発達障害の高校生の偏食は親のせいじゃない|ARFIDと受診の目安【2026】

食べられるものが極端に少ない。白いご飯と決まった数品だけ。高校生になっても変わらないわが子を見て、「小さいころに好き嫌いを許しすぎたのでは」「私の育て方が悪かったのでは」と自分を責めている保護者の方は少なくありません。

先に結論を書きます。発達障害(とくに自閉スペクトラム症=ASD)のある子の偏食は、しつけの結果ではなく、感覚の過敏さ・変化への不安・こだわり・過去の嫌な経験などが重なって起きることが多いものです。日本小児神経学会のQ&Aも、偏食の要因としてこれらを挙げ、強引に直そうとすると食べ物の拒否をかえって悪化させることがあると書いています。ただし、偏食が体重や栄養、毎日の生活を削っているときは、ARFID(回避・制限性食物摂取症)という診断名で医療がかかわる場合もあります。

この記事は、日本小児神経学会、国立障害者リハビリテーションセンター、摂食障害全国支援センター(国立精神・神経医療研究センター)、文部科学省、e-Govの法令を実際に開いて確認した内容でできています。診断をするための記事ではありません。「うちの子はどのあたりにいるのか」「次に誰に相談すればいいのか」を決めるための材料としてお使いください。

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目次

結論:発達障害の高校生の偏食の早見

  • 偏食は親のせいではありません。日本小児神経学会は、自閉スペクトラム症の偏食の要因として、感覚過敏・食べ物の変化を受け入れにくいこと・こだわり・噛む飲み込むの苦手さ・食事の嫌な記憶などを挙げています。
  • 国立障害者リハビリテーションセンターの調査では、味覚(偏食)の問題を「つらい」と答えた人の割合が、未成年で他の年代より多い結果でした。発達障害のある高校生の偏食は、珍しいことではありません。
  • 家でできることの基本は「無理に食べさせない」「食べられる物を1品は用意する」「少しずつ、何度も」です。「あと一口」の押しつけや、「食べないと病気になるよ」と怖がらせるやり方は避けます。
  • 偏食が体重の減少・栄養の不足・生活への大きな支障につながっているときは、ARFID(回避・制限性食物摂取症)も視野に入れて、小児科・心療内科・精神科に相談します。体型や体重へのこだわりが無い点で、いわゆる拒食症(神経性やせ症)とは違います。
  • 摂食障害の相談先として、各地の精神保健福祉センター、一部の都県の摂食障害支援拠点病院、摂食障害全国支援センターの「相談ほっとライン」があります。
  • 学校には配慮を頼めます。2024年4月から、私立学校を含む事業者にも「合理的配慮」の提供が法的義務になりました。弁当の持参、昼食の場所、宿泊行事の食事などは、相談して決められる事柄です。
  • 昼食や宿泊行事の負担で学校生活そのものが苦しいなら、自宅で食事をとれるオンライン中心の学び方(通信制高校やサポート校)を検討する家庭もあります。
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「甘やかしたから」ではありません。偏食の多くは、感覚と不安とこだわりから起きています

「好き嫌いは、小さいうちに直さないと」。そう言われて育った世代の保護者ほど、高校生になっても偏食が続くことに焦りを感じます。親戚や学校の先生から「家で甘やかしているのでは」と言われた経験がある方もいるでしょう。

けれど、発達障害のある子の偏食は、ふつうの好き嫌いとは起きている仕組みが違います。日本小児神経学会のQ&Aは、偏食そのものは発達の特性が無い幼児にも少なくないとしたうえで、自閉スペクトラム症では偏食が目立つことが多く、家族関係が難しくなったり、まれに重い栄養の問題につながったりすると説明しています。

本人にとっては、「嫌いだから食べない」のではなく、「口に入れると痛い・気持ち悪い・怖い」から食べられないことが多いのです。たとえば、ゆでた野菜の繊維が口の中で刺さるように感じる、甘じょっぱい味が混ざると吐き気がする、前にむせて苦しかった食べ物が視界に入るだけで体がこわばる、といった具合です。こうした感じ方は、本人の努力や親のしつけで消せるものではありません。

学会のQ&Aには、もう1つ大事な指摘があります。偏食を直そうとする過程で、家族関係が悪くなったり、心の傷が残ったりすることがあるという点です。食卓が毎日の戦いの場になっているなら、それは親子のどちらかが悪いのではなく、やり方が合っていないサインだと考えてください。

出典:日本小児神経学会「⑨-1 偏食にはどのように対応したらよいでしょうか?」(2025年1月 広報交流委員会QA部会。2026年9月確認)

台所で一緒に料理をする母親と高校生の息子
おかずを1品ずつ分けて盛ると、食べられる物を選びやすくなることがあります。

偏食の背景は6つに分けられ、1人の中で重なっていることが多いです

日本小児神経学会は、自閉スペクトラム症の偏食の要因を6つに整理し、何が主な要因かを見きわめることが対応を考えるうえで大切だとしています。こども家庭庁の母子保健指導者養成研修で使われた講義資料(東京科学大学 水野智美氏)も、ほぼ同じ要因に加えて、家庭と違う環境への不安や、食べる機会がなかったことを挙げています。家で観察するときの手がかりと合わせて表にしました。

背景 どんなことが起きるか 家で見られやすい手がかり
感覚過敏 におい・味・食感・見た目・音が強すぎて苦痛になる 特定の食感(ぐにゃっ、ざらっ)を吐き出す。においで席を立つ
変化を受け入れにくい におい・味・見た目・温度がいつもと少し違うだけで食べられない 同じ商品でもメーカーが変わると食べない。外食や行事の食事を避ける
こだわり 「これはこういう物」という決めつけが強く、形や色が違うと受け付けない 白い物だけ、細長い物だけなど、食べられる物にルールがある
噛む・飲み込むの苦手さ 噛むのが下手、丸のみしやすいなどで、特定の物が食べにくい 肉など硬い物を長く口に入れている。やわらかい物に偏る
食事の嫌な記憶 痛かった・むせた・怒られたなどの記憶がよみがえる ある出来事の後から急に食べられる物が減った
摂食障害 神経性やせ症やARFIDでは、自閉スペクトラム症のある人の割合が少なくないとされる 体重が減っている。食べる量そのものが減ってきた

出典:日本小児神経学会 Q&A ⑨-1/こども家庭庁 令和7年度母子保健指導者養成研修「発達障害傾向にある子どもの偏食とその対応」(2026年9月確認)。「家で見られやすい手がかり」の列は、両資料の例をもとにこの記事で整理したもので、診断の基準ではありません。

ここで大事なのは、1人の子に要因が1つとは限らないことです。たとえば、感覚過敏で食べられる物が少ないところに、給食で無理に食べさせられた記憶が重なり、さらに「この皿以外では食べない」というこだわりが加わる、ということが起こりえます。

学会のQ&Aは経過についても触れています。特性が強くない場合は多くが少しずつ軽くなり、特性が強い場合でも感覚の変化や経験の積み重ねで軽くなることが多い(多くは学童期)一方で、年齢が上がってから出てくることもあると書いています。高校生で偏食が続いていても、それだけで「手遅れ」ということはありません。

感覚の過敏さそのものについては発達障害 感覚過敏 高校生の記事、こだわりについては発達障害 こだわり 高校生の記事でも書いています。

日本小児神経学会が挙げる自閉スペクトラム症の偏食の背景のうち、感覚過敏、変化が苦手・こだわり、食事の嫌な記憶、噛む・飲み込むの苦手さの4つを並べ、要因が1つではないことを示す図
出典:日本小児神経学会「⑨-1 偏食にはどのように対応したらよいでしょうか?」

味覚の困りごとを「つらい」と答える人は、大人より未成年に多い。発達障害のある高校生の偏食は珍しくありません

国立障害者リハビリテーションセンター(研究所 脳機能系障害研究部 発達障害研究室)は、発達障害情報・支援センターのウェブサイトを通じて、発達障害の診断を受けた人に「日常で困っている感覚の問題」を聞く調査を行い、2023年2月に結果を公表しました。未就学児(保護者が回答)から60歳台まで431件の回答があり、そのうち415件を分析しています。

  • 「最もつらい感覚の問題」は聴覚が約55%で最も多く、視覚・触覚・嗅覚はそれぞれ10%程度でした。
  • ASDの診断を受けた人では、触覚の問題を一番つらいと答えた人が、そうでない人より相対的に多い結果でした。
  • 年齢層別に見ると、味覚の問題をつらいと答えた人の割合は、未成年で多く、中年層で少ないことが分かりました。
  • 「味覚の問題」の中身は、苦手な食感がある・苦手な食べ物がある・苦手な味があるの3つに分かれていました。

出典:国立障害者リハビリテーションセンター 報道発表「発達障害のある人の感覚の問題の実態が明らかに」(令和5年2月21日)/同研究所「発達障害のある人の感覚の問題」(2026年9月確認)

同じ研究室の別の調査(2022年の研究所公開資料)では、自閉傾向が高い人に「味が混ざるのを避ける」「苦手な食感がある」という特徴が見られたと報告されています。おかずを全部食べてからご飯に移る、みたらし団子のような甘じょっぱい味が苦手、毎日同じ物を続けて食べることが多い、といった例が挙げられていました。

出典:国立障害者リハビリテーションセンター研究所「発達障害者の食の問題に関する調査・研究」(2026年9月確認)

「うちの子だけがおかしい」と思っていた食べ方が、研究の場ではよく知られた特徴として扱われている。それを知るだけでも、食卓での声のかけ方は少し変わるはずです。調査の結論も、特性に応じた個別の対応が必要だとまとめています。

仕切りのある弁当を食べる高校生と、同じテーブルで本を読む父親
食べられる物が分かれている弁当は、安心して食べやすい形の一つです。

ARFIDは「偏食が体や生活を削っている状態」を指す名前です。診断は医師がします

偏食について調べていると、ARFID(アーフィッド)という言葉に出会うことがあります。日本語では「回避・制限性食物摂取症」と呼ばれ、米国精神医学会の診断基準DSM-5と、世界保健機関の国際疾病分類ICD-11に近年加えられた摂食障害の1つです。

摂食障害全国支援センター(国立精神・神経医療研究センター)の摂食障害情報ポータルサイトは、ARFIDを次のように説明しています。

  • 食べ物を避けたり制限したりすることで、必要なエネルギーや栄養がとれず、著しい体重減少、栄養の不足、栄養補助食品などへの依存、健康や社会生活への支障が出ている状態
  • いわゆる拒食症(神経性やせ症)と違い、体型や体重へのこだわりは見られない
  • 子どもから大人まで診断を受けることがある
  • 始まり方には、生まれつき小食で食事に関心が低いタイプ/味・食感・においへの感覚の過敏さで偏食が強いタイプ/窒息や嘔吐などの出来事で食べることが怖くなったタイプなどがある
  • 不安症、ADHD、自閉スペクトラム症、強迫症などを同時に認めることがよくある
  • 一般の人の中での頻度は、オーストラリアと台湾の大規模な調査でいずれも0.3%。日本の一般人口での研究報告はまだない

出典:摂食障害全国支援センター 摂食障害情報ポータルサイト「摂食障害はどんな病気?」(2026年9月確認)

ここで気をつけたいのは、偏食がある=ARFIDではないということです。ARFIDの診断基準には、体重の減少(成長期なら期待される体重増加が無いことも含む)、著しい栄養不良、栄養剤などへの依存、心理社会的な機能の著しい障害のうち、1つ以上があることが含まれています。食べられる物が少なくても、体重が保たれ、元気に学校や家で過ごせているなら、まずは家と学校の工夫で様子を見る段階です。

逆に、偏食に加えて体重が減ってきた、友達との外食や行事を避けて孤立している、といった変化があるなら、ARFIDかどうかを親が判断しようとせず、医師に相談してください。診断名が付くかどうかより、「今の食べ方で体と生活が保てているか」を一緒に見てもらうことが目的です。

比べる点 よくある偏食 ARFID(回避・制限性食物摂取症) 神経性やせ症
食べない理由 感覚・こだわり・嫌な記憶など 感覚の過敏さ、食べることへの恐怖、食への関心の低さなど やせたい、太るのが怖い
体型・体重へのこだわり ない ない ある
体重・栄養 多くは保たれている 体重減少・栄養不足・栄養剤への依存・生活への著しい支障のいずれかがある 正常の下限を下回るやせ
主な相談先 家庭・学校の工夫、かかりつけの小児科 小児科・心療内科・精神科 心療内科・精神科・一部の小児科

出典:摂食障害全国支援センター「摂食障害はどんな病気?」(DSM-5の診断基準の説明を含む)/日本小児神経学会 Q&A ⑨-1。「よくある偏食」の列は学会Q&Aの説明をもとにした目安です。

よくある偏食とARFID(回避・制限性食物摂取症)を比べ、どちらも体型へのこだわりは無いが、ARFIDでは体重減少や栄養不足、生活への著しい支障があり、診断は医師が行うことを示す比較表
出典:摂食障害全国支援センター「摂食障害はどんな病気?」、日本小児神経学会 Q&A ⑨-1

受診や相談を考える目安は「体重・栄養・生活」の3つ。迷ったら早めに相談して大丈夫です

どこからが「病院に行くほど」なのか。ここが保護者のいちばん迷うところだと思います。公的な資料で確認できた目安を、段階ごとに並べました。

段階 こんな様子があるとき 相談先の例
家と学校の工夫で様子を見る 食べられる物は少ないが、体重が保たれ、元気に過ごせている 家庭での工夫、学校への配慮の相談
早めに相談する 体重が減ってきた・伸びない。疲れやすい、顔色が悪い。食べられる物がさらに減った。外食や行事を避けて生活が狭くなった かかりつけの小児科・内科(血液検査で栄養の状態を見てもらう)、発達の主治医
摂食障害の診療をする所へ 食べる量そのものが減っている。食べることを強く怖がる。栄養補助食品に頼っている 心療内科・精神科、一部の小児科。受診先に迷ったら精神保健福祉センター
入院が適切な場合の例(受診案内より) 10日以上ほとんど食事をとっていない。1か月で5kg以上の急な体重減少 体の治療ができ、摂食障害の治療をしている医療機関
緊急 意識がぼうっとする、脈が飛ぶ・遅い、起き上がれないほど弱っている 至急、体の治療ができる医療機関へ

出典:摂食障害全国支援センター「摂食障害に悩むあなたとサポートする方々への受診案内」/同「診療連携・相談窓口」/日本小児神経学会 Q&A ⑨-1(2026年9月確認)。「入院が適切な場合の例」と「緊急」の行は受診案内の記載を短くしたものです。1〜3行目は、これらの資料をもとにこの記事で整理した目安です。

日本小児神経学会のQ&Aは、まれにビタミンA・B1・B12・C、葉酸などの不足から深刻な合併症が起こることがあると書いています。見た目では分かりにくいため、食べられる物が長く偏っているなら、一度血液検査で栄養の状態を確かめてもらうと安心材料になります。学会のQ&Aでは、必要に応じて栄養食品や医薬品で補いながら、無理せず少しずつ変化を促すことが勧められています。

相談先について、摂食障害全国支援センターは次のように案内しています。

  • 摂食障害を専門的に診療しているのは主に心療内科や精神科で、一部の小児科でも子どもの摂食障害を診療している
  • 本人が受診を望まない場合でも、家族だけの相談を受け付けている所がある
  • どこにかかればよいか分からないときは、都道府県・政令指定都市に1つ以上ある精神保健福祉センターや保健所で受診先の相談に応じている場合がある
  • 一部の都県には、都道府県が設置する摂食障害支援拠点病院があり、県内の本人・家族からの相談を受けている
  • 拠点病院の無い地域に住む人向けに、摂食障害「相談ほっとライン」(電話。火〜金の9時〜15時。水曜日はしばらく休止と案内されています)がある。本人だけでなく家族や学校関係者の相談にも対応している

日本の食事の目安には、厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」があります。ただし、偏食のある子に何をどれだけ足せばよいかは体格や活動量で変わるため、数字を見て家で計算するより、医師や管理栄養士と一緒に決めるほうが確実です。

※2026年9月時点の情報です。最新は公式でご確認ください。

家での工夫は「食べさせる」より先に、「安心して食卓にいられる」をつくることです

日本小児神経学会のQ&A(⑨-2)は、食べることは自転車や水泳と同じように学んで身につける技能であり、苦手なことは行動に移しにくく上達しにくいと説明しています。そのうえで勧めているのが、「いつ・どこで・何を出すか」は親が決め、「食べるか・どれだけ食べるか」は子どもが決めるという役割分担です。幼児期を念頭に置いた説明ですが、高校生でも考え方は参考になります。

工夫 具体的なやり方 根拠にした資料
食べられる物を1品は出す 毎回の食事に、本人が確実に食べられる物を1品入れる。安心の土台になる 日本小児神経学会 Q&A ⑨-2
強制しない・評価しない 言葉や態度で圧をかけない。家族は自分の食事をおいしく食べる 日本小児神経学会 Q&A ⑨-2
新しい物は「見るだけ」から 興味を示したら、小指くらいの量を皿の端に置くだけにして、食べるかどうかは本人に任せる 日本小児神経学会 Q&A ⑨-2
味や食感を混ぜない 小皿に分ける。具材を分ける。慣れたら、食べられる物にごく少量ずつ足す こども家庭庁 研修講義資料
食べられる物の調理を少しずつ変える 味・形・感触を少しずつ変える。焦らず少しずつ進める 日本小児神経学会 Q&A ⑨-1
取り除ける刺激を減らす 換気をする、イヤーマフを使うなど、食卓の音やにおいを減らす こども家庭庁 研修講義資料
栄養は食べられる範囲で考える 栄養がとれていれば、食べ物が偏ってもよいと考える。必要なら栄養食品や医薬品で補う(医師に相談) 日本小児神経学会 Q&A ⑨-1

出典:日本小児神経学会「⑨-2 偏食にはどのように対応したらよいでしょうか?」/同 ⑨-1/こども家庭庁 母子保健指導者養成研修 講義資料(2026年9月確認)

学会のQ&A(⑨-2)は、こうした関わりを「スモールステップで、ゆっくり、何度も」続け、少しでも進歩があれば喜ぶこと、まずは2週間ほど試してみることを勧めています。

高校生の場合は、幼児向けの工夫に加えて、本人と一緒に作戦を立てられるのが強みです。たとえば、次のような話し合いができます。

  • 「食べられる物リスト」を本人と一緒に書き出し、コンビニやスーパーで買える物も入れておく(外出先や行事の日の安心材料になる)
  • 苦手な理由を、味・食感・におい・見た目・温度のどれなのか本人に聞いてみる(言葉にしにくい場合は、選択肢を見せて選んでもらう)
  • 新しく試す物は本人が選ぶ。親は「食べなくても大丈夫」と先に伝えておく

食事の時間そのものが乱れている場合は、高校生 食事のリズムの記事も参考になります。

強引に直そうとすると、偏食はかえってこじれることがあります

保護者が良かれと思ってしていることが、逆に働いている場合があります。資料で確認できた「避けたいやり方」を挙げます。

「あと一口だけ」を重ねる

こども家庭庁の研修講義資料は、「あと一口」と約束したあとに「頑張れば食べられたんだから、もう一口」と重ねていないかを問いかけています。約束が守られないと、食卓そのものが信用できない場所になります。

怖がらせる・無理やり口に入れる

同じ資料は、無理やり食べさせることや「食べないと病気になっちゃうよ」と怖がらせることを、やってはいけないこととして挙げています。嫌な思い出として残ると、その後何年もその食べ物を食べられなくなることがあるためです。日本小児神経学会も、強引すぎる直し方は食べ物の拒否を悪化させたり、無理に食べさせられた場面へのフラッシュバックを起こしたりして、後の心身に悪い影響を残すことがあるので避けたほうがよいとしています。

「この子はこれしか食べない」と決めつける

反対に、学会のQ&Aは、子どもは変化するものなのに対応する側が「食べられない」と決めつけてしまっていることもあると注意しています。無理強いはしない、でも新しい物を目にする機会は閉ざさない。この両方がそろって、少しずつ広がっていきます。

ARFIDの治療でも、基本は同じ

摂食障害全国支援センターのポータルサイトは、アメリカの摂食障害の団体が示すARFIDの治療上大事なこととして、強制的に食べさせたり脅したりするのではなく、食べ物に計画的に何度も触れる機会をつくって、食べられる範囲を増やすことなどを挙げています。家での関わり方の方向は、医療の場でも変わらないということです。

学校には配慮を頼めます。2024年4月から、私立の学校も合理的配慮が義務になりました

高校生になると、昼食・調理実習・修学旅行や宿泊行事など、家の外で食べる場面が増えます。ここで知っておきたいのが、障害者差別解消法の「合理的配慮」です。

文部科学省の対応指針によると、事業者による合理的配慮の提供は、令和3年の法改正で努力義務から法的義務に改められ、2024年(令和6年)4月1日から施行されています。これにより、私立学校なども合理的配慮の提供が義務になりました(公立の学校は、法律上の「行政機関等」として以前から第7条で義務とされています)。また、障害者差別解消法の第2条は、障害者の定義の中の精神障害に発達障害を含むと明記しています。

対応指針は、次のような点も示しています。

  • 合理的配慮は、本人から配慮を必要としている旨の意思の表明があったときに、負担が重すぎない範囲で行うもの。本人が伝えにくい場合は、家族などが本人を補佐して伝えることも含まれる
  • 内容は、学校と本人・保護者が建設的対話で一緒に考えて決める。代わりの方法を選ぶことも含めて柔軟に対応する
  • 高校までの学校では、合意した内容を個別の教育支援計画に書き、進学や進級のときにも引き継ぐことが重要とされている

出典:文部科学省「文部科学省所管事業分野における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応指針の策定について」(令和6年1月17日)/改定後の対応指針(本文)(2026年9月確認)

なお、高校の昼食の事情は小中学校と違います。学校給食法が定める「学校給食」は、第3条で小学校・中学校・義務教育学校などの義務教育諸学校で行われる給食とされています。高校について給食の法律があるのは、夜間課程(夜間課程を置く高等学校における学校給食に関する法律。設置者は夜間学校給食が実施されるよう努めると定めています)と、特別支援学校の高等部です。全日制の高校生の多くは弁当や購買で昼食をとるため、小学校のような「完食指導」の場面は少なくなりがちですが、教室で人と食べること、食べる物を見られることがつらいという悩みは残ります。

場面ごとに、学校に相談できることの例をまとめました。どれも「たとえば」の例で、実際にどこまでできるかは学校との話し合いで決まります。

場面 起きやすい困りごと 相談の例
昼食(弁当・購買) においや音で教室で食べにくい。食べる物を見られるのがつらい 別の場所で食べてよいか。決まった物ばかりでも注意しないでほしい
夜間定時制などの給食 食べられる物が少なく、給食の時間がつらい 食べられる物だけ食べてよいか。持参してよいか
調理実習 におい・食感で試食できない 調理はするが試食は量を選べるようにしてほしい
修学旅行・宿泊行事 知らない食事が続く。食べられないまま数日過ごす心配 事前に献立を知りたい。食べられる物を持っていってよいか
部活動の合宿・遠征 みんなと同じ物を同じ量食べる雰囲気 顧問に事情を伝え、量や中身を調整してよいか

伝えるときは、「偏食がある」とだけ言うより、「何が・なぜ食べられないのか」「家ではどうしているか」「学校にお願いしたいこと」を短く紙にまとめて担任や養護教諭に渡すと、話が進みやすくなります。対応指針も、本人が普段とっている対策や、学校が対応できることを対話の中で共有するよう勧めています。申請の流れは合理的配慮 申請の記事に、学校での食事の悩みについては感覚過敏 偏食 給食の記事にもまとめています。

昼食の時間や行事が負担になって休みがちになっている場合は、単位や進級への影響も気になるところです。何日休むと進級に関わるかは高校 欠席日数の記事で確認できます。

選択肢の1つとしてのニジ高(正直な注意点)

学校に配慮をお願いしても、毎日の昼食の時間や行事の食事が本人にとって大きな負担であり続けることもあります。その場合、家で食べ慣れた物を食べながら学べるオンライン中心の学び方を検討する家庭もあります。

ニジ高は、オンライン中心の通信制高校サポート校です。全国どこからでも参加でき、担任がつきます。カメラやマイクをオフにして、チャットだけで参加するところから始められます。生活リズムに波があっても学べるように、授業のアーカイブ視聴にも対応しています。ニジ高は、発達特性や障害を、本人を変えるのではなく学びの構造や環境を変えることで支援するという新しいアプローチを取っています。途中からの入学(転入・編入)もでき、出願費用は無料です。

そのうえで、正直にお伝えしておくことがあります。

  • ニジ高は高校ではありません。卒業資格は提携する通信制高校で取ります。
  • 提携する通信制高校のスクーリングへの参加が必要です。その場にニジ高のスタッフは付き添いません。ニジ高がするのは、日程の調整と準備の支援です。スクーリングの形や日程は、個別相談会で詳しくご案内しています。食事の不安がある場合も、個別相談会でご相談いただけます。
  • 費用は、提携する通信制高校の分とニジ高の分の両方がかかります。高等学校等就学支援金は高校の授業料が対象で、ニジ高の分には使えません。ニジ高の費用は学費のご案内をご覧ください。
  • 診断や服薬、栄養の補い方の判断は、主治医や専門の医療機関にご相談ください。

通信制高校全体の費用の目安は通信制高校 学費、学校の比べ方は通信制高校 選び方、ASDのある子と通信制の相性やスクーリングの注意点はASD 通信制高校の記事で詳しく書いています。今の高校からの移り方は高校 転入の記事をどうぞ。

迷ったときの進め方(3ステップ)

  1. 2週間、記録をつける。食べられた物、食べられなかった物と理由(味・食感・におい・見た目・場所)、体重、元気さをメモします。叱ったり評価したりはせず、観察に徹します。この記録は、受診や学校への相談でそのまま役に立ちます。
  2. 体と生活の状態で、相談先を決める。体重が保たれ元気なら、家の工夫と学校への配慮の相談から。体重が減ってきた、生活が狭くなってきたなら、かかりつけの小児科や発達の主治医へ。食べる量そのものが減っている、食べることを怖がるなら、心療内科・精神科、受診先に迷ったら精神保健福祉センターや相談ほっとラインへ。
  3. 学校生活の負担を見直す。配慮をお願いしても昼食や行事がつらい状態が続くなら、今の学校で続ける方法と、通信制高校などに移る方法を並べて比べます。決めるのは急がなくて大丈夫です。
相談室で栄養士の話を聞く親子
体重が減るなど心配なときは、医療機関や相談窓口に相談できます。
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食事の時間がつらいなら、家で学ぶ形も一緒に考えます

ニジ高はオンライン中心の通信制高校サポート校で、カメラオフ・チャット参加から始められ、昼食は自宅で食べ慣れた物をとれます。ただし学院は高校ではなく、卒業資格は提携する通信制高校で取り、そのスクーリングへの参加が必要です。食事の不安も含めて個別にご相談ください。

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よくある質問

Q. 高校生になっても偏食が続くのは、小さいころの育て方が悪かったからですか?

A. そう考える必要はありません。日本小児神経学会は、自閉スペクトラム症の偏食の要因として、感覚過敏、変化を受け入れにくいこと、こだわり、噛む・飲み込むの苦手さ、食事の嫌な記憶などを挙げています。どれも親のしつけで生まれるものではありません。偏食は年齢とともに軽くなることが多い一方、年齢が上がってから出てくることもあるとされています。

Q. 偏食があれば、ARFIDなのでしょうか?

A. 偏食があるだけではARFIDとは限りません。ARFIDは、食べ物を避けたり制限したりすることで、著しい体重の減少、栄養の不足、栄養補助食品への依存、社会生活への支障などが出ている状態を指し、診断は医師が行います。体重や元気さが保たれているなら、まずは家と学校の工夫を続け、変化があれば小児科などに相談してください。

Q. 何科を受診すればいいですか?

A. 体重の減少や栄養が心配なら、まずかかりつけの小児科や内科で相談し、必要に応じて血液検査で栄養の状態を見てもらうと安心です。摂食障害全国支援センターによると、摂食障害を専門的に診療しているのは主に心療内科や精神科で、一部の小児科でも子どもの摂食障害を診ています。受診先が分からないときは、お住まいの地域の精神保健福祉センターに相談できます。

Q. 修学旅行の食事が心配です。学校に何と伝えればいいですか?

A. 「何が・なぜ食べられないのか」「家ではどうしているか」「学校にお願いしたいこと」を短く紙にまとめ、担任や養護教諭に早めに相談してみてください。2024年4月からは私立学校を含めて合理的配慮の提供が義務になっており、本人が伝えにくい場合は保護者が補佐して伝えることもできます。献立を事前に知りたい、食べられる物を持参したい、といった希望は、話し合いで調整できることがあります。

Q. サプリメントで栄養を補ってもいいですか?

A. 日本小児神経学会のQ&Aでは、必要に応じて栄養食品や医薬品で栄養を補いながら、少しずつ偏食の改善を進めることが勧められています。ただ、どの栄養がどれだけ足りていないかは人によって違うため、自己判断で続けるより、医師や管理栄養士に相談してから選ぶほうが安心です。

食卓で戦わなくていい。親子で「食べられる物」を守るところからで十分です

偏食のある子を育てていると、食事のたびに「今日も食べなかった」と数えてしまい、自分の子育てまで否定された気持ちになることがあります。けれど、ここまで見てきたように、発達特性のある子の偏食は、感じ方の違いや不安から生まれるもので、親のせいではありません。

今日からできるのは、食べられる物を責めずに出し続けること、そして体重や元気さに変化があれば一人で抱えずに相談することです。家の外でも、学校、医療、相談窓口と、頼れる先はあります。食卓が少しでも穏やかな場所に戻ることを、心から願っています。

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