発達障害の大学生は10年で約3.7倍|高校と大学の「合理的配慮」の違い【2026】

「発達障害のある大学生が10年で約4倍に増えた」という話を聞いて、うちの子も大学に行けるかもしれない、と感じた方もいると思います。一方で、「大学に入ったら、高校のように先生が気づいて助けてくれるのだろうか」という不安も出てきます。

先に結論を書きます。日本学生支援機構(JASSO)の全国調査の実数で数え直すと、発達障害のある大学・短大・高専の学生は、2015年度の3,436人から2025年度の12,706人へ、約3.7倍に増えています。そして大学の配慮は、本人が申し出て、根拠となる資料を出し、大学と話し合って決めるのが基本です。2024年4月からは私立大学にも合理的配慮の提供が法律で義務づけられました。

この記事は、JASSOの調査報告書(令和7年度・平成27年度)、障害者差別解消法の条文(e-Gov)、内閣府と文部科学省の資料、大学入試センターの「令和9年度 受験上の配慮」の案内を実際に開いて確かめた内容でできています。高校進学(中学から高校へ)のことは別の記事にまとめ、この記事は高校から大学へ進むときの配慮の違いに絞ります。公式で確認できなかったことは、確認できなかったと書いています。

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目次

結論:発達障害のある大学生の増加と、大学の合理的配慮の早見

  • 発達障害のある学生は、10年で約3.7倍。大学・短大・高専の合計で、2015年度3,436人→2025年度12,706人(JASSO調査・各年5月1日現在)。「約4倍」という言い方は、実数で見るとやや大きめです。
  • 種類別ではADHD(注意欠如・多動症)が約7.5倍と大きく増え、ASD(自閉スペクトラム症)は約2倍でした。ただし調査の区分は2024年度に見直されており、単純な比較には注意が要ります。
  • 高専は、発達障害のある学生の割合が大学の約8倍(高専2.7%・大学0.35%)。高専の障害のある学生のおよそ半数が発達障害です。理由は調査からは分かりません。
  • 法律上は、高校も大学も「本人の申し出」が配慮の出発点です。違うのは、高校には担任や通級、支援計画など「気づく仕組み」があり、大学では本人が窓口へ行くところから始まる点です。
  • 大学では根拠資料(診断書など)を求められるのが基本。ただし文部科学省の検討会は「資料がなければ一切提供しない」という形式的な対応はとらないよう求めています。
  • 大学入学共通テストの配慮は、令和9年度から「状況報告書」が全員必須になり、高校で受けてきた配慮の記録が大事になります。
  • 自分のペースで学びながら、特性の説明や大学進学の準備をしたい場合は、オンライン中心のサポート校(NIJIN高等学院など)で通信制高校の卒業をめざす方法もあります。
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「約4倍」は、公式の数字で数えると約3.7倍。10年で3,436人から12,706人に増えました

「発達障害のある大学生が10年で約4倍」という言い方は、ニュースやSNSでよく見かけます。元になっているのは、日本学生支援機構(JASSO)が全国の大学・短期大学・高等専門学校を対象に毎年行っている「障害のある学生の修学支援に関する実態調査」です。全校を対象にした調査(悉皆調査)で、令和7年度(2025年度)は1,166校、学生3,256,809人が対象でした。

最新の令和7年度調査と、10年前の平成27年度(2015年度)調査の報告書を開いて、発達障害のある学生の数を学校の種類ごとに並べました。

学校の種類2015年度2025年度何倍か
大学(大学院を含む)2,956人10,806人約3.7倍
短期大学115人379人約3.3倍
高等専門学校365人1,521人約4.2倍
合計3,436人12,706人約3.7倍

出典:日本学生支援機構「令和7年度(2025年度)障害のある学生の修学支援に関する実態調査」結果報告書 表2-3(2025年5月1日現在)/同「平成27年度(2015年度)」結果報告書(訂正版)表64(発達障害・診断書有)。倍率は2つの数字から計算(2026年9月確認)

合計で見ると約3.7倍です。「約4倍」に近いのは高専(約4.2倍)だけでした。この記事では、元のタイトルの「約4倍」を「約3.7倍」に改めています。

もう1つ知っておきたいのは、この数字は「診断や手帳などで学校が把握している学生」の数だということです。JASSOの定義では、発達障害のある学生とは「精神障害者保健福祉手帳(発達障害に限る)を持つ学生と、医師の診断等で発達障害があると明らかになった学生」です。大学に伝えていない学生は含まれていません。

直近の1年を見ても、令和6年度の11,923人から令和7年度は12,706人へ増えています。JASSOのプレスリリースは、発達障害・精神障害などに分類される学生の数は「年々増加する傾向にある」と書いています。

明るいリビングのテーブルで、高校生の娘がノートを指さしながら母親と話している
大学での配慮は、本人が必要なことを言葉にするところから始まります。

増えたのはADHDが目立ち約7.5倍。ASDは約2倍。ただし調査の区分は2024年度に見直されています

発達障害と一口に言っても、中身は同じではありません。2つの年度の報告書で、診断名ごとの人数を並べました。

診断名2015年度2025年度何倍か
ASD(自閉スペクトラム症)2,298人4,585人約2.0倍
ADHD(注意欠如・多動症)559人4,180人約7.5倍
SLD(限局性学習症)175人406人約2.3倍
発達障害の重複404人2,982人約7.4倍
その他の発達障害(区分なし)553人-

出典:JASSO 令和7年度調査 表2-3/平成27年度調査 表64(2026年9月確認)

2015年度は、発達障害のある学生の3人に2人がASDでした(66.9%)。2025年度はASDとADHDがほぼ同じ人数になり、2つ以上の診断が重なる学生も増えています。

ただし、この比較には注意点が3つあります。

  1. 区分の見直し。JASSOは令和6年度調査で「障害区分と定義を再整理した」と書いています。2015年度は「医師の診断書がある学生」を数えていましたが、2025年度は「手帳を持つ学生と医師の診断等で明らかになった学生」です。
  2. 精神障害との重なりは別に数えています。2025年度は「発達障害と精神障害の重複」が3,417人いて、この人たちは上の表の12,706人には入っていません。
  3. 増えた理由は、調査には書かれていません。発達障害の人が増えたのか、診断を受ける人や大学に伝える人が増えたのかは、この調査からは分かりません。

つまり「10年で◯倍」は、大学が把握し、支援の対象として見ている学生が増えたという数字として読むのが正確です。そして、それだけ大学の側にも受け入れの経験がたまってきている、ということでもあります。

ちなみに、障害のある学生の中でいちばん多いのは発達障害ではなく「精神障害」(22,036人)でした。うつや不安などで配慮を受ける学生も多いということで、発達障害と精神障害の両方がある人にとっては、どちらの区分でも相談できる窓口があるという見方もできます。

日本学生支援機構の調査で、発達障害のある大学・短大・高専の学生が2015年度の3,436人から2025年度の12,706人へ約3.7倍に増え、高専では約4.2倍だったことを示す図
出典:日本学生支援機構「障害のある学生の修学支援に関する実態調査」令和7年度・平成27年度

「高専に発達障害の学生が多い」は、割合で見るとそのとおり。在籍率は大学の約8倍です

「高専 発達障害 多い」と検索する人もいます。JASSOの令和7年度調査で、学校の種類ごとの学生数と、発達障害のある学生の数から割合を出しました。

学校の種類学生数発達障害のある学生割合
大学(大学院を含む)3,113,454人10,806人約0.35%
短期大学87,192人379人約0.43%
高等専門学校56,163人1,521人約2.7%

出典:JASSO 令和7年度調査 表1・表2-3(2025年5月1日現在)。割合は2つの数字から計算(2026年9月確認)

高専は、発達障害のある学生の割合が大学の約8倍です。障害のある学生全体の在籍率も、大学1.73%・短大2.46%に対して高専は5.78%と高く、高専の障害のある学生3,245人のうち、およそ半数(1,521人)が発達障害でした。

なぜ高専で多いのかは、調査報告書には書かれていません。1つ確かなのは、高専は中学校を卒業してすぐ入学する5年制の学校(学校教育法第117条・第118条)だということです。1〜3年生は高校生と同じ年齢なので、高校で受けていた支援や、家庭と学校の連携がそのまま続きやすい面があるのかもしれません。ただし、これは推測で、確かめられた理由ではありません。

高専についての学校ごとの支援の数字は、高専機構の公式資料では今回確認していないため、この記事ではJASSOの全国調査の数字だけを使っています。

法律では、高校も大学も「本人の申し出」が出発点。2024年4月から私立の学校も合理的配慮が義務になりました

「合理的配慮」は、障害者差別解消法(障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律)に定められた考え方です。条文を開くと、国公立の学校などの「行政機関等」(第7条第2項)も、私立の学校などの「事業者」(第8条第2項)も、同じ書き方になっています。

  • 障害者から「現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合」に
  • その実施に伴う負担が過重でないときは
  • 障害の状態などに応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をしなければならない

出典:e-Gov 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律 第7条・第8条(2026年9月確認)

以前は、私立の学校など「事業者」の合理的配慮は努力義務でした。2021年の法改正で義務になり、改正法は2024年(令和6年)4月1日に施行されています(内閣府「障害者差別解消法」)。大学生の多くは私立大学に在籍しているので、この改正は大きな意味があります。私立高校も同じく義務の対象です。

ここで大事なのは、法律の上では、高校も大学も「本人(や家族など)の申し出」から配慮が始まるという点です。「高校は学校が勝手に配慮してくれる、大学は自分で申し出る」と分けて考えられがちですが、法律の仕組みそのものは同じです。

違いが出るのは、法律の外側にある「学校の仕組み」です。高校には、文部科学省の通知(平成19年「特別支援教育の推進について」)にもとづく校内委員会や特別支援教育コーディネーター、2018年度から始まった高校の「通級による指導」、学習指導要領で作成に努めるとされている「個別の教育支援計画」があります。担任や養護教諭が様子の変化に気づき、保護者と話し合って支援につなげる流れが、学校の中に用意されているのです。

出典:文部科学省「特別支援教育の推進について(通知)」/文部科学省「通級による指導」制度の解説(高校の通級は平成30年度から。修得単位は年間7単位を超えない範囲で卒業単位に加えられる)

※2026年9月時点の情報です。最新は公式でご確認ください。

自宅の机でヘッドホンをした高校生がノートに書き込み、奥のソファで家族が本を読んでいる
高校のうちに、自分に合う学び方を試しておくと大学でも役立ちます。

高校と大学の違いは「誰が気づくか」と「誰が段取りするか」。大学では本人が窓口へ行くところから始まります

高校と大学で、配慮を受けるまでの流れを並べると、次のようになります。高校の欄は一般的な仕組みで、学校によって違います。

場面高校大学
最初に気づく人担任・養護教諭・特別支援教育コーディネーターが気づくこともある本人が気づいて窓口へ行くのが基本
申し出る人本人・保護者本人が中心(窓口へ行くのも本人)
配慮の中身を決める場担任や学年、校内委員会障害学生支援室などと本人の話し合い(建設的対話)
先生への伝達担任を通して学年で共有されることがある授業ごとに担当教員が違う。支援室から教員へ配慮を依頼する形がある
根拠の資料学校ごとに扱いが違う診断書などの提出を求められるのが基本

大学の側の体制は、この10年でかなり整いました。JASSOの令和7年度調査では、大学・短大・高専のうち、障害学生支援を担当する部署・機関がある学校は97.9%、支援の申出の相談窓口がある学校は95.2%、申出の対応手順を文書で定めている学校は82.2%でした。窓口が「ない」ことを心配するより、窓口にたどり着けるかどうかが分かれ目になります。

大学で特に戸惑いやすいのは、次のような場面です。

  • 時間割を自分で組む(履修登録)。締め切りや選び方のルールが学部ごとに違う
  • 授業ごとに先生が違い、課題の出し方や提出方法もばらばら
  • 出席をとらない授業と、厳しくとる授業が混ざっている
  • 困っていても、誰も声をかけてこない。自分から言わないと、困っていること自体が伝わらない

高校時代に、特性を自分の言葉で説明する練習をしておくと、この段差をかなり小さくできます。練習の方法は発達障害 自分の特性を説明する練習の記事にまとめています。高校で配慮を申請するときの基本は合理的配慮 申請の記事を見てください。

障害者差別解消法では高校も大学も本人などの申し出が配慮の出発点だが、高校では担任などが気づいて校内委員会で決めることもあるのに対し、大学では本人が窓口へ行き、支援室との対話で決め、根拠資料を求められるのが基本であることを比べた表
出典:障害者差別解消法(e-Gov)、文部科学省の通知と検討会報告(第三次まとめ)

大学では、申し出と根拠資料が基本。ただし「資料がないと一切だめ」は適当でないと国も示しています

文部科学省の「障害のある学生の修学支援に関する検討会報告(第三次まとめ)」(令和6年3月)は、大学での合理的配慮の進め方を整理した資料です。要点は次の3つです。

  • 合理的配慮は、原則として本人から「必要だ」という意思の表明があったときに行う。内容は本人の意向を最大限尊重して、建設的対話を通じて決める
  • 大学は、状況を適切に把握するため、障害の状況に関する根拠資料の提出を求めることが適当
  • ただし資料の取得に時間がかかる場合などもあるので、一律に「根拠資料がなければ合理的配慮を一切提供しない」という形式的な対応はとらないよう留意する。必要性が明確に確認できる場合は、資料の有無にかかわらず検討することが重要

出典:文部科学省「障害のある学生の修学支援に関する検討会報告(第三次まとめ)」(2026年9月確認)

同じ報告書では、学内の手続きに時間がかかったり、診断書がそろうまで配慮が始まらなかったりして、内容が決まるまでに数か月かかる例があることも課題として挙げられています。入学してから慌てて動くと、前期の授業に間に合わないことがあるということです。

実際の数字も見ておきます。JASSOの令和7年度調査で、発達障害のある学生12,706人のうち、大学などが支援の対象にしている学生は9,224人(約73%)、本人の申出にもとづいて合理的配慮を提供している学生は6,747人(発達障害のある学生全体の約53%)でした。把握されている学生でも、4人に1人ほどは支援の対象になっていない計算です。申し出をしていない、今は必要がない、など理由はさまざまだと考えられますが、内訳は調査からは分かりません。

では、大学ではどんな配慮が行われているのか。同じ調査で、発達障害のある学生に授業支援をしている学校の数(複数回答)を見ると、主なものは多い順に次のとおりです。

  • グループワークなどでの配慮:415校
  • 講義の録音や板書の撮影の許可:412校
  • 提出期限の延長:408校
  • 座席の配慮(本人の希望に応じて):405校
  • 出席に関する配慮:392校
  • 注意事項などを文書で伝える:342校
  • ノイズキャンセリングイヤホンなどの使用:308校
  • 履修登録の支援:281校
  • 別室での受験:250校/試験時間の延長:233校

出典:JASSO 令和7年度調査 表6-3(授業支援・障害種別・内容別。単位は校)

「聞いて覚えるのが苦手なので録音したい」「音に疲れやすいのでイヤホンを使いたい」「口頭の指示を文書でもらいたい」。こうした具体的な形に落とし込めると、大学側も検討しやすくなります。

大学入試の配慮は、共通テストと各大学で別々。令和9年度からは「状況報告書」が全員必須です

大学入試でも、発達障害を理由に受験上の配慮を申請できます。ただし、大学入学共通テスト(大学入試センター)と、各大学の個別試験・総合型選抜などは、申請先が別です。

項目大学入学共通テスト各大学の入試
申請先大学入試センター受験する大学
申請の時期令和9年度は第1期7月1日〜8月28日、第2期8月31日〜10月2日(必着)大学ごと。「所定の期間」661校、「随時」454校
主な書類申請書、診断書(発達障害関係)、状況報告書大学ごと(入試要項に記載があるのは1,047校)
配慮の例試験時間延長(1.3倍)、別室、チェック解答、拡大文字問題冊子など大学ごとに審査

出典:大学入試センター「令和9年度 大学入学共通テスト 受験上の配慮」・受験上の配慮Q&A/JASSO 令和7年度調査 表9-1・表9-2(令和7年度入学者選抜)(2026年9月確認)

共通テストで知っておきたい点は次のとおりです。

  • 令和9年度から「状況報告書」の提出が、配慮を申請する人全員に必須になりました(令和8年度までは、発達障害の区分で申請する場合などに限られていました)。高校などでのこれまでの配慮の実施状況を書く様式です。
  • 高校を卒業見込みの人は高校の担当者が記入します。既卒の人は、保護者や塾・予備校の講師、カウンセラーなどが記入できます。
  • 発達障害に関する検査結果は、原則として申請時から3年以内のものが必要です。3年以内に検査していない場合は、直近の検査結果を添付します。
  • 高校で受けていない配慮を申請することもできます。センターは申請にもとづき、症状や状態を総合的に判断して審査します。
  • 第1期に申請すると、9月24日までに審査結果が届き、出願期間(9月15日〜10月2日)中に結果を確認できます。センターは、できるだけ第1期に申請するよう案内しています。

令和7年度の入学者選抜で受験上の配慮を受けた受験者のうち、発達障害の区分は1,147人(大学1,091人・短大26人・高専30人)でした(JASSO 表9-9)。入試の配慮は「特別なこと」ではなく、令和7年度だけでも1,000人を超える人が使った仕組みです。

ここで気づいてほしいのは、状況報告書が全員必須になったことで、高校で配慮を受けてきた記録そのものが、大学入試で意味を持つようになったという点です。高2・高3になってから慌てないように、高1のうちから「どんな配慮を、いつから、どの授業で受けたか」を学校と共有しておくと安心です。共通テストの出願全般は通信制高校 共通テストの記事でも解説しています。

卒業と就職の数字:発達障害のある学生の卒業率は71.0%、就職率は75.9%でした

「大学に入れても、卒業できるのか」「就職はどうなのか」も気になるところです。JASSOの令和7年度調査には、令和6年度に卒業した学生の進路がまとめられています。

区分卒業率就職率
障害のある学生全体72.1%82.1%
発達障害(全体)71.0%75.9%
うちASD75.3%71.2%
うちADHD66.4%80.7%

出典:JASSO 令和7年度調査 表10-5(大学・短大・高専の学部・本科の通学課程。卒業率=卒業学生数÷最高年次学生数、就職率=就職者数÷就職希望者数)

読み方に注意が必要です。ここでの卒業率は「最高学年に在籍していた学生のうち、その年に卒業した人の割合」で、留年や休学をはさんで翌年以降に卒業する人は入っていません。「3割が中退する」という意味ではありません。

それでも、卒業までの道のりが平坦ではない人が一定数いることは読み取れます。大学生活で起きやすいのは、履修登録や課題の管理、生活リズムの乱れなど、高校までは周りが支えていた部分です。大学に入ってからの支援とあわせて、高校のうちに「自分で段取りする練習」を少しずつ積んでおくことが、数字の上でも意味があると言えます。卒業後の準備全般は発達障害の高校生の大学進学の記事も参考になります。

よくある誤解:「大学が気づいてくれる」「診断書がないと何もできない」は、どちらも正確ではありません

進路を考えるときに、よく聞く思い込みを整理しておきます。

誤解1:10年で約4倍なのは、発達障害の人が増えたから

調査で分かるのは、大学などが「把握している」学生の数です。区分の見直しもあり、発達障害の人そのものが増えたかどうかは、この調査からは言えません。

誤解2:大学に入れば、先生が様子を見て配慮してくれる

大学の配慮は、本人の申し出から始まるのが基本です。窓口はほとんどの学校にありますが、行かなければ始まりません。入学前に、受験する大学の支援室のページで「申出の方法」を確認しておきましょう。

誤解3:診断書がないと、何の配慮も受けられない

大学は根拠資料を求めるのが基本ですが、文部科学省の検討会は「資料がなければ一切提供しない」という形式的な対応はとらないよう求めています。資料の準備に時間がかかる場合は、その事情も含めて窓口で相談できます。

誤解4:高校で配慮を受けていないと、共通テストの配慮は申請できない

大学入試センターのQ&Aで、高校で受けていない配慮も申請できると明記されています。ただし令和9年度から状況報告書は全員必須なので、高校の担当者に早めに相談しておくと安心です。

選択肢の1つとしてのニジ高(正直な注意点)

ここまで読んで、「大学には行きたい。でも今の高校のままで、特性を説明する練習や受験の準備ができるか不安」と感じた方もいると思います。

NIJIN高等学院(ニジ高)は、オンライン中心の通信制高校サポート校です。ニジ高は、発達特性や障害を、本人を変えるのではなく学びの構造や環境を変えることで支援するという新しいアプローチを取っています。全国どこからでも自宅から参加でき、カメラやマイクをオフにしてチャットだけで参加するところから始められます。授業のアーカイブ視聴や中学内容の学び直しにも対応していて、担任制です。総合型選抜に向けた小論文・面接・自己PRの講座にも力を入れて取り組んでいます。途中からの入学(転入・編入)もでき、出願費用は無料です。

ただし、はじめに正直にお伝えしておくことがあります。

  • ニジ高そのものは高校ではありません。高校卒業の資格は、提携する通信制高校に在籍して取ります。
  • 学院内でのスクーリングはありませんが、提携校のスクーリングには参加が必要です。ニジ高は日程の調整や準備を支援しますが、宿泊を伴うスクーリングにニジ高のスタッフは付き添いません。
  • 共通テストの状況報告書を記入するのは、在籍する高校(提携する通信制高校)の担当者です。ニジ高で受けている配慮をどう伝えるかは、在籍校と相談しながら進めることになります。
  • 診断や服薬など医療の判断は、主治医や専門機関に相談してください。
  • 費用は、通信制高校の分とニジ高の分の両方がかかり、ニジ高の分には就学支援金は使えません。金額は学費のご案内に載せています。

大学進学に向けて迷ったときの進め方(3ステップ)

  1. 困りごとと、助かった工夫を書き出す。「口頭の指示だけだと抜ける」「音が多いと疲れる」「締め切りが重なると止まる」。困りごとと一緒に、高校で助かった工夫(録音、文書での連絡、別室など)を書いておくと、大学への申し出や共通テストの申請にそのまま使えます。
  2. 記録と資料をそろえ始める。高校で受けている配慮を、いつから・どの授業で・どんな形で受けたか、学校と共有しておきます。診断書が必要になりそうなら、検査の時期(共通テストは原則3年以内)を主治医に相談しておきます。
  3. 志望大学の「支援室」と「入試の配慮」のページを確認する。入学後の申出の方法と、入試での配慮の申請時期を、候補の大学ごとに調べます。オープンキャンパスで支援室に立ち寄って、話を聞いてみるのも1つの方法です。

3つとも、志望校が決まっていなくても始められます。高校選びや今の学び方も含めて整理したいときは、体験説明会・個別相談で状況を聞かせてください。中学生で高校選びの段階にいる方は、発達障害 高校進学の記事から読むのがおすすめです。

大学の相談室の丸テーブルで、学生が職員と一枚の紙を前に話している
大学では、障害学生支援の窓口に本人が相談して配慮の中身を決めます。
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大学を見すえて、今の学び方を一緒に整理してみる

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よくある質問

Q. 発達障害のある大学生は、本当に10年で4倍に増えたのですか?

A. JASSOの調査の実数で見ると、2015年度3,436人から2025年度12,706人で約3.7倍です。4倍に近いのは高専(約4.2倍)でした。ただし2024年度に調査の区分と定義が見直されているため、単純な比較には注意が必要です。

Q. 大学で合理的配慮を受けるには、何から始めればいいですか?

A. 大学の障害学生支援室などの窓口に申し出るところから始まります。多くの場合、診断書などの根拠資料を求められ、本人と大学が話し合って配慮の中身を決めます。内容が決まるまで時間がかかる例もあるため、合格が決まったら早めに連絡するのがおすすめです。

Q. 私立大学でも合理的配慮は受けられますか?

A. 受けられます。2024年4月1日に改正障害者差別解消法が施行され、私立大学を含む事業者にも合理的配慮の提供が義務づけられました。国公立大学はそれ以前から義務でした。

Q. 高専には発達障害の学生が多いのですか?

A. 割合で見ると多いです。JASSOの令和7年度調査で、発達障害のある学生の割合は高専が約2.7%、大学が約0.35%でした。高専の障害のある学生のおよそ半数が発達障害です。ただし、なぜ多いのかは調査には書かれていません。

Q. 通信制高校からでも、共通テストの受験上の配慮は申請できますか?

A. できます。申請は大学入試センターに行い、卒業見込みの人は在籍する高校の担当者が状況報告書を記入します。令和9年度の申請期間は第1期が7月1日〜8月28日、第2期が8月31日〜10月2日(必着)です。

大学は「助けてもらえない場所」ではなく、「自分から使いに行く場所」です

発達障害のある学生は、この10年で約3.7倍になりました。大学の窓口もほとんどの学校にでき、法律も私立大学まで義務の範囲を広げています。大学で学ぶ道は、10年前よりずっと現実的なものになっています。

変わるのは、配慮の始まり方です。高校では周りが気づいてくれた場面も、大学では自分から窓口へ行くところから始まります。だからこそ、高校のうちに「自分の困りごとを言葉にする」練習を少しずつ積んでおくことが、いちばんの準備になります。

今日すべてを決めなくて大丈夫です。まずは困りごとを1つ書き出すところから始めてみてください。

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