受診や相談をしていない | 「そういう傾向があるかも」 | 学校の相談窓口や発達障害者支援センターに、困りごとを話してみる |
| 受診したが、診断には至らなかった | 「傾向はあるが診断はつかない」 | 検査結果や医師の説明を、学校での配慮の相談に使う |
| 高校生になってから困りごとが増えた | 「小中学校では目立たなかった」 | 困る場面を記録して、環境の調整から試す |
| 診断がついている | (グレーゾーンではない) | 通級や合理的配慮を、診断書を添えて相談する |
どの状況でも、「診断がつかない=困っていない」ではありません。困りごとがあるという事実のほうを大切にしてください。

高校生の特徴は3つの領域に出やすく、中学までより「見えにくく」なることがあります
国立精神・神経医療研究センターの「こころの情報サイト」と厚生労働省の資料では、代表的な発達障害の特性を次のように説明しています。高校生活に置きかえると、どんな場面で出やすいかも並べました。これらは傾向の例で、当てはまる数で何かが決まるものではありません。
| 特性の傾向 | 公的機関の説明(要旨) | 高校で出やすい場面 |
|---|---|---|
| ASD(自閉スペクトラム症)の傾向 | やりとりや気持ちの読み取りが苦手、強い関心・こだわり、感覚の過敏 | グループ活動での役割分担、冗談や遠回しな指示、急な時間割変更、にぎやかな教室 |
| ADHD(注意欠如・多動症)の傾向 | 落ち着きのなさ、待てない、注意が続きにくい | 提出物・課題の締め日、忘れ物、遅刻、長い授業、計画的な試験勉強 |
| LD(学習障害)の傾向 | 知的発達に遅れはないのに、読む・書く・計算するなど特定の学習だけが極端に苦手 | 板書を写す、長文読解、英単語の書き取り、数学の計算ミス |
出典:国立精神・神経医療研究センター こころの情報サイト「発達障害(神経発達症)」/厚生労働省「発達障害の特性(代表例)」(2026年9月確認)
ASDの傾向がある高校生によく見られること
- 暗黙のルールや「空気を読む」ことが苦手で、悪気なく言った一言で関係がこじれる
- 冗談や比喩を言葉どおりに受け取ってしまう
- 予定の急な変更に強い不安を感じる。見通しが立っているときは、きっちり取り組める
- 音・光・におい・人の多さなどに疲れやすい
- 好きな分野には深い知識があり、周りが驚くほど集中できる
国立精神・神経医療研究センターは、成長して「微妙な対人スキルを求められることが増え」る時期に、困りごとが目立ってくることがあると説明しています。高校の人間関係は、中学よりも言葉にされないルールが増えます。小中学校では何とかなっていた人が、高校で急につらくなるのはこのためかもしれません。
ADHDの傾向がある高校生によく見られること
- 提出物・課題の出し忘れ、忘れ物、遅刻が重なる
- やる気はあるのに、計画を立てて進めるのが難しい
- 興味のあることには時間を忘れて集中する(過集中)
- 思ったことをすぐ口にしてしまい、あとで後悔する
- 気持ちの切り替えやコントロールが難しい場面がある
発達障害情報・支援センターは、多動や不注意が目立つのは学齢期で、思春期以降は目立たなくなるともいわれていると書いています。一方で国立精神・神経医療研究センターは、計画的に物事を進めにくい、感情のコントロールが難しいといった面が続く場合があると説明しています。「落ち着きがない子」ではなくなっても、高校では自己管理の場面が増えるため、困りごとの形が変わって続くことがあります。
LDの傾向がある高校生によく見られること
- 話したり理解したりはできるのに、読むのが極端に遅い、または読み間違いが多い
- 板書を写すのに人の何倍も時間がかかる
- 計算や数字の扱いだけが、努力しても身につかない
- 得意な科目と苦手な科目の差がとても大きい
それぞれの特性をもう少し詳しく知りたい場合は、ASD 高校生 特徴、ADHD 高校生 特徴、学習障害 高校の記事で個別にまとめています。
国の調査では、高校の通常学級で「著しい困難」とされた生徒は2.2%。基準の手前にも生徒がいます
文部科学省は令和4年1〜2月、全国の公立小・中・高校の通常の学級を対象に、担任などが質問に答える形で「知的発達に遅れはないものの学習面又は行動面で著しい困難を示す」児童生徒の割合を推計しました(標本は約8万8千人、回答は7万4,919人)。結果は次のとおりです。
| 著しい困難を示すとされた割合 | 小学校・中学校 | 高等学校 |
|---|---|---|
| 学習面又は行動面 | 8.8% | 2.2% |
| 学習面(聞く・話す・読む・書く・計算する・推論する) | 6.5% | 1.3% |
| 「不注意」又は「多動性-衝動性」 | 4.0% | 1.0% |
| 「対人関係やこだわり等」 | 1.7% | 0.5% |
出典:文部科学省「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果について」(令和4年12月13日)(2026年9月確認)
読むときに大事な注意が3つあります。
- 医師の診断ではありません。文部科学省自身が、この結果は「発達障害のある児童生徒数の割合を示すものではなく、特別な教育的支援を必要とする児童生徒数の割合を示すもの」と明記しています。
- 高校は、公立の全日制・定時制の1〜3年次だけが対象です。通信制高校や私立高校は含まれていません。
- 高校の割合が小中より低い理由について、文部科学省は入学者選抜があることや、課程・学科が多様で様々な背景の生徒に対応できていることが関係していると考えられるとし、小中学校と高校は切り分けて考える必要があるとしています。
そして、グレーゾーンを考えるうえでいちばん大切なのが次の一文です。報告書は、点数の分布を見ると「基準には達していないが、基準近くに分布している児童生徒も一定いる」とし、基準に当てはまった子以外にも特別な教育的支援を必要としている子がいることを念頭に置く必要がある、と書いています。国の調査の側からも、「基準の手前」にいる生徒の存在が認められているということです。

困難があるとされた高校生のうち、学校で支援が必要と判断されていたのは約2割です
同じ調査は、著しい困難を示すとされた児童生徒が、実際にどんな支援を受けているかも調べています。高校の数字は、小中学校と比べてはっきり低くなっています。
| 困難があるとされた児童生徒の支援の状況 | 小学校・中学校 | 高等学校 |
|---|---|---|
| 校内委員会で、特別な教育的支援が必要と判断されている | 28.7% | 20.3% |
| 通級による指導を受けている | 10.6% | 5.6% |
| 「個別の教育支援計画」を作成している | 18.1% | 10.5% |
| 授業中、教室内で個別の配慮・支援を行っている | 54.9% | 18.2% |
出典:同調査 表7・表8・表10・表15と考察(2026年9月確認)
つまり、担任が「著しい困難がある」と答えた高校生でも、校内で支援の対象として話し合われているのは5人に1人ほどです。報告書は、支援が必要と判断されていない生徒については「そもそも校内委員会での検討自体がなされていないことが考えられる」とも書いています。
診断のあるなしにかかわらず、困りごとが学校に伝わっていないと支援は始まりにくい、ということです。グレーゾーンの高校生が「誰にも気づいてもらえない」と感じやすいのは、本人の気のせいではなく、数字にも表れている状況だといえます。だからこそ、本人や家族の側から「こういう場面で困っている」と伝えることが、支援の入り口になります。
困りごとは成績より先に、「疲れ」や遅刻・欠席として見えることがあります
グレーゾーンの高校生の困りごとは、周りからは「だらしない」「やる気がない」「わがまま」と見えてしまうことがあります。本人は人一倍がんばっているのに、結果が出ない。その積み重ねが、次のような形で表に出ることがあります。
- 人間関係のずれ:何が悪かったのか分からないまま、グループから外れてしまう。本人も理由を説明できない。
- 成績の大きなムラ:好きな科目は上位なのに、苦手な科目は赤点が続く。「やればできるのに」と言われ続ける。
- 提出物と出席の問題:課題を出し忘れる、朝起きられない日が増える。欠席や遅刻が単位の心配につながる。
- 強い疲れ:教室にいるだけで音や人の多さに消耗し、家に帰ると動けない。
- 自己否定:「自分だけがおかしい」「努力が足りない」と自分を責める。
発達障害者支援法の考え方にもあるように、困りごとは本人の特性と環境との組み合わせで生まれます。同じ特性でも、環境を変えると困りごとが小さくなることがあります。国立精神・神経医療研究センターも、「環境調整」や行動面からの取り組みを大切にし、家族や学校の先生など周りの人の理解がとても大切だとしています。
気分の落ち込みが長く続く、眠れない、食べられないといった様子があるときは、特性の問題とは別に、医療機関に相談することを考えてください。うつ状態で学校がつらいときの配慮の頼み方は、うつ病 学校 辛いの記事で整理しています。

診断がなくても、合理的配慮は相談できます。私立高校も2024年4月から義務になりました
「診断書がないと、学校は何もしてくれないのでは」と心配する方は多いと思います。法律と国の指針を確認すると、次のことが分かります。
- 障害者差別解消法の「障害者」は、身体・知的・精神障害(発達障害を含む)その他の心身の機能の障害があり、障害と社会的障壁によって継続的に生活に相当な制限を受ける状態にある人です(第2条)。
- 政府の基本方針と文部科学省の対応指針は、対象かどうかは状況に応じて個別に判断され、「いわゆる障害者手帳の所持者に限られない」と明記しています。
- 公立学校(地方公共団体)は第7条、私立学校(学校法人は「事業者」にあたる)は第8条で、どちらも合理的配慮の提供が義務です。事業者の義務化は2024年(令和6年)4月1日に施行されました。
- 配慮を求める意思の表明は、本人が伝えにくい場合には、家族などが本人を補佐して行うこともできるとされています。
- 配慮の中身は、学校の負担が過重でない範囲で、代わりの方法も含めて双方の「建設的対話」で決めていくものです。
ただし、診断がない場合に学校がどこまで対応するかは、困りごとの程度や学校の体制によって変わります。学校によっては、医師の意見や検査結果などの資料を求められることもあると考えておくと安心です。
文部科学省の対応指針には、学校で考えられる配慮の具体例が載っています。グレーゾーンの高校生の困りごとに近いものを抜き出しました。
| 困りごと | 対応指針にある配慮の例 |
|---|---|
| 読み書きが苦手 | 読みやすい字体の資料、タブレットなどICT機器の使用許可、筆記に代えて口頭試問 |
| 言葉だけの説明が入りにくい | 情報を文字にして視覚的に伝える、「はい・いいえ」で答えられる質問にする |
| 人の多さで緊張が強い | 施設の状況に応じて別室を用意する |
| 疲れやすい | 別室での休憩。別室が難しければ臨時の休憩スペースを設ける |
| 試験で力を出しにくい | 入学試験などでの別室受験、試験時間の延長、音声読み上げ機能の使用 |
出典:障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律 第2条・第7条・第8条(e-Gov)/内閣府「障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針」/文部科学省所管事業分野における対応指針(令和6年1月17日改正)(2026年9月確認)
配慮を相談するときは、「発達障害かもしれないので配慮してください」と伝えるより、「板書を写しきれないので、授業のプリントかスライドの写真がほしい」のように、困る場面と、あると助かることを具体的に書いて持っていくと話が進みやすくなります。
高校の「通級による指導」は2018年度から。ただ利用は全国で2,371人と、まだ少数です
「通級による指導」は、通常の学級に在籍したまま、一部の時間に障害に応じた特別の指導を受ける仕組みです。学校教育法施行規則第140条で、対象に自閉症者・学習障害者・注意欠陥多動性障害者などが挙げられています。高校では平成30年度(2018年度)に制度化されました。
- 令和5年度に高校で通級による指導を受けた生徒は、国公私立の合計で2,371人(公立2,327人)でした。
- 公立高校の在籍者に占める割合は0.1%、通級を受ける生徒がいる公立高校は423校(公立高校全体の12.1%)です。
- 小・中・高校の合計では20万3,376人で、その大部分は小中学校です。
出典:文部科学省「令和5年度 通級による指導実施状況調査」(令和7年7月)/学校教育法施行規則 第140条(e-Gov、2026年9月確認)
数字から分かるのは、高校で通級を受けられる環境はまだ限られているということです。通級があるかどうか、診断がない生徒も対象になるかは、学校と教育委員会の判断によります。在籍している高校に通級がない場合でも、先ほどの合理的配慮の相談はできます。
※2026年9月時点の情報です。最新は公式でご確認ください。

相談先は「学校・医療機関・発達障害者支援センター」の3つで、役割が違います
どこに相談すればいいか分からないときは、目的に合わせて選ぶと迷いにくくなります。
| 相談先 | できること | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 学校(担任・スクールカウンセラー・特別支援教育コーディネーター) | 授業や試験での配慮、校内委員会での検討、通級の案内 | 今の学校生活の困りごとを減らしたい |
| 医療機関(児童精神科・精神科・心療内科など) | 診察、心理検査・発達検査、診断 | 特性をはっきり知りたい。気分の落ち込みや睡眠の問題もある |
| 発達障害者支援センター | 本人と家族からの相談、助言、関係機関との連絡調整 | どこに相談すればいいか分からない。家庭での関わり方を相談したい |
発達障害者支援センターは、発達障害者支援法第14条にもとづき、都道府県・指定都市が自ら、または指定した社会福祉法人などが運営する専門機関です。発達障害のある人とその家族からの相談に応じ、指導や助言を行っています。事業内容は地域によって違うため、住んでいる地域のセンターに問い合わせてください。診断を受ける前の段階の相談をどう受け付けているかも、センターごとに確認するのが確実です。
出典:発達障害情報・支援センター「発達障害者支援センターについて」/全国の発達障害者支援センター一覧(2026年9月確認)
医療機関で検査を受けると、得意なことと苦手なことの差が数字や言葉で分かることがあります。診断がつかなかった場合でも、その結果は学校に配慮を相談するときの材料になります。診断を受けた場合に使える手当や医療費の制度は、発達障害 高校生 手当の記事で紹介しています。
「グレーゾーンだから軽い」は誤解です。よくある思い込み4つ
グレーゾーンの高校生とご家族を苦しめるのは、特性そのものより、周りからの思い込みであることも少なくありません。
誤解1:診断がつかないなら、困りごとも軽い
診断基準に当てはまるかどうかと、本人がどれだけ困っているかは、同じではありません。文部科学省の調査が「基準近くに分布している」生徒の支援を検討する必要があると書いているとおり、基準の手前にも支援が必要な生徒はいます。むしろ、診断がないために支援を受けにくく、ひとりで抱え込みやすいことがグレーゾーンの難しさです。
誤解2:診断がないと、学校に配慮を頼めない
上で見たとおり、合理的配慮の対象は障害者手帳の所持者に限られず、個別に判断されます。まずは困りごとを具体的に伝えて、学校と話し合うところから始められます。
誤解3:本人の努力やしつけで何とかなる
発達障害者支援法は、発達障害を「脳機能の障害」と定義しています。本人の怠けや、しつけの問題として片づけられるものではありません。努力を増やすより、やり方や環境を変えるほうが効果があることが多いのは、このためです。
誤解4:学校を変えるのは「逃げ」
環境によって困りごとの大きさが変わるなら、合う環境を選ぶことは立派な対処です。全日制に残って配慮を受ける、通信制高校に移る、どちらも本人に合った学び方を探す選択です。高校の選択肢を広く比べたいときは、発達障害 高校の記事で6つの選択肢を並べています。
今の高校が合わないときは、通信制高校への転入も選べます
通信制を選ぶかどうかの判断の手順は通信制高校 発達障害の記事にまとめています。
配慮を受けても今の学校がつらい場合は、学ぶ場所を変えることも考えてよい段階です。通信制高校は、全日制と同じ「高等学校」の通信制の課程で、卒業すれば全日制と同じ高校卒業になります。
- 卒業の条件は、3年以上の在籍・74単位以上の修得・特別活動30単位時間以上です。
- 単位は、添削指導(レポート)・面接指導(スクーリング)・試験の3つで修得します。
- 転入なら、前の高校で取った単位と在籍期間を引き継げます。
- 文部科学省の「令和7年度 通信制高等学校実態調査」では、通信制高校の在籍生徒は30万6,711人(2025年3月31日)。2025年度の入学者7万7,998人のうち57.0%は中学3年のときに不登校でした。
出典:文部科学省「令和7年度 通信制高等学校実態調査」(2026年8月31日公表、2026年9月確認)
通信制高校は、自分のペースで学べる一方で、レポートの計画や生活リズムを自分で管理する場面が増えます。段取りが苦手な特性がある人にとっては、ここが新しい壁になることもあります。また通信制高校でも、スクーリング(面接指導)には参加する必要があります。学校を選ぶときは、次の点を見学や説明会で確かめておくと安心です。
- レポートの進み具合を、誰がどのくらいの頻度で見てくれるか
- スクーリングの場所・日数と、人の多さや音への配慮の相談ができるか
- 合理的配慮の相談窓口があるか(通信制高校にも同じ法律が適用されます)
全日制から移る流れは全日制から通信制高校へ転校の記事で詳しく書いています。
選択肢の1つとしての通信制高校サポート校・ニジ高(正直な注意点)
「通信制高校に移りたい。でも、ひとりで計画を立てて続けられる自信がない」。そう感じる人のために、通信制高校の学びを人が支える「サポート校」という形があります。
NIJIN高等学院(ニジ高)は、オンライン中心の通信制高校サポート校です。全国どこからでも自宅から参加でき、担任制で学びを支えます。カメラやマイクをオフにして、チャットだけで参加するところから始められるので、人の多い教室や音で疲れやすい人も、自分に合った距離から始められます。生活リズムに波があっても学べるよう、授業のアーカイブ視聴や中学内容の学び直しにも対応しています。途中からの入学(転入・編入)ができ、出願費用は無料です。不登校の生徒を650名以上サポートしてきました(グループ全体)。
ただし、はじめに正直にお伝えしておくことがあります。
- ニジ高そのものは高校ではありません。高校卒業の資格は、提携する通信制高校に在籍して取ります。
- 学院内でのスクーリングはありませんが、提携する通信制高校のスクーリングには参加が必要です。その準備と参加を支援します。
- ニジ高は医療機関ではないため、診断や検査はできません。医療的な相談は、医療機関や発達障害者支援センターと並行して進めてください。
- 費用は、提携する通信制高校の分とニジ高の分の両方がかかります。ニジ高の分には就学支援金は使えません。金額は学費のご案内に載せています。
迷ったときの進め方(3ステップ)
- 困る場面を1週間メモする。「いつ・どこで・何が起きて・どう困ったか」を短く書き出します。特性の名前を当てはめるより、この記録のほうが学校にも医療機関にも伝わります。
- 学校に「困る場面」と「あると助かること」を伝える。担任かスクールカウンセラーに、メモを見せながら相談します。本人が話しにくいときは、保護者が一緒に伝えてもかまいません。配慮の内容は、話し合いで決めていくものです。
- 続けるか、学び方を変えるかを比べる。配慮を受けても毎日がつらいなら、通信制高校への転入を含めて比べます。前の学校で取った単位を確認しておくと、転入後の見通しが立てやすくなります。
3つとも、診断がついていなくても進められます。学び方を変えることも含めて話を整理したいときは、個別相談会で状況を聞かせてください。


診断がなくても、学び方を一緒に考えることはできます
ニジ高はオンライン中心の通信制高校サポート校です。カメラ・マイクをオフにしてチャットだけで参加するところから始められ、転入・編入もできます。ただし学院は高校ではなく、卒業資格は提携する通信制高校で取り、そのスクーリングへの参加が必要です。医療機関ではないため診断はできません。
よくある質問
A. 自分で判断することはできません。「グレーゾーン」は診断名ではなく、特性の現れ方も人によって違います。この記事の特徴は困りごとを言葉にする手がかりとして使い、気になる場合は医療機関や発達障害者支援センターに相談してください。
A. 相談はできます。障害者差別解消法の対象は障害者手帳の所持者に限られず、個別に判断されます。公立高校も私立高校も合理的配慮の提供が義務です。どこまで対応できるかは困りごとと学校の体制によるため、具体的な場面を伝えて話し合ってください。
A. 高校では、言葉にされない人間関係のルールや、課題・提出物の自己管理が増えます。国立精神・神経医療研究センターも、成長につれて微妙な対人スキルを求められる場面が増え、困りごとが目立ってくることがあると説明しています。環境が変わったことで、それまで目立たなかった特性が表に出ることがあります。
A. 高校の通級は2018年度に制度化されましたが、令和5年度に利用した生徒は全国で2,371人で、通級を受ける生徒がいる公立高校は12.1%です。在籍校で受けられるかどうか、対象になるかは学校に確認してください。
A. 転入できるかどうかは学校ごとの募集要項で決まるため、候補の学校に確認してください。転入なら前の高校の単位と在籍期間を引き継げ、卒業すれば全日制と同じ高校卒業です。ただし通信制高校にもスクーリングがあり、レポートの自己管理も必要なので、支援の体制を確かめて選んでください。
診断名がなくても、あなたの困りごとは本物です
グレーゾーンの高校生は、「診断がつかないから大丈夫」と言われ、「でも、しんどい」という気持ちの行き場をなくしがちです。けれど、困りごとがあるという事実は、診断名がなくても変わりません。国の調査も、基準の手前にいる生徒の支援を考える必要があると書いています。
今日すべてを決めなくて大丈夫です。まずは、困る場面を1つだけ書き出して、信頼できる大人に見せてみてください。やり方と環境が変われば、同じ特性が強みとして生きる場面も出てきます。
今の学校で配慮を受けながら続ける道も、学び方を変える道もあります。どちらにするか決める前の段階でも、話を聞かせてもらえたらうれしいです。

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