通信制高校からでも、調理師になれます。調理師免許の学歴の条件は「高等学校の入学資格があること(中学校卒業など)」で、全日制か通信制かは問われません。厚生労働大臣が指定した調理師養成施設で1年以上学ぶか、飲食店などで2年以上調理の仕事をして調理師試験に合格するか、どちらかの道で免許を申請できます。
ただし、注意したい点もあります。通信教育で調理師を養成することは認められていないため、通信制高校のレポートとスクーリングだけで調理師免許が取れるわけではありません。この記事では、厚生労働省や都道府県の公式情報をもとに、2つの道のちがい、調理師試験の受験資格の細かい条件、最新の合格率、免許の申請、そして通信制高校にいるうちにできる準備を整理しました。
結論:通信制高校から調理師になれる?の早見
- なれます。学歴の条件は「高校の入学資格」なので、通信制高校の在籍・卒業は不利になりません。
- 道は2つ。①調理師養成施設(調理師専門学校など)で1年以上学ぶと、試験なしで免許を申請できます。②飲食店や給食施設で2年以上調理の仕事をして、調理師試験に合格する道もあります。
- 通信制高校の勉強だけでは免許は取れません。国のガイドラインで、通信教育による調理師の養成は認められていません。
- 調理師試験の合格率は、全国で64.0%(令和6年度)。都道府県によって47.3%〜80.0%と差があります。
- アルバイトの経験も、条件を満たせば受験資格になります。ただし「1日6時間以上かつ週4日以上」などの条件があり、配膳や皿洗いが中心の期間は数えられません。
通信制高校からでも調理師になれる理由
調理師は、調理師法という法律で決められた資格です。福島県の案内では、調理師は「調理師の名称を用いて調理の業務に従事することができる者として都道府県知事の免許を受けた者」と説明されています。
免許を受けるための学歴の条件は、どちらの道でも「高等学校の入学資格を有すること」です。つまり中学校を卒業していれば条件を満たしていて、高校をどの課程で卒業したか、あるいは在学中かどうかは問われません。通信制高校は学校教育法にもとづく正式な高校なので、卒業すれば全日制と同じ「高等学校卒業」になり、調理師専門学校への進学でも同じ扱いです。
調理師になれるかどうかを決めるのは、出身高校ではなく、養成施設を卒業できるか、または実務経験を積んで試験に合格できるかです。通信制高校から美容師や保育士を目指す道は、通信制高校から美容師、通信制高校から保育士の記事でまとめています。
調理師免許の取り方は2つ|養成施設か、実務2年+調理師試験か
千葉県や福島県の案内をもとに、2つの道を並べると次のようになります。

| ①調理師養成施設ルート | ②実務経験+調理師試験ルート | |
|---|---|---|
| 学歴の条件 | 高校の入学資格(中学校卒業など) | 高校の入学資格(中学校卒業など) |
| 必要なこと | 厚生労働大臣が指定した養成施設で1年以上学ぶ | 飲食店や給食施設などで2年以上調理の仕事をする |
| 試験 | なし(卒業すれば免許を申請できる) | 都道府県知事が行う調理師試験に合格する |
| 向いている人 | 高校卒業後、料理の勉強に集中したい人 | 働きながら、学費をおさえて目指したい人 |
※千葉県「調理師免許について」、福島県「調理師・製菓衛生師について」(2026年10月確認)。調理師試験は全国どこの都道府県でも受験できます(千葉県)。
実際に免許を受けた人の数を見ると、2つの道はほぼ半分ずつです。厚生労働省の資料によると、令和6年度に新しく交付された調理師免許は2万2,771件で、そのうち養成施設の卒業によるものが1万1,053件、試験合格によるものが1万1,718件でした。どちらか一方が「正しい道」というわけではなく、生活や費用に合わせて選ばれていることがわかります。

ルート1:調理師養成施設(専門学校など)で1年以上学ぶ
調理師養成施設は、厚生労働大臣が指定した学校です。卒業すれば調理師試験を受けずに免許を申請できるので、高校卒業後に料理の道へ進むと決めている人には、いちばんまっすぐな道です。千葉県の一覧を見ると、調理師専門学校のほか、高等専修学校の調理科や、高校の調理科も養成施設に指定されています。
厚生労働省の「調理師養成施設指導ガイドライン」では、学ぶ内容と時間の最低ラインが決められています。
| 科目 | 最低時間数 |
|---|---|
| 食生活と健康 | 90時間 |
| 食品と栄養の特性 | 150時間 |
| 食品の安全と衛生(実習30時間以上を含む) | 150時間 |
| 調理理論と食文化概論 | 180時間 |
| 調理実習 | 300時間 |
| 総合調理実習 | 90時間 |
※厚生労働省「調理師養成施設指導ガイドライン」(令和3年4月1日適用)別表1。合計960時間。学校によっては、これより多くの時間を設けています。
ガイドラインでは、昼間の課程(1年以上)は授業が週38時間以内、夜間の課程(1年6か月以上)は週24時間以内とされています。夜間の課程なら、昼間に働きながら学ぶこともできます。一方で、「通信教育による調理師の養成は認められないこと」とはっきり書かれています。調理実習や衛生の実習が欠かせないため、自宅学習だけで完結する調理師の課程はありません。
専門学校の学費は学校ごとに違いますが、世帯の収入などの要件を満たせば、国の確認を受けた専門学校で「高等教育の修学支援新制度」(授業料の減免と給付型奨学金)を使える場合があります。志望校が対象校かどうか、オープンキャンパスで確認しておくと安心です。

ルート2:実務経験2年以上で調理師試験を受ける|受験資格の細かい条件
もうひとつの道は、飲食店などで2年以上働いてから調理師試験を受ける方法です。学費がかからない代わりに、「どこで」「どのくらい」「どんな仕事を」したかの条件がこまかく決まっています。熊本県と神奈川県の案内をまとめると、次のとおりです。
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 学歴 | 高等学校の入学資格がある人(学校教育法第57条に規定する者) |
| 働く場所 | 飲食店営業、魚介類販売業、そうざい製造業、複合型そうざい製造業、寄宿舎・学校・病院などの給食施設(1回20食以上または1日50食以上) |
| 期間 | 2年以上(連続1か月以上の長い休みは除いて数える) |
| 勤務の量(パート・アルバイト) | 1日6時間以上かつ週4日以上(熊本県では、週5日以上かつ1日5時間以上、週6日以上かつ1日4時間以上も可) |
| 数えられない仕事 | 配膳、調理品の運搬・配達、食器洗浄、接客など、直接調理に関係しない仕事が中心の期間 |
| 数え方の注意 | 試験日までの見込みは不可。調理業務従事証明書を作った日までに2年以上必要。複数の店の勤務時間を合算することもできない |
※熊本県「令和8年度調理師試験」、神奈川県「調理師試験の受験資格」(2026年10月確認)。細かな扱いは都道府県によって違うことがあるので、受験する都道府県の手引きで必ず確認してください。
ポイントは、「平均」や「週の合計時間」ではなく、勤務時間と勤務日数の両方の条件を満たす必要があることです。たとえば「週3日・1日8時間」は合計24時間でも、週4日に届かないので条件を満たしません。また、ホール担当として長く働いても、主な仕事が配膳や接客なら実務経験には数えられません。アルバイトを始めるときに、「調理の担当として働けるか」「将来、調理業務従事証明書を書いてもらえるか」をお店に確認しておくことが大切です。
調理師試験の科目・合格基準・合格率
調理師試験は、都道府県知事が行う試験です。熊本県のように、公益社団法人 調理技術技能センターに試験の実施を委ねている都道府県もあります。熊本県の令和8年度の試験は、次のような内容です。
- 試験科目:公衆衛生学、食品学、栄養学、食品衛生学、調理理論、食文化概論の6科目(筆記)
- 試験日:令和8年10月31日(土)13時30分〜15時30分(熊本県)
- 受験手数料:6,400円(熊本県)
合格基準は、長野県の令和8年度の試験では「60問(1問1点)で合計36点以上(満点の60%以上)、かつ無得点の科目がないこと」とされています。実技試験はなく、筆記試験だけです。試験日や回数は都道府県ごとに違い、神奈川県のように年2回行うところもあります。
| 区分(令和6年度) | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
|---|---|---|---|
| 全国合計 | 18,566人 | 11,887人 | 64.0% |
| 東京都 | 1,773人 | 1,193人 | 67.3% |
| 北海道 | 991人 | 678人 | 68.4% |
| 神奈川県(1回目/2回目) | 756人/605人 | 549人/346人 | 80.0%/63.0% |
| 山口県(最も低い県) | 合格率47.3% | ||
※厚生労働省「令和6年度 調理師試験実施状況」(2025年5月)。令和7年度の埼玉県は、受験者873人・合格者536人・合格率61.4%でした(埼玉県「令和7年度衛生試験結果」)。
全国の合格率はおよそ3人に2人ですが、実施する回によって大きく上下します。埼玉県の案内では、試験問題は調理技術技能センターのホームページで確認できるとされています。出題の形式に早めに慣れておくと安心です。合格率の数字だけで「簡単」「難しい」と判断せず、6科目をまんべんなく準備することが大切です。
「通信制高校で調理師免許が取れる」はどういうこと?|コース選びの確認点
「調理師コースがある通信制高校」「卒業と同時に調理師免許」という案内を見かけることがあります。前に書いたとおり、通信教育だけでは調理師を養成できないので、こうした案内は多くの場合、通学制の養成施設と通信制高校を組み合わせた仕組みです。
文部科学省の資料では、高等専修学校の多くが「技能連携校」などとして高校と連携しており、通信制高校と技能連携している教育施設もあると紹介されています。高等専修学校の調理科が調理師養成施設に指定されていれば、そこで調理を学びながら、連携する通信制高校で高校卒業を目指す、という形が考えられます。ただし、仕組みや条件は学校ごとに違います。コースを比べるときは、次の点を確認してください。
- その課程は「厚生労働大臣指定の調理師養成施設」か。指定を受けていない「料理コース」「調理体験」では、卒業しても免許は申請できません。
- 卒業時に、試験なしで免許を申請できるか。「調理師試験の対策をする」コースとは別物です。
- どこに、週何日通うのか。調理実習は通学が前提です。通信制高校のスクーリングとの両立も確認します。
- 費用の内訳。高校の学費と、養成施設(コース)の学費が別にかかることがあります。高等学校等就学支援金の対象は高校の授業料です。
- 途中でコースを変えたくなったらどうなるか。高校の卒業に必要な単位への影響を聞いておきます。
説明会では「この課程を卒業したら、試験なしで調理師免許を申請できますか」と、そのまま質問してみてください。はっきり答えてくれる学校かどうかも、選ぶときの目安になります。
免許の申請と、取ったあとの働き方
養成施設を卒業しても、試験に合格しても、それだけではまだ調理師ではありません。福島県の案内のとおり、免許を申請し、都道府県知事から免許を受けて初めて調理師になります。東京都の場合の申請は次のとおりです。
- 申請先:住民票の住所地を管轄する保健所(都外に住民票がある人は、その道府県の担当課)
- 主な書類:調理師免許申請書、養成施設の卒業証明書と履修証明書、または調理師試験の合格証書・合格通知書(原本)、6か月以内に発行された住民票(本籍・国籍の記載があるもの)か戸籍抄本
- 手数料:5,600円(東京都)
調理師法では、調理師でない人が「調理師」やこれにまぎらわしい名称を使うことが禁止されています(第8条)。免許は、料理の知識と衛生の知識を公に証明するものとして、就職や、将来お店を持つときの信頼につながります。病院や学校の給食、ホテル、レストラン、そうざいの製造など、働く場所はさまざまです。
免許を取ったあとに目指せる認定として「専門調理師」があり、厚生労働省の資料では令和7年度に301件が交付されています。また、お菓子づくりに進みたい人には、別の資格として製菓衛生師(製菓衛生師法)があります。製菓衛生師は、養成施設で1年以上学んだ人も、菓子製造業で2年以上働いた人も、どちらも試験に合格する必要がある点が調理師と違います(福島県)。
学年別|通信制高校から調理師を目指すスケジュール
| 時期 | 養成施設ルートの例 | 実務経験ルートの例 |
|---|---|---|
| 高1 | レポートとスクーリングのペースをつかむ。家で料理をする回数を増やす | 同じ。アルバイトをするなら、まず生活リズムを整える |
| 高2 | 調理師専門学校のオープンキャンパスや体験授業に行く | 調理の担当として働ける店を探し、勤務条件を確認して働き始める |
| 高3 | 志望校を決めて出願。学費・奨学金を確認し、卒業に必要な単位を取り切る | 勤務を続けながら、卒業に必要な単位を取り切る |
| 卒業後 | 養成施設で1年以上(夜間は1年6か月以上)学び、卒業後に免許を申請 | 2年以上の実務がそろったら証明書をもらい、調理師試験を受ける |
実務経験ルートは、条件を満たした勤務が2年以上必要なので、早めに働き始めれば卒業前後に受験資格がそろう計算になります。ただし、勤務の扱いは都道府県の手引きが基準です。始める前に、受験したい都道府県の担当課に確認しておくと確実です。
通信制高校にいるうちにできる5つの準備
- 卒業に必要な単位を、期限どおりに取る。調理師免許の学歴の条件は中学校卒業ですが、専門学校(専修学校の専門課程)に入るには高校卒業が必要です。就職の選択肢を広げるためにも、高校卒業は大切な土台です。
- 家で料理をして、記録をつける。作った料理、材料、かかった時間、うまくいかなかった点をノートに残すと、面接で話せる材料になります。
- 衛生と栄養の基本にふれておく。試験科目の食品衛生学や栄養学は、高校の家庭科の内容ともつながっています。家庭科のレポートは、ていねいに取り組んでおきましょう。
- アルバイトは、条件とルールを確認してから。18歳未満の人は、労働基準法で原則として午後10時〜午前5時の深夜に働くことができず、時間外労働や休日労働もできません(厚生労働省 静岡労働局)。飲食店のアルバイトは夜の時間帯が多いので、学業との両立も含めて無理のない働き方を選んでください。両立の考え方は通信制高校とバイトの両立も参考になります。
- 学校見学で「養成施設の指定」を確かめる。パンフレットやホームページに、厚生労働大臣指定の調理師養成施設であることが書かれているかを見て、わからなければ直接質問しましょう。

よくある誤解
- 「通信制高校からは調理師になりにくい」:学歴の条件は高校の入学資格です。通信制かどうかは関係ありません。
- 「通信制高校の調理コースなら、家で勉強するだけで免許が取れる」:通信教育による調理師の養成は認められていません。調理実習のある通学制の養成施設が必要です。
- 「飲食店で2年働けば、誰でも受験できる」:勤務時間と日数の条件、調理の担当だったかどうかなど、細かな条件があります。
- 「調理師試験は実技が難しい」:調理師試験は筆記試験で、6科目から出題されます。
- 「試験に受かれば、その日から調理師」:都道府県に免許を申請し、免許を受けて初めて調理師になります。
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正直な注意点も書いておきます。ニジ高そのものは高校ではありません。卒業資格は提携する通信制高校で取り、提携校のスクーリングへの参加が必要です。また、ニジ高は調理師養成施設ではないので、在籍しても調理師免許の申請資格は得られません。卒業後に養成施設へ進むか、実務経験を積んで試験を受ける必要があります。費用は提携校の分とニジ高の分がかかり、ニジ高の分には就学支援金は使えません。金額は学費のご案内で公開しています。


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よくある質問
なれます。調理師免許の学歴の条件は「高等学校の入学資格があること」で、通信制高校かどうかは関係ありません。厚生労働大臣が指定した調理師養成施設で1年以上学ぶか、飲食店などで2年以上調理の仕事をして調理師試験に合格し、都道府県に免許を申請すれば調理師になれます。
取れません。厚生労働省の調理師養成施設指導ガイドラインでは、通信教育による調理師の養成は認められていません。免許を取るには、通学制の調理師養成施設で学ぶか、実務経験2年以上を積んで調理師試験に合格する必要があります。
条件を満たせば受けられます。神奈川県の案内では、パート・アルバイトの場合は2年以上、1日6時間以上かつ週4日以上の勤務が必要とされています。配膳や食器洗浄、接客が主な仕事だった期間は認められないので、受験する都道府県の手引きで確認してください。
厚生労働省の「令和6年度 調理師試験実施状況」では、全国の受験者1万8,566人のうち合格者は1万1,887人で、合格率は64.0%でした。都道府県によって47.3%から80.0%まで差があります。
調理師法が定めているのは、免許を持たない人が「調理師」やまぎらわしい名称を名乗ってはいけないという名称のルールです。お店で働く条件はお店ごとに違うので、求人や就職先で確認してください。
「料理の仕事がしたい」は、どの高校からでも目指せる
調理師への道は、通信制高校かどうかでは決まりません。決めるのは、高校を卒業したあとに養成施設で学ぶか、働きながら実務経験を積んで試験を受けるか、という選び方です。まずは気になる調理師専門学校を2〜3校選んでオープンキャンパスに行くか、働きたいお店の勤務条件を調べるところから始めてみてください。
通信制高校の時間の使い方は、自分で決められます。その時間を、家での料理や学校見学、条件を確かめたうえでのアルバイトに少しずつ使っていけば、卒業するころには「どんな料理人になりたいか」を自分の言葉で話せるようになっているはずです。焦らず、一歩ずつで大丈夫です。
進路のことを誰かと一緒に考えたくなったときのために、相談の入口を置いておきます。

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参考:厚生労働省「令和6年度 調理師試験実施状況」(2025年5月)「調理師免許交付数の推移」(衛生行政報告例)「調理師養成施設指導ガイドライン」(健発0325第7号)/千葉県「調理師免許について」/福島県「調理師・製菓衛生師について」/熊本県「令和8年度調理師試験」/神奈川県「調理師試験の受験資格」/長野県「令和8年度調理師試験の合格者の発表」/埼玉県「令和7年度衛生試験結果」/東京都保健医療局「調理師免許の窓口申請」/文部科学省「高等専修学校」紹介資料/厚生労働省 静岡労働局「年少者の労働」/調理師法(いずれも2026年10月確認)

