「普段は学校に来ないのに、修学旅行にだけ来るのはずるい」
Threads や X などの SNS で、こんな投稿を目にしたことはありませんか。修学旅行シーズンが近づくたびに、この話題は繰り返し広がり、賛否がぶつかり合います。
その投稿を、まさに「修学旅行に行きたい気持ちがある不登校の子ども」や、その保護者が読んでいることもあります。「やっぱり行かないほうがいいのかな」「迷惑をかけるくらいなら…」と、行きたい気持ちを飲み込んでしまう子も少なくありません。
先に結論をお伝えします。「修学旅行だけ行きたい」は、甘えでもずるさでもありません。行く・行かない・一部だけ参加する――どれを選んでも間違いではなく、大切なのは「本人が自分で決めたこと」を、周りの大人が支えることです。
この記事では、SNSで広がる声の背景を整理したうえで、親子で後悔しない決め方、学校に事前に相談しておきたいこと、行かないと決めたときの選択肢までを、保護者の方と本人それぞれに向けてまとめました。

この記事の結論(早見)
- 不登校の子が修学旅行に参加するのは「楽だから」ではなく、大きな勇気が必要な挑戦であることが多い
- 毎日通う子が「ずるい」と感じるのも自然な気持ち。どちらかを責めても解決しない
- 「行く/行かない/一部だけ参加」は本人が決めてよい。大人は選択肢と情報をそろえる役
- 参加するなら、班・部屋割り・逃げ場・途中帰宅などを事前に学校と相談しておくと安心
- 行かないと決めても、積立金や欠席の扱いを確認し、別の形で「思い出」をつくることはできる
SNSで広がる「不登校なのに修学旅行だけ来る」論争
「ずるい」と感じる側の気持ちも、自然なもの
SNSで話題になる投稿の多くは、毎日学校に通っている生徒側の本音です。
「毎日がんばって通っているのに、楽しいイベントのときだけ来るのはおかしい」
「班を組むときに気をつかう。正直しんどい」
こうした声に対して「ひどい」「思いやりがない」と反論が集まることもありますが、毎日通う子どもにも、日々がまんしていることや、それぞれの大変さがあります。行事のときだけ現れるクラスメイトに戸惑う気持ちは、ごく自然なものです。
一方で、不登校の子にとっての参加は「大きな挑戦」
一方で、不登校の子どもにとって、修学旅行への参加は決して「楽なほう」を選んだ結果ではありません。
学校に行こうとすると朝に体調を崩してしまう、教室に入ると息苦しくなる――そうした状態のなかで、数日間クラスメイトと寝食をともにする修学旅行に参加するのは、まさに「崖から飛び降りるような挑戦」です。
NIJIN(ニジン)もこの話題について、noteで「”楽だから行く”そんな気持ちで参加している不登校の子どもは、ほとんどいません」と発信しています。
問題は「子ども同士」ではなく、選択肢の少なさ
この論争は、「通っている子」と「通えていない子」を対立させる形で広がりがちです。でも、本当に向き合うべきなのは子ども同士ではありません。
- 学校に通うか・通わないかの二択しかない仕組み
- 「がまんして毎日通うのが当たり前」という価値観
- 行事への参加の仕方が「全部参加」か「不参加」しかないこと
こうした「選択肢の少なさ」が、どちらの子どもにも窮屈さを生んでいます。この騒動については、NIJINのnote記事「不登校生徒は修学旅行に行ってはダメ?専門家がこの騒動を解説します」でも詳しく解説しています。
なぜ「修学旅行だけなら行ける」のか
「普段は行けないのに、修学旅行には行きたい」――保護者の方からも「矛盾しているように見えて、どう受け止めればいいかわからない」という声をよく聞きます。実は、そこには理由があります。
| 理由 | どういうことか |
|---|---|
| 評価されない時間だから | 授業やテストのように「できる・できない」で比べられる場面が少なく、プレッシャーが小さくなります。 |
| いつもの教室ではないから | つらい記憶と結びついた教室や校舎ではなく、非日常の場所だからこそ一歩を踏み出しやすい子もいます。 |
| 始まりと終わりがはっきりしているから | 「この3日間だけ」と区切りが見えていると、見通しが立ちやすく、気持ちの準備ができます。 |
| 「最後のチャンス」だと感じているから | 高校の修学旅行は一度きりの行事です。「何も思い出がないまま卒業したくない」という気持ちは、前に進みたいというサインでもあります。 |

「修学旅行に行きたい」という気持ちは、わがままではなく、「人とつながりたい」「何かを取り戻したい」というエネルギーが残っている証拠として受け止めてあげてください。
【本人向け】行く?行かない?判断のためのチェックリスト
ここからは、修学旅行に行くかどうか迷っているあなたに向けて書きます。「行きたい気持ち」と「不安な気持ち」が、両方あって当たり前です。次の質問に、心の中で答えてみてください。
- 修学旅行で「これだけはやってみたい」ことがある
- 一緒に過ごせそうな友だちや先生が、1人でもいる
- つらくなったときに、先生に伝えられそう(伝える方法を決めておけそう)
- 最近、外出したり、人と会ったりできる日が少しずつ増えている
- 「行かなかったら、あとで後悔しそう」と感じる
当てはまるものが多いなら、「行ってみる」を前提に、どうすれば安心して行けるかを考えてみる価値があります。
反対に、ほとんど当てはまらなかったり、考えるだけで体調が悪くなったりするなら、今は無理をしなくて大丈夫です。行かない選択をしても、あなたの価値は何も変わりません。
そして、「全部参加」か「不参加」か、の二択で考えなくてもいい、ということも覚えておいてください。1日目だけ参加する、現地で合流する、自由行動だけ参加する――学校によっては、そんな形を相談できる場合もあります。
SNSの「ずるい」という言葉は、あなたに向けて書かれたものではありません。決めるのは、知らない誰かではなく、あなた自身です。

参加するなら、事前に学校と相談しておきたいこと
ここからは保護者の方へ。参加すると決めたら、出発前に担任の先生と話す時間をつくっておくと安心です。「特別扱いしてほしい」とお願いするのではなく、「本人が最後まで参加できるように、一緒に準備させてください」というスタンスで伝えると、学校側も動きやすくなります。

| 相談しておきたいこと | 具体的に確認・お願いしたい内容 |
|---|---|
| 班・部屋割り | 話しやすい友だちと同じ班・部屋にしてもらえるか。決める前に本人の希望を聞いてもらえるか |
| 事前学習 | 登校できない場合、事前学習の資料や班の決定事項をどう共有してもらえるか |
| つらくなったときの逃げ場 | 休める場所(先生の部屋・保健の先生の近くなど)があるか。どう合図すればいいか |
| 別行動・一部参加 | 一部の日程だけの参加、現地での合流、自由行動の調整が可能か |
| 途中帰宅 | 体調や気持ちが限界になったときに、途中で帰ることはできるか。その場合の費用や迎えの方法 |
| 連絡手段 | 保護者と本人が連絡を取れる時間・方法(スマホの使用ルールなど) |
| 体調・服薬など | 睡眠や食事、服薬など、先生に知っておいてほしいこと |
担任の先生だけでなく、養護教諭(保健室の先生)やスクールカウンセラーにも共有しておくと、旅行中にサポートしてくれる大人が増えます。
行かないと決めたら:確認しておきたいことと、その後の過ごし方
「今回は行かない」と決めることも、立派な選択です。そのうえで、次のことを確認しておきましょう。
費用(積立金・キャンセル料)は学校に確認を
修学旅行の費用は、毎月の積立金として集められていることが多くあります。不参加になった場合に返金されるか、キャンセル料がいくらかかるかは、学校や旅行会社との契約内容によって異なります。一般的に、出発日が近くなるほどキャンセル料は高くなるため、迷っている段階でも早めに「いつまでに決めれば費用がどうなるか」を学校に確認しておくと安心です。
欠席の扱いも学校ごとに異なる
修学旅行中の出欠の扱い(欠席になるのか、学校で別の課題に取り組むのかなど)も、学校によって対応が分かれます。単位や出席日数が気になる場合は、担任の先生に確認しておきましょう。行事を休んだときの成績・単位への影響は学校行事を休むと成績・単位はどうなる?、欠席日数の目安は高校の欠席日数は何日まで?で詳しく解説しています。
修学旅行の「参加率」の基準は、地域によってバラバラ
実は、修学旅行には各都道府県・市町村の教育委員会が定める「実施基準」があり、参加率についての考え方も地域によって違います。
| 基準の考え方 | 例 |
|---|---|
| 原則全員参加を求める | 原則として全員の参加を前提とする地域がある |
| 参加率の目安を定める | 「80%以上」(石川県)〜「60%以上」(長崎県)など、地域によって幅がある |
| 学校の判断にゆだねる | 富山県など、学校の裁量を認める地域もある |
出典:不登校オンライン「不登校でも参加前提!? 修学旅行の知られざる『ルール』」(2024年)をもとに作成
同じ記事では、2023年度に関東5県で修学旅行に参加しなかった生徒7,942人のうち、約6割(4,968人)が「不登校」を理由としていたと紹介されています。また、不登校オンラインのアンケートでは、修学旅行を控えた不登校の子どもの約半数が「参加したくない」と答え、保護者の約半数も「参加しなくていい」と考えていたそうです。
修学旅行に行かない不登校の子どもは、決してめずらしい存在ではありません。
「行かなかった修学旅行」の代わりにできること
- 家族で、行き先の一部だけでも小さな旅行をしてみる
- 修学旅行の行き先について調べて、好きな形でまとめてみる
- 同じ時期に、自分が楽しめる「自分だけのイベント」を予定に入れておく
- 帰ってきた友だちから、写真や話を聞かせてもらう(本人が望む場合のみ)
「みんなと同じ思い出」はつくれなくても、「自分だけの思い出」をつくることはできます。

【保護者向け】かけたい言葉・避けたい言葉
修学旅行の話題は、親子ともに気持ちが揺れやすいテーマです。かける言葉ひとつで、子どもの受け止め方は大きく変わります。
| 避けたい言葉 | かけたい言葉 |
|---|---|
| 「学校には行かないのに、旅行には行くの?」 | 「行きたい気持ちがあるんだね。教えてくれてうれしい」 |
| 「お金を払ったんだから行きなさい」 | 「費用のことは大人が考えるから、気持ちを大事にしていいよ」 |
| 「行かないと後悔するよ」 | 「行っても、行かなくても、どちらでも応援するよ」 |
| 「周りに迷惑をかけないようにね」 | 「つらくなったら途中で帰ってもいいからね」 |
| 「行けたなら、明日から学校にも行けるでしょ」 | 「行けたこと自体がすごいこと。ゆっくり休もう」 |
特に注意したいのが、修学旅行に参加できたあと、すぐに「これで登校も再開できるはず」と期待してしまうことです。数日間の旅行は、本人にとって大きなエネルギーを使う体験です。帰宅後に疲れが出て、しばらく動けなくなることもあります。参加できたこと自体を、ひとつの大きな成功として認めてあげてください。
周りの目やSNSの言葉に傷ついたとき
「行きたいけど、陰で何か言われそう」「SNSで見た”ずるい”という言葉が頭から離れない」――そんな不安を抱えている人もいるかもしれません。
まず知っておいてほしいのは、SNSで目にする強い言葉は、あなたのクラスのみんなの声ではないということです。実際には、「来てくれてうれしい」と思っているクラスメイトや、どう声をかけていいか迷っているだけの子もいます。
もし実際に心ない言葉をかけられたら、ひとりで抱えずに、信頼できる大人に話してください。担任の先生、保健室の先生、スクールカウンセラー、そして家族。学校に話しにくいときは、記事の最後で紹介している外部の相談窓口を頼ることもできます。
行事への参加の仕方も「自分で選べる」学校という選択肢
ここまで読んで、「そもそも”全部参加”か”不参加”かしかない環境が苦しい」と感じた方もいるかもしれません。通信制高校やサポート校のなかには、行事への参加の仕方そのものを、生徒が選べる学校もあります。
NIJIN高等学院(ニジ高)は「オンラインで、青春する。」を掲げる通信制高校サポート校です。生徒会やサークル、学園祭、企業とのコラボ企画などがあり、行事も「用意されたものに参加する」だけでなく、種目も、集める人も、場所も、生徒が自分たちで決めて企画・運営する側に回ることができます。
- 生徒が企画・運営する体育祭
- 生徒発案のリアルイベント(鉄道博物館ツアーなど)
- 職業体験や、NIJIN教育万博などの外部イベント
そして、行事が苦手な生徒は、カメラやマイクをオフにして、チャットだけで参加するところから始められます。「いきなり全部」ではなく、「できるところから少しずつ」参加の仕方を選べることが、ニジ高の行事の大きな特徴です。
※ニジ高はサポート校のため、卒業に必要な特別活動(修学旅行を含む行事など)の扱いは、在籍する通信制高校の決まりによります。詳しくは体験説明会でご確認ください。
通信制高校の行事や修学旅行の実態は、通信制高校に行事はある?修学旅行と特別活動30単位時間でまとめています。
よくある質問
可能性がゼロとは言えませんが、事前に担任の先生と班や部屋割りを相談しておくことで、安心して過ごせる環境をつくりやすくなります。参加中に嫌なことがあったら、すぐに先生に伝えられるよう、合図や連絡方法を決めておきましょう。
学校や旅行会社との契約によって異なります。出発日が近いほどキャンセル料が高くなることが一般的なので、迷っている段階で早めに学校へ確認することをおすすめします。
学校によっては可能です。迎えの方法や費用の扱いもあわせて、出発前に確認しておくと、本人も「いざとなったら帰れる」と安心して参加できます。
きっかけになることはありますが、すぐに登校が再開できるとは限りません。修学旅行は本人にとって大きなエネルギーを使う体験です。「行けたこと」自体を認め、帰宅後はゆっくり休める時間を確保してあげてください。
修学旅行や遠足などを行っている通信制高校は多くあります。参加が自由な学校や、オンラインで参加できる行事を用意している学校もあるので、学校選びの際に確認してみましょう。
まとめ:「行く・行かない」を決めるのは、本人です
- 「修学旅行だけ行きたい」は甘えではなく、前に進みたいエネルギーのあらわれ
- 「ずるい」と感じる子の気持ちも自然。問題は子ども同士ではなく、選択肢の少なさ
- 行く・行かない・一部だけ参加、どれも本人が選んでいい
- 参加するなら事前相談を、行かないなら費用と欠席の扱いの確認を
- 結果がどうであれ、「自分で決めた」経験そのものが、次の一歩につながる
修学旅行は、人生のなかの一つの行事にすぎません。行けても、行けなくても、その子の価値は変わりません。大切なのは、本人が「自分で決めていいんだ」と感じられることです。
ひとりで抱え込まないで:相談できる窓口
| 窓口 | 連絡先・特徴 |
|---|---|
| 24時間子供SOSダイヤル(文部科学省) | 0120-0-78310(なやみ言おう)。夜間・休日も対応 |
| 学校の先生・専門職 | 担任の先生、養護教諭(保健室の先生)、スクールカウンセラー |
| 地域の相談先 | お住まいの地域の教育支援センター(適応指導教室) |
参考
- NIJIN note「【怒っています】不登校生徒は修学旅行に行ってはダメ?専門家がこの騒動を解説します」(2026年1月)
- 不登校オンライン「不登校でも参加前提!? 修学旅行の知られざる『ルール』」(2024年)
- 不登校オンライン「行く? 行かない?『不登校中の修学旅行』、わが家の選択」
- 文部科学省「24時間子供SOSダイヤル」
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執筆者:ニジ高編集部 2026年10月4日公開



