「転校したら、何かが変わるかもしれない」。そう思って通信制高校に移ったのに、しばらくたっても「やりたいこと」が見つからない。時間はあるのに、何をすればいいのか分からない。そんな焦りを感じている人は、少なくありません。
この記事は、通信制高校に転校した人・転校を考えている人と、その保護者の方に向けて書いています。先に伝えたいのは、転校してすぐに「やりたいこと」が見つからないのは、まったく普通のことだということです。多くの場合、やりたいことは「探して見つける」ものではなく、心と体に余裕が戻ってから、少しずつ形になっていくものです。
転校後に「やりたいこと」が見つかるまでの3つの段階、それぞれの段階でできること、見つかった「好き」を進路につなげる方法を、国の統計もふまえて整理しました。
結論:転校後に「やりたいこと」を見つけるための早見
- 転校してすぐに見つからないのは普通です。まずは、疲れた心と体を休ませる時間が必要です。
- やりたいことが見つかるまでには、3つの段階があります。「回復する」「興味の芽を見つける」「小さく形にする」の順です。
- 「意志の力」より「環境」が先。生活リズムと、安心して話せる人がいることが、興味を持つ余裕を生みます。
- 「好き」は小さくていい。ゲーム、音楽、料理、動物。今好きなことの中に、進路の種があります。
- 通信制高校の卒業生のうち、26.1%は進学も就職もしていない状態で卒業しています。在学中から少しずつ動くことが、卒業後の道を広げます。
- 見つかった「好き」は、総合型選抜や専門学校、就職につながります。探究や活動の経験は、そのまま進路の材料になります。
転校してすぐに「やりたいこと」が見つからないのは、普通のこと
通信制高校に転校すると、毎日の登校や時間割から離れ、自分で使える時間が一気に増えます。そのとき、「せっかく時間ができたのだから、何かしなければ」と焦る人がいます。保護者の方も、「転校したのだから、次の目標を」と期待してしまうかもしれません。
けれども、転校する前の学校で、心や体がすり減っていた人も多いはずです。疲れ切った状態で「やりたいこと」を考えても、何も浮かんでこないのは当然です。やりたいことがないのではなく、考える余裕がまだ戻っていないだけ、ということがよくあります。
転校は「逃げ」ではありません。消耗し続ける環境から、力を取り戻せる環境に移るという、大事な選択です。そして、力を取り戻すには時間がかかります。まずはそのことを、本人も保護者も知っておいてください。
「意志の力」だけでは変われないことがある
「もっと頑張れば変われるはず」「自分の気持ちが弱いだけ」。転校前、そう自分を責めていた人もいるかもしれません。けれども、人は意志の力だけで変われるほど単純ではありません。毎朝の満員電車、合わない人間関係、ついていけない授業。そうした環境の中で消耗し続けていれば、どれだけ気持ちを奮い立たせても、力は長く続きません。
反対に、環境が変わると、同じ人でも見違えるように動き出すことがあります。通学の負担がなくなり、自分のペースで学べるようになると、それまで使い果たしていたエネルギーが少しずつ手元に戻ってきます。その戻ってきた力と時間が、「そういえば、これが好きだった」という感覚を思い出させてくれるのです。
| 転校前によくある状態 | 転校後に起こりやすい変化 | |
|---|---|---|
| 時間 | 通学と授業で1日が終わる | 自分で使える時間が増える |
| 気持ち | 毎日を乗り切るだけで精一杯 | 少しずつ余裕が戻ってくる |
| 人間関係 | 合わない相手とも毎日顔を合わせる | 関わる相手や距離を選びやすい |
| 勉強 | 「やらされる」ものになりやすい | 自分のペースで進められる |
やりたいことが見つからないのは、あなたの気持ちが弱いからではありません。まずは環境を整え、余裕を取り戻すこと。それが、やりたいことを見つけるための本当のスタートラインです。
「やりたいこと」が見つかるまでの3つの段階
転校してから「やりたいこと」が形になるまでには、多くの場合、次の3つの段階があります。人によって時間はまったく違い、行ったり来たりすることもあります。
| 段階 | どんな状態か | 目安にしたいこと |
|---|---|---|
| 1. 回復する | 疲れを取り、生活リズムを整える時期。何もしたくない日があって当然 | 眠れる・食べられる・少し笑える日が増えること |
| 2. 興味の芽を見つける | 「ちょっと気になる」「これは楽しい」が出てくる時期 | 好きなことを話せる相手がいること |
| 3. 小さく形にする | 興味を、作品・活動・学びとして少しずつ形にしていく時期 | 人に見せられる「小さな成果」が1つできること |

大切なのは、1の段階を飛ばさないことです。回復が不十分なまま「目標を決めよう」と急ぐと、また疲れてしまい、せっかくの転校が遠回りになってしまいます。今どの段階にいるかを、本人と保護者で共有しておくだけでも、焦りはずいぶん小さくなります。
段階1:まず「回復する」時間をつくる
回復の時期にいちばん大事なのは、生活のリズムを少しずつ整えることです。通信制高校は自由な時間が多いぶん、昼夜逆転になりやすい面もあります。
| できること | ポイント |
|---|---|
| 起きる時間だけ決める | 寝る時間より、起きる時間をそろえる方が整いやすい |
| 1日1回、外の空気を吸う | ベランダやコンビニまででも十分 |
| レポートは少しずつ | 単位を落とさない最低限のペースを、担任と相談して決める |
| 「何もしない日」を認める | 休むことも回復の一部。罪悪感を持たなくていい |
保護者の方は、この時期に「何かやりたいことは見つかった?」と聞かないようにしてみてください。本人がいちばん気にしていることを、何度も聞かれるのはつらいものです。それよりも、ごはんを一緒に食べる、たわいない話をするといった、ふだんの時間を大切にしてください。

段階2:「興味の芽」は、今の「好き」の中にある
少し元気が戻ってくると、「ちょっと気になる」「これは楽しい」と感じる瞬間が出てきます。それが興味の芽です。
「やりたいこと」というと、夢や職業のような大きなものを思い浮かべがちです。けれども、最初はもっと小さくていいのです。ゲーム、アニメ、音楽、料理、動物、ファッション、動画づくり。今好きなことの中に、進路の種はたくさんあります。
| 今の「好き」 | 広げてみると |
|---|---|
| ゲームが好き | ゲームの仕組み、プログラミング、イラスト、シナリオ、実況・配信 |
| 音楽が好き | 作曲、楽器、音響、イベント運営、歌詞を書くこと |
| 料理が好き | レシピづくり、栄養、食の仕事、写真・SNSでの発信 |
| 動物が好き | 飼育、獣医・看護、ペットの仕事、自然保護 |
| 人の話を聞くのが得意 | 心理、福祉、教育、接客 |
興味の芽を見つけるコツは、「なぜ好きなのか」を言葉にしてみることです。「ゲームが好き」でも、「物語が好き」「仲間と協力するのが好き」「うまくなるのが好き」など、理由は人によって違います。その理由の中に、自分らしさが隠れています。
この時期には、好きなことを話せる相手がいると、芽が育ちやすくなります。家族、担任、友だち、オンラインの仲間。「それ、面白いね」と言ってもらえる経験が、次の一歩の力になります。
「好きなことが思いつかない」ときのヒント
「好きなことすら思いつかない」という人もいます。そんなときは、次のような問いを手がかりにしてみてください。
- 時間を忘れて続けてしまったことは、何ですか?
- 小さいころ、よく遊んでいたことは何ですか?
- 人から「上手だね」「詳しいね」と言われたことはありますか?
- YouTubeやSNSで、つい見てしまうジャンルは何ですか?
- 反対に、「これだけは嫌だ」と思うことは何ですか?
嫌なことがはっきりしている、というのも立派な手がかりです。「これは違う」が分かると、自分に合う方向が少しずつ絞れてきます。答えは1つでなくてかまいませんし、途中で変わってもかまいません。
段階3:「小さく形にする」と、やりたいことが見えてくる
興味の芽が見つかったら、それを小さく形にしてみる段階です。頭の中で考えているだけでは、「本当にやりたいことか」は分かりません。実際に手を動かしてみることで、「思ったより楽しい」「これは違うかも」が見えてきます。
| 小さく形にする例 | どんな力につながるか |
|---|---|
| 好きなテーマで調べたことをまとめる | 探究する力。総合型選抜の志望理由書の材料になる |
| 作品をつくって誰かに見せる | 表現する力。ポートフォリオになる |
| イベントやプロジェクトに参加する | 人と協力する力。活動の記録として残る |
| 職場見学・インターンシップに行く | 仕事のイメージ。進路選びの手がかりになる |
| 資格や検定に挑戦する | 目標に向かう力。調査書や面接で伝えられる |
ここで大事なのは、完璧を目指さないことです。「1週間だけやってみる」「1つだけ作ってみる」くらいの小ささで十分です。やってみて違ったら、別のことに移っていい。試してやめることも、立派な前進です。

数字で見る:卒業時に進路が決まっていない人は4人に1人
「やりたいこと探し」を在学中から少しずつ始めた方がいい理由が、国の統計にも表れています。
| 通信制高校の卒業生(2024年度に卒業した91,809人) | 割合 |
|---|---|
| 大学などへ進学 | 28.6% |
| 専門学校へ進学 | 22.9% |
| 進学も就職もしていない状態で卒業 | 26.1% |
※出典=文部科学省「学校基本調査」。当サイトの記事「通信制高校はやめとけ?中退率3.5%・進学28.6%|公式統計で検証」で確認した数値です(2026年9月確認)。全日制・定時制で進学も就職もしていない人は4.7%です。

通信制高校の卒業生の半分以上は、大学や専門学校に進んでいます。一方で、4人に1人は、進学も就職もしていない状態で卒業しています。この中には、体調を整えている人や、卒業後にゆっくり進路を考える人もいて、それ自体が悪いわけではありません。
ただ、「卒業してから考えよう」と先送りにすると、選べる道が少なくなることもあります。高1・高2のうちから「小さく形にする」経験を積んでおくと、高3になったときに、進路を選ぶための材料が手元にそろっています。
見つかった「好き」を、進路につなげる
「やりたいこと」が少し見えてきたら、それを進路につなげる方法を考えてみましょう。通信制高校からの進路は、ひとつではありません。
| 進路 | 「好き」や活動の生かし方 |
|---|---|
| 大学(総合型選抜) | 探究や活動の経験を、志望理由書・面接・小論文で伝える。出願は9月1日以降と早い |
| 大学(学校推薦型・一般選抜) | 評定や学力を積み上げる。「学びたいこと」がはっきりすると勉強の意味が変わる |
| 専門学校 | 好きな分野を仕事につなげる。職場見学や体験入学で相性を確かめる |
| 就職 | インターンシップや資格で、働くイメージを具体的にする |
とくに総合型選抜は、「自分の言葉で説明できる経験」が評価される入試です。大学入学者のうち19.5%が総合型選抜で入学しています(文部科学省、令和7年度)。通信制高校で得た時間を使って取り組んだ探究や活動は、そのまま大切な材料になります。入試の選び方は通信制高校から大学進学|受験資格と進学率28.6%でも整理しています。
目標が「なんとなく行けるところ」から「本当に学びたいこと」に変わると、日々の勉強の意味も変わります。こなすだけの勉強が、自分のための勉強になっていく。その変化が、充実した高校生活につながっていきます。
保護者が気をつけたいこと
子どもが「やりたいこと」を見つけていく過程で、保護者の言葉は大きな影響を持ちます。
| 言いがちな言葉 | 言い換えの候補 |
|---|---|
| 転校したんだから、何か目標を決めなさい | 今はゆっくり休んでいいよ |
| ゲームばかりしてないで | そのゲームの、どこが面白いの? |
| そんなことで食べていけるの? | それ、もっと知りたいね |
| 早く将来を決めないと | いろいろ試してみたらいいよ |
保護者が焦ると、その焦りは子どもに伝わります。「好き」を否定せず、興味を持って聞く。それだけで、子どもは「好きなことを話してもいいんだ」と感じ、興味の芽が育ちやすくなります。進路の話は、本人から出てくるのを待つくらいでちょうどいいこともあります。
もし、いま読んでいるのが本人なら
ここまで保護者向けの内容も含めて書いてきましたが、自分でこの記事を読んでいる人もいると思います。その人に向けて、短く書きます。
「やりたいことがない」と焦らなくて大丈夫です。やりたいことは、元気が戻ってから、少しずつ見えてくるものです。
- 今の自分が、どの段階にいるか考えてみる。「回復」の段階なら、休むことが今いちばん大事な仕事です。
- 好きなことを1つ書いて、「なぜ好きか」を1行足してみる。そこに、あなたらしさがあります。
- 小さく試してみる。違ったらやめていい。試したこと自体が、次の手がかりになります。
ニジ高という選択肢と、正直な注意点
私たちNIJIN高等学院(ニジ高)は、通信制高校と連携して学びを支える通信制サポート校です。「オンラインで青春」を合言葉に、全国どこからでも、海外からでも自宅から参加できます。
ニジ高では、マイプロジェクトという、一人ひとりの「好き」や興味から始める学びを大切にしています。好きなテーマを探究し、仲間や大人と関わりながら、小さく形にしていく。この記事でいう「段階2」「段階3」を、一人ではなく仲間と進められる環境です。生徒会・サークル・学園祭・企業とのコラボなどの活動もあり、カメラやマイクをオフにして、チャットだけで参加するところから始められます。
ニジ高は、不登校の小中学生のためのオンラインオルタナティブスクール「NIJINアカデミー」の高等部です。
正直な注意点も書いておきます。ニジ高そのものは高校ではありません。卒業資格は提携する通信制高校に在籍して取り、学院内でのスクーリングはないため、提携校のスクーリングへの参加が必要です。費用は提携校の分とニジ高の分がかかり、ニジ高の分には就学支援金は使えません。金額は学費のご案内で公開しています。


「やりたいこと」探しを、一緒に始めませんか
個別相談会では、今の様子や好きなことをうかがいながら、転校後の過ごし方と、「好き」を進路につなげる学び方を一緒に整理します。保護者の方だけの参加もできます。
よくある質問
おかしくありません。転校前の学校で疲れていた場合、まずは心と体を回復させる時間が必要です。やりたいことは、余裕が戻ってから少しずつ見えてくることが多いものです。
今好きなことを1つ書き出し、「なぜ好きか」を言葉にしてみることから始めてみてください。そのうえで、調べる・作る・参加するなど、小さく形にしてみると、本当にやりたいことかどうかが見えてきます。
文部科学省の学校基本調査では、2024年度の通信制高校の卒業生のうち、大学などへの進学が28.6%、専門学校が22.9%でした。一方で、26.1%は進学も就職もしていない状態で卒業しています。
生かせます。とくに総合型選抜は、志望理由書や面接、活動の記録などで、学ぶ意欲や経験を評価する入試です。探究や作品づくりの経験は、大切な材料になります。
「目標を決めなさい」と急かさず、子どもの「好き」に興味を持って話を聞くことが大切です。回復の時期は、ふだんの生活を一緒に整えることを優先してください。
「やりたいこと」は、探すより「育てる」もの
通信制高校に転校してすぐに「やりたいこと」が見つからないのは、普通のことです。まずは回復し、興味の芽を見つけ、小さく形にしていく。その順番で進めれば、「行ける大学」ではなく「行きたい大学」や、「やりたい仕事」が少しずつ見えてきます。
やることはシンプルです。今の段階を知ること。好きなことを言葉にすること。そして、小さく試してみること。今日すべてを決めなくて大丈夫です。
「好き」から始める学び方を知りたくなったときのために、入口だけ置いておきます。

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