「うちの子がうつかもしれない。育て方が悪かったのだろうか」
中学生のお子さんの元気がなくなったとき、多くの保護者がまず自分を責めます。厳しく叱った日のこと、忙しくて話を聞けなかった時期、夫婦げんかを見せてしまったこと。思い当たることを一つずつ数えて、眠れなくなる方も少なくありません。
先に結論をお伝えします。中学生のうつ病は、「親のせい」で起きるものではありません。うつ病は、体質、心身の変化、学校や友人関係のストレスなど、いくつもの要因が重なって起こると考えられています。親の関わりだけで発症が決まるわけではありません。
そして、家庭は「原因」として見るより、「回復を支える場所」として見るほうが、お子さんにとっても保護者にとっても役に立ちます。この記事では、中学生の保護者に向けて、原因の考え方、気づきたいサイン、家庭での関わり方、受診先と相談先を順にまとめます。
なお、この記事は診断や治療の代わりにはなりません。気になる様子があるときは、医療機関やスクールカウンセラー、公的な相談窓口に相談してください。

命の危険を感じたら
- 今まさに危険がある、意識がない、けがをしている:119番
- 子どもも保護者も24時間相談できる:24時間子供SOSダイヤル 0120-0-78310(文部科学省)
- こころの不調について相談したい:こころの健康相談統一ダイヤル 0570-064-556(厚生労働省)
結論の早見
- うつ病は一つの原因で起きる病気ではなく、親の育て方だけで決まるものでもない
- 「親のせいか」を考え続けるより、「今から何ができるか」に時間を使うほうが回復につながる
- 中学生のうつは、落ち込みより「イライラ」「朝起きられない」「体の不調」として見えることがある
- 2週間以上続く、生活に支障が出ている、という場合は一度専門家に相談する
- 相談先は、かかりつけ医、学校(担任・養護教諭・スクールカウンセラー)、保健所や精神保健福祉センター
- 保護者だけで相談に行ってもかまわない。保護者自身の休息も回復の一部
中学生のうつ病は「親のせい」ではありません

うつ病は一つの原因で起きるものではない
厚生労働省の中高生向けメンタルヘルスサイトでは、こころの病気は「体質」「ストレス」「考え方」のように、複数の要因が重なり合って起こると説明されています。かかりやすい体質があっても、それだけで病気になるわけではなく、病気そのものが遺伝するわけでもないとされています。
都道府県の精神保健福祉センターの解説でも、うつ病は周りから受けるストレス、ストレスをためやすい性格の傾向、体の状態など、さまざまな要因が重なって発症し、誰にでも起こりうる病気だとされています。
つまり、「この出来事が原因」「この人のせい」と一つに絞れる病気ではありません。保護者の関わりは、お子さんを取り巻く多くの要素のうちの一つにすぎず、それだけで発症が決まるものではないのです。
「育て方が悪かった」と考えてしまう理由
それでも親が自分を責めてしまうのは、お子さんのことを一番近くで見てきたからです。原因がわからないことは不安なので、人は「わかりやすい理由」を探します。そのとき一番目に入りやすいのが、毎日接している自分自身です。
また、思春期のお子さんは家族にきつい言葉を向けることがあります。「親のせいだ」と言われて、その言葉をそのまま受け取ってしまう方もいます。ただ、うつ状態のときは気持ちに余裕がなくなり、一番近くにいる人に怒りが向きやすくなります。お子さんの言葉は、つらさの表れとして受け止めてください。その言葉が原因を正しく言い当てているとは限りません。
家庭は「原因」ではなく「回復の土台」として見る
もちろん、家庭の状況がお子さんにとって負担になっている場合もあります。家庭内で暴力がある、強い言葉で否定し続けている、といった場合は、専門家と一緒に見直していく必要があります。
ただし、それは「親が悪い」と裁くためではありません。お子さんが休める環境を整えるためです。過去を責めるより、「これから家の中をどう過ごしやすくするか」を考えるほうが、回復にずっと役立ちます。厚生労働省のサイトでも、こころの病気の多くは早く手当てをすれば、その分早く良くなると説明されています。

中学生がうつ状態になる背景の考え方
思春期の心と体の変化
中学生の時期は、体が大きく変わり、睡眠のリズムも乱れやすくなります。自分と周りを比べる気持ちが強くなり、人間関係の悩みも複雑になります。大人から見ると小さな出来事でも、本人にとっては大きな負担になることがあります。
厚生労働省の教職員向けサイトでは、青年期のうつ病は100人に1〜7人程度とされています。決して珍しい病気ではありません。
学校・友人関係・部活・受験のストレス
文部科学省の令和6年度調査では、中学校の不登校生徒は216,266人で、1,000人あたり67.9人でした。学校が不登校の生徒について把握した事実(複数回答)を見ると、次のような項目が並びます。
| 学校が把握した事実(中学校・複数回答) | 割合 |
|---|---|
| 学校生活に対してやる気が出ない等の相談 | 30.1% |
| 不安・抑うつの相談 | 24.4% |
| 生活リズムの不調に関する相談 | 24.3% |
| 学業の不振や頻繁な宿題の未提出 | 15.7% |
| いじめ被害を除く友人関係をめぐる問題 | 14.1% |
| 親子の関わり方に関する問題 | 9.9% |
| 家庭生活の変化 | 6.6% |
出典:文部科学省「令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要(不登校抜粋版)」。学校が把握した事実で、不登校の原因を特定したものではありません。不登校とうつ病は同じものではありません。
この表は不登校についての調査で、うつ病の原因を示すものではありません。それでも、学校生活、気力、睡眠、学業、友人関係、家庭など、子どもの状態には多くの要素が同時に関わっていることがわかります。親子の関わり方は、その中の一つの項目です。
体の不調や発達特性が重なる場合
頭痛や腹痛、だるさなど体の不調が先に出ることもあります。また、発達の特性があるお子さんは、学校生活で疲れをためやすいことがあります。どちらも「気の持ちよう」で片づけず、医師に相談しながら整理していくことが大切です。

気づきたいサイン
落ち込みより「イライラ」として出ることがある
うつ病というと「ずっと落ち込んでいる」姿を想像しがちです。厚生労働省の解説では、うつ病の目安として、ゆううつで重苦しい状態がほぼ1日中、2週間以上続き、生活に支障が出ていることが挙げられています。そのうえで、楽しいと感じる気持ちが失われる一方、焦りから急にイライラしたり怒りっぽくなったりすることもあると説明されています。
反抗期と見分けがつきにくいのはこのためです。「最近怒りっぽい」だけで判断せず、好きだったことを楽しめていないか、という点にも目を向けてみてください。
朝起きられない・昼夜逆転・体の不調
次のような変化が続いていないか見てみましょう。
- 朝起きられない、夜眠れない、昼夜が逆転している
- 食欲が落ちた、または急に増えた
- 頭痛や腹痛、だるさを繰り返し訴える
- 好きだったゲームや部活、趣味にも興味を示さない
- 表情が乏しくなった、口数が減った
- 遅刻や欠席が増えた、急に成績が下がった
厚生労働省の教職員向けサイトでも、表情や態度の変化、集中できない、遅刻や欠席の増加、急な成績低下などが、こころのSOSサインとして挙げられています。
「行きたくない理由がわからない」と言うとき
「なぜ学校に行きたくないの?」と聞いても、「わからない」と返ってくることがあります。言葉にできないのは、隠しているからとは限りません。疲れ切っていて理由を整理できない場合もあります。理由を聞き出すより、まず休ませることを優先してください。
すぐに相談したい危険なサイン
厚生労働省のサイトでは、自殺のことを口にする、自暴自棄になる、身の回りの物を整理して人にあげる、といった行動が前兆として挙げられています。自分を傷つける行為や、「消えたい」「いなくなりたい」という言葉も見過ごさないでください。
こうした様子があるときは、お子さんを一人にせず、その日のうちに相談窓口や医療機関に連絡してください。今まさに危険があるときは、迷わず119番に電話してください。

休んでいる間も、学びとつながりを途切れさせない
NIJIN高等学院は、オンライン中心の通信制高校サポート校です。体調に合わせたペースでの過ごし方や、中学卒業後の進路の考え方を、体験説明会でお話ししています。中学生の保護者の方からのご相談も受け付けています。
家庭での関わり方

まず休める環境をつくる
うつ状態のときは、心のエネルギーが大きく減っています。「頑張れ」と励ますより、休むことを認めるほうが回復につながります。
- 学校を休むことを責めない
- 睡眠と食事のリズムを、できる範囲で整える
- 家の中に、本人が安心していられる場所をつくる
- 勉強や将来の話は、少し落ち着くまで急がない
休むことは、さぼることではありません。体を治すための時間と同じように、心にも回復の時間が必要です。
登校の再開は、本人の様子を見ながら
少し元気が出てくると、保護者はつい「そろそろ学校に」と考えたくなります。ただ、回復の途中で無理に登校を急がせると、かえって負担が大きくなることがあります。再開の時期や方法は、医師や学校と相談しながら、本人の気持ちを聞いて決めてください。
最初は、保健室や別室での短時間の登校、放課後の面談など、小さな一歩から始める方法もあります。うまくいかない日があっても、後戻りしたわけではありません。
かけたい言葉・避けたい言葉
かけたい言葉
- 「話したくなったら、いつでも聞くよ」
- 「休んでいいよ」
- 「あなたのせいじゃないよ」
- 「一緒に考えよう」
避けたい言葉
- 「甘えているだけ」「気の持ちよう」
- 「みんな頑張っているのに」
- 「いつまで休むの」
- 「何が不満なの」
うまく言葉が出ないときは、そばにいるだけでも十分です。無理に聞き出そうとせず、「気にかけている」ことが伝われば大丈夫です。
保護者自身が倒れないために
お子さんを支えるには、保護者の心と体も大切です。自分を責め続けていると、気持ちに余裕がなくなり、お子さんとの関わりもぎこちなくなります。
- 一人で抱え込まず、家族や信頼できる人と分担する
- 保護者自身も相談窓口やカウンセリングを利用する
- 眠る、食べる、少し外に出るなど、自分の休息を後回しにしない
保護者が休むことは、決してわがままではありません。家族全体が回復していくための大事な一歩です。

受診先と相談先

どこを受診する?
まずは、ふだんかかっている小児科や内科に相談する方法があります。体の病気が隠れていないかを確かめてもらえますし、必要に応じて専門の医療機関を紹介してもらえます。
こころの不調を専門に診るのは精神科です。中学生の場合は、児童精神科や思春期外来のある医療機関も選択肢になります。厚生労働省のサイトでは、かかりつけ医やスクールカウンセラー、保健所などを通じて専門の医師を紹介してもらえると案内されています。
専門の医療機関は予約が取りにくいこともあります。早めに問い合わせ、待っている間は学校や地域の相談窓口も並行して利用しましょう。
受診や相談の前にメモしておくこと
初めての相談では、緊張してうまく話せないことがあります。次のような点を、箇条書きで構わないのでメモしておくと、短い時間でも状況が伝わりやすくなります。
- いつ頃から、どんな変化が出てきたか(睡眠、食事、機嫌、登校の様子など)
- 一番つらそうに見える場面や時間帯
- 学校での出来事や、家庭での大きな変化で思い当たること
- 今までに受けた相談や、かかっている病院、飲んでいる薬があれば、その内容
「原因を説明しなければ」と気負う必要はありません。思い当たることがなくても、見たままを伝えるだけで大丈夫です。お子さんが同席を嫌がる場合は、保護者だけで先に相談できるかどうかを、予約のときに確認してみてください。
学校で相談できる人
学校には、担任のほかに養護教諭、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーなどの専門職がいます。お子さんが相談を嫌がる場合は、まず保護者だけで相談してもかまいません。欠席が続く場合の学習や出席の扱いについても、早めに学校と共有しておくと安心です。
公的な相談窓口
| 相談先 | 内容 |
|---|---|
| 保健所・保健センター | こころの不調や不登校など、思春期の悩みの相談 |
| 精神保健福祉センター | 医療が必要かどうかの相談、医療機関の紹介 |
| 教育センター・教育委員会の相談窓口 | 不登校や学校生活に関する相談 |
| 24時間子供SOSダイヤル(0120-0-78310) | 子どもも保護者も、24時間相談できる |
| こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556) | お住まいの地域の公的な相談窓口につながる |
出典:厚生労働省「こころもメンテしよう〜教職員の皆さんへ〜」、文部科学省「24時間子供SOSダイヤル」、厚生労働省「まもろうよ こころ」。受付時間は窓口によって異なります。
厚生労働省のサイトでは、こうした公的な窓口での相談は無料で、秘密も守られると説明されています。
命の危険があるとき
- 今まさに危険がある、意識がない、けがをしている:119番
- 死にたい気持ちについて相談したい:#いのちSOS 0120-061-338(24時間)、いのちの電話 0120-783-556(毎日16時〜21時ほか)
休んだ後の学校と進路について

お子さんの回復には時間がかかることがあります。その間に「このまま高校に行けないのでは」と不安になる方も多いと思います。
中学校を休んでいる時期があっても、高校進学の道はいくつもあります。全日制だけでなく、通信制高校や定時制高校など、体調に合わせて通い方を選べる学校もあります。高校生になってからの学校選びやサインについては、次の記事で詳しく解説しています。
関連記事:高校生のうつは「親のせい」ではありません|受診・学校・出席の進め方
高校進学の相談先に迷うときは、タツロー校長が「誰に相談したらいいのか」を話している動画も参考になります。
ニジ高という選択肢
NIJIN高等学院(ニジ高)は、オンラインで学ぶ通信制高校サポート校です。自宅から授業や交流に参加でき、体調に合わせたペースで学びを続けられます。教員免許を持つスタッフが多く在籍し、一人ひとりの状況を聞きながら関わっています。
検討していただく前に、次の点をご確認ください。
- NIJIN高等学院は高校ではありません。 提携する通信制高校に在籍し、その学習をサポートする「サポート校」です。高校卒業資格は提携校で取得します。
- 就学支援金はニジ高の費用には使えません。 就学支援金の対象は提携校の授業料です。ニジ高のサポート費用は別途かかります。
- 提携校のスクーリングが必要です。 卒業するためには、提携校が定める日程で登校(スクーリング)する必要があります。
- 医療機関でも療育機関でもありません。 診断や治療、療育は行いません。通院や治療は医療機関で続けていただき、ニジ高は学びと居場所の面から支えます。
「今はまだ進路を考える余裕がない」という方も、情報を知っておくだけで気持ちが少し楽になることがあります。体調が落ち着いたときに、選択肢の一つとして思い出していただければ十分です。
よくある質問
厳しく育てたことが原因ですか?
一つの関わりだけでうつ病が決まるわけではありません。うつ病は複数の要因が重なって起こると考えられています。過去を責めるより、これから家庭を休める場所にすることに力を使ってください。気になる場合は、専門家と一緒に関わり方を見直すこともできます。
夫婦げんかや離婚が影響しますか?
家庭の変化がストレスになることはあります。ただし、それだけで発症が決まるわけではありません。大切なのは、お子さんが安心して過ごせる時間や場所を確保することです。家庭の状況についても、相談窓口や医師に相談できます。
本人に「うつかも」と伝えてもいいですか?
病名を先に伝えるより、「最近つらそうに見えるけど、大丈夫?」と様子をたずねるほうが話しやすくなります。受診をすすめるときは、「眠れないのがつらそうだから、一度お医者さんに相談してみよう」など、本人が困っていることを入り口にするとよいでしょう。
学校は休ませたほうがいいですか?
心身が疲れ切っているときは、休むことが回復の第一歩になる場合があります。休ませるかどうかは、医師や学校と相談しながら決めてください。欠席が続くときは、学習の進め方や出席の扱いについて、早めに学校と話しておくと安心です。

まとめ
中学生のうつ病は、親のせいで起きるものではありません。体質、心身の変化、学校や友人関係のストレスなど、さまざまな要因が重なって起こります。
保護者にできるのは、原因探しで自分を責め続けることではなく、気づき、休ませ、専門家につなぐことです。そして、保護者自身も休み、頼れる人を増やしてください。
一人で抱え込まず、まずは身近な相談先に声をかけてみてください。
命の危険を感じたら
- 今まさに危険がある:119番
- 24時間子供SOSダイヤル:0120-0-78310
- こころの健康相談統一ダイヤル:0570-064-556

休んだ先にも、選べる学び方があります
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参考文献
- 厚生労働省「こころもメンテしよう~教職員の皆さんへ~」(子どもとメンタルヘルス/子どものSOSサイン/そのウワサ、本当?/保護者に相談されたら)
- 厚生労働省「まもろうよ こころ」(電話相談窓口)
- 文部科学省「24時間子供SOSダイヤル」
- 文部科学省「令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要(不登校抜粋版)」
- 埼玉県「うつ病」(埼玉県立精神保健福祉センター)
執筆者:ニジ高編集部 2026年10月10日

