高校の学費というと、多くの人がまず授業料を思い浮かべます。けれど家計から実際に出ていくお金は、授業料だけではありません。教科書、副教材、通学の交通費、修学旅行の積立、体育の実技で使うもの。これらは授業料の外にあり、就学支援金では1円も埋まりません。
その「授業料以外の教育費」を支える制度が、高校生等奨学給付金です。返さなくてよいお金で、通信制高校に通う場合も対象になります。ただし、通信制の給付額は全日制より大きく下がります。ここを知らないまま計画を立てると、あとで足りなくなります。
この記事では、令和8年度の給付額を複数の都道府県の公表資料で突き合わせて確認し、通信制だといくらになるのか、いつまでに何をすればよいのかを整理します。2026年9月20日に確認した内容です。
結論:高校生等奨学給付金の早見
- 使いみちは授業料以外の教育費(教科書・教材・通学費・修学旅行費など)。返済は不要です。
- 対象は生活保護(生業扶助)受給世帯と、住民税非課税世帯が中心。令和8年度は年収約490万円程度までの区分が設けられています。
- 通信制は全日制より額が小さい。国公立・非課税世帯で比べると、全日制143,700円に対して通信制は50,500円。3分の1ほどです。
- 私立の通信制・非課税世帯は52,100円。国公立とほぼ変わりません(全日制だと152,000円)。
- 就学支援金とは別の制度です。両方申請できます。窓口も別で、私立は都道府県の私学担当課が扱うのが一般的です。
- 申請が要ります。黙っていても振り込まれません。基準日と締め切りは都道府県で違います(7月1日基準の県もあれば、4月1日基準の県もあります)。

就学支援金とは別の制度です。ここを混同しない
まずここを分けてください。名前が似ているので、同じものだと思っている方がとても多いところです。
| 高等学校等就学支援金 | 高校生等奨学給付金 | |
|---|---|---|
| 何に使われるか | 授業料 | 授業料以外の教育費 |
| 受け取り方 | 学校が代わりに受け取り授業料に充てる | 保護者等に給付される |
| 対象 | 所得の要件を満たす世帯 | 生活保護受給世帯・非課税世帯ほか |
| 返済 | 不要 | 不要 |
就学支援金は、授業料を学校に払う代わりに国が肩代わりする仕組みです。手元に現金が来るわけではありません。一方の奨学給付金は、保護者等に給付されます。だから、教科書代や交通費に使えます。
両方に申請できます。片方だけ出して終わりにしないでください。就学支援金の仕組みそのものは通信制高校 学費の記事で説明しています。

通信制の給付額は、全日制の3分の1ほどです
ここがこの記事でいちばん伝えたい事実です。令和8年度の給付額を、国公立について沖縄県と長野県の公表資料で突き合わせたところ、金額は一致していました。
| 世帯の区分(国公立) | 全日制・定時制 | 通信制 |
|---|---|---|
| 生活保護(生業扶助)受給世帯 | 32,300円 | 32,300円 |
| 住民税非課税世帯 | 143,700円 | 50,500円 |
| 年収270〜380万円程度 | 47,900円 | 16,830円 |
| 年収380〜490万円程度 | 35,930円 | 12,630円 |
非課税世帯の欄を見てください。全日制143,700円に対して、通信制は50,500円です。差は93,200円。1年でこれだけ違います。
私立についても、愛知県が公表している令和8年度の額を確認しました。
| 世帯の区分(私立) | 全日制・定時制 | 通信制 |
|---|---|---|
| 生活保護(生業扶助)受給世帯 | 52,600円 | 52,600円 |
| 住民税非課税世帯 | 152,000円 | 52,100円 |
| 所得割額105,500円未満 | 50,670円 | 17,370円 |
| 所得割額182,500円未満 | 38,000円 | 13,030円 |
私立でも、通信制になると52,100円です。国公立の50,500円とほとんど変わりません。全日制では公立と私立で差が開くのに、通信制ではほぼ横並びになる。これが奨学給付金の設計です。
※2026年9月時点の情報です。額と区分は年度で変わり、都道府県によって独自の上乗せがある場合もあります。最新はお住まいの都道府県の公式でご確認ください。

「授業料以外の教育費」とは、具体的に何を指すのか
制度の名前だけを見ていると、抽象的に感じます。実際に何に消えるお金なのかを、具体的に並べてみます。通信制高校の場合は、次のような項目です。
- 教科書・学習書……通信制では教科書のほかに、学習の手引きやリポート用紙の費用がかかることがあります。
- スクーリングの交通費……月に数回でも、片道1時間を超える場所なら年間で数万円になります。
- スクーリングの宿泊費・食費……本校が遠方にある広域通信制では、集中スクーリングで数日間の宿泊が必要になることがあります。
- 体育の実技で使うもの……運動できる服装、屋内用の靴など。制服が無い学校でも、ここは必要になります。
- パソコンと通信費……リポートの提出やオンライン授業のために必要です。学校が貸し出す場合もあります。
- 行事の参加費……遠足、文化祭、卒業関係の費用。参加は任意のことも多いですが、参加したいときに出せるかは別の話です。
- 検定・試験の受験料……英検、漢検、大学入学共通テストなど。
こうして並べると、通信制でも年間で数万円から十数万円の幅で出ていくことが分かります。国公立・非課税世帯の50,500円で全部まかなえるかというと、スクーリングが遠い場合は足りません。どこまで足りて、どこから足りないのかを先に把握しておくのが、この制度の使い方です。
なぜ通信制は少ないのか。そして、それでも足りるのか
制度の考え方としては、通信制課程は登校する日数が少なく、通学費や学校で使う教材の負担が全日制より小さいと見込まれているためです。実際、毎日通う場合の定期代と、月に数回のスクーリングの交通費では、桁が違います。
ただし、これがそのまま実態に合うとは限りません。次のような場合には、想定より出ていきます。
- スクーリングが遠方で、宿泊が必要な場合……本校が別の県にある広域通信制では、年に数日でも交通費と宿泊費がまとまってかかります。この費用は学費の外にあることが多く、通信制高校 スクーリング 費用の記事で分けて説明しています。
- サポート校を併用する場合……サポート校の費用は高等学校の授業料ではないため、就学支援金の対象外です。奨学給付金は使えますが、金額の桁が違います。
- パソコンや通信環境を新しく用意する場合……オンライン中心の学び方では、ここが最初の出費になります。
つまり、通信制だから安く済む、と単純には言えません。どこで学ぶか(自宅中心か、通学中心か)で、必要な額が変わるというのが実際のところです。
生活保護受給世帯だけ、全日制と通信制が同額です
表をもう一度見てください。生活保護(生業扶助)受給世帯の行だけ、全日制と通信制の額が同じです。国公立なら32,300円、私立なら52,600円。
そして、ここで順番の逆転が起きます。非課税世帯の通信制(50,500円)のほうが、生活保護受給世帯の国公立(32,300円)より大きいのです。世帯の状況が厳しいほうが少なくなる、という一見おかしな並びに見えます。
これは、生活保護の側で教育扶助や生業扶助として別に支給される部分があるためです。奨学給付金だけを見て「うちは少ない」と判断しないでください。世帯全体で受けている支援と合わせて見る必要があります。判断に迷うときは、お住まいの自治体の福祉の窓口に、奨学給付金の案内を持って相談するのが確実です。
申請しないと1円も出ません。基準日は都道府県で違います
奨学給付金は申請主義です。学校が自動で手続きしてくれる制度ではありません。そして、ここが落とし穴なのですが、基準日と締め切りが都道府県で違います。
| 県 | 区分 | 基準日 | 申請の時期 |
|---|---|---|---|
| 沖縄県 | 県立(国公立) | 令和8年7月1日 | 県外在籍生は11月30日まで |
| 長野県 | 国公立 | 令和8年4月1日 | 6月〜8月頃 |
| 愛知県 | 私立 | 令和8年7月1日 | 7月1日〜11月20日 |
基準日というのは、その日にどの学校に在籍していたかで支給の判断をする日のことです。だから、基準日をまたいで転校すると、申請する先が変わります。年度の途中で通信制に移ることを考えている場合、ここは必ず確認してください。転校とお金の関係は通信制高校 転校 費用の記事にまとめています。
申請先も分かれます。国公立は学校または都道府県の教育委員会、私立は都道府県の私学担当課(私学課、文書学事課など)が窓口になるのが一般的です。在籍しているのが県外の学校の場合は、学校がとりまとめないこともあり、自分で郵送することになります。

申請のときにつまずきやすい3つ
- 課税証明書の年度を間違える……「令和◯年度の課税証明書」と指定されています。前年度のものを出してしまうと差し戻しになり、締め切りに間に合わなくなることがあります。
- 世帯の範囲を自己判断する……誰を世帯に含めるかは制度で決まっています。同居している祖父母を含めるかどうかなどは、自分で決めずに窓口に確認してください。
- 年度の途中で状況が変わったのに黙っている……家計急変に対応する区分を設けている県があります。失業や離別などで状況が変わったら、その時点で相談してください。後から遡れないことがあります。
どれも、先に電話で1度聞いておけば防げるものばかりです。学校の事務室は毎年この手続きを扱っています。遠慮する必要はありません。
ひとり親家庭や、発達特性がある場合は、他の制度も重なります
奨学給付金は、他の支援と併用できます。世帯の状況によっては、重ねて使えるものがあります。
- 児童扶養手当……ひとり親家庭で、18歳到達後最初の3月31日まで支給されます。高校に入ったら終わりではありません。あわせて使える制度はひとり親 通信制高校 学費の記事に整理しました。
- 手当や医療費の制度……発達特性や慢性の疾患がある場合、対象になる制度があります。発達障害 高校生 お金の記事で4つに分けて説明しています。
- 都道府県独自の授業料補助……国の就学支援金に上乗せする制度を持つ自治体があります。通信制が対象かどうかは自治体ごとに異なります。
制度は、知っている人だけが使える形になっています。心苦しいことですが、これが現実です。だからこそ、一度まとめて確認する時間を取る価値があります。
いつ振り込まれるのか。入学前の出費には間に合いません
ここも大事な点です。奨学給付金は、申請してから審査を経て支給されます。長野県は申請時期を6月から8月頃としており、沖縄県の県外在籍生の締め切りは11月30日です。愛知県の私立は7月1日から11月20日が申請期間です。
つまり、入学した直後にまとまって必要になるお金には間に合いません。教科書代、パソコン、最初のスクーリングの交通費。これらは先に家計から出し、あとから給付を受ける形になります。
この時間差を知らずに計画を立てると、4月から7月あたりが苦しくなります。入学前の段階で必要な額は、学校の募集要項に「入学時納入金」として書かれています。そこは別に用意しておいてください。
どうしても立て替えが難しい場合は、社会福祉協議会の生活福祉資金(教育支援資金)や、母子父子寡婦福祉資金の就学支度資金といった貸付の制度があります。無利子または低利で、据置期間が設けられています。制度の存在を知っているかどうかで、選べる学校が変わります。
高3になったら、大学の奨学金の予約採用を逃さない
奨学給付金は高校在学中の制度です。その先を考えているなら、高校3年生の春から秋にかけて、日本学生支援機構の奨学金の予約採用の受付があります。在籍している高校を通して申し込む仕組みなので、学校に在籍しているうちに動く必要があります。
通信制高校でも同じです。徳島県立徳島中央高等学校の進路指導の案内には、日本学生支援機構の給付型奨学金や授業料減免(いずれも世帯収入の制限あり)を使って進学する生徒が増えている、と書かれています。ただし同じページには、進学や就職を希望する生徒は自ら担任や進路指導担当に相談を申し出てほしい、とも書かれています。
通信制では、進路の案内が自動で降ってくるとは限りません。自分から聞きに行くことが前提の設計になっている学校があります。高2の終わりごろに一度、担任に「奨学金の予約採用はいつ案内がありますか」と聞いておいてください。それだけで、1年後の選択肢が変わります。奨学金そのものの仕組みは通信制高校 大学進学の記事とあわせて読んでみてください。

迷ったときの進め方(3ステップ)
- 自分の世帯がどの区分かを先に確かめる……住民税が非課税かどうかは、課税証明書か住民税の通知書で分かります。市区町村の窓口で取れます。
- 学校の事務室に、基準日と締め切りを聞く……「奨学給付金の基準日と、申請の締め切りはいつですか」。この1文で足ります。
- 就学支援金と一緒に出す……時期が近いので、まとめて準備すると手戻りが減ります。必要な証明書が重なっていることも多いです。
申請するかどうか迷っている方へ
制度を調べていて、申請をためらう方がいます。手続きが面倒に感じる、収入の証明を出すことに気が進まない、自分が対象か自信がない。理由はいろいろです。
申請して対象外だった場合でも、不利益はありません。学校に知られることを気にされる方もいますが、事務の手続きとして毎年たくさんの家庭が出しているもので、特別なことではありません。
そして、対象かどうかを判断するのはこちらではなく、都道府県です。自己判断で出さないのがいちばんもったいないという結論になります。迷ったら出す。それで構いません。

選択肢の1つとしてのサポート校について
私たちNIJIN高等学院(ニジ高)は、株式会社NIJINが運営する通信制高校のサポート校です。学院そのものは高校ではなく、提携する通信制高校と連携して高卒資格を目指す形をとっています。オンライン中心なので、スクーリングの交通費や宿泊費が積み上がりにくい設計です。正直に書いておくと、サポート校の費用には就学支援金が使えません。学院内でのスクーリングも無く、提携する通信制高校のスクーリングには参加が必要です。学費は学費のご案内で公開しています。
運営は株式会社NIJINです。小中学生の場合は、同じグループが運営するNIJINアカデミー(不登校の小中学生のためのオンラインオルタナティブスクール。500名超が在籍)という選択肢もあります。中学卒業後にニジ高へ進む生徒もいます。

使える制度が残っていないか、一緒に確かめます
個別相談会では、世帯の状況と学び方から、就学支援金と奨学給付金でどこまで埋まって、どこから家計の負担になるかを一緒に並べます。金額の話だけで終わっても構いません。
個別相談会を見てみる →よくある質問
A. 使えます。通信制課程も対象です。ただし給付額は全日制より小さく設定されています。国公立・非課税世帯で年額50,500円、私立で52,100円が令和8年度の額です(沖縄県・長野県・愛知県の公表資料)。
A. 令和8年度は、年収270〜380万円程度、380〜490万円程度の区分が設けられています。非課税でなくても対象になる可能性があります。区分の判定は住民税の所得割額で行われます。
A. 奨学給付金は保護者等に給付されるため、使いみちは家庭の判断になります。ただし就学支援金のほうはサポート校の費用には使えません。サポート校 学費の記事で二段構造を説明しています。
A. 基準日にどの学校に在籍していたかで、申請先が変わります。基準日は都道府県によって4月1日だったり7月1日だったりします。転校が決まった時点で、転校前と転校後の両方の学校に確認してください。
A. 締め切りを過ぎると原則として受け付けられません。ただし県によっては家計急変の受付期間が別に設けられています。気づいた時点ですぐに学校か都道府県の窓口に相談してください。
お金のことは、先に調べておくほど楽になります
通信制の給付額が全日制より小さいことは、制度の説明を読んでもあまり目立つ形では書かれていません。だから「通信制なら安いから大丈夫」と思ったまま進んでしまうご家庭があります。
数字を先に見ておけば、どこに余裕がないかが分かります。分かっていれば、学校の選び方も変わります。スクーリングが近い学校を優先する、オンライン中心の形にする、といった判断ができるようになります。
お金の話は、後回しにするほど重くなります。今日、課税証明書がどこで取れるかを調べるところまでで構いません。そこから先は、一つずつで大丈夫です。
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