「将来、自分にできる仕事はあるのかな」「発達障害があると、向いている仕事は限られるの?」。高校生のうちから働くことを考えはじめると、不安になるのは自然なことです。保護者の方も、インターネットで「ADHDに向いている仕事」「ASDに向いている仕事」といった一覧を見て、かえって迷ってしまうことがあると思います。
先に結論を書きます。向いている仕事は、診断名では決まりません。自分の得意・苦手と、仕事の中身(要素)と、働く環境の3つの組み合わせで見つけていくものです。そのために高校生のうちにできるのは、自分のことを言葉にしておくこと、アルバイトや職場体験で小さく試してみること、そして使える相談先と制度を知っておくことです。この記事では、その順番で整理します。
この記事は、発達障害者支援法・障害者差別解消法・労働基準法の条文(e-Gov法令検索)、厚生労働省の障害者雇用・障害者手帳・障害福祉サービスのページと資料、内閣府の障害者差別解消法のページ、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)のページ、国立障害者リハビリテーションセンターの「発達障害ナビポータル」を、2026年10月18日に実際に開いて確認した内容で書いています(資料名は各節の出典に書いています)。発達障害の診断や治療の判断は、医師が行います。確認できなかったことは、確認できなかったと書いています。
今の学校で毎日通うことに疲れてしまい、働くことも見すえて学び方を考え直したい場合は、オンラインという選択肢もあります。NIJIN高等学院(ニジ高)は「オンラインで最高の青春を」を掲げる通信制高校サポート校で、全国の仲間とオンラインでつながり、企業や地域と関わるプロジェクトや、生徒が自分たちで企画する行事に挑戦できます。カメラやマイクをオフにしてチャットだけで参加するところから始められ、全国にNIJINアカデミー(ニジ高はその高等部)のリアルの教室があり、リアルでの通学もご検討いただけます。ニジ高は高校ではないため、卒業資格は提携する通信制高校で取り、その高校のスクーリングには参加が必要です。どんな学校なのかは、校長・星野達郎のYouTubeでも見られます。
結論:発達障害の高校生に向いている仕事の早見
- 「ADHDならこの仕事」とは決められない。同じ診断名でも得意・苦手は人によって違います。発達障害者支援法も、生活上の困りごとは特性と「社会的障壁」の組み合わせで生じるという考え方をとっています
- 職種名より「仕事の要素」で見る。指示の出され方、同時にこなすことの量、人とのやりとり、音や光などの環境、時間の決まり方。この要素と自分の得意・苦手を照らし合わせると、候補が見つけやすくなります
- 同じ仕事でも、環境で働きやすさが変わる。2024年4月からは、事業者による合理的配慮の提供が法律上の義務になりました(障害者差別解消法の改正)。働く場面では、障害者雇用促進法で2016年4月から義務になっています
- 向いているかは、試してみて分かることが多い。アルバイト、職場体験・インターンシップ、支援機関の職業評価など、高校生のうちから小さく試す方法があります
- 働き方は「一般の求人」と「障害者求人」の2つ。民間企業の障害者の法定雇用率は、2026年7月から2.7%に上がりました。雇用率に数えられるのは、原則として障害者手帳を持つ人です
- 相談先は高校生でも使える。学校の進路指導、発達障害者支援センター、ハローワーク、地域障害者職業センターなど。すぐ働かずに、就労移行支援(標準の利用期間は2年)で準備する道もあります
- 学び方を変えて、働くことを試す時間をつくる道もあります。通信制高校やサポート校は、その選択肢の1つです
「ADHDならこの仕事」とは決められません。法律も、困りごとは特性と社会的障壁の組み合わせで生じるという考え方です
「ADHDの人はクリエイティブな仕事」「ASDの人はプログラマー」。こうした一覧はよく見かけますが、診断名だけで向いている仕事を決めることは、この記事ではおすすめしません。理由は2つあります。
1つ目は、同じ診断名でも、得意なことと苦手なことは人によって大きく違うからです。注意が移りやすい人もいれば、1つのことに集中しすぎてやめられない人もいます。人と話すのが好きな人もいれば、人とのやりとりに強い疲れを感じる人もいます。診断名は、その人の特性を説明する手がかりの1つにすぎません。
2つ目は、法律の考え方です。発達障害者支援法(2026年10月18日確認)の第2条は、「発達障害」を、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害などの脳機能の障害であって、症状が通常低年齢で現れるもの、と定めています。そのうえで「発達障害者」を、発達障害があって、発達障害と「社会的障壁」によって日常生活や社会生活に制限を受ける人、としています。社会的障壁とは、社会の中にある物事や制度、慣行、考え方などのことです。
つまり、困りごとは本人の特性だけで決まるのではなく、まわりの環境や仕組みとの組み合わせで生まれる、という考え方です。働くことに当てはめると、「その人に向いている仕事」は、職種の名前よりも、「どんな環境で、どんなやり方なら力を出しやすいか」で考えたほうが実際に近づきます。
| よく聞く言い方 | このまま信じないほうがよい理由 | 代わりに確かめたいこと |
|---|---|---|
| ADHDは営業やクリエイター向き | 同じ診断名でも、得意・苦手は人によって違う | 自分は変化が多いほうが楽か、決まった流れのほうが楽か |
| ASDはプログラマー・研究職向き | 職種の中にも、会議・調整・急な変更の多い職場がある | その職場で、人とのやりとりや予定の変更がどのくらいあるか |
| 学習障害があると事務は無理 | 読み書きの困難さは、道具や配慮で補える部分がある | 音声読み上げ・入力の補助など、使える道具や工夫はあるか |
| 好きなことなら続けられる | 好きな分野でも、仕事の進め方が合わないと疲れる | 好きな「分野」と、合う「働き方」を分けて考える |
※この表は、法律の考え方と公的機関の就労支援の情報をもとにした、この記事での整理です。
過集中や、1つの分野への強いこだわりを、働く場面でどう生かすかは、過集中 高校生の記事でも詳しくまとめています。

向いている仕事は、職種名ではなく「仕事の要素」で見ると見つけやすくなります
同じ「事務」でも、毎日同じ書類を決まった手順で処理する仕事と、電話を受けながら来客にも対応する仕事では、求められることがまったく違います。同じ「販売」でも、品出しが中心の時間帯と、レジと問い合わせが重なる時間帯では、頭の使い方が変わります。
そこで、仕事を職種名ではなく、次のような「要素」に分けて見てみます。自分がどの要素で力を出しやすく、どの要素で疲れやすいかが分かると、求人票やアルバイト先を見るときの目のつけどころが変わります。
| 仕事の要素 | 得意な人が力を出しやすい形 | 苦手な人が楽になりやすい工夫の例 |
|---|---|---|
| 指示の出され方 | 口頭の指示をその場で理解して動ける | 手順を紙やチャットでもらう。1回に1つずつ頼んでもらう |
| 同時にこなすことの量 | 複数の作業を切り替えながら進められる | 作業を1つずつに分ける。混む時間帯を避けて働く |
| 人とのやりとり | 初対面の人とも話すのが苦にならない | 決まった相手とのやりとりが中心の仕事を選ぶ。文字でのやりとりにする |
| 音・光・人の多さ | にぎやかな場所でも集中できる | 静かな席、耳栓やイヤーマフ、在宅での作業を相談する |
| 時間の決まり方 | 期限が近いほど力が出る | 途中の期限を細かく決める。予定表やアラームで見える化する |
| 変化の多さ | 毎日ちがう仕事のほうが飽きずに続く | 手順が決まった仕事を中心にする。予定の変更は早めに伝えてもらう |
※この表は、この記事での整理です。どの工夫が合うかは人と職場によって違います。職場での配慮は、本人と事業主が話し合って決めるものです(後の「合理的配慮」の節で説明します)。
大切なのは、表の左から自分を1つの型に当てはめることではありません。「指示は紙のほうが楽」「人とのやりとりは平気だけど、音がうるさいと疲れる」のように、要素ごとに自分のことを書き出していくことです。そうすると、たとえば「人と話すのは好きだけれど、同時にいくつも頼まれると混乱する」という人は、接客の中でも、一度に1組のお客さんに向き合う仕事のほうが合いそうだ、というように候補をしぼれます。
高校生のアルバイトで、この見方をどう使うかは、発達障害 高校生 バイトの記事で、求人票の読み方とあわせて詳しく書いています。
同じ仕事でも、働く環境で働きやすさは大きく変わります。「職場を選ぶ目」も育てておきます
仕事の要素と同じくらい大切なのが、働く環境です。同じデータ入力の仕事でも、静かな部屋で自分のペースで進められる職場と、電話が鳴り続けるにぎやかな職場では、疲れ方がまったく違います。発達障害者支援法の考え方に立てば、働きにくさの原因が環境の側にあるなら、環境を調整することで働きやすくなる余地がある、ということになります。
高校生のうちに、次のような点を意識して職場を見る練習をしておくと、将来の職場選びに役立ちます。
| 見ておきたい点 | 確かめ方の例 |
|---|---|
| 仕事の手順が書いて残されているか | 見学や面接で「マニュアルはありますか」と聞いてみる |
| 困ったときに聞ける相手が決まっているか | 最初の数週間、誰に聞けばよいかを確かめる |
| 音や人の多さ、席の位置 | 働く時間帯に見学させてもらう |
| 勤務時間や休憩の取り方 | 短い時間から始められるか、休憩はどこで取れるかを聞く |
| 相談の窓口があるか | 配慮をお願いしたいときに、誰に伝えればよいかを確かめる |
※この表は、この記事での整理です。職場によっては、見学や質問に応じられないこともあります。
また、在宅勤務ができる職場、勤務時間を短く始められる職場など、働き方そのものの選択肢も広がっています。どの働き方が合うかは、実際に試してみないと分からない部分も多いので、次の節からは、その「試し方」と「自分の知り方」を見ていきます。
自己理解は「得意・苦手・必要な手助け」の3つを書き出すところから。発達障害ナビポータルは、就職前の4つのステップを示しています
国立障害者リハビリテーションセンターが運営する発達障害ナビポータルの「就職を考えている方へ」(2021年7月30日掲載・2026年10月18日確認)は、本格的な就職活動に入る前に押さえてほしい4つのステップとして、次の流れを紹介しています。あわせて、大学や高校に在学中の人は、まず学生支援室や進路指導の先生に相談することをすすめています。
| ステップ | 内容(発達障害ナビポータルの紹介から) | 高校生のうちにできること |
|---|---|---|
| 1 自分を知る | 将来の希望と今の自分を整理する。強みや、配慮・支援が必要なことを掘り起こす | 得意・苦手を書き出し、家族や先生から見た強みも聞く |
| 2 企業や仕事を知る | 働いている人の話を聞く、職場を見学する。ほかの業種にも視野を広げる | 職場体験、仕事の話を聞く機会、障害のある人の就職セミナーの情報を集める |
| 3 職場を知る | 説明会やインターンシップで、実際の働き方や雰囲気を知る | アルバイトやインターンシップで、合う・合わないを確かめる |
| 4 採用に向けた対策をする | 履歴書の準備、障害を開示するか、一般雇用か障害者雇用か、配慮してほしい点を整理する | 高3や卒業前に、進路指導や支援機関と一緒に考える |
同じページは、発達障害の特性の1つに、相手の気持ちや「他人から自分がどう見えているか」を想像することの難しさがあるとして、家族や学校の先生、医療機関、支援機関など、自分をよく知る人から客観的な意見を聞くことをすすめています。自分ひとりで「自分は何が得意か」を考えると、苦手なことばかり思い浮かぶこともあります。まわりの人の目を借りるのは、ずるいことではありません。
また、就業支援の専門用語として「職業準備性(レディネス)」という考え方も紹介されています。働くうえで必要な力を、「疾病や障害を管理する力」「日常生活を遂行する力」「職業生活を遂行する力」「職務を遂行する力」の4つに分け、苦手さがある部分は、訓練で力を伸ばしたり、支援や周囲の配慮で補ったりする、という考え方です。
高校生のうちは、4つ目の「職務の力」より、1つ目から3つ目の土台、たとえば「眠る・起きる・食べるのリズム」「疲れたときに休む方法」「困ったときに人に聞けること」を整えるほうが、将来の働きやすさにつながりやすいかもしれません。これは学校生活でもそのまま役に立つ力です。
書き出すときは、次の3つの欄を作ると整理しやすくなります。
- 得意なこと・好きなこと:時間を忘れて続けられること、人からほめられたこと
- 苦手なこと・疲れること:どんな場面で、どのくらいで疲れるか
- あると助かる手助け:指示を紙でもらう、静かな場所、予定の変更を早めに知る、など
3つ目の「あると助かる手助け」は、将来、職場で配慮をお願いするときの下書きにもなります。

向いているかどうかは、試してみて分かることが多い。高校生のうちにできる試し方は4つあります
頭の中で考えるだけでは、自分に合う仕事は見えにくいものです。発達障害ナビポータルも、職場実習や学校でのインターンシップの機会は、自分の職業上の可能性や、将来の職業生活で押さえるべきポイントを知るよい機会だとしています。高校生のうちにできる試し方を、4つに分けて整理します。
| 試し方 | 分かること | 気をつけること |
|---|---|---|
| アルバイト | 時間を守って働く感覚、仕事の要素との相性 | 18歳未満は午後10時〜午前5時に働けない(労働基準法第61条)。学校のきまりも確かめる |
| 職場体験・インターンシップ | 職場の雰囲気、仕事の流れ | 学校によって実施の有無や形が違う。単位になるかも学校で確かめる |
| 家の手伝い・学校の係・ボランティア | 決まった役割を続ける力、得意な作業 | 小さな役割から始め、できたことを記録する |
| 支援機関の職業評価など | 作業の得意・苦手、必要な支援を専門家と整理できる | 利用できる時期や条件は機関によって違う。まず電話などで問い合わせる |
アルバイトについては、労働基準法(2026年10月18日確認)の第61条が、使用者は満18歳に満たない人を午後10時から午前5時までの間に働かせてはならない、と定めています(交替制の16歳以上の男性などの例外があります)。夜の時間帯に集中できるタイプの人でも、高校生のうちは昼や夕方の時間帯で試すことになります。
支援機関の職業評価としては、JEEDの地域障害者職業センター(2026年10月18日確認)が、就職の希望などを聞いたうえで職業能力などを評価し、個人の状況に応じた支援計画をつくる「職業評価」を行っています。利用するときは、あらかじめ電話かFAXで連絡するよう案内されています。高校在学中に利用できるかどうかは、センターに問い合わせて確かめてください。
試したあとは、「できた・できなかった」だけで終わらせず、前の節の「仕事の要素」の表に戻って、どの要素で楽だったか、どの要素で疲れたかを書き足していきます。うまくいかなかった経験も、自分に合う環境を知るための大切な材料です。
通信制高校の中には、インターンシップを単位として扱う学校もあります。条件や探し方は、通信制高校 インターンシップの記事でまとめています。
働き方は「一般の求人」と「障害者求人」の2つ。民間企業の法定雇用率は2026年7月から2.7%になりました
将来働くときの形は、大きく分けて、障害のない人と同じ枠で応募する「一般の求人」と、障害のある人を対象にした「障害者求人」の2つがあります。一般の求人で働く場合も、障害を職場に伝えるか(開示するか)どうかを選ぶことになります。
厚生労働省の障害者雇用対策のページ(2026年10月18日確認)によると、障害者雇用促進法は、企業に対して、雇用する労働者の2.7%に相当する障害者を雇うことを義務づけています(障害者雇用率制度)。厚生労働省のリーフレット「障害者の法定雇用率引上げと支援策の強化について」(2026年10月18日確認)では、民間企業の法定雇用率は、令和5年度の2.3%から、令和6年4月に2.5%、令和8年7月に2.7%へと段階的に引き上げられ、対象となる事業主の範囲も、従業員43.5人以上から40.0人以上、37.5人以上へと広がっています。
厚生労働省の「令和7年 障害者雇用状況の集計結果」(令和7年12月19日公表・2026年10月18日確認)では、民間企業に雇われている障害者は704,610.0人で、22年連続で過去最高でした。このうち精神障害者は168,542.0人で、前年より11.8%増え、身体障害者・知的障害者より伸び率が大きかったとされています。実雇用率は2.41%、法定雇用率を達成した企業の割合は46.0%でした(いずれも当時の法定雇用率2.5%での集計)。
| 比べる点 | 一般の求人 | 障害者求人 |
|---|---|---|
| 応募の条件 | 障害の有無を問わない | 障害のある人が対象。障害者手帳を持っていることを条件にしている求人もある |
| 障害を伝えるか | 伝える(開示)・伝えない(非開示)を選ぶ | 障害があることを前提に応募する |
| 合理的配慮 | 事業主に申し出て、話し合って決める | 事業主に申し出て、話し合って決める |
| 主な探し方 | 一般の求人サイト、学校の求人、ハローワーク | ハローワークの専門援助部門、支援機関の紹介など |
※この表は、厚生労働省と発達障害ナビポータルの情報をもとにした、この記事での整理です。求人ごとの条件は、それぞれの求人票で確かめてください。
注意したいのは、障害者雇用率に数えられるのは、原則として障害者手帳を持っている人だという点です。厚生労働省の研究会の資料「障害者雇用率制度等の在り方について:手帳を所持していない精神・発達障害者の位置づけ」(令和7年10月29日・2026年10月18日確認)も、障害者雇用率制度の対象となる障害者は原則として障害者手帳の所持者である、という過去の報告書の記述を引いています。そして、手帳を持たない発達障害者を雇用義務の対象とすることは「現時点では」難しい、と整理しています。
障害者手帳について、厚生労働省の「障害者手帳について」(2026年10月18日確認)は、身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳の3種類の総称だと説明しています。発達障害については、精神障害者保健福祉手帳の障害等級の判定基準(平成7年の厚生省通知。その後に一部改正)が、判定の対象となる精神疾患の1つとして「発達障害」を挙げています。療育手帳は、児童相談所または知的障害者更生相談所で知的障害があると判定された人に交付される手帳です。精神障害者保健福祉手帳の申請は、市町村の担当窓口を通して行います。
手帳を取るかどうか、障害者求人で働くかどうかは、本人と家族が、医師や支援機関と相談しながら決めることです。どちらが正しいということはありません。高校生のうちは「こういう制度がある」と知っておくだけで十分です。

合理的配慮は、働く場所でも学ぶ場所でも「本人の申し出」から始まります
合理的配慮とは、障害のある人が、障害のない人と同じように働いたり学んだりできるよう、困りごとのもとになっている壁を取り除くための調整のことです。指示を紙でもらう、静かな席に座る、休憩の取り方を調整する、といったことが例になります。
働く場面については、厚生労働省のページ「雇用の分野における障害者への差別禁止・合理的配慮の提供義務」(2026年10月18日確認)が、平成28年(2016年)4月から改正障害者雇用促進法が施行され、雇用の分野での障害者差別は禁止、合理的配慮の提供は義務とされている、と説明しています。厚生労働省の事業主向けリーフレット「雇用分野における障害者差別は禁止、合理的配慮の提供は義務です」(2026年10月18日確認)によると、対象は事業所の規模や業種にかかわらずすべての事業主で、対象となる障害者は障害者手帳を持っている人に限られず、精神障害(発達障害を含む)なども含まれます。具体的にどんな措置をとるかは、障害者と事業主がよく話し合ったうえで決める、とされています。
お店や学校などの事業者については、内閣府の障害者差別解消法のページ(2026年10月18日確認)が、令和6年(2024年)4月1日から、事業者にも合理的配慮の提供が義務化されたと案内しています。障害者差別解消法の第8条第2項は、障害者から社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合に、負担が過重でないときは、必要かつ合理的な配慮をしなければならない、と定めています。なお、同法の第13条は、事業主として働く人に対して行う措置については、障害者雇用促進法の定めるところによる、としています。
| 場面 | 根拠になる法律 | 合理的配慮が義務になった時期 |
|---|---|---|
| 職場(募集・採用・働いている間) | 障害者雇用促進法 | 2016年4月(改正法の施行) |
| お店・サービス・私立学校などの事業者 | 障害者差別解消法 | 2024年4月1日(改正法の施行) |
※出典:厚生労働省・内閣府の各ページ(2026年10月18日確認)。
どちらの場面でも、出発点は本人からの申し出です。だからこそ、前の節で書いた「あると助かる手助け」を、自分の言葉で伝えられるように準備しておくことが、高校生のうちからできる大切な練習になります。大学や専門学校に進んでから働く場合の配慮のしくみは、発達障害 大学生 合理的配慮の記事で詳しく書いています。
※2026年10月時点の情報です。最新は公式でご確認ください。
相談先は5つ。高校生のうちは、まず学校の進路指導と、地域の発達障害者支援センターから
働くことについての相談先は、いくつもあります。発達障害者支援法の第10条は、国と都道府県が、公共職業安定所(ハローワーク)、地域障害者職業センター、障害者就業・生活支援センター、教育委員会などの連携を確保しながら、発達障害者の特性に応じた就労の機会の確保や定着のための支援に努める、と定めています。同じ条の第2項では、都道府県と市町村が、必要に応じて、就労のための準備の支援が学校で行われるよう措置を講じる、としています。
| 相談先 | どんなところか | 高校生のうちの使い方の例 |
|---|---|---|
| 学校の進路指導・担任 | 在学中の進路相談の最初の窓口 | 得意・苦手のメモを持って、進路や職場体験について相談する |
| 発達障害者支援センター | 発達障害のある人と家族の相談に応じ、就労の支援も行う(発達障害者支援法第14条) | 将来の働き方や、地域で使える支援機関について相談する |
| ハローワーク(専門援助部門) | 障害のある人などに専門の職員が職業相談・職業紹介を行う | 卒業が近づいたら、障害者求人や支援制度について聞く |
| 地域障害者職業センター(JEED) | 職業評価、職業準備支援、ジョブコーチ支援などを行う | 職業評価が受けられるかを問い合わせる |
このほか、就業面と生活面の相談を一体的に行う障害者就業・生活支援センター(2026年10月18日確認。通称ナカポツ)もあり、5つ目の相談先になります。発達障害ナビポータルの「就職に関する主な相談窓口」(2021年7月30日掲載・2026年10月18日確認)は、障害の有無にかかわらない窓口として、新卒応援ハローワーク、わかものハローワーク、都道府県が設置するジョブカフェ、15歳から49歳までの人の就労を支援する地域若者サポートステーション(サポステ)なども紹介しています。
ハローワークについて、発達障害ナビポータルの「公共職業安定所(ハローワーク)」(2026年10月18日確認)は、一般の職業相談部門のほかに、障害者など就職に専門的な援助が必要な求職者を支援する専門援助部門があり、専門知識を持つ職員による職業相談や職業紹介、障害者トライアル雇用制度などの情報提供、就職後を見すえた多機関連携のチーム支援を行っている、と説明しています。
発達障害者支援法の第14条は、都道府県知事が、発達障害者とその家族などの相談に応じて情報提供や助言を行うこと、発達障害者に専門的な発達支援と就労の支援を行うことなどを、発達障害者支援センターに行わせることができる、と定めています。将来の働き方を考えはじめた段階で、地域のセンターに相談してみるのも1つの方法です。
卒業後の進路全体と、手帳がない場合に使える支援、相談先の選び方は、発達障害 高校生 将来の記事で詳しくまとめています。
すぐに就職せず、準備の期間を取る道もあります。就労移行支援の標準の利用期間は2年です
高校を卒業してすぐに働くことが不安なときは、準備の期間を取る道もあります。ここでは、公的な支援のうち、働く準備や働きはじめの時期に使われるものを整理します。
| 支援 | 内容 | 期間の目安 |
|---|---|---|
| 就労移行支援 | 一般の事業所で働くことを目指す65歳未満の障害者に、訓練や職場探しなどの支援を行う障害福祉サービス | 標準の利用期間は2年(障害者総合支援法施行規則第6条の8) |
| 就労選択支援 | 本人の希望や就労能力・適性に合った働き方を選べるよう支援する障害福祉サービス(令和7年10月1日施行) | 原則1か月 |
| 職業準備支援(地域障害者職業センター) | 職業上の課題の把握と改善、職業に関する知識、対人技能やストレス対処などの講座 | 個別のカリキュラムによる |
| ジョブコーチ支援(地域障害者職業センター) | ジョブコーチが職場に出向き、本人・事業主・家族を支援する | 標準的には2〜4か月(1〜8か月の範囲で設定) |
※出典:厚生労働省「障害福祉サービスの内容」、障害者総合支援法施行規則、厚生労働省「就労選択支援について」、JEED「職業準備支援のご案内」・「職場適応援助者(ジョブコーチ)による支援」(いずれも2026年10月18日確認)
厚生労働省の「障害福祉サービスの内容」によると、就労移行支援の対象は、就労を希望する65歳未満の障害者で、通常の事業所に雇用されることが可能と見込まれる人です。厚生労働省の資料「就労選択支援について」によると、令和7年10月以降、就労継続支援B型の利用を申請する前には、原則として就労選択支援を利用することになっています。
JEEDのジョブコーチ支援のページは、支援は永続的に行うものではなく、職場の上司や同僚に適切な支援の方法を伝え、ジョブコーチの支援が終わったあとも職場の中で支援が続くことを目指している、と説明しています。「向いている仕事」は、本人が見つけるだけでなく、職場と一緒に「働きやすい形」に整えていくものでもある、ということが分かります。
障害福祉サービスを使うには、市町村での手続きが必要です。障害者手帳がなくても利用できる場合があるか、どのサービスが合うかは、市町村の障害福祉の窓口や、相談支援事業所などで確かめてください。お金の面の制度は、発達障害 高校生 手当の記事でまとめています。

よくある誤解:「好きなことなら続く」「障害者雇用しか道がない」「診断名で仕事が決まる」は、どれも言い切れません
働くことを考えるときに、よく聞く思い込みを3つ取り上げます。
誤解1:好きなことを仕事にすれば、ずっと続けられる
好きな分野の仕事は、やる気を保ちやすい面があります。ただ、好きな分野でも、会議や電話が多い、急な予定変更が多いなど、仕事の進め方が合わないと疲れてしまいます。好きな「分野」と、合う「働き方」は分けて考えると、選び方が具体的になります。
誤解2:発達障害があると、障害者雇用で働くしかない
一般の求人で働く人も、障害者求人で働く人もいます。一般の求人で働く場合も、障害者雇用促進法の合理的配慮の対象は手帳を持つ人に限られません(厚生労働省のリーフレット)。どちらで働くかは、本人の希望や状態、職場の環境によって選ぶものです。
誤解3:診断名が分かれば、向いている仕事も分かる
この記事で書いてきたとおり、得意・苦手は人によって違い、働きやすさは環境によっても変わります。診断名は自分を理解する手がかりの1つですが、仕事を決めるのは、自分を知ることと、試してみることの積み重ねです。
誤解4:高校生のうちに、将来の仕事を決めなければならない
発達障害ナビポータルが示す就職前の4つのステップのうち、高校生のうちに進められるのは、主に「自分を知る」と「仕事を知る」の部分です。仕事を1つに決めることより、自分の取扱説明書のようなメモを少しずつ育てていくことのほうが、あとで役に立ちます。
学び方を変えて、働くことを試す時間をつくる道もあります。通信制高校の卒業者の就職の割合は、数え方で14.1%と19.5%です
毎日決まった時間に登校することが大きな負担になっている場合、学び方を変えることで、アルバイトや職場体験など「働くことを試す時間」をつくりやすくなることがあります。通信制高校は、レポート(添削指導)・スクーリング(面接指導)・試験で単位を取る仕組みで、卒業には3年以上の在籍、74単位以上の修得、特別活動30単位時間以上が必要です。スクーリングへの参加もあります。
文部科学省の学校基本調査(令和7年度)(2026年10月18日確認)によると、令和6年度間の通信制の卒業者91,809人のうち、自営業主等・無期雇用・有期雇用・臨時労働者をあわせた「就職者等」は17,893人(19.5%)でした。別の数え方の「卒業者に占める就職者の割合」は14.1%です。大学等への進学は28.6%、専門学校は22.9%でした。数字の見方と、就職に向けた準備は通信制高校 就職の記事、卒業後の進路全体は通信制高校 卒業後 進路の記事で詳しくまとめています。
通信制高校は、時間の自由がある分、自分で学習の計画を立てる力も求められます。特性に合う学校の選び方は、ADHD 通信制高校とASD 通信制高校の記事、学校の比べ方は通信制高校 選び方のページを参考にしてください。
選択肢の1つとしてのニジ高(正直な注意点)
NIJIN高等学院(ニジ高)は、オンライン中心の通信制高校サポート校です。自宅から参加でき、カメラやマイクをオフにして、チャットだけで参加するところから始められます。担任制で、授業のアーカイブ視聴に対応しています。生活リズムに波があっても学べるように作られていて、中学の内容の学び直しもできます。
ニジ高は、発達特性や障害を、本人を変えるのではなく、学びの構造や環境を変えることで支援する、という新しいアプローチを取っています。一律の基準にその子を当てはめるのではなく、いまできることの少し先に合う課題を置くことで、その子の個性が輝くように支援します。希望する生徒には、スタッフが1対1で伴走する支援もあります。
働くことにつながる学びとしては、企業や自治体と関わる探究のプロジェクトや、生徒が企画・運営する行事があります。希望する生徒には、企業インターンとして出社するプロジェクトもあります(東京の拠点・希望者向け)。公式サイトでは、提携企業・自治体が100以上と紹介されています。校長の方針として、「社会に一番近い学校」をめざしています。
そのうえで、先にお伝えしておくことがあります。
- ニジ高そのものは高校ではありません。高校卒業の資格は、提携する通信制高校で取ります。
- 提携する通信制高校のスクーリングには参加が必要です。ニジ高の中でのスクーリングはありません。ニジ高がするのは、日程の調整と準備の支援です。スクーリングの形や日程は、個別相談会でご案内しています。
- 費用は、提携する通信制高校の分とニジ高の分の両方がかかります。ニジ高の分に就学支援金は使えません。金額は学費のご案内に載せています。
- オンライン中心なので、毎日通う場所を求める方には合わない場合があります。
- 診断や服薬など医療の判断は、主治医や専門機関にご相談ください。障害者求人や障害福祉サービスについては、この記事で紹介した公的な窓口もあわせてご利用ください。
途中からの入学(転入・編入)ができ、出願費用は無料です。グループ全体で、不登校の生徒を650名以上サポートしてきました。
迷ったときの進め方(3ステップ)
- 得意・苦手・あると助かる手助けを、1枚のメモに書き出す。自分だけで書きにくいときは、家族や先生に「わたしの得意なことは何だと思う?」と聞いて書き足します。
- 小さく試して、仕事の要素ごとに振り返る。家の手伝い、学校の係、アルバイト、職場体験など、できるところから。終わったら「どの要素で楽だったか・疲れたか」をメモに足します。
- 相談先と学び方を、急がずに比べる。学校の進路指導や発達障害者支援センターに相談しながら、今の学校で続ける道と、通信制高校などで働くことを試す時間をつくる道を並べて考えます。
オンライン中心の学び方がどんなものかは、ニジ高の体験説明会・個別相談会で聞けます。個別相談会は、オンライン・無料で、保護者の方だけでも参加できます。


働くことも見すえた学び方を、一緒に考えます
ニジ高はオンライン中心の通信制高校サポート校です。カメラとマイクをオフにして、チャットだけの参加から始められ、企業や地域と関わるプロジェクトもあります。高校ではないため、卒業資格は提携する通信制高校で取り、そのスクーリングへの参加が必要です。個別相談会は、保護者の方だけでも参加できます。
よくある質問
Q. 発達障害の高校生に向いている仕事は、診断名ごとに決まっていますか?
A. 診断名ごとに決まっているものではないと考えます。同じ診断名でも得意・苦手は人によって違い、発達障害者支援法も、困りごとは特性と社会的障壁の組み合わせで生じるという考え方をとっています。仕事を「指示の出され方」「同時にこなすことの量」「人とのやりとり」などの要素に分けて、自分との相性を見るのがおすすめです。
Q. 障害者手帳がないと、障害者雇用で働くことはできませんか?
A. 障害者雇用率に数えられるのは原則として手帳を持つ人で、障害者求人には手帳を条件にしているものもあります。一方で、職場での合理的配慮(障害者雇用促進法)の対象は手帳を持つ人に限られず、発達障害も含まれます。手帳を取るかどうかは、医師や支援機関と相談して決めてください。
Q. 高校生のうちにアルバイトをしても大丈夫ですか?
A. 学校のきまりの範囲で、自分に合うか試す方法の1つになります。18歳未満は、労働基準法第61条で午後10時から午前5時まで働けません。はじめは短い時間から始め、どんな仕事の要素が楽だったか・疲れたかを振り返ると、将来の仕事選びの材料になります。
Q. 働くことの相談は、高校生でもできますか?
A. まずは学校の進路指導や担任の先生に相談してみてください。発達障害者支援センターは、発達障害のある人と家族の相談に応じ、就労の支援も行う機関です(発達障害者支援法第14条)。地域障害者職業センターやハローワークの利用の条件は、それぞれに問い合わせて確かめてください。
Q. すぐに就職するのが不安なときは、どうすればいいですか?
A. 進学して準備の期間を取る道や、就労移行支援(標準の利用期間は2年)で訓練や職場探しをする道があります。2025年10月からは、本人の希望や適性に合った働き方を選べるよう支援する就労選択支援も始まりました。どれが合うかは、市町村の窓口や支援機関で相談してください。
向いている仕事は、探すものというより、自分を知りながら育てていくものです
「向いている仕事が分からない」と感じるのは、あなたに向いている仕事がないからではありません。まだ、自分の得意・苦手と、仕事の中身を照らし合わせる材料が少ないだけです。材料は、毎日の生活や、小さな試しの中で少しずつ増えていきます。
うまくいかなかった経験も、「この環境は合わなかった」という大切な情報です。そして、働きにくさは、あなただけの問題ではなく、環境との組み合わせで生まれるものでもあります。環境を調整してもらうことは、わがままではなく、法律で認められた相談です。
将来のことは、今日決めなくてかまいません。まずは、得意なこと・苦手なこと・あると助かる手助けを、1つずつ書き出すところから始めてみてください。
得意を生かせる学び方と、将来の考え方を聞けます
全国どこからでもカメラ・マイクはオフでOK転入・編入は随時受付
通信制高校サポート校 NIJIN高等学院(ニジ高)/出願費用は無料です。無理に勧めることはありません。

