通信制高校で学ぶ生徒が、全国で30万人を超える時代になりました。ひと昔前は「特別な事情がある人が選ぶ進路」という印象が強かったかもしれません。しかし今は、不登校経験のある人だけでなく、スポーツや芸能との両立、自分のペースで学びたい人、専門分野に早くから取り組みたい人など、さまざまな理由で選ばれています。
一方で、選択肢が増えた分、「どの学校を選べばいいのか分からない」という悩みも増えています。この記事では、通信制高校の現状を数字で確認しながら、学校選びで大事にしたい考え方、比べる軸、よくある勘違い、保護者の方ができることを整理します。
結論:30万人時代の学校選びの早見
- 通信制高校の生徒は30万人を超え、高校生全体の約9.6%にあたるとされています(報道ベース)。
- 選択肢が多い時代ほど、「知名度」より「本人との相性」を基準にすることが大切です。
- 比べる軸は、学び方・サポート・仲間・進路・費用の5点が目安です。
- 資料だけで決めず、説明会や個別相談で雰囲気を確かめましょう。
- 合わなければ転入・編入で見直せる場合もあるため、完璧を求めすぎなくて大丈夫です。
通信制高校で学ぶ生徒は
全国で30万人を超える規模に
出典:文部科学省「学校基本調査」ほか報道
数字で見る「通信制高校」の今
通信制高校の生徒数は、近年増加傾向にあります。神奈川県では、公立中学校卒業者のうち約7.6%(令和7年度)が、東京都でも約7.12%(速報)が通信制高校に進んでいるとされます。地域によっては、およそ13人に1人が通信制を選んでいる計算になります。
また、令和7年度の学校基本調査では、通信制の現役大学進学率は約22%(22.27%)で、前年度の21.22%から上昇しました。全日制・定時制の約59%(59.49%)と比べるとまだ差はありますが、進学を目指す環境が整ってきていると考えられます。ただし、進学を前提としない生徒も含まれる数字のため、一概に「通信制は進学に不利」とは言えません。
なぜ通信制を選ぶ人が増えているのか
- 全日制の毎日通う形が合わず、自分のペースで学びたい人が増えている。
- オンライン授業など、学び方の選択肢が広がった。
- スポーツ・芸術・仕事など、学校外の活動と両立したい人が選びやすくなった。
- 「通信制」への社会的なイメージが、少しずつ変わってきた。
- サポート校など、学習・生活面を支える仕組みが充実してきた。
こうした背景から、通信制高校は「全日制に合わなかった人の受け皿」から、「自分に合う学び方を選ぶ進路」へと、捉え方が変わってきています。
選択肢が増えた時代に、迷わないための5つの軸
通信制高校を比べる
5つの軸
| 軸 | 確認したいこと |
|---|---|
| 学び方 | 通学・オンライン・ミックス。生活リズムに合うか |
| サポート | 担任・相談役の人数、遅れたときの支援 |
| 仲間 | 交流の機会、距離感を調整できるか |
| 進路 | 進学・就職・起業の支援内容と実績 |
| 費用 | 総額、就学支援金の対象、追加費用の有無 |
※学校ごとに内容は異なります。同じ質問で各校を比べてください。
① 学び方:生活リズムに合うか
週に何日通うのか、オンラインだけで卒業できるのか、スクーリングは何日あるのかを確認します。朝が苦手、人混みが苦手、体調に波がある、といった事情があるなら、オンライン中心や登校日数を調整できる学校のほうが続けやすい可能性があります。
② サポート:つまずいたとき、誰が気づくか
自由度が高い分、遅れや悩みに気づいてくれる人がいるかが継続のカギです。担任や相談役の人数、面談の頻度、課題が滞ったときの連絡方法を確認しましょう。「相談してください」という受け身ではなく、先に声をかけてくれる体制があるかが目安です。
③ 仲間:距離感を選べるか
友達づくりを重視する人もいれば、一人で落ち着いて学びたい人もいます。クラス活動やイベント、オンライン交流の頻度と、参加の自由度を確認しましょう。関わりの量より、自分で距離感を調整できるかが大切です。
④ 進路:卒業後まで支えてくれるか
大学進学、専門学校、就職、起業など、お子さんが思い描く進路に対して、学校がどのような支援をしているかを聞いてみます。進路面談の頻度、受験対策の内容、総合型選抜への対応、卒業生の進路の具体例などは、説明会で確認できます。数字だけでなく、どんなタイプの生徒がどの道に進んだかまで聞けると、参考になります。
⑤ 費用:総額と支援制度を確認する
公立の通信制は比較的費用を抑えやすい一方、私立は授業料やサポート費用がかかる場合があります。高等学校等就学支援金は、世帯の状況などの条件により受けられることがあり、私立通信制では令和8年度から支給上限額が月額28,100円(年額337,200円)とされています。自治体の上乗せ制度もあるため、実際の負担額は各校と自治体の窓口で確認してください。
「30万人」の中身を、もう少し丁寧に見る
30万人という数字は大きいですが、その中身は一様ではありません。学び方や目的の異なる生徒が、さまざまな学校で学んでいます。ここでは、生徒の背景を大まかに整理してみます。
- 全日制から転入・編入してきた生徒:学校生活が合わず、環境を変えた人。
- 中学卒業と同時に入学した生徒:最初から通信制を選んだ人。
- スポーツ・芸術・仕事と両立する生徒:学業以外の活動に時間を割きたい人。
- 学び直しを目的とする生徒:基礎から着実に学び直したい人。
- 専門分野を深めたい生徒:語学・IT・デザインなどを早くから学びたい人。
このように、「通信制高校の生徒」とひとくくりにしても、目的はさまざまです。自分や家族が何を重視するのかを整理することが、学校選びの第一歩になります。
タイプ別:こんな人にはこんな学校が合いやすい
体調や気持ちに波があり、毎日通うのが負担な人
オンライン中心で、登校日数や授業時間を柔軟に調整できる学校が候補になります。調子の悪い日に無理せず休める、動画授業を見返せる、といった仕組みがあるかを確認しましょう。
人との関わりは欲しいが、大人数は苦手な人
少人数のグループ、オンラインでの小さな交流、距離感を調整できる参加ルールがある学校が合いやすい傾向があります。「必ず参加」ではなく「参加したいときに参加できる」仕組みかどうかが目安です。
大学進学や専門分野を早くから意識している人
受験科目の学習支援、模試、総合型選抜の対策、専門講座や外部連携のある学校を重視して選びましょう。自己管理が求められるため、外から支えてくれる仕組みの有無が大切です。
やりたいことがまだ見つかっていない人
プロジェクト型の学びや課外活動、外部との交流機会が豊富な学校が向いている可能性があります。いろいろ試せる環境の中で、自分の関心を探していけます。目標が決まっていなくても、入学して問題ありません。
もちろん、これはあくまで一般的な傾向です。実際の相性は、一人ひとり違います。タイプ別の目安を参考にしながら、最終的には、本人が「ここなら通えそう」と感じられるかどうかを大切にしてください。
よくある勘違い:学校選びで思い込みやすいこと
勘違い①「生徒数が多い学校ほど安心」
生徒数が多いことは、一つの目安にはなりますが、お子さんに合うかどうかを示すものではありません。大規模校は選べるコースが多い一方、一人ひとりへの目配りが難しくなる場合もあります。少人数校は手厚く見てもらえる一方、選べる学びが限られる場合もあります。どちらが良いかは、本人の性格や目的によって変わります。
勘違い②「有名な学校なら間違いない」
広告や知名度は、学校の質を示す指標とは限りません。実際に学ぶ内容、先生との関係、仲間との関わり、卒業後の進路など、具体的な中身を確認することが重要です。
勘違い③「通信制は、全日制より楽」
自由度が高い分、自己管理が求められます。単位の修得には、レポート・スクーリング・試験が必要で、卒業には3年以上の在籍と74単位以上の修得、特別活動への参加が一般に求められます。楽な進路というより、「自分で学び方を設計する進路」と捉えると実態に近いでしょう。
勘違い④「一度決めたら変えられない」
通信制高校には、転入・編入の仕組みがあります。入学後に合わないと感じた場合は、学校を見直せる場合もあります。ただし、単位の引き継ぎや時期の制約があるため、気になる場合は早めに相談しましょう。
学校選びの進め方:説明会・個別相談を活用する
学校選びの
進め方の目安
焦って決めず、気になる点は納得いくまで確認しましょう。
説明会・個別相談で見ておきたいこと
パンフレットやウェブサイトだけでは、学校の雰囲気や先生の人柄は伝わりません。説明会や個別相談に参加して、実際に話してみることで、「ここなら自分のペースで頑張れそう」という感覚がつかめることがあります。次の点を意識して参加してみてください。
- 先生や職員が、お子さん本人の話をきちんと聴いてくれるか。
- 入学後の1週間の過ごし方を、具体的に説明してくれるか。
- メリットだけでなく、注意点や向き不向きも正直に伝えてくれるか。
- 費用の総額(授業料・施設費・サポート費など)が分かりやすく示されているか。
- 合わなかった場合の相談先や、転校の考え方を教えてくれるか。
質問に対する答え方は、入学後のサポートの姿勢を映すことがあります。具体的に、誠実に答えてくれる学校は、入学後も信頼しやすいと考えられます。
入学後に「合わなかった」と感じたときの考え方
どれだけ慎重に選んでも、入学後に「思っていたのと違った」と感じることはあります。そのときは、「選択を間違えた」と自分を責めすぎず、まず何が合わなかったのかを具体的に分けて考えてみましょう。学び方なのか、サポートなのか、人間関係なのか、費用なのか。原因によっては、担任や相談役の先生に相談するだけで解消する場合があります。
相談しても改善が難しい場合は、コースの変更や、他の学校への転入・編入を検討する選択肢もあります。通信制高校には、前の学校で修得した単位を引き継げる仕組みがありますが、引き継げる範囲や時期には制約があります。早めに学校へ相談し、必要な手続きと期限を確認しておくと安心です。
環境が合わないと感じる時期は、体調や気持ちが不安定になっていることもあります。つらさが続く場合は、一人で抱え込まず、家族、学校の先生、スクールカウンセラーなどに話してみてください。24時間子供SOSダイヤル(0120-0-78310)のような相談窓口もあります。
選んだあとに大切にしたい3つの習慣
- 毎日同じ時間に、短くてもよいので学習や活動の時間を確保する。生活リズムを崩さないことが、自由度の高い環境では特に重要です。
- 週に一度、できたことと困っていることを、先生や家族に話す。小さな不安を早めに共有すると、大きな遅れを防げます。
- 月に一度、「やってみて面白かったこと」を振り返る。やりたいことの手がかりが、少しずつ蓄積されます。
これらは、大げさなものではなく、小さく続けられるものばかりです。できなかった日があっても、翌日からまた再開すれば問題ありません。
通信制高校を選ぶ前に、家族で話し合っておきたいこと
学校選びに入る前に、家族で次の3点を話し合っておくと、判断がぶれにくくなります。1つ目は、「何を一番大切にしたいか」。安心して通えること、大学進学、好きなことを伸ばすこと、生活リズムを整えること。優先順位を共有しておくと、比較がしやすくなります。2つ目は、「費用と通学の現実的な条件」。家計の状況、通学可能な範囲、オンラインの環境などを、具体的に確認します。3つ目は、「うまくいかなかったときの考え方」。合わなければ見直してよい、という前提を共有しておくと、お子さんも気持ちが軽くなります。
話し合いの場では、結論を急がないことも大切です。「今日は考えを出し合うだけ」と決めておくと、お互いに本音を話しやすくなります。お子さんの意見を最後まで聴き、否定せずに受け止める姿勢が、納得のいく選択につながります。
最後に、データの見方についても触れておきます。通信制高校の生徒数や進学率といった数字は、全体の傾向をつかむのに役立ちますが、お子さん一人ひとりに当てはまるとは限りません。平均や全体像よりも、「うちの子にとって、どの環境が安心できるか」という個別の視点を優先してください。
数字は判断材料の一つです。それを踏まえつつ、実際に学校の先生と話し、校内の雰囲気に触れ、本人の反応を確かめる。この積み重ねが、後悔の少ない選択につながります。また、一度決めたあとも、半年に一度は「今の環境は合っているか」を家族で振り返る習慣を持つと、早めの軌道修正がしやすくなります。
学校の「数」が増えた今、焦らず比べることができるのは、むしろ大きなメリットです。一つひとつの学校の特徴を丁寧に見比べ、本人が納得して選んだ学校であれば、入学後の学びにも前向きに取り組みやすくなります。選び方の過程そのものが、これからの学びを支える土台になると考えてください。
また、迷う時間も無駄ではありません。比べる中で、お子さん自身が「自分は何を大切にしたいのか」に気づくことが多くあります。
保護者の方へ:選択肢の多さに戸惑ったとき
通信制高校の選択肢が多いことは、お子さんにとって選べる自由がある反面、保護者の方にとっては「何を基準に決めればいいのか」という戸惑いにもつながります。まず、「周りがどうしているか」より、「うちの子が安心して通い続けられるか」を軸にしてください。
学校選びは、お子さんが主役です。親が先回りして決めすぎると、入学後に「自分で選んでいない」という気持ちが残りやすくなります。複数の学校を一緒に見て、お子さん自身が「ここがいい」と言える状態を目指しましょう。お子さんが迷っているときは、「どんなところなら通えそう?」と、気持ちを聴く質問から始めてみてください。
また、周囲の意見に左右されすぎないことも大切です。親戚や知人から「通信制は大変では」と言われることもあるかもしれませんが、実際に通っているお子さんや、学校の先生の話を聞いて、自分たちの目で確かめた情報を基準にしましょう。
NIJIN高等学院では、オンラインでの学校説明会や個別相談を随時行っています。「まだ迷っている」という段階でも、お子さんと一緒に、あるいは保護者の方だけでも参加できますので、お気軽にご相談ください。
オンライン時代の通信制高校:場所に縛られない学び
オンライン授業の普及により、通信制高校の学び方は大きく広がりました。地方に住んでいても、海外にいても、自宅から授業や交流に参加できる学校があります。通学に時間がかからない分、学習や活動に使える時間が増えるのも大きな利点です。
一方で、オンライン中心の学びでは、画面越しでも人との関わりを感じられるかどうかが重要になります。ホームルームの有無、少人数のグループ活動、オンラインイベント、先生との個別面談など、つながりを作る仕組みを確認してみてください。オンラインでも「ひとりぼっち」にならない工夫があるかどうかが、続けやすさに大きく影響します。
NIJIN高等学院は、「オンラインで青春」をコンセプトに、全国どこからでも、海外からでも参加できる通信制サポート校です。仲間と関わるイベントやコミュニティを大切にしながら、一人ひとりのペースに合わせた学びを支えています。
これからの時代に求められる「学ぶ力」
通信制高校の生徒が増えている背景には、社会全体の変化もあります。オンラインで学ぶことが当たり前になり、学校の外にも学びの場が広がる中で、「どこで学ぶか」より「何を、どう学ぶか」が重視される時代になってきました。自分で計画を立て、情報を集め、行動に移す力は、大学でも社会でも求められる力です。
通信制高校は、こうした力を育てやすい環境でもあります。もちろん、自由度が高いだけでは身につきません。先生や仲間のサポートを受けながら、小さな成功体験を積み重ねられる環境かどうかが重要です。学校を選ぶ際は、入学後の「伸びしろ」を見据えて、サポートの仕組みを確認してみてください。
よくある質問
報道ベースでは、全国で30万人を超え、高校生全体の約9.6%にあたるとされています。年々増加傾向にあり、進路の選択肢として定着しつつあります。
学校数や選択肢が増えるため、比べる軸を持たないと迷いやすくなります。学び方・サポート・仲間・進路・費用の5点を同じ質問で確認するのが目安です。
神奈川県で約7.6%(令和7年度)、東京都で約7.12%(速報)とされ、地域によっては約13人に1人にあたります。
知名度は相性を示すものではありません。学び方やサポート体制が本人に合うかを、説明会や個別相談で具体的に確認することが大切です。
転入・編入の仕組みがあり、変更できる場合があります。単位の引き継ぎや時期の制約があるため、早めに各校へ相談してください。
世帯の状況などの条件により、高等学校等就学支援金が受けられる場合があります。私立通信制では、令和8年度から支給上限額が月額28,100円(年額337,200円)とされています。
まとめ
- 通信制高校で学ぶ生徒は30万人を超え、選択肢が増えた分、選び方が重要になっています。
- 比べる軸は「学び方・サポート・仲間・進路・費用」の5点。同じ質問で確認すると違いが見えます。
- 資料だけで決めず、説明会や個別相談で、本人が納得できるかを確かめましょう。
選択肢が増えた今だからこそ、「自分に合うか」を基準に、じっくり選んでください。
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執筆者:ニジ高編集部 2026年10月8日更新
参考文献
- 文部科学省「学校基本調査」(令和7年度)
- 文部科学省「高等学校通信教育について」
- 文部科学省「高等学校等就学支援金制度」
- 神奈川県・東京都 公立中学校卒業者の進路状況(令和7年度)



