通信制高校からでも、理学療法士になれます。理学療法士になるには、高校を卒業したあと国が指定した大学・短大・専門学校(養成校)で3年以上学び、理学療法士国家試験に合格する必要があります。通信制高校の卒業は全日制と同じ「高等学校卒業」なので、この道のりは全日制の高校から目指す人とまったく同じです。
この記事では、理学療法士及び作業療法士法、厚生労働省の国家試験の発表、公益社団法人 日本理学療法士協会の情報をもとに、通信制高校から理学療法士になるまでの流れ、養成校の種類、最新の国家試験の合格率、作業療法士との違い、入試と在学中の準備を整理しました。
結論:通信制高校から理学療法士になれる?の早見
- なれます。国家試験の受験資格は「大学に入学できる人」が養成校で3年以上学ぶことで、通信制高校の卒業でも条件は同じです。
- 養成校は、4年制大学・短期大学(3年制)・専門学校(3年制または4年制)などがあります。日本理学療法士協会の一覧では274校です。
- 国家試験は年1回、2月です。第61回の合格率は全体89.7%、新卒者94.9%でした。
- 既卒者の合格率は低め。全体と新卒者の差から計算すると約35%で、卒業した年に合格できるかが大きな分かれ目です。
- 在学中の準備は、卒業に必要な単位を確実に取ること、生物・数学などの基礎、体力、人と話すことへの慣れ、養成校の見学です。
通信制高校からでも理学療法士になれる理由
通信制高校は、学校教育法にもとづく高等学校の「通信制の課程」です。卒業すれば全日制・定時制と同じ高等学校卒業になり、大学・短大・専門学校を受ける資格も同じように得られます。
理学療法士の資格は、理学療法士及び作業療法士法という法律で決められています。この法律の第11条では、国家試験を受けられるのは、学校教育法の規定で大学に入学できる人で、文部科学大臣が指定した学校、または都道府県知事が指定した理学療法士養成施設で、3年以上、理学療法士として必要な知識と技能を身につけた人とされています。ここに「全日制の高校を出ていること」という条件はありません。
つまり、理学療法士になれるかどうかを決めるのは、出身高校の課程ではなく、養成校に入って卒業できるかと国家試験に合格できるかの2つです。同じ医療系の進路は通信制高校から看護師の記事でもまとめています。
ちなみに、法律では理学療法を「身体に障害のある人に、主に基本的な動作の能力の回復を図るため、運動をしてもらったり、電気・温熱などの物理的な手段を加えたりすること」という意味で定めています。理学療法士は、医師の指示のもとで、これを仕事として行う人です。
理学療法士になるまでの流れ|養成校3年以上→国家試験→免許
理学療法士になるまでの流れは、全国どこでも同じです。大きく分けると次の順番で進みます。

- 高校を卒業する(見込みを含む)。通信制高校の卒業で問題ありません。
- 養成校の入試に合格する。大学・短大・専門学校それぞれに、総合型選抜(AO)・推薦・一般などの入試があります。
- 養成校で3年以上学ぶ。授業は一般教養科目、専門基礎科目、専門科目、臨床実習の4種類です。病院や施設での臨床実習も含まれます。
- 理学療法士国家試験に合格する。試験は年1回、2月に行われ、合格発表は3月です。
- 免許を申請し、登録する。理学療法士は厚生労働大臣の免許を受けて働きます。
大切なのは、養成校を卒業(見込み)しないと国家試験そのものを受けられないことです。病院でリハビリの助手として働いても、それだけでは受験資格になりません。理学療法士を目指すなら、どの養成校に進むかを決めることが最初の一歩になります。
養成校の種類|大学・短大・専門学校の違い
日本理学療法士協会によると、理学療法士の養成校には、4年制大学、短期大学(3年制)、専門学校(3年制または4年制)があります(ほかに視覚障害者を対象とする特別支援学校もあります)。協会の養成校一覧では、学校総数274校、定員総数14,142名(募集停止の学校を含む)とされています。どの学校を卒業しても、受ける国家試験は同じです。
| 4年制大学 | 短期大学 | 専門学校 | |
|---|---|---|---|
| 修業年数 | 4年 | 3年 | 3年制または4年制 |
| 指定する人 | 文部科学大臣 | 文部科学大臣 | 都道府県知事(理学療法士養成施設) |
| 卒業時の学位など | 学士 | 短期大学士 | 専門士(3年制)・高度専門士(4年制)の学校もある |
| 向いている人 | 教養や研究も含めて幅広く学びたい人、大学院も考えたい人 | 3年で早く国家試験を受けたい人 | 実技や国家試験対策に集中したい人、夜間部で働きながら学びたい人 |
※理学療法士及び作業療法士法第11条、公益社団法人 日本理学療法士協会「理学療法士になるには」「養成校一覧」(2026年10月確認)。専門士・高度専門士の称号は、文部科学大臣の認定を受けた課程の場合です。学費や入試の内容は学校ごとに違います。
協会の養成校一覧には、学校ごとに昼間・夜間の定員と年限が載っています。専門学校の中には夜間部を置く学校もありますが、募集を停止している夜間部もあるので、気になる学校は最新の募集要項で確認してください。
学ぶ量は多めです。厚生労働省の医道審議会で示された見直しにより、2020年4月の入学生から、理学療法士の養成課程は総単位数101単位以上、うち臨床実習20単位とされています。病院や施設で、実際の患者さんの評価やリハビリに関わる実習は、学生生活の大きな山場です。将来働きたい分野(病院、スポーツ、高齢者の在宅リハビリなど)に合った実習先や授業があるかも、学校選びのポイントになります。

理学療法士国家試験の内容と最新の合格率
理学療法士国家試験は、厚生労働省が年1回実施しています。最新の公告では、第62回は筆記試験が2027年(令和9年)2月21日(日)、合格発表が3月23日(火)の予定です。試験の科目は次のとおりです。
| 区分 | 科目 |
|---|---|
| 一般問題 | 解剖学、生理学、運動学、病理学概論、臨床心理学、リハビリテーション医学(リハビリテーション概論を含む)、臨床医学大要(人間発達学を含む)、理学療法 |
| 実地問題 | 運動学、臨床心理学、リハビリテーション医学、臨床医学大要(人間発達学を含む)、理学療法 |
| 受験手数料 | 10,100円 |
第61回の合格基準は、一般問題(1問1点)と実地問題(1問3点)を合わせた総得点が277点中167点以上、かつ実地問題が117点中41点以上でした(採点から除いた問題を反映した点数)。
| 回(実施) | 受験者数 | 合格率(全体) | 合格率(新卒者) |
|---|---|---|---|
| 第61回(2026年2月) | 12,436人 | 89.7% | 94.9% |
| 第60回(2025年2月) | 12,691人 | 89.6% | 95.2% |
| 第59回(2024年2月) | 12,629人 | 89.2% | 95.2% |
| 第58回(2023年2月) | 12,948人 | 87.4% | 94.9% |
※厚生労働省「第58回〜第61回理学療法士国家試験及び作業療法士国家試験の合格発表について」「理学療法士国家試験の施行」(2026年10月確認)。

全体の合格率は約9割ですが、ここで見てほしいのは新卒者と既卒者の差です。第61回は、受験者12,436人のうち新卒者が11,366人、合格者11,156人のうち新卒者が10,782人でした。差をとると、既卒者は1,070人が受けて374人が合格、合格率は約35.0%になります。
「9割受かるから簡単」と考えるより、養成校で3〜4年間、授業と実習を積み重ねた人が、卒業した年に合格していると考えるほうが実態に近いでしょう。見学のときに、その学校の卒業生の合格率や、国家試験対策の授業があるかを聞いてみると、学校選びの参考になります。
理学療法士と作業療法士の違い
理学療法士と並んで名前が出るのが作業療法士です。どちらも同じ法律で定められたリハビリの国家資格ですが、目的が少し違います。
| 理学療法士(PT) | 作業療法士(OT) | |
|---|---|---|
| 法律での目的 | 主に基本的動作能力の回復 | 主に応用的動作能力・社会的適応能力の回復 |
| 対象 | 身体に障害のある人 | 身体または精神に障害のある人 |
| 方法の例(法律の文言) | 治療体操などの運動、電気刺激・マッサージ・温熱などの物理的手段 | 手芸、工作などの作業 |
| なるまでの道 | 養成校で3年以上→国家試験 | 養成校で3年以上→国家試験 |
| 第61回の合格率 | 89.7%(新卒94.9%) | 91.2%(新卒96.6%) |
イメージとしては、理学療法士は「起き上がる・立つ・歩く」といった体の基本の動き、作業療法士は「食事・着替え・家事・仕事」など生活の中の動きや心の面にも関わる、と考えるとわかりやすいでしょう。なお、作業療法士の資格を持つ人は、養成校で2年以上学べば理学療法士国家試験を受けられる、という決まりもあります。迷っている人は、両方の学科がある学校の見学に行き、授業の内容を比べてみてください。
養成校の入試|評定・面接で見られること
養成校の入試は、大学・短大・専門学校ごとに方式が違います。主な入試の形と、通信制高校の人が気をつけたい点を整理します。
- 総合型選抜(AO):志望理由書や面接、小論文などで選ぶ方式です。「なぜ理学療法士になりたいのか」「どんな分野で働きたいのか」を自分の言葉で話せるかが大切になります。
- 学校推薦型選抜:高校の推薦が必要で、評定平均(成績)の基準を設ける学校があります。通信制高校でも、レポートやスクーリング、テストの積み重ねが評定になります。推薦の仕組みは通信制高校の指定校推薦の記事も参考にしてください。
- 一般選抜:学力試験で選ぶ方式です。国公立大学では大学入学共通テストを使うのが一般的で、医療系の学科では理科や数学が課されることもあります。
医療系の養成校では、面接を行う学校もあります。面接では、出席やレポートへの取り組み、通信制高校を選んだ理由を聞かれることもあるかもしれません。そのときは隠さず、自分のペースで学ぶ中で何を身につけたかを具体的に話せるようにしておくと安心です。出願条件や評定の基準は必ず各校の募集要項で確認してください。大学進学全般は通信制高校から大学進学の記事でまとめています。

通信制高校にいるうちにできる5つの準備
- 卒業に必要な単位を、期限どおりに取る。国家試験の受験資格は「大学に入学できる人」が前提です。卒業が遅れると、養成校への入学も国家試験も後ろにずれます。推薦を考えるなら、評定も意識しましょう。
- 生物と数学・物理の基礎に触れておく。国家試験の科目には解剖学・生理学・運動学があります。体のしくみは生物、関節や筋肉にかかる力の考え方は物理や数学とつながっています。通信制高校で履修できる科目は学校によって違うので、志望校の入試科目と合わせて先生に相談してください。
- 体力をつけておく。理学療法士は、患者さんの体を支えたり、一緒に歩いたりする仕事です。養成校の臨床実習も長期間に及びます。散歩やストレッチなど、続けられる運動から始めてみましょう。
- 人と話すことに少しずつ慣れる。リハビリは、患者さんの気持ちや生活の様子を聞きながら進めます。アルバイトやボランティアで人と話す機会をつくるのもよい準備です。働き方は通信制高校とバイトの両立も参考にしてください。
- 養成校を見学し、2〜3校を比べる。大学・短大・専門学校のどれにするか、国家試験の合格率、実習先、学費を比べます。オープンキャンパスでは、理学療法の体験授業がある学校も多いです。

学年別スケジュールと学費の準備
高校卒業後に養成校へ進む場合の、おおまかな流れです。
| 時期 | やること |
|---|---|
| 高1 | レポートとスクーリングのペースをつかむ。生物などの基礎科目を、わからないままにしない |
| 高2 | 理学療法士と作業療法士の違いを調べ、養成校のオープンキャンパスや体験授業に行く。大学・短大・専門学校のどれが合うか考える |
| 高3の春〜夏 | 志望校を決め、総合型選抜・推薦・一般の入試の条件と、学費・奨学金を確認する。志望理由を書き出す |
| 高3の秋〜冬 | 出願・受験。並行して、卒業に必要な単位を取り切る |
| 卒業後 | 養成校で3〜4年学び、最終学年の2月に国家試験。合格したら免許を申請して働き始める |
学費は、国公立か私立か、大学か専門学校か、3年制か4年制かで大きく違います。オープンキャンパスでは、入学金・授業料だけでなく、教科書代、実習のための交通費や宿泊費、国家試験対策の費用まで含めて聞いておくと安心です。
- 高等教育の修学支援新制度:世帯の収入などの要件を満たすと、国の確認を受けた大学・短大・専門学校などで、授業料・入学金の減免と、返さなくてよい給付型奨学金を受けられます。2025年度からは、多子世帯の学生は所得制限なく授業料等の減免の対象になりました。志望校が対象校かどうかを確認してください。
- 日本学生支援機構の奨学金:貸与型の奨学金もあります。高校在学中に予約申し込みができる時期があるので、高3の春には調べ始めるのがおすすめです。
保護者の方は、お子さんと一緒に見学に行くことと、学費や奨学金を一緒に調べることが大きな支えになります。通信制高校に通っていることで、養成校の入学資格や国家試験の受験資格が変わることはありません。
よくある誤解
- 「通信制高校からは医療系の学校に入りにくい」:国家試験の受験資格は「大学に入学できる人」が前提で、通信制高校の卒業でも同じです。入試の基準は学校ごとの募集要項で決まります。
- 「病院でリハビリの手伝いをすれば、そのうち理学療法士になれる」:養成校で3年以上学ばないと、国家試験は受けられません。
- 「合格率9割だから、誰でも受かる」:新卒者は約95%ですが、計算すると既卒者は約35%です。在学中の積み重ねが大切です。
- 「理学療法士と作業療法士は同じ仕事」:どちらもリハビリの国家資格ですが、法律での目的や方法が違います。
理学療法士を目指す進路を、ひとりで決めなくていい
私たちNIJIN高等学院(ニジ高)は、オンライン中心の通信制サポート校です。担任がつき、レポートや進路の相談を一緒に進められます。全国の仲間と取り組むプロジェクトや行事もあり、カメラとマイクをオフにしてチャットだけで参加するところから始められます。
正直な注意点も書いておきます。ニジ高そのものは高校ではありません。卒業資格は提携する通信制高校で取り、提携校のスクーリングへの参加が必要です。また、ニジ高は理学療法士の養成校ではないので、国家試験の受験資格はニジ高では得られません。卒業後に大学・短大・専門学校へ進む必要があります。費用は提携校の分とニジ高の分がかかり、ニジ高の分には就学支援金は使えません。金額は学費のご案内で公開しています。

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よくある質問
なれます。通信制高校を卒業すれば全日制と同じ「高等学校卒業」で、大学に入学できる資格があります。理学療法士国家試験は、大学入学資格がある人が、指定を受けた大学・短大・専門学校(養成校)で3年以上学べば受けられます。出身高校の課程は関係ありません。
高校卒業後、養成校で3年以上学びます。4年制大学なら4年、短期大学は3年、専門学校は3年制または4年制です。卒業する年の2月に国家試験を受け、合格して免許を登録すると理学療法士として働けます。
厚生労働省の発表では、第61回(令和8年2月実施)の合格率は全体89.7%、新卒者94.9%でした。全体と新卒者の差から計算すると、既卒者は約35%と低く、在学中にしっかり準備して卒業した年に合格することが大切です。
法律では、理学療法は主に基本的動作能力(起きる・立つ・歩くなど)の回復を図るもの、作業療法は応用的動作能力や社会的適応能力の回復を図るものとされています。どちらも国家資格で、養成校で3年以上学んで国家試験に合格する点は同じです。
まずは卒業に必要な単位を確実に取ることです。そのうえで、国家試験の科目に解剖学・生理学・運動学があるため、生物や、計算に使う数学・物理の基礎に触れておくと入学後の助けになります。履修できる科目は学校によって違うので、先生に確認してください。
「理学療法士になりたい」は、どの高校からでも目指せる
理学療法士への道は、通信制高校かどうかでは決まりません。決めるのは、高校を卒業したあとに養成校へ進み、3年以上の授業と実習をやり切り、国家試験に向けて準備できるかです。まずは気になる養成校を2〜3校選び、オープンキャンパスや体験授業に行ってみてください。
通信制高校の時間の使い方は、自分で決められます。その時間を、基礎科目の学び直しや体力づくり、人と話す経験に少しずつ使っていけば、卒業するころには「なぜ理学療法士になりたいのか」を自分の言葉で話せるようになっているはずです。焦らず、一歩ずつで大丈夫です。
進路のことを誰かと一緒に考えたくなったときのために、相談の入口を置いておきます。

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参考:理学療法士及び作業療法士法(第2条・第11条・第15条)/厚生労働省「理学療法士国家試験の施行」(第62回)、「第61回理学療法士国家試験及び第61回作業療法士国家試験の合格発表について」ほか第58〜60回の合格発表、医道審議会理学療法士作業療法士分科会議事録(2018年3月15日)/公益社団法人 日本理学療法士協会「理学療法士になるには」「養成校一覧」「理学療法士とは」/文部科学省「高等教育の修学支援新制度」(いずれも2026年10月確認)

