「自分で絵本をつくってみたい」
一人の子どものそんな“やってみたい”から始まった、NIJIN高等学院の絵本づくりプロジェクト。
2026年8月6日、NIJIN高等学院では、絵本作家・イラストレーターの山田花菜さんをお迎えし、オンラインの「絵本づくり講座」を開催しました。
参加したのは、小学生から中学生までの子どもたち。絵本が好きな子、漫画を描いている子、オリジナルの物語を考えることが好きな子など、それぞれの「好き」を持ったメンバーが全国から集まりました。
この日挑戦したのは、一枚の紙を折ってつくる「パタパタ絵本」。身近な材料から、小さな絵本づくりが始まりました。
絵本作家・山田花菜さんとの出会い
山田花菜さんは、子どもの本を中心に、絵本やイラスト、キャラクターデザインなど、幅広い分野で活躍されています。
講座のはじめには、山田さんがこれまで手がけた作品を紹介してくださいました。大谷翔平選手や将棋棋士を描いた本、物語と絵の両方を担当した絵本などが画面に映ると、子どもたちも興味津々。

続いて、子どもたちも自己紹介をしました。
好きな絵本や物語に加え、山田さんに聞いてみたいことも一人ずつ伝えます。
「どうしたら絵が上手になりますか?」
「絵本をつくるとき、どんなことを考えていますか?」
「どうしたら素敵な作品ができますか?」
「漫画の気持ちのよい終わり方は、どう考えればいいですか?」
学年も、好きな作品も、つくりたいものも違う子どもたち。それでも、「自分の世界を作品にしたい」という思いは共通していました。
何でも、物語の主人公になれる
いよいよ絵本づくりが始まります。
山田さんが最初に伝えてくださったのは、絵本ならではの仕組みでした。
縦書きと横書きでは本をめくる方向が変わること。見開き全体を一枚の絵として使えること。そして、ページをめくることで時間や場面が進んでいくこと。
普段何気なく読んでいる絵本にも、読者を物語の世界へ導くための工夫がたくさんあります。
しかし、山田さんは「難しく考えなくても大丈夫」と子どもたちに語りかけます。
物語の主人公は、人間でなくても構いません。動物でも、いつも使っているマグカップでも、身の回りにあるものは何でも主人公になります。
何でも主人公になり得ます。自分の好きな世界から、自由に想像してみてください。
主人公を決めたら、性格や周りの世界を考えてみる。自分に起きた出来事を物語にしてもいい。書きたいものが決まっていなければ、家族、友達、季節、冒険など、自分の好きなテーマから広げてもいい。
子どもたちの中にあった「絵本はこうでなければならない」という枠が、少しずつ外れていきました。
物語だけが、絵本ではない
講座では、さまざまな絵本も紹介されました。
言葉を使わず、絵だけで展開していく絵本。ページを縦にめくることで、建物が空へ伸びていく絵本。迷路やクイズを楽しむ絵本。自分で考えた空想の生き物を紹介する図鑑のような絵本。選ぶ道によって、その後の展開が変わる絵本。
「文章が思い浮かばなければ、文字のない絵本でもいい」
「クイズが好きなら、クイズ絵本でもいい」
「自分だけのモンスターを考えて、図鑑にしてもいい」
絵本の形は一つではありません。
自分の得意なことや夢中になれることから、自分に合った表現方法を選ぶことができます。
紹介された文字のない絵本では、動物のお腹のボタンを外すと、次の動物が現れます。大きな動物から少しずつ小さな動物へと続いたあと、最後には予想外の展開が待っていました。
画面越しに「えっ!」「すごい!」という声が上がります。
山田さんは、そんな驚きも物語を面白くする大切なアイデアになると教えてくださいました。
子どもたちの物語が動き始める

山田さんの話を聞きながら、子どもたちの手は止まりません。
画面の向こうでは、絵を描く子、セリフを書き込む子、ページごとの構成を考える子。それぞれが自分の物語と向き合っていました。
ある子が考えたのは、暑すぎる世界で涼しい場所を探す物語です。
クローゼットの中も、テレビの裏も、冷蔵庫の隙間もだめ。水風呂は沸騰し、アイスは売り切れ。次々に困ったことが起こる展開に、みんなから笑いが起きました。
別の子がつくり始めたのは、『小さなパン屋』という物語。
小さなパン屋が、潰れそうになりながらも頑張っていくお話です。タイトルを聞いた山田さんは、「そのタイトルだけで、すでに素敵なお話だと伝わる」と声をかけてくださいました。
中学生からは、『星降る図書館と管理人』という幻想的な作品案も生まれました。
図書館と管理人の日常を丁寧に描き、最後は「星降る夜に、あの図書館を訪れてみてください。きっとあなたを歓迎してくれるから」と読者に語りかけます。
山田さんは、絵本は子どもだけのものではなく、年齢を問わず誰が読んでもよい表現であることを伝え、その作品が幅広い人に届く可能性を感じてくださいました。
一人ひとりの「好き」や想像が、その子にしかつくれない物語へと変わっていきました。
「たった一人のため」が、世界へ届く
講座の終盤、山田さんから印象的な言葉がありました。
たった一人のためにつくられた絵本が、世界中の人の心に届く。そんな名作もあるんです。
お父さんが息子のためにつくったもの。大切な友達に贈るためにつくったもの。幼かった頃の自分に向けてつくったもの。
最初から大勢の人に読まれることを目指さなくてもいい。まずは、届けたい誰かを思い浮かべてつくってみる。そこに込めた本当の気持ちが、やがて思いがけない誰かの心にも届くことがあります。
そして山田さんは、今回つくる作品が「最初で最後ではない」と信じて、これからもたくさんつくってほしいと子どもたちに伝えてくださいました。
一人の「つくりたい」から、新しい学びが始まった

今回の講座は、一人の子どもの「絵本をつくりたい」という思いから始まりました。
その思いがプロの絵本作家につながり、同じように物語や絵が好きな仲間が集まり、それぞれの新しい作品が生まれ始めています。
好きなことは、一人で楽しむだけのものではありません。
「やってみたい」と言葉にすることで、仲間やプロ、まだ知らなかった世界とつながり、学びへと変わっていきます。
この日完成しなかった作品も、まだ描き始めたばかりの作品もあります。しかし、子どもたちの中ではすでに、それぞれの物語が動き始めています。
どんな絵本が完成するのでしょうか。
子どもたちが自分の好きな世界を一冊の絵本にして届ける日を、これからも楽しみにしています。

