特定のストレスをきっかけに、急に学校へ行くのがつらくなった――そんな状態は「適応障害」と呼ばれることがあります。この記事では、適応障害の高校生に見られる特徴と、回復までのプロセスについて紹介します。
先に結論をお伝えします。適応障害という診断名の中心にあるのは「ストレスの原因がはっきりしている」ことです。診断要件には、原因となるストレスが取り除かれ、十分な支援があり、対処の手立てが増えると、症状はふつう軽くなっていくと書かれています。逆に、原因が続いたままだと症状が長引くことがある、という記述もあります。つまり回復の順番は、気合いではなく環境のほうから動かすのが筋道になります。そして「戻る場所」は、元の教室である必要はありません。
いま朝が来るのがこわい人、子どもの部屋の前で声をかけるのをためらっている人に向けて、制度の話も含めて整理しました。休学、転学、通信制という選択肢は、どれも「逃げ道」ではなく、学校教育法施行規則や学校の学則にきちんと位置づけられた道です。診断や治療の判断は主治医や専門機関にゆだねる前提で、学校と手続きの側で何ができるかをまとめます。
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結論:適応障害で学校に行けなくなったときの早見
- 定義の中心は「原因が明確なこと」。厚生労働省は、日常生活の出来事や環境にうまく対処できず心身に症状が出て社会生活に支障をきたす状態で、ストレスの原因が明確であることが定義上重要だと説明しています。
- ICD-11では病名が「適応反応症」に変わり、症状で診断できるようになりました。中心症状は、ストレス因やその結果への「とらわれ」(過度の心配、繰り返される苦痛な思考、絶え間ない反芻)です。
- うつ病との線引きは「離れたら軽くなるか」だけでは決まりません。気分症などほかの疾患で症状がうまく説明できる場合は、適応反応症という別の診断は一般につけない、という整理になっています。
- 「甘え」ではありません。令和6年度の文部科学省の調査では、高校で不登校に数えられた生徒は67,782人。相談内容で最も多いのは「学校生活に対してやる気が出ない等」(26.9%)でした。
- 出席日数の扱いは、欠席をどう記録するかで変わります。医療機関の指示などによる自宅療養は、統計上は「病気」に計上され、「不登校」とは別に数えられます。
- 休学・転学・通信制は、それぞれ残るものが違います。転学なら前の学校で取った単位と在籍期間を引き継げますが、いったん退学してから入り直すと編入になります。
- オンライン中心のサポート校という選択肢もあります。ニジ高はカメラ・マイクをオフにしたチャット参加から始められますが、高校そのものではなく、卒業資格は提携する通信制高校で取ります。
適応障害は「甘え」ではなく、ストレス因がはっきりしていることが定義の中心です
進級、クラス替え、人間関係のトラブルなど、明確なきっかけとなるストレスに対して、通常の範囲を超えた心身の反応が出てしまう状態です。憂うつな気分、強い不安、涙もろさ、頭痛や腹痛などの身体症状が現れることもあります。原因となるストレスから離れると症状が軽くなるのが特徴です。
厚生労働省の資料では、適応障害は「日常生活の中で起こった出来事や環境に対してうまく対処できず、心身に様々な症状が現れて社会生活に支障をきたす状態」と説明され、ストレスの原因が明確であることが定義上重要だと明記されています。症状はゆううつな気分、不安感、頭痛、不眠など人によってさまざまですが、学業や対人関係を続けることに問題のある状態になります。そして、これらは一般的には正常な人にも現れる症状であり、適応障害の場合はそれを超えた過敏な状態になっている――という説明のしかたをしています(出典:厚生労働省「(資料1)適応障害について」。同省の生活習慣病予防のための健康情報サイト e-ヘルスネットの記述を引用した資料で、2023年3月15日取得と記載されています)。
ここが大事なところです。「誰にでも起こる反応の延長線上にある」からこそ、本人にも周りにも「気の持ちよう」に見えてしまう。けれど定義の側は、原因がはっきりしていることと、社会生活に支障が出ていることを要件にしています。がんばりが足りないから起きているのではなく、その環境に対する反応として起きている、という順番で書かれているのです。
治療については、厚生労働省の資料は「まず原因となっているストレスを軽減し、心理的に回復させることが必要」で、場合によっては薬物療法が必要なこともある、としています。最初の一手が「環境の調整」に置かれているのは、診断名の構造から見て自然なことです。診断や薬の判断は主治医にゆだねるものですが、環境のほうは、家庭と学校で相談して動かせる部分があります。

ICD-11では病名が「適応反応症」に変わり、症状そのもので診断できるようになりました
診断の国際的なものさしは、世界保健機関のICD(疾病及び関連保健問題の国際統計分類)です。長く使われてきたICD-10では、適応障害はF43「重度ストレス反応および適応障害」の中のF43.2として扱われてきました。ICD-11では、この診断カテゴリーが実質的にはじめて改訂され、コードは6B43になりました。日本語の訳語は、日本精神神経学会が「適応反応症」と定めています。
訳語が変わった理由も公表されています。日本精神神経学会のICD-11委員会と精神科用語検討委員会が、ICD-11の翻訳にあたって disorder の訳を「障害」から「症」に変更することを決めたためです。ただし adjustment disorder を「適応症」と訳すと医薬品の効能を指す用語と同じになってしまい、「適応不全症」では適応への努力が不十分であるかのような印象を与えかねない。そこで「適応反応症」になった、という経緯です(出典:本村啓介「ICD-11の適応反応症」精神神経学雑誌 第127巻11号815頁(2025年)/公益社団法人 日本精神神経学会)。
中身の変化は、もっと大きいです。ICD-10の適応障害は「いずれの症状もそれ自体では、より特異的診断を正当化するほど重症であったり顕著ではない」と書かれていて、言いかえればほかの診断がつかないことが条件のような位置づけでした。ICD-11では、ストレス因やその結果に対する「とらわれ」を中心症状として明示し、症状によって診断できるようになりました。
| 項目 | ICD-10(F43.2 適応障害) | ICD-11(6B43 適応反応症) |
|---|---|---|
| 診断の軸 | ストレスへの不適応反応。ほかの診断を下せないことが条件に近い | ストレス因やその結果への「とらわれ」という症状で診断できる |
| 発症の時期 | 通常、出来事や生活の変化から1か月以内 | 通常、ストレス因の1か月以内。遅れて出ることもある |
| 症状が続く期間 | 遷延性抑うつ反応を除き通常6か月を超えない | ストレス因とその結果が終わると6か月以内に消退 |
| 亜型 | 短期抑うつ反応、混合性不安抑うつ反応など6つ | 削除された |
ICD-11の診断要件(日本精神神経学会の和訳案)では、必須の特徴として次のものが挙げられています。単一または複数の確認可能な心理社会的ストレス因に対する非適応的反応であること。その反応が、ストレス因やその結果に対するとらわれ――過度の心配、繰り返されて苦痛を生じる思考、意味するところについての絶え間ない反芻思考――によって特徴づけられること。症状がほかの精神の疾患によってより適切に説明されないこと。そしてストレス因に適応できないことにより、個人生活、家族生活、社会生活、学業、職業などに有意な機能障害が生じていることです。
この最後の項目には、高校生に読んでほしい一文が添えられています。機能が維持されている場合、それは有意な付加的努力によるものにすぎない――つまり、なんとか通えている状態は「大丈夫」の証拠ではなく、余分な努力で持ちこたえているだけかもしれない、という見方が診断要件の中に書き込まれているのです。
※2026年9月時点の情報です。最新は公式でご確認ください。
高校生では、とらわれが言葉ではなく頭痛や腹痛、行動として出ることがあります
ICD-11の診断要件には「発達段階別の病像」という項があり、年齢によって表れ方が違うことが書かれています。児童では、ストレス因やその結果に対するとらわれや絶え間ない反芻思考という特徴的な症状が、しばしば直接に表現されず、身体症状(胃痛、頭痛)、破壊的または反抗的行動、過活動、かんしゃく発作、集中力の問題、易刺激性、しがみつきの増加として表れるとされています。退行や夜尿、睡眠の障害なども、持続している場合は症状のことがあると書かれています。
青年期については、行動症状として物質使用やさまざまな形態の行動化、危険行動がありうるとされています。そして、こう続きます。児童と青年はストレスを生じる出来事と自分自身の症状および行動との関連を明確に言語化しないことがあるので、診断にあたってはストレス因と症状発症との時間的関係、そして以前の機能からの変化の程度を考慮することが重要である――。
ここは家庭でも使える視点です。本人に「なんで行けないの」と理由を聞いても答えが出てこないのは、隠しているからではなく、言葉になっていないからかもしれません。かわりに見るのは、いつから変わったのか(時間的関係)と、前と比べてどれだけ落ちたのか(以前の機能からの変化)です。
| 見えている行動 | とらわれの表れ方として書かれているもの | 家庭で見るポイント |
|---|---|---|
| 朝になると頭痛・腹痛を訴える | 児童では身体症状として表れることがある | 休日や長期休みに軽くなるか |
| 急に反抗的・怒りやすくなった | 破壊的または反抗的行動、易刺激性 | 変化が始まった時期と出来事の順番 |
| 集中できず、課題が進まない | 集中力の問題 | 以前の状態からどれだけ落ちたか |
| 夜眠れず、昼に寝てしまう | 睡眠の障害。持続していれば症状のことがある | 1か月ほど続いているか |
この表は、診断の代わりに使えるものではありません。あてはまる項目がいくつかあれば、様子を見るより先に、学校の養護教諭やスクールカウンセラー、そして医療機関への相談を検討する材料にしてください。

うつ病との違いは「離れたら軽くなるか」だけでは決まりません
「適応障害とうつ病はどう違うのか」は、よく聞かれる疑問だと思います。一般によく言われるのは「適応障害はストレス因から離れると軽くなる、うつ病は離れても続く」という説明です。方向としては間違っていませんが、ICD-11の診断要件は、もう少し慎重な書き方をしています。
鑑別診断の項には、こう書かれています。精神の疾患が、ストレスを生じる生活体験をきっかけとして生じることや、それによって増悪することはよく見られる。さらに、多くの精神の疾患は、ストレス因に対する非適応的反応、ストレス因へのとらわれ、過度の心配または反芻思考、適応不全を症状として伴いうる。これらの症状を説明しうるほかの精神の疾患が存在する場合(例として挙げられているのは、一次性精神症、気分症、ほかのストレス特異的関連症、パーソナリティ症、強迫症または関連症、全般不安症、分離不安症、自閉スペクトラム症。うつ病は気分症に含まれます)、ストレスを生じる出来事や状況の変化が症状の増悪をもたらしていても、適応反応症という別の診断は一般につけるべきでない――。ただし、症状の重なりが少なく、2つの疾患の経過が区別でき、それぞれの診断要件を完全に満たす場合には、適応反応症の診断をつけてよいとも書かれています。
そして、ストレス因が終わった後に症状が6か月を超えて持続する場合は、診断を別の精神の疾患に変更するのが一般に適切だとされています。つまり「離れたら軽くなるか」は結果として観察される特徴であって、そこだけで振り分けるものではないということです。学校を休んで数か月たっても状態が変わらないときに、それは「甘えているから」ではなく、診断そのものを見直す局面かもしれない、という読み方になります。
| 比べる点 | 適応反応症(適応障害) | うつ病などの気分症 |
|---|---|---|
| ストレス因 | 確認できるストレス因があることが要件 | きっかけがある場合もあるが、要件ではない |
| 中心症状 | ストレス因やその結果への「とらわれ」 | 抑うつ気分や興味・喜びの喪失など |
| 診断の優先 | ほかの疾患でよりよく説明できる場合はつけない | 診断要件を満たせばこちらが優先される |
| 経過の目安 | ストレス因と結果が終われば6か月以内に消退 | 6か月を超えて続くなら診断の見直しを検討 |
もうひとつ、覚えておくと気持ちが少し軽くなる記述があります。ICD-11の鑑別診断には「極度に脅威的または恐ろしい出来事を体験した人の多くは、後に心的外傷後ストレス症ではなく適応反応症を生じる」と書かれています。強い出来事のあとに苦しくなることは、まれな異常ではないのです。うつ病の側から学校に行けなくなっている場合の整理は、うつ病 高校生 学校 行けないの記事にまとめています。
「甘え」ではありません。高校で不登校に数えられた生徒は67,782人でした
回復の早さも、本人のがんばりで決まるものとしては書かれていません。ICD-11の診断要件では、ストレス因とその結果が終わると症状は6か月以内に消退するとされています。一方、先の精神神経学雑誌の解説が引いているDSM-5-TRの記述では、持続的なストレス因や永続的な結果をもたらすストレス因に反応して症状が起きている場合は、症状が6か月より長く続くことがあるとされています。原因が残っているかどうかで見通しが変わるという書き方です。だから「もう大丈夫でしょ」と登校を促す前に、原因のほうがどうなっているかを見るのが順番になります。
数字の面からも、これは一人の問題ではありません。文部科学省が令和7年10月29日に公表した令和6年度の調査では、高等学校で不登校に数えられた生徒は67,782人、生徒1,000人当たり23.3人でした(前年度は68,770人・23.5人)。このうち新規に不登校となった生徒は48,869人、90日以上欠席した生徒は不登校生徒数の14.9%です。同じ年度の高等学校の中途退学者は44,571人、中途退学者の割合は1.4%でした(前年度は46,238人・1.5%)。出典は文部科学省「令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要(不登校抜粋版)」と同 調査結果の概要で、公表は令和7年10月29日の通知(7初児生第23号)です。
この調査では、不登校生徒について学校が把握した事実も集計されています。高等学校(全日制・定時制の合計67,782人)に対する割合の多い順に並べると、次のようになります。
| 学校が把握した事実 | 人数 | 割合 |
|---|---|---|
| 学校生活に対してやる気が出ない等の相談があった | 18,236人 | 26.9% |
| 生活リズムの不調に関する相談があった | 17,787人 | 26.2% |
| 不安・抑うつの相談があった | 10,827人 | 16.0% |
| 学業の不振や頻繁な宿題の未提出が見られた | 8,654人 | 12.8% |
| いじめ被害を除く友人関係をめぐる問題の情報や相談があった | 6,943人 | 10.2% |
| 入学、転編入学、進級時の不適応による相談があった | 4,761人 | 7.0% |
注目したいのは最後の行です。入学・転編入学・進級時の不適応による相談が4,761人。適応障害の話でよく出てくる「進級」「クラス替え」というきっかけが、統計の項目としてちゃんと立っているということです。あなたの家で起きていることは、国の調査票に項目があるくらいには、よく起きていることなのです。
国の方針も、登校だけをゴールにしていません。令和元年10月25日の通知(元文科初第698号)は、不登校児童生徒への支援は「学校に登校する」という結果のみを目標にするのではなく、児童生徒が自らの進路を主体的に捉えて、社会的に自立することを目指す必要があるとしています。同時に、不登校の時期が休養や自分を見つめ直す等の積極的な意味を持つことがある一方で、学業の遅れや進路選択上の不利益、社会的自立へのリスクが存在することにも留意するよう書かれています(出典:文部科学省「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」令和元年10月25日)。休むことを肯定しながら、時間の経過で失うものにも目を配る。この両方を持っておくのが、いちばん現実的です。小中学生の段階での不登校については、姉妹校のNIJINアカデミーでも取り組んでいます。
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回復は「休む」→「整える」→「試す」の順で進み、戻る場所は元の教室でなくてよい
回復のためにできることとして、もともとこの記事に書いていた4つは、いまも軸のままです。
- ストレスの原因となっている環境から、いったん距離を置く
- 「早く戻らなきゃ」と急かさず、本人のペースを尊重する
- 心身の状態が落ち着くまで、無理に理由や経緯を聞き出そうとしない
- 回復後の環境調整(クラス替え、転校など)も選択肢として考える
この4つを、ICD-11の記述に沿って並べ直すと、順番が見えてきます。診断要件の付加的な臨床特徴には、ストレス因が取り除かれる、十分な支援が行われる、またはその人が付加的な対処機序や方策を身につけると、適応反応症の症状は通常軽減すると書かれています。逆に言うと、原因がそのままで、支援もなく、対処の手立ても増えていない状態で登校日数だけ増やすのは、いちばん折れやすいやり方だということです。
だから、こういう順番になります。
| 段階 | この時期にやること | やらないほうがよいこと |
|---|---|---|
| 1. 休む | 原因から距離を置く。受診を検討する。睡眠と食事を戻す | 理由を問い詰める。登校日を決める |
| 2. 整える | 支援の相手を増やす(担任・養護教諭・相談員・主治医)。手続きの締め日を確認する | 本人抜きで進路を決めてしまう |
| 3. 試す | 負荷の小さい環境から少しずつ。オンライン、保健室、別室、転学先の体験 | 元の教室にいきなり全日で戻す |
原因となった環境に戻ることだけが回復のゴールではありません。通信制高校のように、負荷の少ない環境で学びを続けながら回復していくという道もあります。ICD-11の要件が「ストレス因が取り除かれると症状は通常軽減する」と書いているのなら、ストレス因を取り除いた場所で学び続けるという選び方は、回復の筋道にかなっていることになります。
ただし、2の「手続きの締め日を確認する」だけは、休んでいる間にも動いてしまいます。学年の途中で転学できる時期、休学の届け出、単位認定の期限は学校ごとに違うので、本人が動けないうちに保護者が情報だけ集めておくのが現実的です。保健室登校という形から立て直す道もあります(保健室登校)。
学校に伝えるときは、診断名より「今できること・できないこと」を先に置くと通りやすい
学校に連絡する場面で、多くの家庭がつまずくのは「なんと言えばいいか分からない」ところです。診断名だけを伝えると、学校側も対応を決めきれません。逆に、診断名を言わずに「行きたがらない」だけを伝えると、登校を促す方向の対応になりがちです。
実務的には、次の3つをセットにすると話が進みやすくなります。①いつから、どう変わったのか(時間的関係と機能の変化)②いまできること・できないこと(登校はできないがレポートはできる、など)③学校に相談したいこと(欠席の扱い、課題の受け取り方、単位のこと)。ICD-11の診断要件が「ストレス因と症状発症との時間的関係、以前の機能からの変化の程度」を重視しているのと、同じ形です。
| 相談する相手 | 頼めることの例 |
|---|---|
| 担任 | 欠席の連絡方法、課題やプリントの受け取り方、学級での扱いの配慮 |
| 養護教諭 | 体調の記録、別室や保健室での過ごし方、医療機関につなぐ相談 |
| スクールカウンセラー | 本人の話を聞く場、保護者面談、学校内での支援の組み立て |
| 教務・学年主任 | 単位認定の条件、欠課の上限、進級判定の時期、転学の手続き |
通知では、学級担任、養護教諭、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー等の学校関係者が中心となり、児童生徒や保護者と話し合うなどして「児童生徒理解・支援シート」を作成することが望ましいとされ、必要に応じて教育支援センター、医療機関、児童相談所等との情報共有、小・中・高等学校間や転校先等との引継ぎが有効だとも書かれています。転学を考える場合、このシートの存在を知っているだけでも、引き継ぎの話が早くなります。
診断書を出すかどうかは、家庭で決めることです。出すと、欠席の理由を「病気」として記録してもらえる場合があります(次の節)。出したくない事情があるときは、診断名を書かずに「配慮が必要な状態である」ことだけを記した書面で足りるか、主治医と学校に相談する形もあります。どちらが正しいということではありません。

出席日数の扱いは、欠席の理由をどう記録するかで変わります(場合分け)
ここがいちばん誤解の多いところです。まず前提として、高校の出席日数に国の統一した基準はありません。授業時数の3分の2以上の出席を目安にしている学校が多いものの、これは各校の学業成績評価規程で定められているもので、法令の数字ではありません。自分の学校の規程を確認するのが出発点です(高校 欠席日数/高校 出席日数)。
そのうえで、国の調査での数え方には、はっきりした区分があります。年度間に30日以上登校しなかった生徒を理由別に調べており、高等学校も小・中学校と同様の扱いです。区分の定義はこうなっています。
| 区分 | 定義(調査上の扱い) |
|---|---|
| 病気 | 本人の心身の故障等(けがを含む)により、入院、通院、自宅療養等のため長期欠席した者。自宅療養とは、医療機関の指示がある場合のほか、自宅療養を行うことが適切であると本人の周囲の者が判断する場合も含む |
| 不登校 | 何らかの心理的、情緒的、身体的、あるいは社会的要因・背景により登校しないあるいはしたくともできない状況にある者(「病気」「経済的理由」「新型コロナウイルスの感染回避」による者を除く) |
| その他 | 上記のいずれにも該当しない理由により長期欠席した者 |
つまり、適応障害の診断を受けて通院や自宅療養をしている場合、調査上は「病気」に計上され、「不登校」には数えない扱いになっています。しかも「自宅療養」には、医療機関の指示がある場合だけでなく、自宅療養が適切だと周囲の者が判断する場合も含まれます。ただし、どの理由で計上するかを選ぶのは学校です(出典:文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査-用語の解説」)。
ただし、これは調査上の分類であって、指導要録に出席として記録されるかどうかとは別の話です。ここを混同しないでください。高校生が学校外の公的機関や民間施設で相談・指導を受けている場合の指導要録上の出欠の取扱いは、平成21年3月12日付けの文部科学省初等中等教育局長通知(20文科初第1346号)によるものとされています。そこでは、通所または入所が不登校生徒の将来的な社会的自立を助けるうえで有効・適切だと判断される場合に、在籍校の校長が出席扱いとすることができる、とされています。判断するのは校長です。だから、家庭からは「お願いする」しかありません。
この通知には、もうひとつ大事な但し書きがあります。この指導要録上の出席扱いは、科目の履修の認定にあたって考慮される授業への出席とは別のもので、履修の認定は在籍校の履修要件に照らして行う、と書かれています。出席扱いになったからといって、そのまま単位がつくわけではない、ということです。なお国の調査では、校長が出席扱いとした日数も欠席日数に含めて数えられます。
単位の側には、法令の数字があります。学校教育法施行規則第96条第1項は、全課程の修了を認めるには74単位以上の修得が必要だと定めています。そして第88条の3により、授業を多様なメディアを高度に利用して教室等以外の場所で履修させることができます。第96条第2項第2号と第3項では、学校生活への適応が困難で相当の期間欠席すると認められる生徒が、学修の継続のため自宅その他特別な場所でこの授業を履修して修得する単位などの合計は、36単位を超えないものとされています。
大事な例外が第96条第4項です。疾病による療養のためまたは障害のため、病院その他の適当な場所で医療の提供その他の支援を受ける必要がある生徒であって、相当の期間高等学校を欠席すると認められるものについては、この36単位の上限によらないことができると書かれています。療養として扱われる場合、遠隔での履修に単位数の上限がかからなくなる、ということです(出典:e-Gov法令検索「学校教育法施行規則」)。
もうひとつ、第86条は、学校生活への適応が困難であるため相当の期間欠席し引き続き欠席すると認められる生徒などを対象に、その実態に配慮した特別の教育課程を編成して教育を実施できる仕組みを定めています。学びの多様化学校(いわゆる不登校特例校)の根拠になっている条文です。数はまだ限られますが、こういう学校がある地域もあります。
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休学・転学・通信制は、どれも「やり直し」ではなく、残るものが違う別の道です
休学については、法令に日数の規定はありません。学校教育法施行規則第4条第1項第6号が、学則に「入学、退学、転学、休学及び卒業に関する事項」を記載しなければならないと定めているだけです。つまり休学の条件・期間・在籍の扱いは、学校ごとの学則で決まっているということです。同じ都道府県の高校でも違います。自分の学校の学則を見るか、教務に聞くのが唯一の確認方法です(高校 休学)。
転学には条文があります。第92条は、他の高等学校に転学を志望する生徒があるときは、校長がその事由を具し、在学証明書その他必要な書類を転学先の校長に送付しなければならないとし、転学先の校長は、教育上支障がない場合には、転学を許可することができるとしています。第91条は、第1学年の途中または第2学年以上に入学を許可される者は、相当年齢に達し、その学年に在学する者と同等以上の学力があると認められた者だと定めています。同じ第92条の第2項には、全日制・定時制・通信制の課程相互の間の転学または転籍については、修得した単位に応じて相当学年に転入することができると書かれています。これが、それまでの単位を持っていける根拠になる条文です。第97条は少し役割が違って、在籍したまま他の高等学校で科目の単位を修得した場合(併修)に、その単位数を修了に必要な単位数に加えることができる、という定めです。
| 選択肢 | 残るもの | 気をつける点 |
|---|---|---|
| 休学して戻る | 在籍。学則により単位や学年の扱いが決まる | 期間の上限・復学の条件が学校ごとに違う |
| 転学(在籍したまま移る) | それまでの単位と在籍期間を引き継げる | 受け入れの時期と定員がある。前の学校の書類が必要 |
| 退学してから入り直す(編入) | 単位は引き継げるが、在籍期間が途切れる | 卒業までの年数が伸びる場合がある |
| 通信制高校へ | 卒業資格は全日制と同じ高等学校卒業 | レポート・スクーリング・試験を自分の管理で進める |
転学と編入の違いは、在籍期間が途切れるかどうかです。高校の卒業には3年以上の在籍、74単位以上の修得、特別活動30単位時間以上が必要なので、在籍期間が途切れると卒業までの年数が伸びることがあります。つらい時期に「もう辞めます」と決めてしまう前に、在籍したまま移る道があることだけは知っておいてください(高校 転入/転入 編入 違い)。
通信制高校は、いまや小さな選択肢ではありません。文部科学省の令和7年度通信制高等学校実態調査では、通信制課程を置く高校は323校(公立81・私立227・株式会社立15)、在籍生徒数は306,711人(2025年3月31日)。2025年度の入学者77,998人のうち、中学3年生のときに不登校だった生徒が44,461人(57.0%)を占めています(出典:文部科学省「令和7年度 通信制高等学校実態調査」)。同級生の半分以上が同じ道を通ってきた場所だということです。
お金の面では、高等学校等就学支援金が使えます。2026年度は私立の通信制で1単位13,668円・年間337,200円までが支給の上限で、所得制限はありません(単位制の場合は通算74単位・年間30単位までが対象)。公立の通信制は、支給の上限が1単位336円です。これは国が支給する額の上限で、実際の授業料の額ではありません。公立の授業料は都道府県の条例で決まるので、県によって違います。また対象は授業料だけで、サポート校の費用には使えません(出典:文部科学省「高校生等への修学支援」)。学校ごとの金額の幅は通信制高校 学費で整理しています。学校の選び方全体は通信制高校 選び方からたどれます。
※2026年9月時点の情報です。最新は公式でご確認ください。
選択肢の1つとしてのニジ高(正直な注意点)
NIJIN高等学院(ニジ高)は、オンライン中心の通信制高校サポート校です。担任制で、全国どこからでも、海外からも通えます。カメラとマイクをオフにして、チャットだけで参加するところから始められます。生活リズムに波があっても学べる設計で、授業のアーカイブ視聴や中学内容の学び直しにも対応しています。人の視線や声がつらい時期に、いきなり教室に入る形をとらなくてよいというのは、はじめの負担が小さい入り方だと思います。
ニジ高は、発達特性や障害を、本人を変えるのではなく学びの構造や環境を変えることで支援するという考え方を取っています。ただし医療の判断をするところではありません。診断や服薬については主治医・専門機関にご相談ください。ここに書いた制度の話も、最終的な適用はあなたの在籍校の判断になります。
正直な注意点を書きます。ニジ高は高校そのものではありません。卒業資格は提携する通信制高校で取り、その高校のスクーリングへの参加が必要です。学院の中でのスクーリングはありません(地元の会場で受けられる場合もあります)。スクーリングの形や日程は、個別相談会で詳しくご案内しています。提携校のスクーリングにニジ高のスタッフが付き添うことはなく、ニジ高がするのは日程の調整と準備の支援です。不安が強い時期には、ここが一番の関門になります。
費用も正直に書きます。提携する通信制高校の分とニジ高の分の両方がかかり、ニジ高の分に就学支援金は使えません。金額は学費のご案内をご覧ください。手続きの面では、途中入学(転入・編入)ができ、出願費用は無料です。不登校の生徒を650名以上サポートしてきました(グループ全体)。メタバースの校舎で、担任や同級生と集まる時間もあります。よくいただく質問はよくある質問にまとめています。
迷ったときの進め方(3ステップ)
ステップ1:体の側から手をつける。眠れているか、食べられているか、朝どうなるかを1週間だけ記録します。紙でもスマホのメモでもかまいません。このメモは、受診のときにも学校に相談するときにも、そのまま材料になります。並行して、医療機関の受診を検討してください。適応障害かどうかを決めるのは家庭ではなく医師です。
ステップ2:学校に「できること・できないこと」を伝える。診断名より先に、いつから・どう変わったか・いま何ができるかを伝えます。そのうえで、欠席の扱い、課題の受け取り方、欠課の上限、進級判定の時期の4つを確認します。数字が分かると、残り時間の見え方が変わります。動けるのは保護者だけでも大丈夫です。
ステップ3:戻る場所を2つ以上、並べて比べる。元の教室に戻る道だけを見ていると、それが無理だったときに行き先がなくなります。別室・保健室・転学・通信制のうち、いくつかを同時に調べておきます。転学や入学の受け入れ時期は学校ごとに違うので、資料を取り寄せるところまでは、決める前にやっておいて損がありません。話を聞くだけでも、選択肢は増えます。


休むか、移るか。決める前に話だけ聞いてみませんか
適応障害の診断があるとき、欠席の扱いや単位のことは学校ごとに違います。ニジ高の個別相談会では、オンライン中心の学び方と、提携する通信制高校での卒業までの道すじをご説明します。ニジ高は高校そのものではなく、卒業資格は提携校で取り、その高校のスクーリングへの参加が必要です。決めていない段階でも大丈夫です。
よくある質問
休ませるかどうかは、医師の判断と学校との相談で決めることです。一般論として、厚生労働省の資料は治療には原因となっているストレスを軽減し心理的に回復させることが必要だとしており、ICD-11の診断要件にもストレス因が取り除かれると症状は通常軽減すると書かれています。ただし、休むことで学業の遅れや進路選択上の不利益が生じるリスクにも留意するよう国の通知は述べています。両方を主治医と学校に相談してください。
医療の判断なのでここでは断定できません。ICD-11の鑑別診断には、ストレス因が終わった後に症状が6か月を超えて持続する場合は、診断を別の精神の疾患に変更するのが一般に適切だと書かれています。症状の説明がつくほかの疾患がある場合は、適応反応症という別の診断は一般につけないという整理にもなっています。時間が経っても変わらないときは、主治医に経過を伝えて相談するのがよいと思います。
自動的にはなりません。国の調査上の分類としては、医療機関の指示などによる自宅療養は「病気」として計上され「不登校」には数えられませんが、指導要録に出席として記録するかどうかは別の判断です。高校生が学校外の公的機関や民間施設で相談・指導を受けている場合の出欠の取扱いは平成21年3月12日付けの文部科学省通知によるとされ、有効・適切と判断される場合に校長が出席扱いとすることができる形になっています。在籍校に確認してください。
転学であれば、それまでに修得した単位と在籍期間を引き継げます。学校教育法施行規則第92条第2項は、全日制・定時制・通信制の課程相互の間の転学または転籍については、修得した単位に応じて相当学年に転入することができると定めています。ただし、いったん退学してから入り直す編入の場合は在籍期間が途切れるため、卒業までの年数が伸びることがあります。在籍したまま移れるかどうかを、先に確認するのがおすすめです。
通信制高校の卒業資格は全日制と同じ高等学校卒業で、大学受験の資格に差はありません。ただし、レポート・スクーリング・試験を自分の管理で進める必要があり、受験対策を学校の外で組む人もいます。体調を立て直す時間と受験準備の時間をどう配分するかは、入学前の相談で具体的に聞いておくとよい部分です。
ここまで踏ん張ってきた時間は、消えません
ICD-11の診断要件には、機能が維持されている場合それは有意な付加的努力によるものにすぎない、という一文があります。学校に行けていた日々が、余分な力を使って持ちこたえていた時間だったのなら、いま動けないのは力が尽きたからで、力がなかったからではありません。そこは、はっきり分けて考えていいところです。
戻る場所は、元の教室でなくてかまいません。休学して同じ学校に戻る人も、転学する人も、通信制で学び直す人も、どれも制度としてちゃんと用意されている道です。今日決めなくて大丈夫です。決められないうちは、情報だけ集めておく。それで十分に前に進んでいます。
この学校がなぜ作られたのかはNIJIN高等学院の学校設立の想いに書いています。同じように悩んだ人の話は不登校のお悩み相談 記事一覧にまとめました。一日の過ごし方はニジ高の一日、学びの考え方は教育モデルでご覧いただけます。

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