「全日制から通信制に転校したら、大学受験で不利になるのではないか」。転校を考え始めた人と保護者から、いちばん多く聞く心配です。結論から言うと、転校そのものが受験の資格を奪うことはありません。ただし、転校する時期によって、準備にかけられる時間と手続きの重なり方が大きく変わります。
この記事は、文部科学省の「学校基本調査」(令和7年度確定値)、「令和9年度大学入学者選抜実施要項」(2026年5月27日)、大学入試センターの「令和9年度 大学入学共通テスト実施要項」(2026年6月2日)、学校教育法施行規則の条文を、2026年9月21日に実際に開いて確かめたものです。制度として決まっていることと、学校や大学ごとに違うことを分けて書きます。
読み終わるころには、「いつまでに何を決めればいいか」が一枚の順番表になっているはずです。今すぐ転校を決める必要はありません。
結論:転校と大学受験の早見
- 通信制高校を卒業すれば、学歴は「高等学校卒業」です。大学入学共通テストも、通信制の卒業見込みの人がそのまま出願できます(大学入試センターの実施要項)。
- 令和7年度の学校基本調査では、通信制課程の卒業者91,809人のうち26,301人(28.6%)が大学等に進学しています。全日制は63.4%です。
- 全日制から通信制へ移っても、修得した単位は消えません。学校教育法施行規則第92条2項が、課程の間の転学では「修得した単位に応じて」相当学年に転入できると定めています。
- 大学に出す調査書は高校在学中の全学年分です。転入学した場合は、その学年がわかるように記入されます。前の学校での成績も、受験の材料になり得ます。
- 令和9年度入試(2027年春入学)では、総合型選抜の出願が9月1日以降、共通テストが9月15日〜10月2日、学校推薦型が11月1日以降。高3の秋は出願と手続きが重なります。
- いちばん響くのは「転校すること」ではなく、転校先で受験に必要な科目を履修できるかと、出願準備の時期に手続きが重なるかの2つです。

「転校したら受験は終わり」と思っている人へ。制度はそうなっていません
転校を考える時期は、たいてい調子を崩しているときです。朝起きられない日が続いている、教室に入ると息が苦しくなる、出席日数が気になって眠れない。そういうときに「受験」という言葉を目にすると、もう手遅れのような気がしてしまいます。
でも、制度の上では、通信制に移ることで大学受験の入口が閉じることはありません。通信制高校は学校教育法にもとづく高等学校で、卒業すれば全日制と同じ高校卒業の資格です。大学入学共通テストの出願資格も「高等学校又は中等教育学校を卒業した者及び令和9年3月卒業見込みの者」と書かれていて、課程の区別はありません。
違いが出るのは、準備の時間と、手続きのタイミングです。そこを先に押さえておけば、「転校したから受験は無理」という思い込みはほどけます。逆に、そこを知らないまま動くと、時間だけが足りなくなることがあります。

通信制から大学へ進む人は、毎年2万6千人以上います
「通信制から大学なんて、ほとんどいないのでは」という声もよく聞きます。数字を見てみます。文部科学省の学校基本調査(令和7年度確定値)の卒業者の状況は次のとおりです。
| 課程 | 卒業者数 | 大学等進学者 | 進学率 |
|---|---|---|---|
| 全日制 | 914,207人 | 579,207人 | 63.4% |
| 定時制 | 14,950人 | 2,835人 | 19.0% |
| 通信制 | 91,809人 | 26,301人 | 28.6% |
通信制の進学率は全日制より低いのは事実です。ただ、通信制には、働きながら卒業を目指す人や、卒業後すぐには進学を考えていない人も多く在籍しています。その中で、毎年2万6千人以上が大学・短大へ進んでいるということです。通信制の中でも、公立は17.1%、私立は30.0%と差がありました。
学校によって進学への支え方はかなり違います。進学実績の数字をどう読むかは、通信制高校 大学進学の記事で詳しく書いています。
転校しても、修得した単位は消えません
転校を迷う理由のもう一つが、「今まで取った単位がどうなるのか」です。ここは法令で決まっています。学校教育法施行規則第92条2項は、全日制・定時制・通信制の課程の相互の間の転学や転籍について、「修得した単位に応じて、相当学年に転入することができる」と定めています。
つまり、全日制で1年生の単位を取り終えていれば、その単位を持って通信制に移れます。卒業に必要な74単位のうち、すでに取った分はそのまま数えられるのが基本です。ただし、前の学校で取った科目のうち、どれを卒業に必要な単位として認めるかは、転入先の校長が判断します。教育課程が違うと、同じ名前の科目でも扱いが変わることがあります。
大事なのは「在籍し続けたまま移る」ことです。いったん退学してから入り直すと、転入学ではなく編入学になり、入れる時期や単位の扱いが変わることがあります。この違いは通信制高校 転入の記事で整理しています。

調査書は「全学年分」。前の学校の成績も一緒に見られます
大学受験で出す調査書について、文部科学省の令和9年度大学入学者選抜実施要項は、大学が「在籍する高等学校が作成した調査書の提出を求める」としています。調査書の学習の記録は「高等学校在学中の全学年について」記入し、編入学や転入学の場合は、その学年を括弧で示す決まりになっています。
また、文部科学省の指導要録の通知では、前に在学していた学校で修得した単位を卒業に必要な単位として校長が認める場合、その修得単位数を記入するとされています。転校しても成績の記録が途切れるわけではありません。
ここから言えることは2つあります。1つは、前の学校で頑張った記録は無駄にならないということ。もう1つは、前の学校で評定が大きく下がっていた場合、その記録も含めて見られる可能性があるということです。調査書を重く見る学校推薦型選抜を考えているなら、転校先の先生に「前籍校の評定がどう記載されるか」を早めに確かめておくと安心です。調査書そのものに前の学校の評定がどう載るかの細かい書き方は、公開資料では確認できませんでした。
お金の面:就学支援金は、在学した月数で通算されます
転校と受験を考えるとき、見落とされやすいのがお金の話です。国の高等学校等就学支援金は、文部科学省のQ&Aで「高等学校の標準的な修業年限とされている36月まで原則支給されます。定時制・通信制の課程については原則48月まで支給されます」と説明されています。この月数は、学校を移っても通算で数えます。
全日制で2年間(24か月)在学してから通信制に移った場合、支援金を受け取っていたかどうかにかかわらず、在学した24か月が通算されます。通信制の月は4分の3で数えるため、通信制で残るのは48か月−24か月×4/3=16か月分です。また、転校の前後で在籍していない期間があったり、手続きが遅れたりすると、その月は支給されないことがあります。転校先が決まったら、在籍校と転校先の両方に、就学支援金の手続きのタイミングを確認してください。
受験の年には、出願料や模試代、塾や予備校の費用も重なります。転校にかかるお金を先に一覧にしておくと、受験費用とぶつからずに済みます。途中で転校するときのお金は通信制高校 転校 費用の記事で5つに分けて整理しています。

高3の秋は、出願の窓が3つ重なります
時期の話に進みます。令和9年度入試(2027年春に大学へ入る人)の日程は、公表されている実施要項で次のようになっています。
| 入試の方式 | 出願の時期 | 主に見られるもの |
|---|---|---|
| 総合型選抜 | 2026年9月1日以降 | 調査書に加え、面接・小論文・活動報告など |
| 大学入学共通テスト | 2026年9月15日〜10月2日(試験は2027年1月16日・17日) | 学力試験 |
| 学校推薦型選抜 | 2026年11月1日以降 | 調査書を主な資料に、推薦書など |
高3の9月〜11月は、どの方式を選んでも出願の時期です。この時期に転校の手続きが重なると、調査書を誰が作るのか、推薦書を誰に頼むのか、面接の準備を誰と進めるのか、が一度に動きます。転校先の先生はまだあなたのことをよく知りません。
なお、共通テストでは、通信制の現役生は在学校の所在地ではなく、住んでいる地域の試験地区で受けることになります。広域通信制で本校が遠くにあっても、試験会場は家の近くです。
学年別:いつ転校すると、受験にどう響くか
ここまでの制度をもとに、転校する時期ごとの影響を整理します。どの時期でも「無理」ではありません。変わるのは、準備に使える時間と、同時に抱える手続きの量です。
| 転校する時期 | 受験への影響 | 先に確かめること |
|---|---|---|
| 高1〜高2の前半 | 小さい。転校先の教育課程に合わせて受験科目を選び直せる | 志望分野に必要な科目が開講されているか |
| 高2の後半 | 中くらい。高3の履修計画と受験準備を同時に組む必要がある | 単位の引き継ぎ数と、高3で取る科目の数 |
| 高3の春〜夏 | 大きめ。卒業に必要な単位の修得と受験準備が重なる | その年度で卒業できるか(卒業見込みになれるか) |
| 高3の秋以降 | 大きい。出願の時期と手続きが重なる | 調査書・推薦書を誰が作れるか、出願に間に合うか |
学年ごとの受け入れ時期は学校によって違います。7校の受け入れ月を実際に確かめた結果を全日制から通信制の記事にまとめているので、あわせて見てください。
よくある誤解:「高認のほうが早い」「通信制は推薦が使えない」
転校と受験をめぐって、誤解されやすい点を3つ挙げます。
誤解1:高卒認定を取れば、転校より早く受験できる
高等学校卒業程度認定試験(高認)に合格すれば、大学の受験資格は得られます(学校教育法施行規則第150条)。令和8年度の第2回試験は11月7日・8日で、結果の発送は12月8日予定です。ただし、18歳未満で合格した場合は、18歳になった日の翌日から合格者になります。また、高認は学歴としては「高校卒業」にはなりません。高校を卒業したことを条件にしている選抜や就職もあるので、単純に「早い」とは言えません。どちらがよいかは高卒認定 通信制高校 どっちの記事で比べています。
誤解2:通信制からは推薦が使えない
学校推薦型選抜は、高校の校長の推薦をもとにする入試です。通信制高校も高等学校なので、推薦の仕組み自体は使えます。ただし、指定校推薦の枠をどれだけ持っているかは学校ごとに大きく違います。ここは転校先を選ぶ前に聞いておきたい点です。
誤解3:通信制に移れば、受験勉強の時間が自然に増える
登校日数が減るのは事実ですが、空いた時間が受験勉強に変わるかどうかは別の話です。自宅での学習が中心になるぶん、計画と伴走がないと時間が溶けやすくなります。これは通信制の弱点として、先に知っておいてください。
受験科目は、転校先で履修できるかを先に確かめます
転校で本当に困るのは、単位の数よりも「受けたい大学が指定する科目を、転校先で学べない」ことです。理系の学部では数学Ⅲや物理・化学などを指定されることがありますし、文系でも受験で使う科目の組み合わせが決まっている大学があります。
通信制高校は、学校によって開講している科目の幅がかなり違います。特に理科や数学の発展的な科目は、開講していなかったり、スクーリングの回数が限られていたりすることがあります。志望分野がある程度決まっているなら、次の順で確かめてください。
- 志望する大学・学部の募集要項で、受験に必要な科目を書き出す。
- 転校先の教育課程表に、その科目があるかを確かめる。
- ない場合、塾や予備校、オンライン教材で補う必要があるか、その費用はどれくらいかを見積もる。
理系の科目の確認点は通信制高校から理系大学の記事でも扱っています。
ニジ高は、受験の計画を「一人で立てない」ための通信制サポート校です
ここで、NIJIN高等学院(ニジ高)のことを少しだけ書かせてください。ニジ高は、提携する通信制高校と連携して高校卒業を目指す、オンライン中心の通信制サポート校です。担任制で、カメラやマイクをオフにしたまま、チャットだけで参加するところから始められます。
運営は株式会社NIJINです。小中学生の場合は、同じグループが運営するNIJINアカデミー(不登校の小中学生のためのオンラインオルタナティブスクール。500名超が在籍)という選択肢もあります。中学卒業後にニジ高へ進む生徒もいます。
転校と受験が重なる時期にいちばん必要なのは、「次の1か月で何をすればいいか」を一緒に決めてくれる人だと考えています。前の学校で取った単位、卒業までに残る単位、受けたい入試の方式と日程を同じ表に並べて、順番を決める。それを担任と一緒に進められます。
正直に書いておくと、ニジ高の学院内でのスクーリングはありません。高校卒業に必要なスクーリングは、提携する通信制高校で受ける必要があります。その準備や日程の調整は支援しますが、スクーリングそのものが無くなるわけではありません。


迷ったときの進め方(3ステップ)
- 今の単位と、卒業までに必要な単位を数える……担任に頼めば、修得済みの単位数はわかります。74単位のうち何単位が残っているかを書き出してください。
- 受けたい入試の方式と出願月を決める……総合型なら9月、共通テストなら9月中旬〜10月初め、推薦なら11月。自分に合いそうな方式を1つ仮に決めるだけで、逆算ができます。
- 転校先の候補に2つだけ聞く……「受験に必要な科目は開講されていますか」「転入した年に調査書と推薦書を作ってもらえますか」。この2つに具体的に答えられる学校を残してください。
この記事で参照した資料(2026年9月21日確認)
- 文部科学省「令和7年度学校基本統計(確定値)」(PDF)
- 文部科学省「令和9年度大学入学者選抜実施要項」(PDF)
- 大学入試センター「令和9年度 大学入学共通テスト実施要項」(PDF)
- e-Gov法令検索「学校教育法施行規則」
- 文部科学省「高等学校等就学支援金制度に関するQ&A」
- 文部科学省「高等学校卒業程度認定試験」

残りの単位と出願月を、一緒に一枚の表にします
個別相談会では、今の学校で取った単位と、受けたい入試の方式・出願月を並べて、転校するならいつが無理がないかを一緒に確かめます。転校しないという結論になっても構いません。
個別相談会を見てみる →よくある質問
A. 受けられます。出願資格は「高等学校又は中等教育学校を卒業した者及び令和9年3月卒業見込みの者」などで、課程の区別はありません。通信制の現役生は、住んでいる地域の試験地区で受験します。
A. 調査書は高校在学中の全学年について記入するものなので、前の学校での記録も含まれるのが基本です。転入学した場合は、その学年がわかるように記入されます。詳しい書き方は転校先の学校に確認してください。
A. 残っている単位の数と、転校先の受け入れ月・単位認定の時期によります。卒業見込みになれるかどうかは受験の出願資格にも関わるので、転校先に「今年度中に卒業見込みになれるか」を具体的に聞いてください。
A. 学校を移ると、前の学校に在学した月数が通算されます(受け取った月数ではありません)。全日制・通信制とも在学した月数を数え、通信制の課程は原則48月までです。転校の前後で手続きが途切れると、その月が支給されないことがあるので、両方の学校に手続きの時期を確認してください。
A. 学校によって大きく違います。指定校推薦の枠を持っている学校もありますが、どの大学の枠がいくつあるかは公開されていないことも多いので、説明会や個別相談で直接聞くのが確実です。
A. 転校したこと自体で出願資格を失うことはありません。影響が出るのは、準備の時間が短くなることと、出願と手続きの時期が重なることです。早めに順番を決めておけば、その影響は小さくできます。
移ることと、あきらめることは違います
全日制から通信制へ移ることを、「受験から降りること」だと感じている人は少なくありません。でも、ここまで見てきたとおり、制度の上では単位も記録も引き継がれ、受験の入口も開いたままです。
変えられるのは、学ぶ場所とペースです。いまの場所で無理を重ねて体調を崩すより、続けられる形に移してから受験に向かうほうが、結果として近道になることもあります。決めるのは今日でなくて構いません。まず、残りの単位と出願月を一枚の紙に書くところから始めてみてください。
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