「教科書を読むのに人の何倍も時間がかかる」「ノートを写しているうちに授業が終わる」「計算だけがどうしても合わない」。高校生になって、そうした困りごとが成績や進路に直結しはじめると、本人も保護者も「努力が足りないのか」と自分を責めがちです。
学習障害(LD・SLD)は、努力不足ではなく、特定の学び方に著しい困難がある状態です。この記事では、高校で受けられる配慮・入試や大学入学共通テストでの配慮・学校の選び方を、文部科学省・大学入試センター・東京都教育委員会の公式資料を実際に開いて確認した内容で整理します。
とくに2024年4月からは、私立高校でも配慮の提供が法律上の義務になりました。「どの高校なら受け入れてもらえるか」だけでなく、「いまの高校で何を頼めるか」から考えられます。
結論:学習障害の高校生が知っておきたいことの早見
- 学習障害は発達障害者支援法の対象です。文部科学省は「全般的な知的発達に遅れはないが、聞く、話す、読む、書く、計算する又は推論する能力のうち特定のもの」に著しい困難がある状態と定義しています。
- 高校でも配慮は頼めます。2024年4月1日から、私立高校(学校法人)も合理的配慮の提供が法的義務になりました。
- 高校の通常の学級で、担任が「学習面で著しい困難を示す」と回答した生徒は1.3%(文部科学省・令和4年)。珍しい状態ではありません。
- 高校入試にも配慮があります。東京都は検査時間の延長、問題用紙の拡大、ICT機器の使用、代筆者・音読者の同行などを認めています。
- 大学入学共通テストは、発達障害で試験時間が原則1.3倍に延長されます。ただし診断書が必須で、申請の時期が決まっています。
- 学校選びは「受け入れてくれるか」より、「読み書きの負担をどう減らせるか」を具体的に聞けるかで比べます。通信制高校やオンライン中心のサポート校(NIJIN高等学院など)もその候補です。
「頭が悪い」のではなく、「特定の処理だけ」が極端に難しい
学習障害のある高校生が、いちばん傷つくのは「やればできるのに」「ふざけているの?」という言葉です。会話は普通にできるし、説明を聞けば理解もできる。なのに、読む・書く・計算するといった特定の場面だけで、極端につまずく。そのアンバランスさが、周りにも本人にも理解されにくいのです。音読という場面での見え方と、学校に頼める配慮は音読 苦手 高校生で整理しています。
文部科学省の「学習障害児に対する指導について(報告)」(平成11年7月2日)は、学習障害を次のように定義しています。
全般的な知的発達に遅れはないが、聞く、話す、読む、書く、計算する又は推論する能力のうち特定のものの習得と使用に著しい困難を示す様々な状態
また、発達障害者支援法第2条は、発達障害の定義に「広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害」を挙げています(発達障害者支援法・e-Gov法令検索)。学習障害は、法律上も支援の対象として位置づけられている状態です。
高校生で表れやすい困りごと
| 困難の種類 | 高校で表れやすい場面 | 見落とされやすい理由 |
|---|---|---|
| 読む(ディスレクシア等) | 長文読解で時間切れ/教科書の音読でつかえる/問題文の読み違い | 「集中力がない」「本を読まないから」と思われる |
| 書く(書字の困難) | 板書を写しきれない/漢字や英単語のつづりが定着しない/記述式で時間が足りない | 「字が汚い」「丁寧さが足りない」と注意される |
| 計算する・推論する | 数学の計算ミスが極端に多い/文章題で式が立てられない/時間や単位の換算が苦手 | 「数学が苦手なだけ」と片づけられる |
いずれも、知っている・分かっているのにアウトプットの段階で点数に変わらない、という形で表れます。高校は小中学校より文字量と記述量が一気に増えるため、中学までは工夫で乗り切れていた生徒が、高校で急につまずくことがあります。

高校の通常の学級で「学習面で著しい困難」は1.3%
文部科学省は令和4年12月13日に「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果」を公表しました。この調査では、初めて高等学校も対象になっています。
| 担任が「著しい困難を示す」と回答した区分 | 小・中学校 | 高等学校 |
|---|---|---|
| 学習面又は行動面で著しい困難 | 8.8% | 2.2% |
| 学習面で著しい困難 | 6.5% | 1.3% |
| うち「読む」又は「書く」 | 3.5% | 0.6% |
| うち「計算する」又は「推論する」 | 3.4% | 0.6% |
出典:文部科学省「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果(令和4年)について」
読み方には注意が必要です。この数字は担任の先生の回答にもとづくもので、医師の診断ではありません。資料自体にも「発達障害のある児童生徒数の割合を示すものではなく」と明記されています。
それでも、この表から分かることがあります。高校の数字が小中学校より小さいのは、困難のある生徒がいなくなったからではなく、高校入試の段階で進路が分かれていることや、高校では困りごとが見えにくくなることが影響していると考えられます。1クラス40人なら、統計上は「学習面で著しい困難」のある生徒が0〜1人程度いる計算です。
2024年4月から、私立高校でも配慮は「義務」になりました
障害者差別解消法は、学校などが、障害のある人から申し出を受けたときに「合理的配慮」を提供するよう定めています。令和3年の法改正により、2024年4月1日から、私立学校を含む事業者の合理的配慮も努力義務から法的義務に変わりました。公立高校は以前から法的義務です。
文部科学省の通知(令和6年1月17日)は、改正前は「努力義務とされていたが、法的義務へと改められた」と説明し、学校法人の設置する高校も対象であることを明記しています(文部科学省 対応指針の改定について)。
学習障害の高校生が頼みやすい配慮は、たとえば次のようなものです。
- 板書を写す代わりに、タブレットで撮影する・プリントを配ってもらう
- テストの問題用紙を拡大する・ルビを振る
- 記述の代わりに口頭で答える、パソコンで入力して提出する
- 試験時間を延長する、別室で受ける
何が認められるかは、学校との話し合い(建設的対話)で決まります。「全部お願いします」より、「いちばん点数に響いている1つ」から頼むほうが通りやすく、効果も確かめやすくなります。
もう1つ、高校でも2018年度(平成30年度)から通級による指導が始まっています。文部科学省の令和5年度調査では、高校で通級による指導を受けている生徒は国公私立あわせて2,371人、公立高校のうち学習障害を理由とする生徒は252人でした(文部科学省 令和5年度通級による指導実施状況調査)。実施校はまだ限られているので、在籍校や志望校に「通級はありますか」と聞いてみる価値があります。
※2026年9月時点で確認した情報です。最新は各公式ページでご確認ください。

高校入試の配慮は、中学校長を通して申請します
「学習障害があると高校受験で不利になるのでは」という不安は、とても多く聞かれます。公立高校の入試には、障害のある受検生への配慮の仕組みがあります。
東京都教育委員会の令和8年度入試の案内では、配慮の例として次のものが挙げられています。
- 検査時間の延長
- 問題用紙・解答用紙の拡大
- ICT機器の使用
- 介助者(代筆者や音読者などを含む)の同行
申請は在籍する中学校の校長を通して行います(東京都教育委員会 入学者選抜における配慮について)。
文部科学省が令和4年12月にまとめた参考資料にも、読むことが苦手な生徒は別室で教員が問題を読み上げ、書くことが苦手な生徒はタブレットのワープロ機能で解答した、という実例が載っています(文部科学省 参考資料)。
ただし、配慮の内容や申請の締切は都道府県ごとに異なります。東京都以外は、今回の調査では一次資料で確認しきれませんでした。受検する都道府県の教育委員会のページで、必ず最新の要項を確認してください。締切は出願よりかなり前に設定されていることが多いので、中学3年の夏までに担任に相談しておくのが安全です。

大学入学共通テストは「原則1.3倍」。ただし診断書が必須
高校生にとっては、その先の大学入試も気になるところです。大学入試センターの「受験上の配慮案内」(令和9年度)を確認しました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発達障害の区分で認められる配慮 | 試験時間の延長(マークシート解答)/チェック解答/拡大文字問題冊子(14pt・22pt)/注意事項等の文書による伝達/別室の設定 |
| 試験時間の延長 | 原則1.3倍(別室)。1.5倍を希望する場合は追加の資料が必要 |
| 必要な書類 | 医師の診断書(発達障害関係)と、高校が作成する状況報告書。読み書きの困難で延長を希望する場合は検査結果の提出も求められる |
| 申請の時期 | 第1期は7月1日〜8月28日(令和9年度) |
注意したいのは、問題文の読み上げは、発達障害の区分の配慮一覧には入っていないことです。高校入試で読み上げの配慮を受けていても、共通テストで同じ形になるとは限りません。また、診断書が必須なので、受験直前に慌てないよう、高校2年生のうちに主治医と相談しておくと安心です。
大学に入ったあとの配慮は、高校までと仕組みが違う部分があります。その違いは発達障害のある大学生と合理的配慮の記事で整理しています。
よくある誤解:「診断がないと何も始まらない」わけではありません
誤解1「診断書が無いと、どんな支援も受けられない」
学校での合理的配慮は、文部科学省の対応指針上、障害者手帳の所持者に限られません。また、文部科学省が案内している音声教材(教科書の文字を音声で読み上げたり、見やすく表示したりする教材)は、Q&Aで「医師の診断書は必須ではなく」とされています(文部科学省 音声教材)。一方で、大学入学共通テストの配慮のように診断書が必須のものもあります。「何に」診断書が要るのかを分けて考えるのがポイントです。
誤解2「音声教材は小中学生のもの」
文部科学省のページには高等学校用の発行状況一覧(令和8年4月現在)が掲載されており、AccessReadingやUD-Bookは主に高校用の教材を提供しています。高校生も対象です。
誤解3「タブレットを使うのはズル」
文部科学省の資料は、入試の配慮の例として「音声読み上げ機能やタブレット端末等のICT機器の使用」を挙げています。眼鏡をかけて黒板を見るのと同じで、道具で困難を補うことは不公平ではありません。
誤解4「学習障害なら、大学進学はあきらめるしかない」
共通テストにも配慮の仕組みがあり、総合型選抜など筆記試験の比重が小さい入試もあります。読み書きの困難があることと、学ぶ力や考える力があることは両立します。

学校選びは「受け入れてくれるか」ではなく「何をどう減らせるか」で比べる
「学習障害 受け入れ 高校」と検索すると、「発達障害に理解があります」という学校がたくさん出てきます。けれど、その一文だけでは比べられません。見学や相談のときは、次の質問をそのまま使ってください。
| 確認したいこと | 聞き方の例 | 答えで見るポイント |
|---|---|---|
| 読む負担 | 「教材をデジタルで受け取れますか。読み上げ機能は使えますか」 | 具体的な方法が出てくるか |
| 書く負担 | 「レポートや課題は、パソコン入力で出せますか」 | 「前例がある」と言えるか |
| 試験 | 「定期試験で時間延長や別室は相談できますか」 | 誰に、いつまでに申し出るか分かるか |
| 評価 | 「提出物やレポートは、成績のどれくらいを占めますか」 | 筆記試験だけで決まらないか |
| 相談の窓口 | 「困ったとき、最初に相談するのは誰ですか」 | 担任や支援担当の名前が出るか |
学校の種類ごとに見ると、次のような傾向があります(一般論なので、個別の学校には必ず確認してください)。
- 全日制高校:授業時間が長く、板書と筆記試験の比重が大きい。在籍校で配慮を受けながら通うなら、早めに相談の窓口を決めておくことが大切です。
- 通信制高校:レポート(添削課題)とスクーリング、単位認定試験で単位を積む仕組み。自分のペースで取り組める一方、レポートの文字量が負担になることもあるので、提出方法(手書きかWebか)を確認します。
- サポート校:通信制高校の学習を補助する教育機関。個別の学習支援が受けやすい反面、学校によって支援の中身が大きく違います。
いまの高校から通信制高校への転校を考えている場合は、通信制高校 転入の記事で、単位の引き継ぎと時期を条文で確認しています。発達特性全般と勉強の関係は発達障害の高校生が勉強しない理由、ASD・ADHDとの違いはADHD 勉強できないの記事もあわせてご覧ください。
選択肢の1つとしてのオンライン中心のサポート校(正直な注意点も)
NIJIN高等学院(ニジ高)は、オンライン中心の通信制高校サポート校です。学院そのものは高校ではなく、提携する通信制高校と連携して高校卒業資格を目指します。
運営は株式会社NIJINです。小中学生の場合は、同じグループが運営するNIJINアカデミー(不登校の小中学生のためのオンラインオルタナティブスクール。1,000名以上が在籍)という選択肢もあります。中学卒業後にニジ高へ進む生徒もいます。
学習障害のある高校生にとって、次の点は合いやすいと考えています。
- 授業はオンラインで、アーカイブ視聴にも対応しています。板書を写しきれなくても、あとから見返せます。
- 中学内容の学び直しに対応しているので、つまずいた単元まで戻れます。
- 担任制で、一人ひとりの困りごとに合わせた学習の進め方を一緒に考えます。
- カメラ・マイクをオフにしてチャットだけで参加するところから始められます。
一方で、正直にお伝えしておくべき点もあります。
- ニジ高は医療機関ではなく、学習障害の診断や検査は行いません。診断や検査は医療機関・専門機関にご相談ください。
- 高校卒業資格のためには、提携する通信制高校のレポート提出・スクーリング・試験が必要です。学院内でのスクーリングはありませんが、提携校のスクーリングには参加が必要です。その準備と支援を行います。
- オンラインは読み書きの負担を減らす手段にはなりますが、画面を見る時間が長くなることが負担になる人もいます。体験の段階で確かめてください。
学費は学費のご案内でご確認いただけます。
迷ったときの進め方(3ステップ)
- 困りごとを「場面」で書き出す。「英語の長文で時間切れになる」「数学のテストで計算ミスが続く」など、教科と場面をセットにします。成績表やテストの答案があると、学校との話が具体的になります。
- いまの学校に「1つだけ」配慮を頼んでみる。テストの拡大、プリントの配布、パソコン入力での提出など。効果があれば続け、なければ別の方法を試します。
- 進路の節目から逆算する。高校入試の配慮は中学3年の夏まで、共通テストの配慮は高校3年の7〜8月が申請時期です。診断書が必要なものは、その半年前には主治医に相談しておきます。


読み書きの負担をどう減らせるか、具体的に一緒に確かめます
個別相談会では、困っている教科や場面をうかがい、オンライン授業やアーカイブ視聴でどこまで負担を減らせるかを具体的にご説明します。提携校のレポートやスクーリングで必要になることも、正直にお伝えします。
個別相談会を見てみる →よくある質問
A. 行けます。学習障害は全般的な知的発達の遅れを伴わない状態で、多くの生徒が通常の高校で学んでいます。入試では配慮を申請でき、入学後も合理的配慮を求められます。
A. 学校での合理的配慮は、文部科学省の対応指針上、障害者手帳の所持者に限られません。診断書があると話は進みやすくなりますが、まず困りごとを学校に相談するところから始められます。一方、大学入学共通テストの配慮は診断書が必須です。
A. 単位の認定は各学校が定める基準で行われます。電卓の使用や試験時間の延長などの配慮が認められるかは、学校との相談で決まります。まず「どの場面で点数につながらないのか」を具体的に伝えてみてください。
A. 令和9年度の受験上の配慮案内では、発達障害の区分の配慮一覧に「問題文の読み上げ」は含まれていません。試験時間の延長(原則1.3倍)、チェック解答、拡大文字問題冊子、別室の設定などが対象です。
A. 自分のペースで進められる点は合いやすい一方、レポートの文字量が負担になることもあります。提出方法、試験の配慮、学習支援の中身を具体的に確認してから選ぶことをおすすめします。
「できない」ではなく、「やり方が合っていなかった」だけかもしれません
読むのが遅い、書くのが苦手、計算が合わない。そのたびに「自分はだめだ」と感じてきたなら、それはあなたの努力が足りなかったからではありません。学ぶ内容ではなく、学ぶ道具ややり方が合っていなかった可能性があります。
道具を変える、試験の受け方を変える、学校の形を変える。どれも、あきらめではなく調整です。いまの高校で頼めることもあれば、学校を変えることで楽になることもあります。
どちらがいいか、一人で決めなくて大丈夫です。困りごとを話すところから、一緒に整理しましょう。

学び方を変えれば、力はちゃんと点数や成果に届きます。
全国どこからでもカメラ・マイクはオフでOK転入・編入は随時受付
通信制高校サポート校 NIJIN高等学院(ニジ高)/出願費用は無料です。無理に勧めることはありません。
あわせて読みたい

