職場体験が近づくにつれて、お子さんの表情が曇ってきた。「行きたくない」と言われて、何と返せばいいのか分からない。そんなご家庭は、きっと少なくありません。
先に結論から書きます。行きたくない気持ちは、親の育て方のせいでも、お子さんの甘えでもありません。初対面の大人に囲まれ、電話や敬語を使い、決まった時間まで働く。職場体験は、不安が重なりやすい活動です。
そして、休んだからといって、教科の成績(評定)がそのまま下がる仕組みにはなっていません。ただし、欠席日数は調査書に載ります。欠席の扱いや代わりの課題は学校ごとに違うので、迷ったら早めに学校へ聞くのがいちばん確かです。
この記事では、公的な資料で確かめられることと、学校ごとに違って確認が必要なことを分けて書きます。
結論:職場体験に行けないときの早見
- 実施状況:令和6年度、公立中学校2年生で職場体験を実施した学校は79.9%。5日以上の学校は実施校の10.0%で、期間は学校によって違います。
- 内申との関係:調査書の「評定」は教科ごとの欄です。職場体験は多くの学校で総合的な学習の時間や特別活動に位置づけられ、別の記録欄になります。
- 欠席日数:調査書に載ります。欠席とするか、代わりの課題を用意するかは学校の判断で、全国共通のルールは確認できませんでした。
- 行けないとき:不安を分けて条件を調整する/見学だけにする/別日・別の形にする/学校の外の体験を探す、の順に考えます。
- 相談先:担任、学年主任、養護教諭、スクールカウンセラー、市区町村の教育委員会。「当日の朝」ではなく、体験の前に動くのがコツです。
職場体験は、どれくらいの学校で、どんな形で行われているか
職場体験は、中学校のキャリア教育の中心的な活動です。国立教育政策研究所(国研)の調査をみると、全国の姿はこうです。
| 項目 | 数字 |
|---|---|
| 公立中学校2年生で職場体験を実施した学校(令和6年度) | 9,272校中7,407校(79.9%) |
| 実施期間が「5日以上」の学校(実施校のうち) | 10.0% |
| 参考:コロナ前(令和元年度)の実施率 | 88.0%(調査方法が異なる) |
出典:国立教育政策研究所「令和6年度職場体験・インターンシップ実施状況等結果(概要)」。令和3年度から調査方法が変わったため、令和元年度との比較は目安です。
実施率はコロナ前より低い水準で、公立中学校の2割ほどは、この年度に2年生で実施していません。また、実施校の9割は5日未満です。同じ中学2年生でも、「何日間、どこへ行くか」は学校でかなり違います。
位置づけは、少し前の調査(平成16年度)で、総合的な学習の時間が約8割(79.6%)、特別活動が約2割(18.3%)でした(複数回答)。この点が、あとで書く「内申との関係」に関わります。
「行きたくない」の裏にあるもの
お子さんの不安は、ひとつではないことが多いです。聞くときは、「行きたくない理由」を分けてもらうと、手の打ちようが見えてきます。

- 人:初めて会う大人、職場の雰囲気、うまく話せるか
- やること:電話、敬語、接客、立ちっぱなし、指示を聞き取ること
- 時間と場所:朝が早い、通う道のり、慣れない環境
- 見通し:当日の流れが分からない、予定が急に変わるのが苦手
- 体調:朝の起きづらさ、疲れやすさ、腹痛・頭痛
地域によっては、体験当日に教員が同行せず、生徒だけで事業所へ向かう形もあります(町田市の事業所向け資料より)。「何かあったら誰に言えばいいか」が見えにくいのも、不安の原因になります。
見通しや環境の変化に敏感なお子さんの場合は、発達の特性が背景にあることもあります。そのときは、こちらの記事も参考になります。
休んだら内申・成績はどうなる?
ここがいちばん心配なところだと思います。公的な資料で確認できることを、順に書きます。
調査書の「評定」と、職場体験は別の欄
公立高校の入試で使う調査書では、「各教科の学習の記録」の評定は、教科ごとに5段階で記入します。いっぽう、「総合的な学習の時間の記録」と「特別活動の記録」は、評定ではなく、指導要録に基づいて記入する欄です(沖縄県の調査書作成方法の例)。
職場体験は多くの学校で総合的な学習の時間か特別活動に位置づけられているので、「休んだ分、国語や数学の評定が下がる」という構造ではありません。
ただし、欠席日数は載る
調査書には欠席日数の欄があり、日数が一定以上のときは理由を書く決まりを置いている県もあります(茨城県の記入要領では、第3学年で10日以上のとき)。職場体験を丸ごと休むと、その日数が欠席として数えられる場合があります。
ここで大切なのは、休んだ日を欠席にするか、別の扱いにするかは学校の判断で、全国共通の決まりは確認できなかったという点です。
学校ごと・県ごとに違うところ
- 調査書の様式や記入要領は、都道府県ごとに違います。
- 特別活動の欄に、志願先の特色選抜の出願要件にかかわる実績を書く県もあります(茨城県)。志望校が決まったら、選抜要綱で確認してください。
- すでに不登校の状態のときは、学校外の施設やICTを使った学習を出席扱いにできる制度があります(令和元年10月25日付、元文科初第698号)。担任に聞いてみてください。
お住まいの都道府県の選抜要綱が最終的な根拠になります。この記事の例には他県のものを含みます。

進路や学校の選び方で迷っていることも、体験説明会でお聞きします
ニジ高は、希望者が週1回、企業インターンとして出社できるオンライン中心のサポート校です。高校ではないため、卒業資格は提携する通信制高校で取り、その高校のスクーリングへの参加が必要です。
学校に相談するときの進め方
「相談」と聞くと大ごとに思えますが、やることは3つです。

1. いつ・誰に話すか
体験の2〜3週間前までに、担任に連絡するのがおすすめです。班や受け入れ先が決まる前のほうが、選べる選択肢が多くなります。担任に話しにくいときは、学年主任、養護教諭、スクールカウンセラーも相談先になります。
2. 何を伝えるか
「行かせたくない」ではなく、「こういうことが不安で、こうなら行けそう」を伝えます。
文例:「来月の職場体験について相談です。本人は、初めての大人と電話で話す場面を特に不安に感じています。事前に練習をさせてもらえるか、また、体験先を落ち着いた環境にしていただくことは可能でしょうか。」
3. 何を聞くか(5つ)
| 聞くこと | なぜ聞くか |
|---|---|
| 休んだ場合、欠席の扱いはどうなるか | 調査書の欠席日数に関わるため |
| 代わりの課題や、別の日に行う形はあるか | 学校ごとに対応が違うため |
| 日数を短くする、見学だけにするなどの調整はできるか | 無理なく参加できる形を探すため |
| 体験先を選べる/変えられるか | 不安の原因を減らすため |
| 当日の連絡先と、体調が悪くなったときの流れ | 同行がない場合の安心材料になるため |
文部科学省の資料でも、学校側の指導体制として、体調不良時に無理をさせないことや、保護者と体験先の連絡手段を確認しておくことが示されています。
行く場合の工夫
調整したうえで参加するときは、こんな工夫が使えます。
- 不安を書き出して、対処法を一緒に決める:岩手県の教育資料に、不安や心配を書き出して具体的な対処法を考えた事例があります。
- 同じ体験先の友だちと練習する:同じ事業所へ行く生徒と挨拶の練習をしたことで、安心できたという事例もあります。
- 「逃げ道」を先に決めておく:しんどいときは誰に何と言うかを、事前に決めておきます。
- 体験先は、進路に直結しなくてもいい:体験の目的は、働くことの意味を知ることです。
電話・敬語・挨拶がこわい
不安や心配を書き出し、対処法を具体的に決める。挨拶の練習をしておく(岩手県教育委員会の事例)
初めての大人・場所が不安
同じ体験先へ行く友だちと一緒に練習する(岩手県教育委員会の事例)
しんどくなったらどうしよう
「逃げ道」を先に決める。誰に、何と言うかを事前に決めておく(編集部の提案)
体調・体力が心配
体調不良のときは無理をしない。学校・保護者・体験先の連絡手段を確認する(文部科学省の資料)
当日の流れが見えない
事前に、当日の流れと連絡先を学校に聞いておく(編集部の提案)
行かない・行けないときの選択肢
調整しても難しいときは、次の順で考えます。

- 見学だけにする、日数を減らす:学校が認めるかは、相談してみないと分かりません。
- 別の日・別の形に変える:校内での職業講話や、保護者の仕事の話を聞くなど、学校によっては代わりの課題を用意しています。
- 学校の外の体験を探す:不登校の児童生徒向けに、職場体験の機会をつくる自治体や団体があります。
- 福岡県宗像市は、不登校の児童生徒向けに、市が企業と協力した体験の場を設けています(教育サポート室エール)。
- 大阪のNPO法人HELLOlifeは、不登校や不登校傾向の小4〜中3向けに「はたらくフリースクール」を商業施設で実施しています。
どちらも地域や時期が限られます。お住まいの地域では、教育委員会や教育支援センターに「不登校の子ども向けの体験の機会はありますか」と聞いてみてください。
家庭でできることは、仕事の話をする、近所のお店を一緒に観察するなど、小さなことで十分です。「働く」を怖いものだけにしないことが、次の機会につながります。
高校生の場合
高校では、職場体験に当たるものを「インターンシップ」と呼びます。国研の令和6年度の調査では、公立高校(全日制・定時制)の実施率は75.2%です。ただ、在学中に1回でも体験した3・4年生の割合は全体で25.7%、普通科では15.0%で、全員が行くものではありません。日数は2〜3日が最も多く(52.8%)、短い体験が中心です。
通信制高校でのインターンシップの考え方は、別の記事にまとめました。
→ 通信制高校でインターンシップはできる?|単位になる条件と探し方【2026】
選択肢の1つとしてのニジ高
ここまで、職場体験が不安なお子さんの動き方を書いてきました。ニジ高は職場体験の代わりになるものではありませんが、高校段階で「働く体験を学びの真ん中に置く」学び方を選びたいご家庭には、検討材料のひとつになると思います。
ニジ高は、希望者が週1回、企業インターンとして出社できるオンライン中心のサポート校です。企業や自治体の実際の課題に取り組む社会共創プロジェクトもあります。
正直な注意点も書きます。ニジ高は高校ではありません。卒業資格は提携する通信制高校で取り、そのスクーリングへの参加が必要です。費用は提携校の分とニジ高の分の両方がかかり、ニジ高の分に高等学校等就学支援金は使えません。詳しくは体験説明会でご案内しています。
よくある質問
A. 教科の評定は別の欄なので、休んだことがそのまま評定を下げる仕組みではありません。ただし、欠席日数は調査書に載ります。県によって記入要領が違うので、志望する高校の選抜要綱と、学校の先生に確認してください。
A. わがままと決めつける必要はありません。不安の理由を分けて聞き、条件を調整できないか学校に相談するところから始めます。
A. 伝えること自体は問題ありません。断れるか、代わりがあるかは学校の判断です。「何が不安で、どうなら参加できそうか」を添えると、話が進みやすくなります。
A. 学校が受け入れ方を調整する場合もあれば、自治体や団体の体験の機会を使う場合もあります。担任と、教育委員会や教育支援センターに聞いてみてください。
A. 連絡方法と対応の流れは、事前に学校へ確認してください。文部科学省の資料でも、体調不良時に無理をさせない指導が示されています。
迷ったときは、先に一人で抱えこまない
職場体験は、お子さんにとって社会との最初の接点のひとつです。ただ、それが「最初の関門」になってしまう必要はありません。早めに学校と話し、無理のない形を探せば、道は意外と開けます。
担任や養護教諭、スクールカウンセラー、市区町村の教育委員会、教育支援センターが、相談先になります。ニジ高の体験説明会でも、進路の不安をお聞きしています。
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参考文献
- 国立教育政策研究所「令和6年度職場体験・インターンシップ実施状況等結果(概要)」
https://www.nier.go.jp/_uploads/2025/12/r06i-ship_1.pdf - 文部科学省「職場体験ガイド(教育課程上の位置付け)」
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/career/05010502/026/002/001.htm - 文部科学省「職場体験ガイド(実施期間中の指導体制)」
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/career/05010502/026/003/006.htm - 沖縄県「令和8年度 入学者選抜 調査書の作成方法」
https://www.pref.okinawa.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/035/054/08chosasyorei.pdf - 茨城県教育委員会「調査書作成上の留意点」
https://kyoiku.pref.ibaraki.jp/wp-content/uploads/2023/09/09chousasho_chuui.pdf - 町田市「職場体験のご案内(事業所向け)」
https://kosodate-machida.tokyo.jp/material/files/group/16/panhuretto.pdf - 岩手県教育委員会「職場体験における不安への対処」
https://www1.iwate-ed.jp/07tantou/tokusi/contents/mysite3/te/P20P21syokubataiken.pdf - 宗像市「不登校児童生徒向けの体験活動」
https://city.munakata.lg.jp/kiji00318/3_18_14_06.pdf - NPO法人HELLOlife「はたらくフリースクール」
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000035.000051090.html
執筆者:ニジ高編集部 2026年10月29日
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