発達障害の高校生にうつが重なったら?|二次障害のサインと相談先【2026】

たとえば、ASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如・多動症)の診断があるお子さんが、高校に入ってから朝起きられなくなり、好きだったことにも手を伸ばさなくなった。これは特性のせいなのか、うつなのか、それとも怠けなのか。保護者には見分けがつかず、どこに相談すればよいかも分からない。この記事は、そのような場面を想定して書いています。

先に結論を書きます。特性なのかうつなのかを、家庭で見分けなくてかまいません。日本うつ病学会の「うつ病診療ガイドライン2025」は、児童・思春期のうつ病には自閉スペクトラム症やADHDといった神経発達症の併存がみられやすく、その見分けには発達の経過のくわしい情報が必要になるとしています。保護者にできるのは、「以前からあった様子」と「最近変わった様子」を分けてメモし、医師や相談窓口に伝えることです。

この記事は、日本うつ病学会の診療ガイドライン、国立精神・神経医療研究センターの「こころの情報サイト」、国立特別支援教育総合研究所の報告書、文部科学省の「生徒指導提要」、厚生労働省の相談窓口のページ、e-Govの法令などを実際に開いて確認した内容でまとめました。診断と治療の判断は医師が行うものです。公的な資料で確認できなかったことは、確認できなかったと書いています。

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目次

結論:発達障害の高校生にうつが重なるときの早見

  • 「二次障害」は、発達障害の特性そのものではなく、特性に合わない環境や対応が続いたあとに出てくる情緒や行動の不調を指す言葉です。国立特別支援教育総合研究所の報告書は、意欲の低下、抑うつ的な気分、不登校傾向を、内側に向かって現れる例に挙げています。
  • 日本うつ病学会の「うつ病診療ガイドライン2025」は、児童・思春期(このガイドラインでは6〜18歳)のうつ病に、ASDやADHDといった神経発達症の併存がみられやすいとしています。
  • 「何割が併存するか」は、調べた対象で大きく変わります。2011年までに発表された海外の研究では、ASDのある子どもの大うつ病性障害は、特別支援学校に通う71人では1%、医療機関を継続して受診している217人では56%でした。日本の高校生に絞った割合は、今回確認した公的な資料では見つけられませんでした。
  • 思春期のうつ病は、落ち込みよりもイライラや不機嫌として現れることがあります。学会のガイドラインは、過眠、食欲の増加、体の不調の訴えも思春期の特徴に挙げています。
  • 受診は、発達障害の主治医がいればまずそこへ相談します。いない場合は児童精神科・精神科・心療内科のほか、かかりつけの医師、発達障害者支援センター、精神保健福祉センターにも相談できます。こころの健康相談統一ダイヤルは0570-064-556です。
  • 学校には、障害者差別解消法にもとづく合理的配慮を申し出ることができます。2024年4月1日からは私立高校にも提供が義務づけられました。欠席と単位の扱いは、学校ごとの規程で決まります。
  • 休んでいる間の学びの場として、通信制高校や、NIJIN高等学院のようなオンライン中心のサポート校を比べる方法もあります。診断や服薬の判断は、主治医・専門機関にご相談ください。
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「二次障害」は特性そのものではなく、合わない環境が続いたあとに出てくる不調です

「二次障害」という言葉は、医療と教育で使い方に幅があります。国立特別支援教育総合研究所が2012年3月にまとめた報告書は、次のように整理しています。

  • 発達障害の支援で使われる「二次障害」は、発達障害の特性に対して適切な支援がなされないか、不適切な対応がなされるために生じる情緒や行動面の問題を指している。
  • 現れ方は2つある。すぐ怒る、反抗的な言動など外に向かうものと、心身症、意欲低下、抑うつ的な気分、不登校傾向など内に向かうものである。
  • 明確な定義は存在せず、主として教育的な概念である。医学で使われる「併存症」は、一般に因果関係までは意味しない。

出典:国立特別支援教育総合研究所「発達障害と情緒障害の関連と教育的支援に関する研究―二次障害の予防的対応を考えるために―」(2012年3月。発達障害情報・支援センターのサイトに掲載。2026年10月確認)

文部科学省が教職員向けにまとめた「生徒指導提要」(2022年12月改訂)も、つまずきや失敗が繰り返されて苦手意識や挫折感が高まると、心のバランスを失い、不登校や不安障害など様々な「二次的な問題」による症状が出てしまうことがあると説明しています。発達障害の特性は生まれつきの脳の働き方によるもので、個人の努力不足や意欲の問題ではない、とも書かれています。

二次障害は、本人や保護者を責めるための言葉ではありません。先ほどの報告書は、「子どもが安心して生活することができる環境へと改善を図ることで、比較的短時間で改善する可能性もある」と書いています。変えていくのは、特性ではなく環境のほうです。診断がつくほどではない困りごとの場合は、発達障害グレーゾーン 高校生の特徴と相談先の記事も参考になります。

うつ病学会のガイドラインも、神経発達症の併存に触れています

日本うつ病学会が2025年12月に公開した「うつ病診療ガイドライン2025」は、第4章で児童・思春期(6〜18歳と定義)のうつ病を扱っています。そこには、次の内容があります。

  • 児童・思春期うつ病では、自閉スペクトラム症やADHDといった神経発達症の併存がみられやすく、その鑑別も必要となる。そのため、発達歴と生育歴の詳細な情報が必要となる。
  • 発達特性が存在する場合、うつ病の発病前からそれらの特性が存在したかを確認する。抑うつ症状がいつ頃から表に出たのかを丁寧に評価する。
  • ほかの精神疾患が併存している場合には、どちらがどの程度影響しているのかを検討し、併存疾患も加味した治療方針を立てる(第1章のCQ1-2)。

つまり医師は、特性による不適応がうつのように見えているのか、特性に加えてうつ病が併存しているのかを、発達の経過をたどりながら確かめていきます。診察でも丁寧に確かめていく作業で、家庭で答えを出すものではありません。

併存の割合は、調べた対象によって1%から56%まで開きがあります

「発達障害の人の何割がうつになるのか」は、保護者として知りたい数字だと思います。ただ、この数字は誰を調べたかで大きく変わります。国立特別支援教育総合研究所の報告書(2012年)が紹介している海外の研究から、主なものを並べました。

調べた対象 うつ・気分の不調の割合 読むときの注意
ADHD(複数の報告の幅) 気分障害や不安障害などが併存する割合は13〜51% 報告によって幅がある。うつだけの数字ではない
ASDの子どものための特別支援学校に通う71人(ノルウェー・6.2〜17.9歳) 気分障害10%。うち大うつ病性障害1%、特定不能のうつ病性障害7% 何らかの精神障害がある子は72%、不安障害は42%
医療機関を継続して受診しているASDの子ども217人(米国) 大うつ病性障害56% ASD以外で受診している子ども217人でも47%
ADHDのある成人(米国・18〜44歳) 調査前の12か月に大うつ病性障害があった人は18.6% 成人の調査で、高校生の数字ではない

出典:国立特別支援教育総合研究所の同報告書「併存症の医学的知見について」(2026年10月確認)

同じ「ASDのある子どもの大うつ病性障害」でも、特別支援学校に通う子どもでは1%、医療機関に通い続けている子どもでは56%です。報告書も、医療機関を受診している子どもを対象にすると割合が高くなる傾向があると注意しています。読むときの注意は2つです。

  • どれも海外の研究です。2011年までに発表されたもので、診断の基準も当時のものです。
  • 日本の高校生に絞った併存の割合は、今回確認した公的な資料では見つけられませんでした。「発達障害の◯割がうつになる」と1つの数字で言い切る情報は、何を調べた数字なのかを確かめてから受け取るほうが安全です。
大うつ病性障害の割合が、ASDのある子どものうち特別支援学校に通う71人では1%、医療機関を受診中の217人では56%、ADHDのある成人では18.6%と、調べた対象によって大きく違うことを示す比較表(2011年までに発表された海外の研究)
出典:国立特別支援教育総合研究所の報告書(2012年3月)が紹介する海外の研究(2011年までに発表)。日本の高校生の数字ではありません
自宅の明るい食卓で、母親が白いノートに手書きで書きとめ、隣の父親がそのページを一緒に見ている
気になった日のようすを短く書きとめておくと、受診や相談のときに伝えやすくなります

思春期のうつは、落ち込みよりイライラや体の不調として出ることがあります

日本うつ病学会のガイドラインは、児童・思春期のうつ病では抑うつ気分よりも易怒的な気分(怒りっぽさ)がみられやすいとしています。思春期の特徴として挙げられているのは、易怒性(不機嫌、イライラしやすい、怒りの爆発など)、過眠、食欲と体重の増加、体の不調の訴え、拒絶に対する極端な敏感さなどです。反抗期や発達障害の特性と重なって見えるものが少なくありません。ほかの公的な資料のサインも合わせて、家庭で気づきやすい変化を表にしました(どの資料に何が書かれているかを、この記事で整理したものです)。

気づきやすい変化 公的な資料での説明 メモしておくこと
イライラ・不機嫌が増えた 思春期のうつ病の特徴に易怒性がある(学会ガイドライン) いつ頃から、どんな場面で
眠りすぎる・眠れない 過眠(学会ガイドライン)。眠れない、過度に寝てしまう(こころの情報サイト) 寝た時刻と起きた時刻
頭痛・腹痛・だるさが続く 気持ちを表現することが苦手な発達障害の子どもは、不安やつらさを身体症状として訴える場合がある(発達障害情報・支援センター) 小児科や内科にかかったか
好きなことをしなくなった 楽しめていたことが楽しめなくなる(こどもの心の診療ネットワーク事業) 以前との違い
「どうせできない」と言う 自分を責めすぎる(同上)。自分を責めてばかりいる(こころの情報サイト) 本人の言葉をそのまま

出典:日本うつ病学会「うつ病診療ガイドライン2025」第4章/こころの情報サイト「うつ病」/発達障害情報・支援センター「思春期女子の学校生活」(ASDの特性があり通常の学級にいる思春期の女子を想定した支援者向けのページ)/こどもの心の診療ネットワーク事業「よくあるこどもの心のQ&A」(中央拠点病院は国立成育医療研究センター。2026年10月確認)

「生徒指導提要」は、健康な悩みと病的な症状を区別することは専門家が見ても難しい場合があるとしたうえで、日頃からその人らしさをよく知っておき、その人らしさと違ったことが出てきた場合に注意することが大切だと書いています。

特性は小さい頃から続いているもので、うつの症状は「あるときから」始まります。ですから保護者のメモは、「以前からあったこと」と「最近変わったこと」を分けて書くと診察で役に立ちます。うつ病の診断そのものは、症状がほとんど一日中、ほとんど毎日続いているかなどを医師が確かめて行うものです。

「死にたい」と口にしたとき・自分を傷つけているときは、様子見にせず相談します

読むのがつらい節かもしれませんが、大事なことなので書いておきます。学会のガイドラインは、子どもにうつ病が疑われるとき、抑うつの有無にかかわらず自殺の危険性について評価することも必要だとしています。「死にたい」「消えたい」と口にする、リストカットなど自分を傷つける行動がある、家の中でも表情が険しく自分や他者を傷つけようとする。このような様子に気づいたときは、次の予約を待たずに主治医や相談窓口に連絡してください。

「こどもの心の診療ネットワーク事業」のQ&Aは、子どもから「死にたい」と言われたとき、驚いたり止めようとしたりするのは当然のことだとしたうえで、まず打ち明けてくれたことに感謝し、死にたいほどつらいという気持ちを受け止めるよう勧めています。「死ぬことや自殺について話をすることは危険なことではありません」とも書かれています。

電話で相談できる主な窓口は次のとおりです。番号は厚生労働省の「まもろうよ こころ」で確認しました。

窓口 電話番号 受付 特徴
こころの健康相談統一ダイヤル 0570-064-556 曜日・時間は都道府県によって異なる かけた場所の都道府県・政令指定都市の公的な相談窓口につながる。通話料がかかる
#いのちSOS 0120-061-338 24時間365日 無料。専門の相談員が気持ちを受け止める
よりそいホットライン 0120-279-338 24時間 無料。福島県からは0120-279-226
24時間子供SOSダイヤル 0120-0-78310 24時間 無料。かけた場所の教育委員会の相談機関につながる
チャイルドライン 0120-99-7777 毎日16時〜21時(12月29日〜1月3日は休止) 無料。18歳までの子どもがかける電話

出典:厚生労働省「まもろうよ こころ」電話相談窓口(2026年10月確認)

夜間や休日に具合が急に悪くなったときは、かかりつけの医療機関があればまずそこに連絡し、利用できない場合は都道府県が設置している精神科救急情報センターなどに相談できると、こころの情報サイトは案内しています。ひどいけがをしているなど緊急性が高いときは、迷わずに119番に通報して救急車を要請してください(政府広報オンライン「もしものときの救急車の利用法」)。

受診先は、発達障害の主治医がいればそこから。いなければ児童精神科・精神科や、かかりつけの医師へ

「何科に行けばいいのか」が分からないと、最初の一歩が出にくくなります。公的な資料に書かれている相談先を、状況ごとに並べました(並べ方はこの記事で整理したものです)。

いまの状況 最初の相談先 根拠と補足
発達障害の主治医がいる その主治医 発達の経過を知っている。ガイドラインは発達歴と生育歴の詳細な情報が必要としている
主治医がいない・通院が途切れている 児童精神科、精神科、心療内科 こころの情報サイトは、総合病院の精神科や心療内科、精神科のクリニックへの相談を勧めている
どこに行けばよいか分からない かかりつけの医師(小児科・内科など)、保健所、精神保健福祉センター こころの情報サイトは、内科などのかかりつけの医師や、保健所・精神保健福祉センターへの相談も挙げている
発達障害のことも合わせて相談したい 発達障害者支援センター 発達障害者支援法第14条。本人と家族からの相談に応じる
学校を通して探したい 担任、養護教諭、スクールカウンセラー 生徒指導提要は、学校長や養護教諭、学校医等を介して地域の専門医につなげるとしている

補足を3つ書きます。通院が途切れている場合も、あらためて相談してかまいません。

児童精神科は、公的なマップで探せる地域があります。国立成育医療研究センターが中央拠点病院を務める「こどもの心の診療機関マップ」では、「発達の問題」「気分の問題(意欲低下、抑うつなど)」といった診療内容から医療機関を検索できます。ただし2026年10月9日時点で選べるのは、群馬・東京・神奈川・石川・静岡・大阪・兵庫・和歌山・鳥取・島根・高知・福岡・沖縄の13都府県です。掲載施設は推薦ではなく、予約や受診の方法は各機関に電話で問い合わせるよう案内されています。

公的な相談窓口は、一覧から探せます。発達障害者支援センターは発達障害情報・支援センターの一覧に載っています。精神保健福祉センターは各都道府県・政令指定都市ごとに1か所ずつ(東京都は3か所)あり、全国精神保健福祉センター長会の一覧で探せます(こころの情報サイト「相談しあう・支えあう」)。

受診のときは、次のようなメモや資料があると経過を伝えやすくなります(この記事からの提案です)。

  • 以前からあった特性と、最近変わった様子(始まった時期も)
  • 睡眠・食事・体重の変化、学校の出欠の記録
  • いま飲んでいる薬と、これまでの診断・検査の結果
  • 母子健康手帳や小中学校の通知表など、小さい頃の様子が分かるもの(あれば)

治療の土台は休養と環境調整で、薬を使うかは主治医が慎重に判断します

治療の中身は医師が一人ひとりの状態を見て決めるものなので、公的な資料に書かれている大枠だけを紹介します。こころの情報サイトは、うつ病について、治療を考える前にまず心身の休養がしっかりとれるように環境を整えることが大事だとしています。日本うつ病学会のガイドラインは、児童・思春期のうつ病について、家族への心理教育、環境調整、支持的精神療法を基礎的な介入と位置づけています。薬は、基礎的な介入や精神療法を試みたあとに必要な場合の選択肢の1つで、患者ごとに有効性と安全性のバランスを評価して慎重に検討する、という書き方です。学校や福祉機関を含めた多機関・多職種の連携が重要だともしています。

発達障害の側についても、こころの情報サイトは、ADHDに精神的な不調を伴っている場合にはその治療も併せて実施されると説明しています。保護者として押さえておきたいのは、次の3点です。

  • 薬の量を自分の判断で増やしたり、減らしたり、やめたりしない。こころの情報サイトも、主治医の指示に従うよう勧めています。別の医療機関にかかる場合は、飲んでいる薬をそのまま伝えてください。
  • 経過の中で様子が変わったら伝える。ガイドラインは、児童・思春期にうつ病と診断した場合でも、その後の経過で躁病エピソードが現れる可能性を念頭におく必要があるとしています。気分が高揚して活動的になりすぎるなど、落ち込みとは逆向きの変化も主治医に伝えてください。
  • よくなったあとの通院は主治医と相談する。ガイドラインは、思春期に発症したうつ病は再発率が非常に高く、長期的なフォローアップが必須だとしています。

回復にかかる期間は人によって違い、この記事で「いつまでに」とお伝えすることはできません。通院の費用には、自己負担を軽くする自立支援医療(精神通院医療)という制度があります(申請の窓口は市町村)。手当や医療費の制度は発達障害 高校生 手当の記事にまとめています。

発達障害のある高校生にうつが重なったときの最初の相談先を、主治医がいる場合、いない場合、発達障害も合わせて相談したい場合、電話相談(こころの健康相談統一ダイヤル0570-064-556)の4つに分けて示した図
出典:こころの情報サイト/発達障害者支援法第14条/厚生労働省「まもろうよ こころ」(2026年10月確認)

学校には、診断名より「困っていること」を伝えて配慮を頼めます

医療と並行して進めたいのが、学校との相談です。根拠になる制度を先に確認します。

  • 障害者差別解消法は、障害のある人から社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合、負担が過重でないときは、必要かつ合理的な配慮をしなければならないと定めています(公立高校などの行政機関等は第7条第2項、私立高校などの事業者は第8条第2項)。
  • 事業者に合理的配慮の提供を義務づける改正法は、2024年4月1日に施行されました(内閣府)。
  • この法律の「障害者」の定義(第2条第1号)には精神障害(発達障害を含む)が含まれ、条文に、障害者手帳を持っていることは書かれていません。

出典:障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(e-Gov)/内閣府「障害を理由とする差別の解消の推進」(2026年10月確認)

診断がまだついていない場合でも、相談は始められます。「生徒指導提要」は、診断の有無により対応を考えるのではなく、児童生徒が抱える困難さから対応を考えることが大切だと書いています。同書は、発達障害のある児童生徒への配慮として、学習内容の変更・調整、ICTの活用、教材への配慮などを挙げ、失敗経験の繰り返しによる二次的な問題を防ぐためには心理面、健康面の配慮も大切だとしています。これをもとに、うつが重なっている時期に相談しやすい内容を、仮の例として表にしました。実際に何ができるかは、学校との話し合いで決まります。

困っていること 相談の例(たとえば) 相談する相手
朝の体調が悪く、1時間目に間に合わない 遅刻や別室での参加の扱い、欠課の数え方を確かめる 担任、教務の先生
教室にいるだけで消耗する 保健室や相談室など、休める場所と使い方を決めておく 養護教諭、スクールカウンセラー
課題や提出物が追いつかない 量や提出の期限の調整、ICTでの提出を相談する 教科の先生、担任
誰に何を言えばよいか分からない 相談の窓口になる先生を1人決めてもらう 特別支援教育コーディネーター

「生徒指導提要」は、校内の支援は特別支援教育コーディネーターを中心に校内委員会で検討すると書いています。相談のときは、診断名だけを伝えるより、「朝は動けないが午後は参加できる」のように、困っている場面とできることを具体的に伝えると話が進みやすくなります(この記事からの提案です)。うつの時期の受診と学校の進め方は、高校生 うつ 親のせいの記事でも整理しています。

欠席と単位は「日数」だけでなく学校の規程で決まり、病気療養には別の扱いもあります

休みが増えると、気になるのは進級と卒業だと思います。押さえておきたい点は4つです。

  • 高校の出席日数に、国の統一した基準はありません。多くの学校は「授業時数の3分の2以上の出席」を目安にしていますが、補習や課題で補えるかなどは、学校ごとの規程で決まります。
  • 卒業には74単位以上の修得が必要です(学校教育法施行規則第96条第1項)。
  • 休学や退学には校長の許可が必要です(同規則第94条)。休学できる期間や学費の扱いは、学則で確かめます。
  • 自宅などで受ける授業で単位を取る仕組みもあります。学校生活への適応が難しく相当の期間欠席している生徒に、メディアを利用した授業を自宅などで履修させる場合の単位は、74単位のうち36単位までです(同規則第96条第2項第2号・第3項)。疾病による療養や障害のために、病院などで医療の提供その他の支援を受ける必要があり、相当の期間欠席すると認められる生徒については、この上限によらないことができます(同条第4項)。こうした授業を行うかどうかは学校によります。

出典:学校教育法施行規則(e-Gov。2026年10月確認)

あと何日休めるのかは、高校 欠席日数の記事で数え方を説明しています。うつで休むときの単位と進級はうつ病 学校に行けない 高校生に、保護者が学校へ連絡する順番は高校生 うつ病 親の対応に、それぞれくわしく書きました。この記事は「発達障害と重なっているとき」に絞っているので、うつ全般の学校対応はそちらをご覧ください。

※2026年10月時点の情報です。最新は公式でご確認ください。

休ませるときは、在籍・単位・支援金の3つを確かめておくと進路を守りやすくなります

主治医から休養を勧められたとき、気がかりになるのは「休んだら進路が閉じるのではないか」という点です。選択肢は大きく3つあります。どれが合うかは、体調と主治医の意見、本人の気持ちによって変わります。

選択肢 在籍と単位 先に確かめること
今の高校で配慮を受けながら続ける 在籍はそのまま。単位は学校の規程による 科目ごとの欠課の上限、補習や課題で補えるか
休学する 在籍は残る。休学中の期間の扱いは学校による 休学できる期間、その間の学費、復学の時期
通信制高校へ転入する 前の高校で修得した単位と在籍期間を引き継げる 受け入れの時期、引き継げる単位、スクーリングの形と日数

休学の制度は高校 休学、転入の条件と手順は高校 転入の記事で説明しています。

通信制高校について、文部科学省の「令和7年度 通信制高等学校実態調査」から2つの数字を紹介します。2025年度の入学者7万7,998人のうち、4万4,461人(57.0%)は中学3年生のときに不登校でした。一方で、添削課題は出しているのにスクーリングに1日も来ていない生徒が8,097人(2.6%)いて、その理由として最も多く挙がったのは「心身に関すること」でした(161校が回答)。通信制に移れば負担がなくなる、というわけではありません。

体調の波が大きい時期は、転入の時期や最初に登録する単位数を、主治医とも相談して決めるほうが安全です。発達障害のある生徒が通信制高校を選ぶときの見方は通信制高校 発達障害に、学校の比べ方は通信制高校 選び方にまとめています。

お金の面では、国の高等学校等就学支援金が2026年度から所得制限なしになりました。私立の通信制高校の場合、授業料が年額で決まっている学校は年33万7,200円まで、単位ごとに決まっている学校は1単位1万3,668円までが支給の上限です。支給期間は在学した月数で通算されるので、転校の前に残りの月数を学校に確かめておきましょう。くわしくは通信制高校 学費の記事をご覧ください。

選択肢の1つとしてのニジ高(正直な注意点)

NIJIN高等学院(ニジ高)は、株式会社NIJINが運営するオンライン中心の通信制高校サポート校です。小中学生のオルタナティブスクールNIJINアカデミーの高等部でもあります。ニジ高は、発達特性や障害を、本人を変えるのではなく学びの構造や環境を変えることで支援するというアプローチを取っています。

体調に波がある時期に関係する点としては、担任制であること、カメラやマイクをオフにしてチャットだけで参加するところから始められること、授業のアーカイブ視聴や中学内容の学び直しに対応していること、希望する生徒にはスタッフが1対1で伴走する支援があることが挙げられます。途中からの入学(転入・編入)もでき、出願費用は無料です。これまでにグループ全体で650名以上の不登校の生徒をサポートしてきました。

そのうえで、正直にお伝えしておくことがあります。

  • ニジ高は高校ではありません。高校卒業の資格は、提携する通信制高校で取ります。
  • 提携する通信制高校のスクーリングには参加が必要です(地元の会場で受けられる場合もあります)。ニジ高は日程の調整と準備を支援しますが、スクーリングにニジ高のスタッフは付き添いません。初めての場所や人の多い場所が負担になりやすい場合は、スクーリングの形と日程を個別相談会で確かめてください。
  • 費用は、提携する通信制高校の分とニジ高の分の両方がかかります。ニジ高の分に就学支援金は使えません。金額は学費のご案内に載せています。
  • オンライン中心なので、毎日通う場所を求める人には合わない場合があります。
  • 診断や服薬、いつから学びを再開するかの判断は、主治医・専門機関にご相談ください。休養が優先の時期に、急いで入学を決める理由はありません。

個別相談会はオンライン(Zoom)で行い、参加は無料です。ご本人が同席できなくても、保護者の方だけで参加できます。

観葉植物のある明るいクリニックの待合室で、グレーのパーカーの高校生の息子と母親がソファに並んで座り、奥の受付に職員が立っている
最初の相談先は、発達障害の主治医がいればそこから。いなければ児童精神科・精神科やかかりつけの医師へ

迷ったときの進め方(3ステップ)

  1. ステップ1:「以前から」と「最近」を分けてメモする。小さい頃からの特性と、ここ数週間から数か月で変わった様子(睡眠、食事、イライラ、口にした言葉、出欠)を書き分けます。1枚にまとまっていれば、医師にも学校にも同じものを渡せます。
  2. ステップ2:相談先を1つ決めて連絡する。発達障害の主治医がいれば主治医へ。いなければ、児童精神科・精神科、かかりつけの医師、発達障害者支援センター、精神保健福祉センターのうち、連絡しやすいところからでかまいません。「死にたい」という言葉や自傷があるときは、予約を待たずに相談窓口へ連絡します。
  3. ステップ3:学校に、困っている場面と残りの欠課数を確かめる。担任か養護教諭に状況を伝え、頼める配慮と、科目ごとにあと何時間休めるかを聞きます。休学や転入を考えるのは、主治医の意見とこの数字がそろってからのほうが判断しやすくなります。

3つとも、診断が確定していなくても始められます。全部を一度に進めなくてよく、負担の少ないものから1つで十分です。

秋の川沿いの並木道を、父親・母親・高校生の娘・弟の4人家族が後ろ姿で並んで歩いている
家族で外を歩く時間のように、本人が安心して過ごせる時間を減らさないことも支えになります
オンラインで学ぶニジ高の生徒

体調に波がある時期の学び方を、話だけ聞いてみる

ニジ高はオンライン中心の通信制高校サポート校です。高校ではないため卒業資格は提携する通信制高校で取り、そのスクーリングには参加が必要です。カメラとマイクをオフにした参加の始め方や、スクーリングの形と日程は、個別相談会で聞けます。保護者の方だけでも参加できます。

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よくある質問

Q. 発達障害があると、うつ病になりやすいのですか?

A. 日本うつ病学会の「うつ病診療ガイドライン2025」は、児童・思春期のうつ病では自閉スペクトラム症やADHDといった神経発達症の併存がみられやすいとしています。ただし、割合は調べた対象によって大きく違います。

Q. ADHDの薬を飲んでいます。うつの治療と一緒に進められますか?

A. 薬の組み合わせや順番は、主治医が状態を見て判断します。こころの情報サイトは、ADHDに精神的な不調を伴っている場合にはその治療も併せて実施されると説明しています。自分の判断で薬を増減したり中断したりせず、気になることは主治医に相談してください。

Q. 診断がついていない、いわゆるグレーゾーンでも学校に相談できますか?

A. 相談できます。文部科学省の「生徒指導提要」は、診断の有無により対応を考えるのではなく、児童生徒が抱える困難さから対応を考えることが大切だとしています。困っている場面を具体的に、担任や養護教諭、特別支援教育コーディネーターに伝えてみてください。

Q. 本人が受診を嫌がっています。親だけで相談できるところはありますか?

A. あります。発達障害者支援センターは、発達障害者支援法第14条で、本人だけでなく家族からの相談にも応じるとされています。精神保健福祉センターや保健所でも、こころの健康についての相談を受けています。医療機関が家族だけの相談を受けるかどうかは機関ごとに違うので、予約のときに確かめてください。

Q. 休学と通信制高校への転入は、どちらがよいのでしょうか?

A. 体調と主治医の意見、今の高校で残っている欠課数によって変わるため、一律には言えません。休学は在籍が残り、通信制高校への転入は前の高校の単位と在籍期間を引き継げます。決める前に、休学できる期間と学費、転入の受け入れ時期と引き継げる単位を、それぞれの学校に確かめてください。

見分けられなくても、変化に気づいたことが最初の支えになります

特性なのか、うつなのか、思春期なのか。専門家でも丁寧に確かめていくことを、保護者がひとりで見分けられないのは当たり前のことです。「前と違う」と気づいたことそのものが、お子さんにとって大きな手がかりになります。

今日すべてを決めなくてかまいません。メモを1枚書く、窓口に1本電話をかける、担任に一言伝える。そのうちのどれか1つから始めれば、ひとりで抱えていた状況に、医師や学校や相談員が加わっていきます。

保護者の方ご自身が眠れない、食べられないというときは、ご自身の相談先も探してください。上で紹介したこころの健康相談統一ダイヤルやよりそいホットラインは、厚生労働省のページで対象の年齢が限られていない窓口です。

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決める前の段階でも、学び方の選択肢は個別相談会で聞けます

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