高校受験の合理的配慮はいつ申請する?|4都府県の要綱で見た期限と様式【2026】

発達障害のある中学3年生の高校受験で、別室で受けたい、試験時間を延ばしてほしい、問題文を読み上げてほしい——そう思っても、どこに、いつ、何を出せばいいのかが分からないまま秋になってしまう。この記事を開いたのは、たぶんそういう状況だと思います。

先に結論を書きます。高校入試でこれを使うときの正式な名前は「合理的配慮」ではなく「受検上の配慮」です。そして申請先は、志願先の高校が34都道府県、教育委員会が10で、多くは在学する中学校を通して進めます。ただし愛知県のようにWeb出願の画面から申請する県もあり、出し方は一つではありません。提出の期限も都道府県ごとにばらばらで、文部科学省の調査では16都道府県が要綱に申請の時期を書いていません。だから「調べても出てこない」のは、あなたの調べ方の問題ではありません。

この記事は、障害者差別解消法の条文(内閣府)、文部科学省の通知(8文科初第882号・令和8年6月30日)、文部科学省「高等学校入学者選抜における受検上の配慮に関する参考資料」(令和4年12月)、「令和7年度 高等学校入学者選抜の改善等に関する状況調査」、そして東京都・神奈川県・愛知県・大阪府の実施要綱・要領を実際に開いて確認した内容でできています。公式で確認できなかったことは、確認できなかったと書いています。

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目次

結論:高校受験で使える合理的配慮(受検上の配慮)の早見

  • 入試では「受検上の配慮」と呼びます。学校生活の合理的配慮と考え方は同じですが、都道府県の入学者選抜実施要綱の中に、別の手続きとして書かれています。
  • 令和6年(2024年)4月1日から、民間の事業者も合理的配慮の提供が法律上の義務になりました。公立高校はそれ以前から義務で、私立高校・私立の通信制高校もこの日から義務の側に入りました(障害者差別解消法第7条・第8条)。
  • 文部科学省は通知で「別室での受検、試験時間の延長等」を名前を挙げて求めています。配慮の中身は、拡大文字・ルビ振り・問題文の読み上げ・代筆・ICT機器の使用・面接を集団から個人へ変更など、都道府県の要綱に実例が載っています。
  • 令和7年度の入試では、全国の公立高校で4,936人が実際に配慮を受けました。そのうち自閉症421人・学習障害(LD)687人・注意欠陥多動性障害(ADHD)175人で、この3つだけで1,283人です。
  • 申請の窓口は「高等学校」が34都道府県、「教育委員会」が10、「中学校」が1、「その他」が2。文部科学省の参考資料は、手続きは中学校を通じて行うことが想定されると書いています。ただし出し方は県ごとに違います。
  • 医師の診断書は、42都道府県で「どの申請にも出すもの」とはされていません。「必要に応じて提出」26、「どの申請にも提出を求める」5、「提出は求めていない」16という内訳(合計47)でした。
  • 配慮は点数を足す制度ではありません。文部科学省の参考資料は「試験問題や課題等の程度を変えない範囲で」決めると書いています。神奈川県の要領も「検査の程度を変えない範囲で」と定めています。
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2024年4月から、私立高校も「配慮を断らない」側になりました。まずここが変わりました

いちばん大きな変化は、2024年(令和6年)4月1日です。この日から民間の事業者による合理的配慮の提供が、努力義務ではなく法律上の義務になりました。内閣府はこれを、障害者差別解消法の改正として周知しています。

法律の作りは、次のようになっています。

  • 第7条(行政機関等):国・地方公共団体などは、障害を理由とする不当な差別的取扱いをしてはならない。また、社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合、その実施に伴う負担が過重でないときは、必要かつ合理的な配慮をしなければならない。
  • 第8条(事業者):事業者についても、不当な差別的取扱いの禁止と、同じ内容の配慮の義務が定められています。この第8条第2項が、2024年4月1日から義務になった部分です。

出典:内閣府「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」/内閣府「令和6年4月1日から合理的配慮の提供が義務化されました」(2026年9月確認)

ここで読み取っておきたいことが3つあります。1つめは、公立高校(都道府県立)は第7条の「行政機関等」なので、2016年の施行時から義務だったということ。2つめは、私立高校・私立の通信制高校は第8条の「事業者」なので、2024年4月1日から義務の側に入ったということ。3つめは、どちらも「意思の表明があった場合」に動く仕組みだということです。

つまり、黙っていても学校の側から配慮が用意されるわけではありません。申し出ることが出発点になります。これは冷たい話に見えますが、逆に言えば「申し出れば、断るには理由(過重な負担)の説明が要る」という関係になったということです。

もう1つ、文部科学省の告示(対応指針)には、障害のみを理由として次の取扱いを行うことが、「不当な差別的取扱いに当たり得る具体例」として挙げられています。

  • 学校への入学の出願の受理、受験、入学などを拒むこと。または、これらを拒まない代わりとして正当な理由のない条件を付けること。
  • 試験等において合理的配慮の提供を受けたことを理由に、その結果を学習評価の対象から除外したり、評価において差を付けたりすること。

出典:文部科学省「高等学校入学者選抜における受検上の配慮に関する参考資料」(令和4年12月。文部科学省所管事業分野における対応指針・平成27年文部科学省告示第180号の抜粋を含む。2026年9月確認)

「配慮を使うと不利になるのでは」という心配をよく聞きます。配慮を受けたことを理由に評価で差を付けるのは、この告示が名指しで避けるべきだとしている行為です。ここは安心して申請の検討に進んでよいところです。

文部科学省は毎年の通知で「別室での受検、試験時間の延長等」と書いています

高校入試の配慮のもう1つの土台は、文部科学省が毎年出している通知です。最新のものは令和8年(2026年)6月30日付け 8文科初第882号「高等学校入学者選抜等における配慮事項等について」で、各都道府県教育委員会教育長・各指定都市教育委員会教育長・各都道府県知事などに宛てられています。前年の通知(令和7年6月27日付け 7文科初第836号)を廃止して置き換える形で出ているので、毎年更新されていることが通知そのものから分かります。この中の「7.その他御配慮いただきたいことについて」の(4)に、次の文があります。

障害のある生徒に対する入学者選抜においては、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」の趣旨を踏まえ、障害を理由とした不当な差別的取扱い等がないよう、十分に御留意いただくようお願いします。特に、受検上の配慮については、本人・保護者の希望、障害の状態等を踏まえ、別室での受検、試験時間の延長等、引き続き適切な配慮がなされるようお願いします。その際、「高等学校入学者選抜における受検上の配慮に関する参考資料」(令和4年12月文部科学省初等中等教育局特別支援教育課)に記載されている基本的な考え方や配慮の例についても、参考としてください。

出典:文部科学省「高等学校入学者選抜等における配慮事項等について(通知)」8文科初第882号(令和8年6月30日。2026年9月確認)

この通知は、都道府県に対して「やってください」と言っているものです。読者が直接持ち出す書類ではありませんが、中学校の先生や高校に相談するときに「国からこういう通知が出ています」と言える根拠になります。通知の名前と番号は、上のリンクから確認できます。

あわせて、同じ通知の(6)には不登校の経験がある生徒についても、在籍校の出席の状況だけで不利益な取扱いをしないようという内容が書かれています。欠席日数が気になっている場合は、高校 欠席日数の記事もあわせて読んでみてください。

夕方のリビングで、タブレットを見ながら話す保護者と高校生
申請の時期は、志望先の要綱で確かめます

令和7年度の入試で配慮を受けたのは全国4,936人。発達障害に関わる3つで1,283人でした

「そんなに特別なことをお願いしてよいのだろうか」と迷う人が多いので、実際の人数を出します。文部科学省が毎年公表している調査の、最新の数字です。

令和7年度の公立高校入学者選抜で、実際に受検上の配慮を受けた生徒は4,936人。申請があった生徒は5,138人で、差の202人が「申請があったものの配慮を行わなかった生徒」です。調査は、申請のあった配慮のうち一部でも配慮していればこの202人には数えないと注記しています。理由として挙がっているのは「当日欠席」「申請者からの取下げ」です。

障害種 実際に配慮を受けた生徒の数 申請があった生徒の数
学習障害(LD) 687人 726人
聴覚障害 977人 1,011人
自閉症(高機能自閉症・アスペルガー症候群を含む) 421人 448人
情緒障害 411人 425人
言語障害 287人 290人
注意欠陥多動性障害(ADHD) 175人 187人
視覚障害 169人 174人
その他(障害種が不明な場合などを含む) 940人 981人
全体(上記以外の障害種を含む合計) 4,936人 5,138人

出典:文部科学省「令和7年度 高等学校入学者選抜の改善等に関する状況調査(公立高等学校)」(令和7年12月。令和8年2月17日更新版。2026年9月確認)

自閉症・学習障害・ADHDの3つを足すと1,283人です。「その他(障害種が不明な場合などを含む)」の940人にも、診断名がはっきりしないまま配慮を受けた生徒が含まれていると考えられます。珍しい手続きではありません。

この調査には、大事な注記がついています。対象は「特別支援学校及び特別支援学級等に在籍する者のほか、障害により受検上何らかの特別の措置が必要であると認めた者を含む」であり、障害の判断については「医師等の診断の有無は問わない」と明記されています。診断が出ていない、いわゆるグレーゾーンの段階でも、この調査の数え方の上では対象に入ります。

令和7年度の公立高校入学者選抜で実際に受検上の配慮を受けた生徒が全国で4,936人、申請は5,138人で、自閉症421人・学習障害687人・ADHD175人の3つで1,283人になることを示す図
出典:文部科学省「令和7年度 高等学校入学者選抜の改善等に関する状況調査(公立高等学校)」(令和7年12月・令和8年2月17日更新版)

提出の期限は都道府県でばらばら。16都道府県は要綱に申請の時期を書いていません

ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。「高校受験の合理的配慮は○月までに申請」という全国共通のきまりはありません。同じ調査の集計を並べます。数字は都道府県の数です(回答47都道府県)。

要綱での示し方 内訳 都道府県の数
申請の時期 10月/11月/12月/1月/2月 2/4/10/8/7
申請の時期 要綱に示していない 16
申請の受付期間 1〜2週間程度/1〜2か月程度/3〜4か月程度 9/8/5
申請の受付期間 要綱に示していない 23
申請先 高等学校/教育委員会/中学校 34/10/1
医師の診断書 必要に応じて提出/提出を求める/提出は求めていない 26/5/16
決定方法 高等学校が決定/教育委員会が決定/その他 23/17/7
申請への回答時期 試験日の1〜2週間前/3〜4週間前/1〜2か月前 15/5/6
申請への回答時期 要綱に示していない 21
再申請の機会 設けている/設けていない 10/37

出典:文部科学省「令和7年度 高等学校入学者選抜の改善等に関する状況調査(公立高等学校)」(令和7年12月。令和8年2月17日更新版。2026年9月確認)

読み方のポイントを3つ書きます。

  1. 時期を書いている31都道府県のうち、25は12月から2月に集まっています。つまり、願書を出すころと重なるか、その少し前です。夏に動き出すのは早すぎではありません。
  2. 再申請の機会を「設けていない」が37都道府県。1回で出し切る前提の手続きだと考えておくのが安全です。だからこそ、中学校で受けている配慮の内容を先に整理しておく意味があります。
  3. 回答が来るのは試験日の1〜2週間前が最多(15都道府県)。出したあと、しばらく返事が来ない期間があります。不安になりますが、それが普通の進み方です。

文部科学省の参考資料も、都道府県に対して申請の受付は、出願の受付が終わる時期か、それより早い時期を期限とすることが考えられると書いています。さらに、期限を過ぎてからの申請(急病や事故などやむを得ない理由)への対応方法も示しておくことが重要だとしています。「もう間に合わない」と思ったときも、まず中学校に相談する価値があります。

都道府県が行っている周知の取り組みも数字が出ていて、「突発的な事故により配慮が必要になった場合にも対応できるような体制を取っている」が38都道府県、「本人や保護者に対して申請の流れ等を示す資料を配布している」「具体的な配慮の例をホームページ等で紹介している」がそれぞれ18都道府県でした。裏を返せば、資料の配布や例の公開をしていない県も多いということです。ホームページに出ていないことは、制度が無いことを意味しません。

※2026年9月時点の情報です。最新は公式でご確認ください。

東京都・神奈川県・愛知県・大阪府の要綱を開いたら、窓口も様式も別物でした

「ばらばら」がどれくらいばらばらなのか、4つの都府県の実施要綱・実施要領を実際に開いて並べました。

都府県 申請の出し方 様式・書類の名前 時期
東京都 申請者が中学校長に提出。中学校長が承認して志願先の都立高校長へ。高校長が都教委に報告・協議し、高校長が決定 学力検査等実施上の配慮申請書(様式24) 令和8年度入学者選抜では令和7年12月19日まで
神奈川県 受検方法等申請書に中学校長の職印を受け、志願先の高等学校長へ提出。県教育長の承認を受ける形 第6号様式「受検方法等申請書」(拡大問題冊子・ルビ振り問題冊子・ルビ振りマークシート解答用紙・記述式解答用紙の選択欄と、中学校長の所見欄がある) 志願の手続きの中で提出。志願する選抜ごとに提出
愛知県 出願期間中にWeb出願システムで受検配慮申請。その前に中学校の先生と相談。医療的ケアや設備面を含む特別な配慮は中学校を通して志願先の高校と事前相談 Web出願システム上の受検配慮申請(自己申告の入力欄もある) 出願期間中。志願先の高校や高等学校教育課への相談は9月以降
大阪府 在籍中の中学校(卒業している場合は出身中学校)に相談し、中学校を通じて手続き。実施要項では「別に定める」とされ、配慮要項が別立てになっている 実施要項ⅩⅡ「受験上の配慮について」+別に定める配慮要項 公式サイトの当該ページでは確認できませんでした

出典:東京都教育委員会「障害のある受検者に対する配慮」および令和8年度東京都立高等学校入学者選抜の選抜方法等一覧/神奈川県「令和9年度神奈川県公立高等学校の入学者の募集及び選抜実施要領」/愛知県「令和8年度愛知県公立高等学校入学者選抜」受検上の配慮/大阪府「障がいのある生徒に対する配慮事項」および令和8年度大阪府公立高等学校入学者選抜実施要項 第1 全般的な事項(いずれも2026年9月確認)

先に、この表の読み方の注意を書きます。この4つは、公表されている年度がそろっていません。東京都と愛知県は令和8年度(2026年春入学)、神奈川県は令和9年度(2027年春入学)の要綱・要領です。大阪府の配慮のページには年度の記載が無く、ページの最終更新は2013年7月30日と2016年5月26日でした(内容は今も公開されています)。志願先の都道府県について、自分が受験する年度の要綱を必要な時期に開き直してください。

この4つを見比べて分かることが2つあります。

1つは、「紙の様式に中学校長の印をもらう県」と「Webの出願システムに入力する県」が混ざっていること。愛知県は出願そのものがWebなので、配慮の申請も出願画面の中にあります。東京都と神奈川県は所定の様式に中学校長の承認・職印が要ります。やり方が違うので、他県の体験談をそのまま真似すると噛み合いません。

もう1つは、「相談」と「申請」が別の段階として置かれていることです。愛知県は「出願期間中に申請」の前に「それ以前に中学校の先生と相談しておいてください」と明記し、志願先の高校や県の高等学校教育課への相談は9月以降に可能だと書いています。大阪府も「まず中学校に相談」からです。申請の期限より前に、相談のための時間が用意されています。

神奈川県の要領には、配慮の効き方を示す一文もあります。第6号様式を提出した者のうち、県教育長が通常の方法では受検が困難と認める者については、検査の程度を変えない範囲で、検査方法、検査時間及び検査会場について適切な取扱いを講じる——という定め方です。ここは次の節でもう一度触れます。

相談室で先生と保護者と生徒が向かい合って話している場面
中学校を通して申請する県が多数です

発達障害で実際に認められたのは、別室・時間延長・ルビ振り・読み上げ・ICT機器が中心です

では、何をお願いできるのか。愛知県は「過去に行った主な受検上の配慮の例」を障害種別に公開しています。発達障害に関係する部分を抜き出します。

障害種(愛知県の区分) 検査での配慮の例 面接での配慮の例
学習障害 最前列の座席等を指定/別室・個室での受検/検査時間の延長/注意事項等の文書による伝達/問題や解答用紙の拡大/問題文等へのルビ振り/問題文の代読/パソコン・タブレット端末の使用/代筆解答 面接方法を集団から個別へ変更
自閉症 最前列の座席等を指定/別室・個室での受検/注意事項等の文書による伝達/パソコン・タブレット端末の使用/問題用紙への解答記入/代筆解答/付添者・介助者の同伴 面接方法を集団から個別へ変更
注意欠陥多動障害 最前列の座席等を指定/別室・個室での受検/検査時間の延長/注意事項等の文書による伝達/付添者・介助者の同伴 面接方法を集団から個別へ変更
情緒障害 最後列の座席等を指定/別室・個室での受検/パソコン・タブレット端末の使用 面接方法を集団から個別へ変更

出典:愛知県教育委員会「障害等のある志願者に対する受検上の配慮について」(令和8年度愛知県公立高等学校入学者選抜。2026年9月確認)

愛知県はこの表に注記を付けています。上記は主な配慮の例であり、ほかにも様々な配慮を行っている。どのような志願者に対してもこれらの配慮を行うという意味ではない。障害等の内容や程度には個人差があるので、出願時の受検配慮申請や事前の相談内容に基づいて配慮の内容が決定される。調整の結果、中学校で行われていない配慮を行う場合や、入学者選抜における公平性の観点から中学校で行われている配慮を行うことができない場合がある——という内容です。表は「お願いできることの一覧」ではなく「過去に行われた配慮の例」として読みます。

東京都は障害の種類ごとに、発達障害の例として別室受検・検査時間の延長・問題用紙や解答用紙へのルビ振り・ICT機器の使用・記号選択式での受検を挙げています。ほかに、拡大鏡等の持込み、補聴器の持込み、英語リスニングテストでのスピーカーに近い座席の配慮、面接での筆談(メモ・ホワイトボードの使用)、車いすやエレベーターの使用、医療用器具や補食品の持込みなどが並んでいます。

文部科学省の参考資料には、実際の事例が名前を出さずに載っています。発達障害に関わるものを3つ紹介します。

  • 自閉スペクトラム症の診断がある生徒:視覚・聴覚の過敏さからノイズキャンセルヘッドホンの装用を認め、読んでいる行を捉えるための自助具(スリット等)の使用を認め、通常の1.5倍の受検時間とした。さらに、設問番号と解答用紙の番号を色分けした。
  • 特異的読字障害の診断がある生徒:別室で受検実施校の教員が問題文を読み上げ、読む部分だけが見える自助具(スリット等)の使用を認めた。
  • ADHDの診断があり衝動性がみられる生徒:面接を集団から個人に変更し、あわせて面接の順番を始めに設定した。

出典:文部科学省「高等学校入学者選抜における受検上の配慮に関する参考資料」(令和4年12月。2026年9月確認)

時間延長の倍率について。「通常の1.3〜1.5倍」という説明をよく見かけますが、都道府県の要綱で倍率を定めている記載は確認できませんでした。確認できたのは、上の参考資料の事例で1.5倍だった1件です。倍率は要綱に書かれた数字ではなく、個別に決まるものと考えるのが正確です。

令和7年度の調査では、学習障害の生徒に対する「その他の配慮」が45件記録されていて、その具体的な内容の例として読む部分だけが見える自助具(リーディングマーカー付定規等)の使用が挙げられています。45件のすべてがこの自助具というわけではありませんが、要綱の配慮の例に並んでいなくても、こうした形で実際に行われているということです。中学校の定期テストで使っているものは、そのまま申請の材料になります。

高校入試の受検上の配慮の申請先と様式が、東京都は様式24を中学校長経由で都立高校長へ、神奈川県は第6号様式を中学校長の職印を受けて高校長へ、愛知県はWeb出願システム上で、大阪府は中学校を通じてと、都府県ごとに違うことを示す比較表
出典:東京都・神奈川県・愛知県・大阪府の入学者選抜実施要綱および実施要領(2026年9月確認)

国が示す流れは4段階。東京都の要綱では「相談→合意→申請→承認→協議・決定→通知」の6段階です

手続きの形は都道府県で違いますが、大きな流れは似ています。文部科学省の参考資料は、都道府県が配慮を行うまでの流れの一例として4段階(生徒・保護者及び学校関係者への周知→生徒・保護者からの申出→関係者による調整及び配慮事項の決定→受検上の配慮の提供)を示しています。下の表は、その具体版として東京都の要綱に載っている6段階です。愛知県のようにWeb出願の画面で申請する県では、この6段階の形にはなりません。自分の県の要綱の段階を、この表と見比べる使い方をしてください。

段階 誰が動くか(東京都の例) 家庭でやること
1. 相談 本人・保護者と中学校(担任・特別支援教育コーディネーターなど) 中学校で今受けている配慮を書き出す。願いたいことを具体的な言葉にする
2. 合意 本人・保護者と中学校の担当者 申請する内容をそろえる。ここで食い違うと先で止まる
3. 申請 申請者が配慮申請書(様式24)に記入し、中学校長に提出 様式を中学校からもらう。記入は家庭と学校の共同作業
4. 承認・提出 中学校長が必要と認めれば所定欄に記入・押印し承認。志願先の都立高校長へ提出 中学校のスケジュールに合わせる
5. 協議・決定 都立高校長が都教委の担当に報告し協議。高校長が決定 待つ。回答は試験日の1〜2週間前になることが多い
6. 通知 高校長が本人・保護者宛と中学校長宛の通知を中学校に送付。中学校長が本人に配布 決まった内容を本人と読み合わせる。当日の動きを確認する

出典:令和8年度東京都立高等学校入学者選抜「14 障害のある受検者に対する配慮」(東京都教育委員会 入試案内等)/文部科学省「高等学校入学者選抜における受検上の配慮に関する参考資料」(2026年9月確認)

東京都の要綱には、もう1つ大事な但し書きがあります。現在、中学校に在学していない場合は、志願先の都立高校に直接申請してください——という一文です。中学校を卒業してから受験する場合や、在籍していない場合の道もちゃんと用意されています。

提出する書類について。文部科学省の参考資料は、申請書に加えて都道府県が参考にする資料として中学校での学習・学校生活の様子や定期考査・授業等で配慮している内容を記載した書類、個別の教育支援計画(写し)、医師の診断書(写し)を挙げています。「心理検査(WISCなど)の結果」を提出書類として名前を挙げている記載は、今回開いた資料と4都府県の要綱では確認できませんでした。持っていれば参考資料として役に立つ場面はありますが、それが無いと申請できないとは書かれていません。

いつ動き出すか。愛知県は志願先の高校や県の高等学校教育課への相談を「9月以降」と明示しています。参考資料も「配慮事項の協議や当日の配慮に向けた準備に時間を要することが見込まれる場合には、申請の期限より前に相談や協議を行うことも考えられる」と書いています。中3の秋は、相談を始める季節だと考えてよいと思います。

見落とされやすいのは「配慮は点数を上げる制度ではない」という一点です

ここは、期待とのずれが起きやすいところなので正直に書きます。

文部科学省の参考資料は、配慮事項の決定について入学者選抜という特性上、あわせて公平性の観点からも検討が必要であり、試験問題や課題等の程度を変えない範囲で配慮事項を決定することが求められると書いています。神奈川県の実施要領も検査の程度を変えない範囲で、検査方法、検査時間及び検査会場について適切な取扱いを講じると定めています。

つまり、配慮でできるのは「問題の中身と難しさは変えないまま、受け取り方と出し方の壁を下げる」ことです。落とし穴を4つ挙げます。

  • 中学校でやっている配慮が、そのまま通るとは限りません。愛知県は「入学者選抜における公平性の観点から、中学校で行われている配慮を行うことができない場合があります」と明記しています。逆に、中学校で行われていない配慮が認められる場合もあると書いています。
  • 再申請の機会は37都道府県で用意されていません。「とりあえず出して、あとで足す」は前提にしないほうが安全です。
  • 決まるのが試験日の直前になることがあります。回答時期を要綱に示していない都道府県が21あり、示している中でも「1〜2週間前」が最多です。当日の段取りを早く知りたい気持ちと、制度のスピードにはずれがあります。
  • 入学後の配慮は別の話です。入試で配慮が認められたことは、入学後に同じ配慮が続くことを意味しません。参考資料は事例ごとに「高校入学後に想定される配慮」を書いていますが、これは入学後にあらためて学校と話し合うものです。

そして、いちばん大きな落とし穴。「配慮を取れたかどうか」に時間を使いすぎて、「入れた高校で3年間続けられるか」を考える時間が無くなることです。試験の1日をどう通過するかと、その後の1,000日をどう過ごすかは、別の問題です。全日制の毎日の登校、集団での一斉授業、定期考査という形そのものが合いにくい場合、配慮を取って合格しても、入学後に同じ困りごとが戻ってきます。

学校の形から選び直す考え方は、通信制高校 選び方のページにテーマ別にまとめています。特性別の学校選びは学習障害 高校生 学校選びとASD 高校生 学校選び、進学先の選択肢の全体像は発達障害 高校 進学と発達障害 特別支援 高校の記事があります。特別支援学級に在籍している場合の評定(内申点)の扱いや特別募集は、支援級の中学生の進路で詳しく書いています。

通信制高校の入試は、そもそも学力検査がない学校が多い。配慮の中身が変わります

ここは場合分けが要ります。通信制高校の入学者選抜は、全日制とかなり違う形をしています。

文部科学省の令和7年度通信制高等学校実態調査によると、通信制課程を置く高校323校の入学者選抜の方法は(複数回答で)面接296校・調査書などの書類230校・作文や小論文154校・学力検査91校でした。学力検査を行う学校は3割以下です。

学校の種類 選抜の中身と配慮の求め方 法律上の位置づけ
公立(都道府県立)の通信制課程 都道府県の公立高校入学者選抜実施要綱の中に選抜が置かれている。配慮の申請も、その要綱の仕組みを使う。東京都は令和9年度の通信制課程(前期選抜)を令和9年2月22日に実施する予定 障害者差別解消法第7条の行政機関等。2016年から配慮の提供が義務
私立の通信制高校 各校の募集要項による。面接や書類が中心の学校が多く、配慮の中心は「面接の形」「日程」「会場」「提出書類の出し方」になりやすい 同法第8条の事業者。2024年4月1日から配慮の提供が義務
サポート校(ニジ高など) 高校ではないため、高校の入学者選抜という枠組みの外にある。卒業資格を取る提携先の通信制高校の選抜が別にある 同法第8条の事業者。2024年4月1日から配慮の提供が義務

出典:文部科学省「令和7年度 通信制高等学校実態調査」(2026年8月31日公表・調査時点2025年5月1日)/東京都教育委員会「令和9年度東京都立高等学校入学者選抜の日程について」(2026年9月確認)

実務的な意味を書きます。学力検査がない学校では、「試験時間の延長」や「問題文の読み上げ」という言葉が、そのまま当てはまりません。代わりに効いてくるのは、次のような相談です。

  • 面接を集団ではなく個別にしてほしい、オンラインにしてほしい、保護者が同席したい
  • 面接の順番を早め(または遅め)にしてほしい、待ち時間を短くしてほしい
  • 作文の時間を延ばしてほしい、下書き用紙を多めにほしい
  • 会場に入る前に部屋を見せてほしい、当日の流れを紙で欲しい

私立の通信制高校やサポート校は第8条の事業者として、2024年4月1日から合理的配慮の提供が義務になっています。募集要項に配慮の欄が無い学校でも、問い合わせる筋は通っています。東京都の通信制課程の選抜は、令和9年度は令和9年2月22日の予定で、全日制の学力検査(令和9年2月21日)とほぼ同じ時期です。「通信制なら出願はいつでも」ではない学校もあるので、日程は個別に確かめてください。

費用の全体像は通信制高校 学費の記事に、発達特性のある高校生に使えるお金の制度は発達障害 高校生 お金 制度の記事にまとめています。中学生の段階で学校に通えていない場合は、小中学生のオルタナティブスクールNIJINアカデミーという選択肢もあります。

※2026年9月時点の情報です。最新は公式でご確認ください。

選択肢の1つとしてのニジ高(正直な注意点)

ニジ高(NIJIN高等学院)は、オンライン中心の通信制高校サポート校です。発達特性や障害について、本人を変えるのではなく学びの構造や環境を変えることで支援するという考え方を取っています。カメラとマイクをオフにして、チャットだけで参加するところから始められます。担任制で、生活リズムに波があっても学べる設計、中学内容の学び直し、授業のアーカイブ視聴に対応しています。

正直な注意点を先に書きます。

  • ニジ高は高校ではありません。卒業資格は提携する通信制高校で取ります。
  • 提携する通信制高校のスクーリングへの参加が必要です。地元の会場で受けられる場合もあります。スクーリングの形や日程は、個別相談会で案内しています。
  • 提携する通信制高校のスクーリングに、ニジ高のスタッフは付き添いません。ニジ高がするのは日程の調整と準備の支援です。不安が強い場合、ここは事前に確かめておいたほうがよい点です。
  • 費用は提携校の分とニジ高の分の両方がかかります。ニジ高の分に高等学校等就学支援金は使えません。金額は学費のご案内をご覧ください。
  • 診断や服薬などの医療の判断は、主治医や専門機関にご相談ください。ニジ高がするのは、学びの構造や環境を変えることによる支援です。

その上で書けることは、ニジ高は提携校以外の通信制高校に在籍しながらでも使えるということです。今すでにどこかの通信制高校に在籍していて、そこを辞めたくないけれど一人で続けるのが難しい場合、在籍校はそのままでニジ高を併用する形が取れます。この場合、卒業資格・スクーリング・単位・評定は在籍する通信制高校のものになります。途中入学(転入・編入)もでき、出願費用は無料です。

ニジ高はNIJINアカデミーの高等部でもあり、NIJINアカデミー全体では累計入学者が約1,000名、現在の在籍は500名超です。不登校の生徒を650名以上サポートしてきました(いずれもグループ・NIJINアカデミー全体の数字です)。メタバースの校舎で、担任や同級生と集まるクラス会議の時間もあります。よくある質問はよくある質問のページにまとめています。

迷ったときの進め方(3ステップ)

やることを3つに絞ります。順番どおりにやれば、10月中には形になります。

  1. 紙1枚に「今の配慮」を書き出す。中学校の定期テストや授業で、実際にしてもらっていることを箇条書きにします。別室、時間延長、座席、ルビ、読み上げ、タブレット、自助具、耳栓——なんでもかまいません。入試の配慮は、中学校で受けている配慮の内容を十分参考にしながら決められます(東京都の要綱の表現)。この1枚が、いちばん強い材料です。
  2. 中学校の担任または特別支援教育コーディネーターに、この記事の3点を伝えて相談する。(a)受検上の配慮を申請したい、(b)志願先の都道府県の要綱で申請の時期と様式を確認したい、(c)志願先の高校との事前相談が要るかを知りたい——この3点です。都道府県の公式ページに時期が出ていない場合が16都道府県あるので、中学校経由で教育委員会に確認してもらうのが最短です。
  3. 同時に「入学後に続けられる形」も並べておく。全日制・定時制・通信制・サポート校の併用を、配慮の申請と並行して見ておきます。配慮が取れた場合と取れなかった場合の両方で進路が残るようにしておくと、返事を待つ期間の不安がずっと軽くなります。

今の高校から移ることを考えている場合は高校 転入、出席日数の心配がある場合は高校 出席日数の記事も参考になります。受検上の配慮の都県ごとの呼び方の違いは、同じNIJINのにじいろ「高校入試の受検上の配慮とは」でも整理されています。

机を離して並べた別室受験の教室。生徒が2人と、後方に立つ教員
別室での受検は、実際に最も多く使われている配慮です
オンラインで学ぶニジ高の生徒

配慮を取ったあとも続けられる形を、一緒に整理します

配慮の申請と並行して、入学後に続けられる学び方も見ておくと、返事を待つ期間の不安が軽くなります。ニジ高は高校ではなく通信制高校サポート校で、卒業資格は提携する通信制高校で取り、その高校のスクーリングへの参加が必要です。カメラとマイクをオフにして参加するところから始められます。

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よくある質問

Q. 診断がないと、受検上の配慮は申請できないのでしょうか。

A. 都道府県の要綱で診断書の提出を求めているのは5都道府県で、「必要に応じて提出」が26、「提出は求めていない」が16でした(令和7年度・文部科学省調査)。また、この調査は、数え方の注記として障害の判断について「医師等の診断の有無は問わない」と明記しています(配慮の要件を定めた文ではなく、調査で数える範囲の話です)。診断書が無いと申請できないという全国共通のきまりは、確認できませんでした。ただし志願先の都道府県が「提出を求める」側だと必要になります。診断書の作成には時間がかかるので、志願先の要綱でどちらかを、早めに中学校経由で確認しておくのが安全です。

Q. 試験時間はどれくらい延ばしてもらえますか。1.3倍や1.5倍と聞きました。

A. 倍率を定めた記載は、今回開いた文部科学省の資料と4都府県の要綱では確認できませんでした。確認できたのは、文部科学省の参考資料に載っている事例で「通常の1.5倍の受検時間」とされたものが1件です。倍率は要綱に書かれた数字ではなく、障害の状態と中学校での配慮の状況をもとに個別に決まります。申請書には「定期考査では○分延長している」のように、中学校での実績を具体的に書くのが効きます。

Q. 配慮を申請すると、合否で不利になりませんか。

A. 文部科学省の告示(対応指針)は、試験等において合理的配慮の提供を受けたことを理由に、その結果を学習評価の対象から除外したり、評価において差を付けたりすることを、不当な差別的取扱いに当たり得る具体例として挙げています。また文部科学省の通知は、障害を理由とした不当な差別的取扱い等がないよう十分に留意するよう都道府県に求めています。制度の作りとしては、配慮を受けたことで不利に扱われないようになっています。

Q. 申請の受付が終わったあとに、配慮が必要になったらどうすればよいですか。

A. 文部科学省の参考資料は、都道府県に対して申請期間に申請していない者であっても、急病や事故などやむを得ない理由により受検上の配慮を申請することも想定されることから、対応方法を示しておくことが重要だと書いています。また、突発的な事故により配慮が必要になった場合にも対応できる体制を取っていると答えた都道府県は38ありました。まず中学校に相談してください。連絡の道は残っています。

Q. 通信制高校の入試でも、配慮を申請できますか。

A. できます。公立(都道府県立)の通信制課程は、公立高校入学者選抜実施要綱の中に選抜が置かれているので、同じ仕組みを使えます。私立の通信制高校は、障害者差別解消法第8条の事業者として2024年4月1日から配慮の提供が義務になっています。ただし通信制の選抜は面接や書類が中心で、学力検査を行うのは323校中91校です。「時間延長」より「面接の形」「日程」「会場」の相談が中心になることが多いと考えて、学校の募集要項を見ながら聞いてみてください。

配慮をお願いすることは、わがままではありません

「これくらいで配慮をお願いしていいのだろうか」と迷う声を、本当によく聞きます。でも、令和7年度の入試では全国で4,936人が実際に配慮を受けていて、自閉症・学習障害・ADHDだけで1,283人います。制度は、使われることを前提に作られています。お願いすることは、ずるをすることではありません。問題の中身と難しさは変わらないまま、受け取り方と出し方の壁だけを下げる——それが受検上の配慮です。

そして、もし配慮を取っても全日制の毎日が想像できない、というところで手が止まっているなら、それはあなたの見立てが正確なのかもしれません。試験の1日を通過することと、そのあと3年間を過ごすことは別の問題です。どちらも同じくらい大事に考えてよいことです。

受検上の配慮の申請と、学校の形から選び直すことは、どちらか一方を選ぶものではありません。両方を並べたまま秋を過ごして大丈夫です。迷っているところをそのまま話せる場所として、個別相談もあります。決めるのは、話してからで十分に間に合います。

オンラインで学ぶニジ高の生徒

オンラインで、青春する。

配慮の相談と進路の相談を、同じ場で整理できます

全国どこからでもカメラ・マイクはオフでOK転入・編入は随時受付

通信制高校サポート校 NIJIN高等学院(ニジ高)/出願費用は無料です。無理に勧めることはありません。


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