「うるさい!」と大声で怒鳴る。物に当たる。言葉が止まらなくなる。学校では大きな問題を起こさず過ごしているのに、家に帰った途端に崩れる——発達障害のあるお子さんの、そうした姿を見たとき、多くの保護者はまず戸惑い、次に自分を責めます。「叱り方が悪かったのか」「甘やかしすぎたのか」「思春期だからなのか」。
夜、子どもが寝たあとに、今日あったことを思い返して落ち込む。次はうまく対応できるだろうかと不安になる。そんな夜を繰り返している保護者は、決して少なくありません。
先に、いちばん伝えたいことを書きます。こうした行動の多くは、しつけの失敗でも、本人の性格の問題でもありません。感情や感覚をうまく処理しきれず、行動として噴き出してしまっている状態です。原因が分かれば、対応の仕方も変えられます。
この記事では、暴言・癇癪が起きる仕組み、起きているときの対応、そして専門家に相談すべきタイミングまで、公的な資料と臨床現場の整理をもとにまとめました。
結論:暴言・癇癪への対応の早見
- 多くの支援・療育の現場では、「癇癪」(要求が通らないときの感情表現)と「パニック/メルトダウン」(感覚や情報が処理しきれずに起きる、意図しない状態)を分けて考えます。どちらに近いかで、有効な対応が変わります。
- 文部科学省の令和4年度調査では、高等学校段階で2.2%の生徒が「特別な教育的支援を必要とする」と担任等から判断されています。ただしこれは診断の有無を調べたものではなく、あくまで学校現場が支援の必要性を感じた割合です。
- 興奮している最中に、正論や叱責をぶつけても切り替わりません。有効なのは、安全を確保したうえで距離を取り、落ち着くのを待つことです。
- 「なぜやったの」と問い詰めるのは、本人が落ち着いてからにしてください。興奮状態での言葉のやり取りは、多くの場合、事態を悪化させます。
- 家族や自分への暴力、物を壊す行為が繰り返される、あるいは頻度や激しさが増していく場合は、家庭だけで抱えず、発達障害者支援センターや児童相談所など専門機関に相談する段階です。
なぜ発達障害の高校生は暴言・癇癪を起こすのか
「癇癪」と一括りに語られがちですが、支援・療育の現場では大きく2つに分けて説明されることが多くあります。
ひとつは、要求が通らなかったときに起きる、感情の表現としての癇癪です。言葉でうまく気持ちを説明できない、あるいは折り合いをつける経験が積み重なっていないために、行動として噴き出してしまう状態です。
もうひとつは、感覚的な刺激や情報量が処理しきれなくなって起きる、パニックやメルトダウンと呼ばれる状態です。音、光、予定の急な変更、疲労の蓄積などが引き金になり、本人の意図とは関係なく起きます。ASD(自閉スペクトラム症)のある人に多く見られるとされ、厚生労働省の資料でも、こうした状態には「冷静に対応すること」が基本方針として挙げられています。
どちらであっても共通しているのは、「わがまま」でも「甘え」でもないという点です。学校や外出先では周囲に合わせて振る舞い、家に帰って初めて崩れる、というケースも少なくありません。外でがんばっている分、安心できる家庭でその反動が出ている、という見方もできます。
見分け方の目安として、次のように整理されることが多くあります。断定的な線引きではなく、あくまで傾向としての目安です。
| 観点 | 癇癪に近い | パニック・メルトダウンに近い |
|---|---|---|
| きっかけ | 要求が通らない、思い通りにならない | 音・光・予定変更など感覚・情報の負荷 |
| 本人の様子 | 相手の反応をうかがいながら訴える | 周囲が見えなくなる、呼びかけに反応しにくい |
| 落ち着き方 | 要求が通る、または諦めがつくと収まる | 刺激から離れ、時間が経つと収まる |
| 有効な対応 | 一貫した対応(要求には応じない) | 刺激を減らし、安全な場所で待つ |
どちらに近いか分からない場合も、対応の基本は共通しています。興奮している最中に言葉で説得しようとせず、まず落ち着ける環境を用意することです。
ただし、見分けが実際の対応に影響する場面もあります。癇癪に近い場合、要求に応じてしまうと「騒げば通る」という学習が進み、頻度が増えることがあります。一方、パニックに近い場合は、要求そのものではなく感覚的な負荷が原因なので、応じる・応じないという枠組みでは対応できません。どちらのタイプが多いかを日々の記録から把握しておくと、対応のぶれを減らせます。
数字で見ると——高校生の2.2%が「特別な支援が必要」と判断されている
感覚の話にしないために、公的な調査を確認します。
文部科学省が実施した令和4年度「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果」では、高等学校の通常の学級に在籍する生徒のうち2.2%が、担任等の判断で「特別な教育的支援を必要とする」とされました。小・中学校ではこの割合はさらに高く、合計8.8%(学習面の困難6.5%、行動面の困難4.0%、対人関係・こだわりの困難1.7%)となっています。
出典:文部科学省「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果」(令和4年)
ここで大事な注意点があります。この調査は医師の診断の有無を尋ねたものではなく、あくまで学校現場の担任等が「支援が必要そうだ」と感じた生徒の割合です。診断名のある生徒だけを指す数字ではありませんし、逆に診断があっても学校生活に大きな困難を感じていない生徒は含まれない可能性もあります。「2.2%だから少数派」と捉えるより、「学校の先生が気づく範囲だけでもこれだけいる」という数字として見るのが実態に近いと考えられます。
暴言・癇癪が起きたときの対応:起きる前・最中・後
対応は、タイミングによって変えたほうがうまくいきます。

起きる前——予兆に気づき、環境を整える
多くの場合、当日いきなり爆発するのではなく、その前に予兆があります。機嫌の落ち込み、口数の変化、そわそわした様子、いつもより動きが速い・荒いといった様子などです。予定の急な変更、音や光の強い環境、疲労の蓄積は引き金になりやすいため、事前に見通しを伝える、静かな環境を用意するなど、刺激を減らす工夫が有効とされています。
具体的には、外出や予定変更がある日は、前日または朝のうちに「今日はこういう順番で動く」と伝えておく、帰宅後にまず休める時間を確保する、といった工夫が挙げられます。毎回同じ形でなくても構いません。その子にとって何が負荷になりやすいかを、日々の様子から少しずつ把握していくことが、結果的に一番の予防になります。
起きている最中——正論より、まず距離と安全
興奮している状態では、どれだけ正しいことを言っても本人には届きません。臨床現場の整理でも、気分が高ぶっている状態で注意や説教をしても「切り替え」がうまくいかないことが指摘されています。
このタイミングで有効なのは、言葉を重ねることではなく、安全を確保したうえで距離を取ることです。「少し部屋で落ち着いてから話そう」と静かに伝え、無理に会話を続けようとしないでください。周囲の人や物への危険がある場合は、まず安全の確保を最優先にします。
落ち着いた後——振り返りは「詰問」ではなく「一緒の整理」
本人が落ち着いてから、「さっきはどんな気持ちだった?」と穏やかに聞いてみてください。目的は反省させることではなく、感情を言葉にする練習を一緒に積み重ねることです。うまく答えられなくても構いません。答えられたことより、話そうとしたこと自体を認める姿勢のほうが、次につながります。
言い方を一つだけ変えるとしたら、この場面です。最初のひと言の候補を置き換えておきます。
| 言いがちな言葉 | 置き換えの候補 |
|---|---|
| 何やってるの、いい加減にして | そっか、しんどかったんだね |
| さっきはなんであんなことしたの | 落ち着いたね。さっきはどんな気持ちだった? |
| また同じこと繰り返して | 今日はここまで話せたね |

きょうだいがいる場合の配慮
きょうだいがいる家庭では、暴言・癇癪の場面をきょうだいが見て、怖い思いをしたり、我慢を強いられたりすることがあります。「お兄ちゃん(お姉ちゃん)だから」と我慢させ続けると、きょうだい自身の負担が見えにくくなります。落ち着いたタイミングで、きょうだいにも「さっきは怖かったね」と声をかける時間を、意識してつくってください。
保護者自身の心のケアも、後回しにしないでください
繰り返す暴言・癇癪に向き合い続けることは、保護者にとっても大きな負担です。「自分がもっとうまく対応できれば」と自分を責める方は多いですが、対応がうまくいかない時期があるのは、保護者の失敗ではありません。一時的にでも距離を置ける時間を確保すること、同じ悩みを持つ保護者同士で話せる場を探すことも、家庭全体を支える大切な対応のひとつです。
やってはいけない対応
臨床現場でよく指摘される、逆効果になりやすい対応を挙げます。断定的な「絶対にダメ」というより、「うまくいきにくい」という整理として読んでください。
- 興奮している最中に言い返す・叱りつける。感情がぶつかり合い、さらに激化しやすくなります。
- 「何度言ったらわかるの」など、過去の失敗を持ち出して問い詰める。自己否定感を強め、次の爆発の材料になりかねません。
- その場で無理に解決させよう、謝らせようとする。早く終わらせたい気持ちが焦りとなって伝わり、かえって興奮を助長することがあります。
- きょうだいや周囲の子と比較する。特性への理解がないまま比べられることは、本人にとって強い苦痛になります。

専門家に相談すべきタイミングと窓口
家庭の工夫だけで抱え込む必要はありません。次のような状態が続く、あるいは悪化していく場合は、専門機関に相談する段階だと考えてください。
- 家族や自分自身への暴力、物を壊す行為が繰り返されている
- 頻度や激しさが、これまでより明らかに増えている
- 本人が自分を強く責める言葉を口にするようになった
- 家庭内の対応だけでは、安全を確保できないと感じる場面がある
相談先は一つではありません。状況に応じて、次のような窓口があります。
| 窓口 | 特徴 |
|---|---|
| 発達障害者支援センター | 都道府県・政令指定都市ごとに設置。本人・家族どちらからも相談可能 |
| 児童相談所 | 18歳未満が対象。緊急性が高い場合や、家庭内での安全確保が必要な場合に |
| 精神保健福祉センター | 精神面の不調を含めて、本人・家族の相談を受け付ける |
| 学校のスクールカウンセラー・特別支援教育コーディネーター | 学校生活での困りごとを、担任を介さず相談できる場合がある |
どこに相談すればよいか分からない場合は、国立障害者リハビリテーションセンターが運営する発達障害情報・支援センター(hattatsu.go.jp)で、最寄りの支援センターを調べることができます。厚生労働省も「こころもメンテしよう」という相談窓口の一覧ページを公開しています。
出典:発達障害情報・支援センター(国立障害者リハビリテーションセンター)/厚生労働省「こころもメンテしよう」
診断がまだない場合でも、多くの相談窓口は利用できます。「診断名を伝える」ことより、「どんな場面で、何が起きているか」を具体的に伝えるほうが、適切な相談先につながりやすくなります。相談は一度きりで終わらせる必要もありません。状況が変わるたびに、同じ窓口へ再度相談して構いません。
学校に相談できる合理的配慮
暴言・癇癪の背景に、学校生活での刺激やストレスの蓄積がある場合、学校側の環境調整で負荷そのものを減らせることがあります。障害者差別解消法により、学校には合理的配慮の提供が求められており、内閣府が公開している合理的配慮の具体例データ集では、次のような例が挙げられています。
| 場面 | 配慮の例 |
|---|---|
| 音への過敏さ | 耳栓やイヤーマフの使用を許可する |
| 読み書きの負担 | タブレットなど補助具の使用を認める |
| 見通しの立てにくさ | 予定変更を事前に、できるだけ具体的に伝える |
| こだわりへの対応 | 持ち物の位置など、本人が安心できる環境を固定する |
出典:内閣府「合理的配慮等具体例データ集(発達障害)」
合理的配慮は「申し出れば必ず通る」ものではなく、学校の体制の範囲で検討されるものです。断られた場合も、代わりにできる方法を一緒に探す形で相談を続けてください。
また、今の学校に在籍したまま、特別支援学級や通級指導教室(高校では通級による指導)を利用できる場合もあります。少人数・個別対応の時間を増やすことで、集団生活の負荷そのものを減らせることがあるため、環境を大きく変える前の選択肢として、担任や特別支援教育コーディネーターに確認しておく価値があります。
学校に伝えるときは、「家でこういうことが起きています」という事実と、「学校ではどう見えていますか」という質問をセットで持っていくと、話が進みやすくなります。家と学校では見え方が違うことが多く、両方をすり合わせることで、初めて負荷の全体像が見えてきます。

それでも負荷が減らないとき——学ぶ環境そのものを見直す選択肢
学校側の配慮を尽くしても、集団生活そのものが本人にとって大きな負荷であり続けることがあります。その場合、家庭での爆発は「本人の性格の問題」ではなく、「合わない環境に置かれ続けた結果」として起きている可能性があります。
正直な注意点も書きます。私たちは医療機関でも療育機関でもありません。暴言・癇癪そのものへの治療的な介入はできず、診断や治療については主治医・専門機関にご相談ください。また、学院内でのスクーリングはなく、高卒資格のためには提携する通信制高校のスクーリングへの参加が必要です。学費は学費のご案内で公開しています。
運営は株式会社NIJINです。これまでに650名以上の不登校の子どもたちを支えてきた知見をもとに、発達特性のある高校生一人ひとりの学習・生活・進路を支えています。転入・編入の相談は、学校を辞める・辞めないを決める前の段階からでも構いません。
記録をつけると、次の一手が見えやすくなる
いつ、何がきっかけで、どのくらいの時間続いたか。簡単なメモで構わないので、記録を残しておくと役立ちます。「毎回同じ時間帯に起きている」「特定の場面の前後で多い」といった傾向が見えてくると、予防のための工夫がしやすくなります。また、専門機関に相談する際にも、記憶だけで話すより、記録があるほうが具体的な相談につながります。
スマートフォンのメモやカレンダーアプリで十分です。完璧に記録しようとせず、気づいたときにひとことだけ残す、くらいの気軽さで続けてください。


「うちの場合はどうなる?」は、体験説明会で聞けます
オンラインで、全国どこからでも参加できます。転入・編入の時期や費用のことも、その場で聞けます。
よくある質問
A. 構いません。発達障害者支援センターなどの公的な相談窓口も、診断の有無にかかわらず利用できます。学校への相談も同様で、「どの場面で、どう困っているか」を具体的に伝えることが、診断名を伝えることより重要です。
A. 明確な線引きが公的に定義されているわけではありませんが、要求が通らないときに起きるのが癇癪、感覚や情報量が処理しきれずに意図せず起きるのがパニック、と整理されることが多いです。判断に迷う場合は、発達障害者支援センターなど専門機関に、具体的な場面を伝えて相談することをおすすめします。
A. まず安全の確保を最優先にしてください。そのうえで、児童相談所や発達障害者支援センターなど、専門機関への相談を急いでください。家庭内だけで解決しようとする必要はありません。
A. 学校には合理的配慮の提供が法律上求められており、この種の相談は想定内のものです。担任だけでなく、特別支援教育コーディネーターやスクールカウンセラーなど、話しやすい窓口を選んで構いません。
A. 環境要因が大きい場合は変化が見られることもありますが、万能な解決策ではありません。暴言・癇癪の背景には特性そのものの影響もあるため、環境を変えることと並行して、専門機関への相談を続けることをおすすめします。
A. きょうだいだけを我慢させる状態が続かないよう、落ち着いた場面で個別に話す時間をつくってください。必要であれば、きょうだい自身についても、スクールカウンセラーなど学校の窓口に相談できます。
A. 発達障害者支援センターは、本人だけでなく保護者からの相談も受け付けています。地域の親の会など、同じ立場の保護者と話せる場を探すことも、負担を分散させる一つの方法です。
まとめ:暴言・癇癪は「性格」ではなく「状態」として見る
発達障害のある高校生の暴言・癇癪は、多くの場合、しつけの失敗でも、わがままでもありません。感情や感覚をうまく処理しきれない状態から起きている、ということを知っておくだけで、家庭で抱え込む重さは変わります。
起きている最中は、正論より距離と安全を優先すること。落ち着いたあとは、一緒に振り返ること。そして、頻度や激しさが増していく場合は、ひとりで抱えずに専門機関に相談すること。この3つを、まず覚えておいてください。
うまくいかない日があっても構いません。対応がすぐに効果を出すことはむしろ少なく、変化が見えるまでに数か月単位の時間がかかることも珍しくありません。今日うまく対応できなかったとしても、それは保護者の失敗ではなく、次に試す材料が一つ増えたということです。
参考文献
- 文部科学省「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果」(令和4年)
- 厚生労働省 発達障害の理解に関する資料
- 内閣府「合理的配慮等具体例データ集(発達障害)」
- 発達障害情報・支援センター(hattatsu.go.jp)
- 厚生労働省「こころもメンテしよう」相談窓口一覧
執筆者:ニジ高編集部 2026年9月19日
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